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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 117
管理番号 1059899 
審判番号 審判1999-30353 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-03-24 
確定日 2002-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2407083号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2407083号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第17類「被服」を指定商品として、平成1年2月13日登録出願、同4年4月30日設定登録、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1ないし第3号証を提出している。
(1) 本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をしていないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
(2) 被請求人は、「使用説明書(1)」(乙第4号証)をもって、商品「被服」に関する広告に、本件商標を付して頒布する行為であると述べ、この行為は、商標法第2条第3項第7号に規定する商標の使用に該当すると主張している。
しかしながら、前記規定における「商標の使用」は、「商品又は役務に関する」広告に標章を付して頒布する行為でなければならず、その広告は、具体的な商品の販売を目的とするものでなければならないところ、被請求人による前記広告には、何ら具体的な商品が表わされていない。この点につき、被請求人は、「掲載誌が被服関連の業者に向けた業界新聞である特殊性によるもの」と述べているが、素材(例えば、織物)メーカーが、その製品(例えば、被服)の業界紙に広告記事を掲載することは極く普通に行われていることから、被服関連の業界新聞に広告したことをもって、「被服」について広告したと言い得ないことは、明らかである。
むしろ、広告中央部の「テキスタイルメーカーとして」という記載からすれば、広告主の業務は、「テキスタイル」すなわち「織物、生地」のメーカーであり、また、当該広告には具体的な商品が全く表わされていないから、当該広告は、「テキスタイルメーカー」たる被請求人の会社自体の広告とみるのが自然である。
したがって、上記広告をもってしては、本件商標を商品「被服」について使用していたものということはできない。
(3) 被請求人提出の「使用説明書(2)ないし(5)」(乙第5ないし第8号証)は、写真ではなくカラーコピーである。同カラーコピーにおいて、「撮影日」を窺わせる日付は全く表わされていない。なお、被請求人が言及するところの「写真」が答弁書正本と副本とで不一致であるならば、同一のものとされたい。
被請求人は、同証拠により、商品「ポロシャツ等」又は同商品の包装に、本件商標を付している旨主張している。しかし、本件商標が付されているのが「ポロシャツ」であるとしても、これが「商品」であると認めることはできない。
商標法における「商品」とは、「商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物」であると解すべきことは、平成元年11月7日東京高裁判決が判示するところ(甲第1号証)、これを本件について見るに、被請求人が提出した上記証拠によっては、上記「ポロシャツ」が一般市場で流通に供されることを目的とするものであることが証明されていない。
被請求人は、前記業界紙の「広告」記事により明らかなとおり「テキスタイルメーカー」である。また、「帝国データバンク企業情報」として公開されているデータによれば、被請求人の業務は「たて編みニット生地製造業」であり(甲第2号証)、「全国繊維企業要覧」によれば、被請求人の取扱品目は、「ニット生地(丸編)100%」である(甲第3号証)。このことから、被請求人は商品「織物、生地」を取り扱う者ではあっても、商品「被服」を取り扱う者ではない。
さらに、請求人が調査したところによれば、被請求人はポロシャツ等を販売している事実はなく、被請求人が生産しているニット生地の顧客に対する贈答用として、年間何着という小規模ロットでポロシャツを生産し、これを前記顧客に無償配布していることが判明している。
したがって、「使用説明書(2)ないし(5)」(乙第5ないし第8号証)における「ポロシャツ」は、宣伝用の贈答品として顧客に無償配布するものであって、一般市場で流通に供されることを目的として生産され取引されるものではないから、商標法上の「商品」ということはできない。
(4) 被請求人は、「使用説明書(6)」(乙第9号証)により、被請求人は、下げ札が取り付けられた「被服」を、下請けメーカーである山口衣料(株)から納品をうけ、これを被請求人が正規の販売ルートに流すものであるから、商標法第2条第3項第2号の「商品に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示する行為」に該当すると主張している。
しかし、下げ札等の不鮮明なコピーであるので、「ポロシャツ」等と、下げ札における標章及び品番、並びに請求明細書における品番との相互の関係が不明確である。
仮に、請求明細書に記載された品番が下げ札に記載された各品番と対応し、これにより山口衣料(株)より被請求人に被服が納品されたことが証明されたとしても、当該被服は前述したとおり、被請求人が贈答用として無償配布するために下請メーカーに仕立てさせたものであって、市場で流通に供することを目的としたものではないから、「商品」ではない。
被請求人は、前記被服を正規の販売ルートに流すものであると主張しているが、主張するのみで、前記被服が、一般市場において流通におかれた事実を示す証拠は何ら提出されていない。なお、前記「下げ札」には、価格の表示が見当たらない。すなわち、これら事実は、上記贈答用限定品として生産させた事実を推認させるものではあっても、請求人の主張するような、「被請求人が該商品を正規の販売ルートに流すものである」という事実は、何ら立証されていない。
したがって、商標法第2条第3項第2号の「商品に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示する行為」に該当するとの被請求人の主張は、これを認めることができない。
(6) 被請求人は、「使用説明書(7)」(乙第10号証)をもって、商標法第2条第3項第7号に規定する「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当すると主張している。
しかしながら、「封筒」が「取引書類」と言い得るか疑問である。「取引書類」とは、通常、「注文書、納品書、送り状、出荷案内書、物品領収書、カタログ等」をいう(特許庁編「工業所有権逐条解説」)。また、「会社の商号の略称や社標が商標として登録されていても、該商標を商品やサービスと関係なく、会社自体の宣伝のために、広告書類に表示したり名刺や封筒に表示している場合には、商標の使用があったとはいい得ない。したがって、不使用取消の審判請求に対する反証や更新登録の際の使用証明の際にも。このような証拠を提出しただけでは、商標を使用していたという証拠にはならない」(小野昌延編「注解商標法」)。
よって、当使用説明書をもって商標法第2条第3項第7号の規定による商標の使用があったものとは認められない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として乙第1ないし第19号証(枝番を含む。)(平成11年7月27日付け答弁書に添付の資料1ないし3及び登録商標の使用説明書(1)ないし(7)は、乙第1ないし第10号証として扱い、また、同12年6月15日付け答弁書に添付の乙第1ないし第9号証は、乙第11ないし第19号証として扱った。以下、同じ。)を提出している。
(1) 被請求人は、本件商標の指定商品「被服」に関して、審判請求の予告登録日である平成11年4月14日(資料2)前の3年以内に、日本国内で使用されているものであって、本件審判の請求は全く根拠のないものである。
(2) 先ず本件商標は、乙第4号証から明らかなように、平成8年6月26日付け、同年11月8日付け、平成9年6月30日付け、同年11月19日付け、平成10年6月29日付け、同年11月20日付け発行の業界新聞「センイ・ジヤアナル」の広告中に掲載されている。この広告には、本件商標「Selio」が使用される具体的な商品名は記載されていないが、これは掲載誌が被服関連の業者に向けた業界新聞である特殊性によるものである。すなわち業界新聞「センイ・ジヤアナル」の読者は殆どが被服関連業者であって、本件商標と商品「被服」との関係を特定するまでもないから、新ためて具体的な商品名を記載しなかったまでである。
したがって、前記一連の新聞「センイ・ジヤアナル」への広告掲載行為は、商品「被服」に関する広告に本件商標を付して頒布する行為に該当し、商標法第2条第3項第7号に規定する商標の使用に明らかに該当するものである。
(3) 本件商標は、乙第5ないし第8号証から明らかなように、ポロシャツ等の商品「被服」を収納する透明なビニール包装袋に鮮明に印刷された形で使用されている。
すなわち、乙第5ないし第8号証の写真は、本件商標の重要性に鑑み、毎年一度前記状態を写真に残しておくよう務めており、1996年(平成8年)5月15日、1997年(平成9年)3月18日、1998年(平成10年)6月5日、1999年(平成11年)3月12日に被請求人会社の営業次長である長谷川信行が撮影したものであって、それらの写真の現像年月日としては、裏側に「96.06.07」、「97.04.02」、「98.09.15」、と「99.03.25」とそれぞれプリントされていることから、ポロシャツ等の商品「被服」を収納する透明なビニール包装袋に、本件商標が鮮明に印刷されている。これは商標法第2条第3項第1号に規定する「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
また、ポロシャツ等の商品「被服」を収納する包装箱を、本件商標を印刷した乙第3号証の包装紙で包装してある。これも、商標法第2条第3項第1号に規定する「商品の包装に標章を付する行為」に該当することは明らかである。
ポロシャツ等の商品「被服」の首部に、本件商標を刺繍縫いした襟ネームが縫い付けてある。これは商標法第2条第3項第1号に規定する「商品に標章を付する行為」に該当する。
なお、請求人は、この証拠について、「当該商品がポロシャツであるとしても、これが商品であると認めることはできない。」と弁駁している。しかし、この点は全く事実に反している。しかしながら、被請求人が本件商標を付している商品は、現実に一般市場で流通に供されているものであり、商標法上の「商品」であることは疑いの余地がないものである。
(4) 乙第9号証は、商品の下げ札及び下げ札に対応する商品に関する請求明細書であって、乙第5ないし第8号証の写真中にも一部撮影されているが、該被服には、本件商標を印刷した下げ札(紙製タッグ)が取付けられる。この下げ札には、その裏面にSIC-452-B、97-2375等の品番が印刷されている。
すなわち請求明細書の発行元である山口衣料(株)は下請けメーカーであって、被請求人の製造に係る生地の供給を受けて被服に仕立て上げ、該被服に各対応の下げ札を付した状態で被請求人に納品するものである。そして被請求人は、この納品を受けた被服を問屋等のルートを介して販売するものである。例えば平成9年10月30日付け請求明細書は、本件商標の下げ札に印刷された品番SIC-452-B、97-2375、SIC-452-Aに係る商品「被服」を、その当時に被請求人に納品していたことを示している。また平成10年6月22日付け請求明細書は、前記下げ札に印刷の品番SE-34、313W-2705、SV-u54に係る商品「被服」を、更に平成10年11月11日付け請求明細書は、SEL-8,364W-3041,JSFW-2,VMC-2に係る商品「被服」を被請求人に納品していたことを示している。
これら各種品番の商品「被服」を山口衣料(株)から納品された被請求人は、該商品を正規の販売ルートに流すものであるから、この行為は商標法第2条第3項第2号に規定する「商品に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示する行為」に該当する。
(5) 乙第10号証は、本件商標を印刷した封筒であって、審判請求登録前の3年以内に取引きに使用されている事実がある。
すなわち、この封筒の消印は平成8年11月9日付けとなっている。また佐川急便(株)の取扱いに係る同じく本件商標を付した封筒には、その引受け日が平成11年1月13日となっていることより、前記封筒に本件商標を付する行為は、商標法第2条第3項第7号に規定する「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に明らかに該当する。
(6) 請求人は、甲第2号証の帝国データバンク企業情報および甲第3号証の全国繊維企業要覧の記載項目から、被請求人は商品「織物、生地」を取り扱う者ではあっても、商品「被服」を取り扱う者ではない、と断じている。しかし、これら帝国データバンクおよび全国繊維企業要覧が採用している情報は何れも古いものであって、被請求人の営業の実態から大きく遊離していて何等の根拠にもなし得ない。
すなわち実際の被請求人の営業内容は、ニット生地製造が6割、被服製造が4割程度になっているにも拘らず、甲第2ないし第3号証には、このような最も主要な情報が完全に欠落しているからである。その他にも、例えば取引銀行に関して「尾西信用金庫」が挙げてあるが、この信用金庫とは10年以上に亘って取引きを全く行なっていない。また仕入先として「増井」が挙げてあるが、この会社とは全く取引きを行なっていない。更に小杉産業や大沢商会等の如く、被請求人が長年に亘って大きな商いをしているところの記載が全くなされていない。このように有料で配布される企業情報や企業要覧に記載のデータは、一般に種々の点で正確さを欠いていることは通常的に知られている事実であるから、このような甲第2号証や甲第3号証の記載をもって、被請求人が商品「被服」を取り扱う者ではない、と断じることはそれ自体が大きな間違いである。
(7) 以上のとおり、被請求人が本件商標を指定商品「被服」に関して、審判請求登録前の3年以内に日本国内で継続的に使用しており、かつ現在も活発に使用しているから、請求人の主張は全て根拠のないものである。

4 当審の判断
(1) 被請求人の提出に係る乙第5ないし第9号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 乙第5ないし第8号証は、ポロシャツ等を撮影した写真と認められるところ、該シャツ類の襟中央部分の織りネーム及びその透明なビニール包装袋には、本件商標と社会通念上同一と認められるデザイン化された「Selio」の文字が付され、該ビニール包装袋内に入っているポロシャツ等には、下げ札が付されている。
また、それらの写真には、裏側に「96.06.07」、「97.04.02」、「98.09.15」、と「99.03.25」と、それぞれプリントされている。
(イ) 乙第9号証は、下げ札及び山口衣料株式会社が請求人に宛てた請求明細書の写しと認められるところ、平成9年10月30日付け請求明細書には、品番の欄にSIC-452-B、97-2375、SIC-452-A等と記載され、下げ札の表側には、本件商標と社会通念上同一と認められるデザイン化された「Selio」の文字が付され、その裏側には、「(株)セリオ」の文字及び「NO.」の欄には、前記品番に対応するSIC-452-B、97-2375、SIC-452-Aがそれぞれ印刷されている。
同様に、平成10年6月22日及び同年11月11日付け請求明細書には、品番の欄に記載のSE-34、313W-2705、SV-u54、及びSEL-8、364W-3041、JSFW-2、VMC-2に対応する文字が下げ札にそれぞれ印刷されている。
(2) 以上の事実を総合すると、山口衣料株式会社より被請求人に納品された商品の品番と同一の品番、及び本件商標と同一構成よりなる商標及び被請求人の名称が下げ札に印刷されており、該下げ札がポロシャツ等に付されていることが認められる。
そうすると、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人によって、取消請求に係る指定商品中の「ポロシャツ」について使用されているものということができる。
なお、請求人は、乙第5ないし第8号証における「ポロシャツ」は、宣伝用の贈答品として顧客に無償配布するものであって、一般市場で流通に供されることを目的として生産され取引されるものではないから、商標法上の「商品」ということはできない旨主張しているが、請求人は、その主張を立証する証拠を何ら提出していないし、被請求人の提出に係る前記証拠による認定は前記のとおりであって、上記「ポロシャツ」が商標法上の「商品」でないということはできないから、その主張は採用できない。
したがって、本件商標についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2000-10-10 
結審通知日 2000-10-20 
審決日 2000-11-01 
出願番号 商願平1-15762 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (117)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 英世沖 亘 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 寺光 幸子
小池 隆
登録日 1992-04-30 
登録番号 商標登録第2407083号(T2407083) 
商標の称呼 セリオ、シリオ 
代理人 田中 克郎 
代理人 山本 喜幾 
代理人 稲葉 良幸 

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