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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 037 |
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管理番号 | 1060112 |
審判番号 | 審判1999-31648 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-07-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 1999-12-10 |
確定日 | 2002-06-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3221324号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3221324号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成4年9月3日登録出願、第37類「建築一式工事」を指定役務として、平成8年11月29日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、「本件商標は、その指定役務の『建築一式工事』の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び同第2号証を提出した。 (1)請求の理由 請求人が調査したところによると、本件商標は、その指定役務である「建築一式工事」について、商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、現在も使用されている事実は見出せない。 加えて、商標登録原簿上において、通常使用権および専用使用権等の設定登録がなされておらず、使用権者が使用していることも考えられない。 したがって、請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標の登録をその指定役務である「建築一式工事」について取り消すとの審決を求める。 (2)答弁に対する弁駁 (イ)被請求人が乙第1号証及び同第2号証にて専用使用権、通常使用権の設定をせず、専ら自ら使用していると立証する商標は、本件商標と同一の商標であるとはいえない。 被請求人は、答弁の理由にて本件商標を横並びの態様で使用していると主張する。しかし、態様が縦並びの登録商標を横並びの態様で使用することは、商標法第50条第1項の文言上、登録商標と社会通念上同一の範囲内における商標の使用とはいえない。 また、乙第1号証及び同第2号証において、被請求人が使用していると立証する商標は上記の横並び態様に加え、「株式会社」の文字が「You Me」のロゴの上に付されたものである。該使用商標は「株式会社」の文字を小さく書し、外観上まとまりよく一体に構成されている。加えて、該使用商標中の「株式会社夢工房」の文字は被請求人の商号であり、「株式会社」と「夢工房」の文字の結合力は強いと考えられる。 よって、該使用商標は、「株式会社」の文字を含めて一体不可分の商標であると認識されるため、本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。 (ロ)乙第1号証及び同第2号証において表わされている役務は、本件審判の請求に係る指定役務「第37類 建築一式工事」ではない。 乙第1号証の折込チラシは、建築一式工事についての使用ではなく、第36類の役務である「建物の売買」に関するものである。これは該チラシが、工事を広告しているものではなく、完成した住宅の販売を広告していることから明らかである。 また、乙第2号証は求人広告であり、建築一式工事についての使用ではない。 (ハ)乙第1号証ないし同第3号証は、本件審判の請求の登録の日である平成12年1月19日前3年以内に本件商標を使用した事実を証明するものではない。 被請求人は、乙第1号証の折込チラシを、平成9年5月2日付「北海道新聞」朝刊折込により札幌市東区、北区内一円の購読家庭に配布したと主張する。しかし、乙第1号証はこの事実を立証していない。これは、乙第1号証中の折り込みチラシに平成9年との記載がなく、請求書には、これが乙第1号証のチラシについてのものであることを示す記載がないことから明らかである。 乙第2号証についても同様に、被請求人は乙第2号証の求人広告を札幌市内の書店、コンビニエンスにて販売の「アルバイト北海道」に平成11年3月1日に掲載したと主張する。しかし、乙第2号証はこの事実を立証していない。これは、求人広告の写しに「H11.3.1」と手書きで縦に日付が記載されているのみであり、請求書からは求人広告との関連性が窺えないことから明らかである。 また、乙第3号証は本件商標の出願時である平成4年9月3日現在における本件商標の使用を説明するにすぎず、本件審判の請求前3年以内における本件商標の使用を立証するものではない。 よって、乙第1号証ないし同第3号証は、本件審判の請求の登録の日である平成12年1月19日前3年以内に本件商標を使用した事実を証明するものではない。 3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第8号証を提出した。 (1)答弁 本件商標は、商標権の設定登録がなされて以来、通常使用権および専用使用権の設定登録はせず、専ら商標権者がその指定役務において本件商標を使用しているものである。( 乙第1及び同第2号証) 又、本件商標は二段並記であるが、本件商標出願時における商標の使用説明書(乙第3号証)においても横並び使用例を挙げて商標登録に至ったものであり、現在においても横並び使用している。 (2)弁駁に対する答弁 (イ)請求人は、本件審判の請求にかかわる本件商標を横並びの態様で使用することは、商標法第50条1項に基づく、登録商標と社会通念上同一の範囲内の使用といえないと弁駁しているが、同条において「社会通念上同一と認められる商標」の例示として、(a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,(b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、(c)外観において同視される図形からなる商標その他をあげている。その具体的な例示として特許庁が平成9年8月1日作成した「平成8年改正商標法等の概要〔審査・審判実務運用編〕」の頁41から頁43に10例掲載されている。この例から考察しても縦並びの本件商標を横並びで使用することは称呼及び観念においてなんら異ならず社会通念上同一と認識される商標の使用であって、請求人の主張は失当である。 また、乙第1号証及び同第2号証において使用している商標に「株式会社」の文字を「You Me」のロゴの上に小さく付け「株式会社」の文字を含めて一体不可分の商標であるかの使用と請求人は主張するが、小さくつけたからまとまりよく一体化された外観構成だとはいえず、また、乙第1号証及び同第2号証いずれにも被請求人の商号である「株式会社夢工房」の文字は別途載せていない。「株式会社」が小さく該使用商標に付いたから強いて商号だと認識するならば「株式会社You Me」と認識するほうがむしろ自然といえ、請求人の主張する「株式会社」と「夢工房」の文字の結合力が強いと考えるのは単なる推測にすぎない。 よって、乙第1号証及び同第2号証の使用商標は登録商標と社会通念上同一の商標であるといえる。 (ロ)請求人は乙第1号証においては「建物の売買」に関する広告であり、乙第2号証は求人広告にすぎず、いずれも本件商標が登録された指定役務「第37類 建築一式工事」における使用ではなく、かつ、そのいずれも本件審判請求の登録の日である平成12年1月19日前3年以内に本件商標を使用した事実を証明するものではないと弁駁している。しかし、乙第1号証の広告チラシの建物は全て「新築」と明示され、かつ該チラシ右下には「建設業 北海道知事許可(般8)石第6924号」との記載がある。これは建設業の一般建築一式工事において平成8年に北海道知事の許可を受けたことを意味するものであり(乙第4号証)、このことは建設業に携わるもののみならず一般個人にも周知されている事実である。 このことから、該チラシの建物は全て被請求人によって建築されたことが誰にでも容易に窺い知ることができ、指定役務の「建築一式工事」にかかわる広告として効果をあげているのは一目瞭然である。 また、該チラシには物件個別に物件概要欄がありその中に築年月日がそれぞれ記載されている。一番古いもので「平成8年12月」一番新しいもので「平成12年5月予定」とあり、このことから該チラシが平成8年12月から平成12年4月の間に作成されたものであることは明らかであり、かつ、「西茨戸 2,570万円」の物件概要欄の築年月日が「平成9年2月」と記載されていることからも本件審判事件請求の登録の日である平成12年1月19日前3年以内、つまり、平成9年1月20日以降の作成であることは明白である。 加えて、該チラシを作成したのみならず平成12年5月2日付「北海道新聞」朝刊に折込をして札幌市東区、北区の購読家庭に配布したことの代金として株式会社そうご印刷より請求をうけたが、これらの証明として同社の証明書を提出する。(乙第5号証) また、乙第2号証の「アルバイト北海道」に掲載した広告では建築工事において不可欠な建築図面作成(CAD)などの求人であるが、併せて、木造住宅の建築施工の会社であることをうたって建築工事一式を請け負うことを宣伝している。木造住宅の建築における潜在顧客一般庶民全てであり、営利を目的とする私企業としてはいついかなる場合でも本件商標の指定役務である「建築一式工事」を宣伝するのは当然のことである。 また、掲載時期の特定については、乙第2号証に「アルバイト北海道」の発行者である株式会社北海道アルバイト情報社の請求書を添付したがこの請求内訳で「掲載号数2785、掲載日3/1」との記入がある。同社に資料として現物保存されている2785号の表紙には「1999,3/1(平成11年3月1日)NO.2785」と印刷されてあり、また、裏表紙からは資料版のため一部隠された面はあるものの「1999年3月1日発行・・・札幌市東区北31条東1丁目 電話011ー751ー5188(代)」とあり、不鮮明な発行社は裏表紙下欄に「求人広告お申し込みは 株式会社北海道アルバイト情報社 ●本社札幌市東区北31条東1丁目3ー21 Tel011ー751ー5188」と記載がある。 このことから、被請求人が提出した請求書(乙第2号証)の発行者と同一の会社であることが明白であり、かつ、被請求人が掲載した広告とその請求書との関連は疑うべくものがない。よって、乙第1号証及び同第2号証は、本件審判の請求登録の日である平成12年1月19日前3年以内に本件商標を使用したことを立証するものである。 (ハ)第2回答弁を機に商標権者である被請求人がその指定役務において本件商標を使用している事実を立証するものとしてあらたに以下のものを乙第7号証及び同第8号証として提出する。 まず、平成11年4月に某氏より某邸新築一式工事請負の依頼があり、様々な打ち合わせのあと工事にかかわる図面一式と見積書を提示し平成11年7月10日請負契約締結に至った。この際の見積書の表紙及び建築図面一式に本件商標を付して某氏に提出している。(乙第7号証) また、工事着手にあたり建築基準法第6条1項の規定により事前に札幌市に建築確認申請書を提出して建築主事の建築確認を必ず受けなければならないが、この際の申請図面一式も某氏に提出した図面一式と同じ本件商標を付したものを用いている。 この確認申請書(第二面)には工事施工者として被請求人の名が明記されており、ここから某氏に対して被請求人が「建築一式工事」の役務を提供する者だとの判断が容易にでき、役務の提供を受ける某氏が自邸の新築のために必要欠くべからざる本件商標が付された建築図面を利用して工事の進捗状況を確認しつつ建物完成に至ったことが判断出来る。かつ、建築確認申請書表紙にある札幌市建築主事の建築確認がおりた日付け「平成11年7月21日」と建物完成後札幌法務局にて建物表示登記申請処理がなされた日付け「11.12.1」から某氏邸住宅新築-式工事が被請求人によって平成11年7月21日から平成11年11月30日までの間になされたことが明白である。(乙第8号証) 役務を提供される者を某氏としているがこれは某氏のプライバシー保護のためであり、この乙第7号証及び同8号証によって建築工事がなされたことは事実であり役務の提供を受ける者がいたことも事実である。そして、この建築一式工事の役務提供を受けるためには見積書及び建築図面が必要だったことも疑いもなく事実である。 よって、この乙第7号証及び同第8号証によっても被請求人が指定役務について本件商標を本件審判請求の登録日の平成12年1月19日前3年以内に使用していたことが立証される。 4 当審の判断 (1)被請求人が本件商標の使用事実ついて提出した乙第7号証及び同第8号証によれば、以下の事実を確認することができる。 (イ)乙第7号証は、被請求人が平成11年5月10日付けで札幌市豊平区福住1条5丁目120番地32 121番地4における新築住宅工事を請負した見積書であって、その内訳書の一部及び建築図面一式(写)である。そして、見積書表紙には、別掲(2)の商標が、また建築図面一式(写)にも同様の商標が表示されている。 (ロ)乙第8号証は、平成11年7月21日付けの前記住宅建築確認申請書(写)及び同11年12月1日付けの札幌法務局南出張所による確認書であり、工事施工者として被請求人の商号が確認できる。 (2)してみれば、被請求人は住宅の建設業者として住宅工事を請け負い、建築一式工事の役務の提供を行ったことが認められる そして、別掲(2)の使用商標は、本件商標の「You Me」の文字と「夢工房」の文字が横書き二段に表示されているものを、横書き一列に配置し、また「You Me」の文字の大きさを若干小さく表示したにすぎず、これにより全く別異のものに変化したとは看取され得ず、社会通念上同一のものと認められる。 以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一というべき商標をその指定役務である「建築一式工事」について使用したものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条により取り消す限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (2)使用商標 |
審理終結日 | 2002-04-04 |
結審通知日 | 2002-04-09 |
審決日 | 2002-04-22 |
出願番号 | 商願平4-174888 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(037)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柴田 昭夫、山口 烈 |
特許庁審判長 |
涌井 幸一 |
特許庁審判官 |
中嶋 容伸 滝沢 智夫 |
登録日 | 1996-11-29 |
登録番号 | 商標登録第3221324号(T3221324) |
商標の称呼 | ユーミーユメコーボー、ユーミー、ユメコーボー |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 中川 博司 |