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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 042
管理番号 1059795 
審判番号 無効2001-35151 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-06 
確定日 2002-05-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第3363873号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3363873号の指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,植木の貸与」についての登録を無効とする。 本件審判の請求に係る指定役務中上記役務以外の残余の指定役務についての請求は、成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3363873号商標(以下「本件商標」という。)は、「セレモアホール」の片仮名文字と「やすらぎ」の平仮名文字を上下2段に書してなり、第42類「飲食物の提供,写真の撮影,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,植木の貸与,祭壇の貸与,展示施設の貸与,宴会場の施設の提供」を指定役務として、平成5年2月27日登録出願、同9年12月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3081086号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲した構成よりなり、第42類「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供,生花・花輪の貸与の取次ぎ,仕出し料理の取次ぎ,衣服の貸与の取次ぎ」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定に基づく特例の適用の主張を伴う商標登録出願(以下「特例出願」という。)として、平成4年9月16日登録出願、同7年10月31日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証及び参考資料(本件商標の登録出願日以降の雑誌、新聞記事)を提出した。
1.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、後記2.で述べるように、引用商標に類似するものである。
そして、引用商標は、請求人が本件商標の指定役務と同一又は類似する引用商標の指定役務に永年使用した結果、本件商標が登録出願される以前にすでに著名となっていたものであるから、その著名な商標に類似する本件商標を他人が登録することは、その役務についての出所の混同を生じさせ、その結果取引社会の秩序を混乱させる要因となるものである。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号の規定に該当するものである。なお、引用商標の著名性については、後記3.で詳述する。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、「セレモアホール」の文字と「やすらぎ」の文字を2段に横書きしてなるものであるが、上段の文字部分は片仮名文字、下段の文字部分は平仮名文字と異なることからそれぞれの文字部分が自他役務の識別標識となるものである。
そこで、独立して自他役務の識別標識となる「セレモアホール」の文字中の「ホール」の文字は「会館、会堂等、多くの人が集合し共同で使用できる広い空間を有する建築物の会場」を意味し、今日では「セレモニーホール」「コンサートホール」「サントリーホール」「ダンスホール」「NHKホール」などのように日常不断に日本語同様に使用されている言葉である。
そうであれば「ホール」の文字(語)はその指定役務の関係では、「婚礼、結婚披露宴のための会場、葬儀の執行の場所、展示施設場所、宴会場」というように役務の提供場所を表示する文字であり、自他役務を識別する文字(語)ということはできないから、自他役務の識別機能を有する「セレモア」の文字から「セレモア」の称呼を生じるものである。
(2)引用商標は、法人格を表示する「株式会社」の文字をゴシック体をもって小さく横書きし、これに続けて「セレモアつくば」の文字を一連に横書きしてなるものである。そして、「セレモアつくば」中の「セレモア」の文字は片仮名文字、「つくば」の文字は平仮名文字と構成が異なること、「つくば」の文字は地名である千葉県の「筑波」を表示する文字であること、また、「セレモア」の文字は、請求人が創作した格別の意味合いを有しない造語であることから、本件商標と同様に「セレモアツクバ」の一連の称呼のほかに「セレモア」「ツクバ」の称呼をも生じるのである。
したがって、本件商標と引用商標は「セレモア」の称呼を同一にする類似する商標である。
(3)被請求人の答弁について
ア.被請求人は、本件商標中の「セレモアホール」の文字について、「セレモア」は、「儀式上の、礼式上の、儀式、儀礼」などを意味する「ceremonial」(セレモニアル)の「省略形」であるから、識別力を有しない旨主張するが、「セレモア」は、請求人が創造した語である。請求人は、式典、儀式を意味する英語の「セレモニー」(ceremony)の語と、式典、儀式の厳粛さを強調するために「さらに」の意味を有する英語の「モア」(more)の語を結合して「セレモア」(ceremore)を考案したのである。それ故「セレモア」「ceremore」の綴り字は国語辞典はもちろんのこと英和辞典、仏和辞典、独和辞典等、外国語辞典にも載っていない語である。
何の意味合いを有しない「セレモア」は、「儀式上の、儀式」の意味を有する「セレモニアル」(ceremonial)の「省略形」、略称ではないことは明らかである。
イ.被請求人は、「セレモア」の文字を含む登録、非登録商標を挙げているが、被請求人の「セレモアホール」以外には「セレモアホール川西」のみが存在するに過ぎない。
また、その他被請求人が挙げた商標は、本件の場合とは事案を著しく異にするばかりではなく、指定役務において非類似であるから互いに非類似商標であることは当然のことである。
3.商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、請求人がその指定役務の属する業界において永年にわたって使用してきた結果、本件商標の登録出願日以前に著名になっていたものである。引用商標に類似する本件商標をその指定役務に使用するときは取引者、需要者をして、それが引用商標権者又は引用商標権者と何らかの関係を有する者の営業に係る役務であるものと誤認させ、役務の出所について混同を生じさせるおそれのあるものである。以下、引用商標の著名性について詳述する。
(1)新聞、雑誌、業界誌等に報道された事実
ア.「Newsweek」1991(平成3)年10月3日(甲第3号証)
イ.「読売新聞」1992(平成4)年2月26日(甲第4号証)
ウ.「読売新聞」1992(平成4)年3月4日(甲第5号証)
エ.「致知」1992(平成4)年9月号(甲第6号証)
オ.「SOGI」1992(平成4)年10月号(甲第7号証)
カ.「日経産業新聞」1993(平成5)年2月26日(甲第8号証)
上記新聞等の記事において、日本の社会の移り変わりを反映した葬儀の変遷を見きわめ、今日の葬儀のあり方を提案し、既成の葬儀の現状にとらわれない現代的なビジネスとしての葬儀を全国的なネットワーク化するなどユニークな営業活動を展開する請求人の事業が全国紙、週刊誌、業界誌等に盛んに報道され、そこでは、「株式会社セレモアつくば」の商標及び請求人の名称をもってなされたものであり、引用商標は、本件商標の登録出願以前にすでに著名となっていたのは明らかである。
なお、参考資料として、本件商標の登録出願以後の請求人に関する報道記事を提出する。
(2)請求人の事業の全国展開の事実
請求人は、今日の葬儀を既成概念を超え現代的なビジネスとして全国的に展開するために「セレモア全国ネットワーク」を形成し加盟社を募り、今日では北海道から沖縄県にいたるまで全国津々浦々に加盟社を広げているのである。甲第9号証は、請求人と全国の加盟社との契約を意味する「相互協力の覚書」である。
このような全国的な事業の展開は、それを提唱する主体が経営基盤において万全でありそれに対応できること、全国展開の経営能力とスタッフを備えていること、さらにユニークなセンスのある経営方針と実行力が全国的に著名であることが不可欠の条件となるのである。
(3)請求人が指定契約している団体
請求人は、だれもが避けて通ることのできない生命の終馬、葬儀を従来の不明瞭さからガラス張りの葬儀を目指し、積極的にあらゆる団体と契約を結んでいる。
その分野は中央、地方官庁共済組合、業種別団体、様々な業種の大手製造業会社、保険会社、労働組合に及び、その数は東京を中心に百数十社に及んでいるのである(甲第10、11号証)。
4.以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の上部の「セレモアホール」は、下記の例から明らかなとおり、冠婚葬祭業(特に葬祭業において)は、極めて普通に使用されている言葉である。すなわち、「セレモア」は、「儀式上の、礼式上の、儀式、儀礼」などを意味する「ceremonial」(セレモニアル)の省略形であり、この「セレモア」に「ホール」や「センター」という言葉を組み合わせた「セレモアホール」及び「セレモアセンター」は、「セレモニーホール」及び「セレモニーセンター」と同様、「儀式を行なう会館」として業界において一般的に使用される言葉である。
以下は、NTTタウンページに「セレモア」を含む名称として掲載されているものである。
「セレモア堀坂会館(福島県)、セレモアホールやすらぎ・豊栄セレモア(株)(新潟県)、(有)セレモア・スカイホール中嶋典礼(群馬県)、市川セレモア・セレモア市川センター・セレモア船橋センター・セレモア松戸センター・(有)セレモアむつみ・(有)セレモア八千代センター(千葉県)、十方舎セレモア城北・セレモア花調苑(株)(愛知県)、(株)セレモアみずき大阪本社・(株)セレモアみずき豊能営業所・(株)セレモアみずき枚方支店(大阪府)、セレモアホール川西・(株)セレモアみずき・(株)セレモアみずき/宝塚営業所・(株)セレモアみずき/伊丹営業所・(株)セレモアみずき/三田営業所(兵庫県)」
したがって、本件商標の一部である「セレモアホール」は、識別力なき言葉といえ、よって、本件商標の要部は「やすらぎ」にあるといえる。
因みに、「セレモア」が請求人が創造した語か否かは知らない。仮に「セレモア」が請求人が創造した語であったとしても、そのことをもって「セレモア」に識別力があるとはいえない。上記のとおり、前記NTTタウンページ掲載例によれば、「セレモア」は識別力ない言葉といえ、百歩譲っても、「セレモア」は現時点において識別力を喪失した言葉といえるものと考える。
(2)「セレモアつくば」に識別力があるという点について、被請求人は争うものではない。
しかし、「セレモア」に「ホール」や「センター」を組み合わせた「セレモアホール」や「セレモアセンター」は上記の例からも明らかなように識別力を欠くものといえる。
例えば、次に挙げた例は、識別力ある言葉(メモリアル)に、識別力なき言葉(ホール)を組み合わせた言葉(メモリアルホール)が、識別力なき一般的言葉である例である。(乙1の1及び2、乙2の1ないし9)
これらの例からも、本件商標の要部は「セレモアホール」にはなく、「やすらぎ」にあるといえる。
(3)上記被請求人の主張は、本件商標の後願である請求人の登録商標「セレモア」(商標登録第4277513号、乙第3号証)が、本件商標の存在を理由に拒絶されなかったという事実からも明らかといえる。すなわち、引用商標と本件商標とが非類似とされ、かつ、本件商標と上記「セレモア」商標とが非類似とされた実務の見解は尊重されるべきであり、被請求人の主張は、この実務の見解に合致し、さらに、上記NTTタウンページに掲載され、現実に使用されている実例を考慮するとき、不当とはいえない。
(4)以上から、本件商標と引用商標とは、その要部に共通性はなく、明らかに非類似といえる。
2.商標法第4条第1項第15号について
上記(1)で述べた理由により、本件商標と引用商標は非類似であり、両者には要部の共通性がないため出所混同はあり得ず、よって本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することはない。
なお、商標は使用すればある程度は有名となるものである。しかし、商標法第4条第1項第15号で保護される有名商標とは、極めて有名なものを指すものであって、甲号証程度では到底、引用商標が商標法第4条第1項第15号で保護されるべき「著名商標」とはいえないものと考える。この程度で同法の「著名商標」といえるのであれば、およそ使用している商標は全て「著名商標」となってしまうものと解する。
3.商標法第4条第1項第7号について
前記のとおり、本件商標と引用商標は非類似であり、両者に要部の共通性がない以上混同せず、よって、本件商標が公序良俗に反することはなく、商標法第4条第1項第7号に該当することはない。
4.以上から、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するという請求人の主張には理由がない。

第5 当審の判断
1.本件商標について
本件商標は、前記したとおり、「セレモアホール」の片仮名文字と「やすらぎ」の平仮名文字を上下2段に書してなるものであるところ、その構成中の「ホール」の文字部分は、指定役務との関係から、役務の提供場所である「会館、会堂、講堂」等を意味するものと理解され、自他役務の識別機能が極めて弱い部分であるといえるから、「セレモアホール」の文字部分にあっては、造語と認められる「セレモア」が要部であるということができる。
また、「セレモア」は、後記2.(2)で認定するように、請求人の主たる業務である「葬儀の執行」、及びこれに関連する役務を表示するものとして、その分野である程度知られているものといえるから、このことも併せて考慮すると、本件商標中の「セレモア」の文字部分は、これをみる者及びこれより生ずる称呼を聞く者の注意を強く惹くものとみるのが相当である。
したがって、その構成中の「セレモアホール」の文字部分においては、全体を称呼した場合の「セレモアホール」の称呼のほか、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
2.引用商標について
(1)構成態様
引用商標は、前記したとおり、「株式会社セレモアつくば」の文字を書してなるものであるところ、その構成中の「株式会社」は、法人の組織の種類を表すものであるから、自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。そして、該「株式会社」を除いた「セレモアつくば」の文字部分は、「セレモア」が特定の語義を有しない造語よりなるものと認められるのに対し、後半部分の「つくば」は、「茨城県筑波郡の旧地名。茨城県西南部、筑波山の南の市。」(広辞苑第5版)を意味する語として知られ、指定役務との関係からすると、役務の提供場所と理解される場合も少なくないものである。
してみると、引用商標は、「セレモア」の片仮名文字と「つくば」の平仮名文字とで構成されていることも相俟って、「セレモア」と「つくば」の2語を結合したものと容易に理解されるばかりでなく、自他役務の識別機能の点からみても「セレモア」と「つくば」の間には軽重の差があるというべきであって、「セレモア」の文字部分に印象づけられるものとみるのが相当である。
(2)使用状況
甲第3号証ないし甲第8号証及び参考資料によれば、請求人は、葬祭業を経営していること、1991年(平成3年)5月に「つくば祭典」から「セレモアつくば」に社名変更し、社名変更と前後して、民間救急サービス、介護用機器・用品の販売会社など4つの会社を設立し、「セレモアグループ」を形成していること、1991年(平成3年)4月にこの種業界では初めて、駅ビルに斎場案内等葬式に関する情報サービスを開始し、多様化する社会ニーズに合わせた事業展開を図っていること、このように従来の葬儀業と異なった特徴のある企業として、本件商標の登録出願日前より雑誌、新聞等に取り上げられたことなどが認められる。
また、本件商標の登録出願日後においても、請求人は、百貨店と共同して「葬儀式場相談コーナー」を百貨店内に設けた旨の新聞記事(1994年(平成6年)9月8日付け及び1995年(平成7年)4月4日付け日経流通新聞)、「個人の施行件数が三六〇〇と東京でトップ。同者の九四年度の売上高は六〇億円、・・・前近代的な業界に新風を吹き込んだイノベーターである。」旨の記事(「週刊ダイヤモンド」1995年11月25日号)、「『明確な費用、安心のブランド葬儀』をキャッチフレーズに新しいかたちの個人家庭葬儀『セレモア24』を開発」した旨の記事(1995年(平成7年)10月31日付け読売新聞)、「散骨の募集を開始」に関する記事(1995年(平成7年)1月13日付け読売新聞)などが掲載されていることが認められる。
上記事情からすると、請求人の名称の略称であり、かつ、本件商標を表す「セレモアつくば」は、本件商標の登録出願日前には、葬祭業界及びこれに関連する業界においてよく知られていたというべきであり、その知名度は、本件商標の登録査定の時点まで優に継続していたものと認められる。
また、上記のように、「セレモアつくば」の周知性に加え、請求人は、本件商標の登録出願日前には葬儀業を中心として、「セレモアグループ」を形成していたこと、本件商標の登録査定前に「セレモア24」なる個人家庭を対象にした葬儀を開発したことなどからすると、「セレモア」の表示もその業界においてある程度知られていたとみるのが相当である。
(3)引用商標は、前記(1)で認定した構成態様に加え、同(2)の認定事実からすると、これを「葬儀の執行」をはじめ、これに関連する役務と認められるその他の指定役務について使用した場合は、構成文字全体を称呼した場合の「セレモアツクバ」の称呼のほか、単に「セレモア」と称呼されて取り引きされる場合も決して少なくないものである。
3.本件商標と引用商標との比較
(1)称呼類似について、
本件商標は、前記したとおり、その構成中の「セレモア」の文字部分より、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用商標は、その構成中の「セレモア」の文字部分より、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「セレモア」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
(2)指定役務について
引用商標は、前記したとおり、その指定役務を「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供,生花・花輪の貸与の取次ぎ,仕出し料理の取次ぎ,衣服の貸与の取次ぎ」として、特例出願され、登録されたものである。
そして、上記指定役務中の「葬儀の執行」は、請求人の主たる業務であり、その他の指定役務は、「葬儀の執行」に関連する業務ということができる。
一方、本件商標は、「飲食物の提供,写真の撮影,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,植木の貸与,祭壇の貸与,展示施設の貸与,宴会場の施設の提供」を指定役務とするものであるところ、その指定役務中の「葬儀の執行」、「植木の貸与」、「飲食物の提供」は、それぞれ引用商標の指定役務中の「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供」、「生花・花輪の貸与の取次ぎ」、「仕出し料理の取次ぎ」と同一又は類似の役務と認められる。
(3)してみると、本件商標と引用商標とは、称呼上類似する商標であり、かつ、本件商標の指定役務中の「葬儀の執行,植木の貸与,飲食物の提供」は、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務と認められる。
4.被請求人に主張について
(1)被請求人は、「セレモア」の語は、「儀式上の、礼式上の、儀式、儀礼」などを意味する「ceremonial」(セレモニアル)の省略形であり、これに「ホール」などを組み合わせた「セレモアホール」等は、「セレモニーホール」及び「セレモニーセンター」と同様、「儀式を行なう会館」として業界において一般的に使用され、識別力がない旨主張する。
しかしながら、「セレモア」の語が「ceremonial」(セレモニアル)の省略形であるとの証拠はない。また、被請求人が挙げたNNTタウンページの使用例は、我が国において百数十社以上あるであろうと推認される葬儀社のうちの20社余りであり、その中には同一の営業者によるものも少なくないと考えられるし、その使用時期等についても不明である。
したがって、これらの使用例をもって、「セレモアホール」等の語が葬儀業界において普通に使用されていると断ずることはできない。
(2)被請求人は、「セレモア」商標の登録例(乙第3号証)を挙げ、本件商標の自他役務の識別機能は「やすらぎ」の文字部分にある旨主張する。
しかしながら、「セレモア」の語が自他役務の識別機能を有することは、前記したとおりである。また、過去の登録例が、本件商標と引用商標との類否の判断を左右するものではない。
5.商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と規定しているところ、その趣旨は、商標の構成それ自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳に反するような場合、あるいは、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標が、これに該当するものと解される。
してみると、前記構成よりなる本件商標は、上記のいずれにも該当しないものと認められるから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとする請求人の主張は理由がない。
6.商標法第4条第1項第15号について
甲第3号証ないし甲第8号証によれば、請求人の名称及び請求人の業務に係る葬儀業界及びこれに関連する役務は「セレモアつくば」の表示をもって使用されていることが認められる。
してみれば、前記2.(2)で認定したように、「セレモアつくば」の表示は、本件商標の登録出願日前には、葬儀業及びこれに関連する業界において知られていたということができるとしても、「セレモア」の表示のみが、取引者、需要者の間に広く認識されていたとまでは認めることはできない。
確かに、請求人は、本件商標の登録出願日前に「セレモアグループ」を形成していたことが認められるとしても、その一事のみをもってしては、「セレモア」なる表示が、本件商標の登録査定前に、請求人の取り扱う業務を表示するものとして、著名性を獲得していたとはいうことはできない。
してみると、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとする請求人の主張は理由がない。
7.むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,植木の貸与」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、本件審判の請求に係る指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,植木の貸与」以外の指定役務については、引用商標の指定役務とは、役務の目的、質等を異にする非類似の役務と認められるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。また、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15に違反して登録されたものではないから、上記に関する請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲





引用商標


審理終結日 2002-02-22 
結審通知日 2002-02-27 
審決日 2002-03-26 
出願番号 商願平5-19118 
審決分類 T 1 11・ 262- ZC (042)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 茂木 静代 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 上村 勉
野本 登美男
登録日 1997-12-05 
登録番号 商標登録第3363873号(T3363873) 
商標の称呼 セレモアホールヤスラギ、セレモアホール、セレモア、ヤスラギ 
代理人 吉井 雅栄 
代理人 谷 正之 
代理人 吉井 剛 
代理人 舩坂 俊昭 

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