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審決分類 |
審判 査定不服 商6条一商標一出願 登録しない 042 |
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管理番号 | 1060116 |
審判番号 | 審判1995-23933 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1995-11-02 |
確定日 | 2001-07-17 |
事件の表示 | 平成4年商標登録願第265202号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「シャディ」の文字を横書きしてなり、第42類「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に頒布し、家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して、平成4年9月29日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定は、「本願は、政令で定める商品及び役務の区分第42類の役務を指定していないものである。本願の指定役務は、カタログによる商品の販売と認められるものであるから、これは商品区分第1類から第34類に属するものであり、商標法上の役務を指定したものとは認められない。したがって、本願は商標法第6条第1項の要件を具備しない。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。 3 請求人の主張 現行商標法では、商品商標のみならず役務商標までもが保護対象となっているため、当該商標が商品商標であるか役務商標であるかの判断は、当該商標の使用態様により取引者、需要者が自他商品又は自他役務を識別できるかどうかにより決せられるべきである。 そこで本願商標の使用態様を検討してみると、本願商標は各メーカーズブランド、ディーラーズブランド等種々の商標が付された不特定多数の商品を一冊のカタログ集に満載し、そのカタログ集の表紙に本願商標を付して需要者に頒布し、「家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」を提供する目的で使用されるものである。したがって、そのカタログ集の表紙に付された「シャディ」なる商標は、そのカタログ集に掲載された個々の商品について、自他商品識別機能を有している訳ではなく、上記サービスに使用されることにより、同業他社の同種役務との識別機能を果たしていることに疑いがない。 よって、本願商標は、あくまでも「商品選択の機会を提供する」役務に使用される役務商標であり、この自他役務の識別力を有している点で、保護され登録されるべきである。 4 当審の判断 (1) 本願の指定役務の内容が必ずしも明らかでないので、当審において請求人に審尋したところ、次のような回答を得た。 請求人は、広義の「カタログ販売」を業とするものであるが、その具体的な業務形態は、顧客との直接的な結び付きではなく、北は北海道から南は沖縄まで全国に3,000にのぼる「Shaddy シャディ」の看板を掲げた代理店並びに全国で2,000以上展開している「シャディ サラダ館」の代理店を通じ、顧客にカタログを頒布し、商品の販売を行っている。 このカタログは、すべて有料で、まず上記代理店に頒布され、それら代理店を通じ需要者に頒布される。このカタログには、各々メーカーズブランド、ディーラーズブランド等種々の商標が付された不特定多数の商品が満載されており、需要者は、家庭においてこのカタログを見、請求人の各代理店を通じて商品の申込みをし、購入をする。 カタログ掲載の商品については、請求人がすべて用意しており、各代理店を通じて需要者に手渡し又は配送されることとなる。 商品の販売代金及び送付料につき、各代理店を通じて需要者に販売された商品の代金は、需要者から各代理店が受け取り、各代理店を通じ一定の額の代金が請求人に支払われ、送付料は、各代理店での手渡しの場合は無料であり、送付する場合は原則として需要者の実費負担となる。 (2) そこで、本願の指定役務が上記(1)のようなものであることを前提として、これが商標法にいう役務といえるかどうかについて検討する。 ところで、商標法は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、‥‥商標登録を受けることができる。」と規定する(同法第3条第1項)とともに、商標及びその使用については定義規定(同法第2条参照)を置いているが、商品及び役務が何であるかについては特に定義しておらず、これは専ら社会通念に委ねられているものといえる。しかして、社会通念に照らし、商標法にいう「商品」は「商取引の対象となる有体動産であって、それ自体流通過程にのせられ転々流通するもの」と解されるのに対し、「役務」は「他人のために提供する労務又は便益であって、独立して取引の対象となるもの」と解するのが相当である。 これを本件についてみるに、「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に頒布し、家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」という本願指定役務の表示自体からは、他人のために商品の選択の機会を与えるという労務・便益といえなくもないが、請求人の説明によれば、請求人は商品の選択の機会を与えることに止まらず、顧客によって選択された商品を有償で頒布していることが明らかであり、例えば、顧客たる他人が請求人から商品の選択の機会を与えられ請求人とは別に他所で同種の商品を入手するというようなことはなく、顧客の目的はカタログ掲載商品を請求人から入手することにあるといえるから、この労務・便益自体が独立して経済取引の対象になっているものとはいい難い。むしろ、請求人は、商品を販売する手段の一つとしてカタログを用いているものとみるのが自然である。そして、有償で頒布されるカタログ自体は、印刷物という商品とみることもできる。 請求人は、「顧客はカタログ掲載の商品であっても各商品に付されたメーカーズブランド、ディーラーズブランドを頼りに商品を選択しており、カタログの表紙に付された本願商標は、個々の具体的商品の自他商品識別機能ではなく、請求人が選択してカタログに掲載し、需要者に商品選択の機会を与えるサービスと、商品選択に関しカタログ上などで種々アドバイスするサービス、すなわち販売サービスに関する自他役務識別機能を果たしている」旨主張している。 しかしながら、商標法は、「商標」の定義において「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」と定め(同法第2条第1項参照)、商標がいわゆる商品の「製造標」のみならず「販売標」としても機能することを明らかにしており、上記のように、請求人及びその顧客の目的は、商品選択の機会又はアドバイスの授受に止まらず、商品の販売と購買とにあるといえるから、その手段の一つとして用いられるカタログに付された本願商標は、商品の販売者である請求人が、自己の責任により選択して販売する商品であることを示し、他の販売業者の選択販売する商品と区別するという商品の販売標とみるのが相当である。 更に、請求人は、本願の指定役務は小売サービス業の一形態であり、1997年1月より発効しているニース協定の国際分類第7版において国際分類第35類の注釈に「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」が追加されたことをもって、「小売サービス業」が役務として認められた旨主張している。 しかしながら、上記第35類の注釈には、特に含まないものとして、「主たる業務が商品の販売である企業、すなわち、いわゆる商業に従事する企業の活動」を掲げていることから明らかなように(特許庁商標課編「商品・サービス国際分類表」第7版参照)、いわゆる商品の「小売」は、商品の販売を目的にするものであって上記第35類のサービスには含まれないものと解される。このことは、上記国際分類第7版についての審議が行われたニース同盟の第17会期専門家委員会において、小売店サービス(retail store services)の表示は、その表示に関する国際登録標章の保護の範囲又はそのような標章の承認についていかなる国も拘束するものではないとされ、小売店サービスは限定的に解釈されるべきであるとされた経緯(上記専門家委員会報告書「CLIM/CE/XVII/5」 Para.24及びPara.25参照)に照らしても、首肯し得るものである。 そして、上記第35類の注釈において特に含まれるとされる「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」の趣旨は、商品の小売りをすることではなく、他人のために各種商品の品揃えや店のレイアウト等をすることに止まるのであって、上記専門家委員会において、その他人とは顧客、各種商品の製造業者等をいい、商品の品揃えサービスを行う者をいうのではないとされた(上記専門家委員会報告書「CLIM/CE/XVII/5」 Para.26参照)ことからも、その他人がその他人の顧客に商品を販売することを想定しているものと解される。 そうすると、上記第35類の注釈が変更されたからといって、直ちに商品の「小売」が上記第35類に含まれるサービスとして認められたということはできない。 もとより、本願は上記国際分類第7版が適用される前に出願されたものであるから、請求人のこの主張は、本願には適合しないものである。 以上を総合すると、本願の指定役務は商標法にいう役務ということはできない。 (3) したがって、本願が商標法第6条第1項の要件を具備しないとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、これを取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-09-07 |
結審通知日 | 1999-09-17 |
審決日 | 1999-10-04 |
出願番号 | 商願平4-265202 |
審決分類 |
T
1
8・
91-
Z
(042)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 滝沢 智夫、林 二郎 |
特許庁審判長 |
金子 茂 |
特許庁審判官 |
石田 清 大橋 良三 |
商標の称呼 | 1=シ+ヤデ+イ |
代理人 | 伊藤 孝夫 |
代理人 | 長田 正 |
代理人 | 樋口 次郎 |
代理人 | 小谷 悦司 |