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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
管理番号 1055378 
審判番号 審判1999-35441 
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-08-23 
確定日 2002-02-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2295767号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2295767号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2295767号商標(以下「本件商標」という。)は、「Ole Lynggaard」の文字を横書きにしてなり、昭和63年7月25日に登録出願され、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成3年1月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第5号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)(イ)本件商標は、請求人が1963年(昭和38年)以降身飾品に使用している商標と同一であり、被請求人が、請求人会社の設立者であり、また身飾品のデザイナーであるOle Lynggaard 氏の個人名であることを知りながら、自己のみの利益のため不正の目的をもって登録したものであるから、その行為は国際信義に悖る行為である。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(ロ)前記条項に該当するとの理由は、被請求人の答弁している「本件商標がOle Lynggaard 氏の個人名に相当する」という単純な理由によるものではない。前記(イ)に述べたほか、請求人の商標は、その業務に係る身飾品の商標としてヨーロッパその他の国で、本件商標の出願前に需要者間に周知されていたし、被請求人は、1973年にコペンハーゲンに在る請求人の店を訪れ、その身飾品を日本で販売する目的で購入して以降、略々年に1回の割合で請求人を訪れ、身飾品を同様の目的で購入していた。被請求人は、請求人創設者デザイナーの個人名であり、請求人の使用する商標そのものであることを知りながら、敢えて自己の有利のために出願したものである。
したがって、被請求人が本件商標を出願した行為は、請求人の創設者でありデザイナーの個人名よりなる商標を盗用したものというべく、明らかに国際信義に悖る行為である。
本条項に該当するか否かについて、審査基準は「・・又は一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当するものとする」としている。また、平成8年商標法の一部改正において、第4条に第19号が加えられた。この規定の要件の一つである「不正の目的」については、工業所有権法逐条解説において「不正の目的とは、図利目的・加害目的をはじめとして取引上の信義則に反する目的のことをいう」等と解説され、従来解釈・運用に頼ってきた第7号における国際信義に違反する商標をより明確にしたものであるとしている。本件商標は平成3年に登録されたものであるから、前記法改正前の第7号が適用される。
(2)(イ)請求人は、1963年以来商標Ole Lynggaardを用いてその製造した身飾品をデンマーク、ノルウェー、スウェーデンで販売しており、また、日本には1973年(昭和48年)以降輸出していて、商標Ole Lynggaardは、本件商標の出願当時(昭和63年)には、ヨーロッパ諸国及び日本を含むその他の国で請求人の業務に係る身飾品たることを示す商標として需要者間に周知されるに至っていた。
本件商標の指定商品は、身飾品を含み、また身飾品以外の装身具、かばん類、ボタン類、宝玉及びその他の模造品等は身飾品と互いに関連の深い商品であるから、本件商標がこれらの商品に使用されるときは、それらの商品が、請求人の業務に係る商品であるか又は請求人のライセンシーその他請求人と何らかの関係を有する者による商品であるかの如き、商品の出所につき混同を生ずるおそれがある。したがって、本件商標は同法第4条第1項第15号に該当する。なお、本件商標の登録は不正の目的でなされたものというべく、同法第47条で定める除斥期間の規定の適用は除外される。
(ロ)答弁書で被請求人は、請求人の提出した証拠では周知性の立証はされないというが、周知性を否認するに足りる理由を示していない。
(3)(イ)本件商標は、請求人が1963年以来身飾品に使用してきて、需要者間で名声を得ている商標と同一であるから、これがその指定商品に使用されるときは、それらの商品が、請求人の身飾品と同等の品質を有する商品であるかの如く、商品の品質について需要者間に誤認させ、欺瞞するおそれがある。したがって、本件商標は同法第4条第1項第16号に該当する。
(ロ)答弁書で被請求人は、請求人の身飾品がどの程度にすぐれた品質のものであるかが不明であるから、本件商標に係る商品との間に品質誤認を生ずるとは思えないという。しかしながら、前記条項の適用にあたって、商品の品質の劣悪には関係ないものとされている(特許庁編 工業所有権逐条解説)。

3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べた。
(1)請求人は、本件商標がOle Lynggaard 氏の個人名に相当するため、これを登録することは国際信義に悖る、と述べている。しかしながら、この程度の理由では、本件商標登録が商標法第4条第1項第7号に規定する「公序良俗」に反することには到底ならない。しかも、本件商標がその出願前に「外国において周知である」ことを明確に示す証拠は、未だ提出されていないので、請求人主張の「不正の目的」にも該当しない。
(2)(イ)請求人は、本件商標に相当する商標が1963年以降に外国で使用され、また1973年以降に日本への輸出品に使用されており、外国及び日本で需要者間に周知となっている旨主張している。しかしながら、こうした主張は、提出された証拠によっても裏付けられるものではなく、到底認めることはできない。
(ロ)弁駁書で請求人は、「周知性」についての被請求人の否認の理由に疑義を主張しているが、そもそも「周知性」の裏付けは請求人においてなすべきことである。
(3)(イ)請求人は、本件商標に相当する商標が1963年以来身飾品に使用してきて、需要者間で名声を得ているので、本件商標が指定商品に使用されるときは、それらの商品が、請求人の身飾品と同等の品質を有する商品であるかの如き、商品の品質について需要者間に誤認させ欺瞞するおそれがあると主張している。しかしながら、請求人の身飾品が、どの程度に優れたものであるかが不明であるため、本件商標に係る商品が、請求人の商品に対し商標法第4条第1項第16号で規定する品質誤認を生じるものとは思えない。
なお、当該主張は、商品の出所混同生じることを示しているように思われるが、このような私益的な事由は公益的事由たる品質誤認とは無縁のものである。
(ロ)弁駁書でも(イ)同様の主張をしているが、前記条項で規定する「品質誤認」を生じるには、それ相応の状況、即ち需要者の間に広く知れ渡っている状況が存在しなければならない。こうした「周知性」を示す明確な証拠が存在しない以上、請求人の主張は至当でない。

4 当審の判断
請求人は、本件商標登録が国際信義に反し公序良俗に違反するものであって、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張するので、この点について検討する。
本件商標は、「Ole Lynggaard」の欧文字よりなるものであり、本件商標が商標登録出願されたのは、昭和63年(1988年)7月25日である。そして、請求人提出の甲第2号証の4乃至同6によれば、本件商標の登録出願前である1984年から1986年に至る間に、商品パンフレットが作成されたこと(その後も継続して作成されている。)、また、それには各種身飾品が掲載されるとともに「Ole Lynggaard」の表示がなされていることが認められる。
また、本件商標の構成文字は、Ole Lynggaard というデンマーク国の身飾品デザイナー(以下、「本件デザイナー」という。)の氏名と同一の文字綴りであり、本件デザイナーは、請求人会社を設立し、同国コペンハーゲンを中心に1963年以降デザイナー活動を行っていることが甲第2号証の1、同2及び同16によって認めることができる。そして、前記甲各号証によれば、本件商標の登録出願時において、少なくともデンマークを中心として、標章「Ole Lynggaard」が身飾品について使用されており、その需要者に相当程度知られるに至っていたものと推認し得るものである。
しかして、本件商標の構成文字は、デンマーク在住の本件デザイナーの氏名、及び同氏並びにその設立に係る請求人会社の使用する商標と同一の文字綴りであると認められるところ、本件商標を構成する欧文字は、我が国において普通に採択し得る程に一般的な文字(語)とは認められないものであり、正確に発音することが容易ではない部類の欧文字綴りであるから、本件商標が本件デザイナーの氏名や商標と無関係に採択されてたまたま偶然に文字綴りが一致したものであるとは到底言い難いものである。
また、甲第3号証によれば、被請求人会社は、「貴金属、貴石並びに装身具の輸入・販売」等を目的として昭和55年12月5日に設立されたこと、その役員に関する事項の欄に代表取締役として「志賀真理子」、同取締役として「志賀慶子」の記載があることが認められる。さらに、甲第4号証によれば、件外「株式会社オーラ・リンゴー・デザイン・ジャパン」は、「貴石・貴金属及びその製品の販売及び輸出入」を目的として昭和63年11月30日に設立され、その役員に関する事項の欄に代表取締役として「志賀真理子」、同取締役として「志賀慶子」の記載のあることが認められ、両社の代表取締役の住所は全く同じであるから、同一人物と認められる。そして、甲第2号証の3によれば、1989年1月7日及び同月16日に前記件外会社の「志賀真理子」と請求人との間で業務(契約締結)に関してFAXの交信があったことが認められ、また、甲第2号証の1には、本件デザイナーによって、同氏と志賀真理子氏及びその母親である志賀慶子氏が1973年に面識をもったこと、それ以降年1回志賀母子がコペンハーゲンに本件デザイナーを訪問した旨の陳述がなされているのが認められる。
してみれば、本件商標の登録出願の前後の時期に、被請求人会社の代表取締役が、請求人あるいはその創設者(デザイナー)と業務に関して接触をもったことが窺えるところであり、被請求人は、少なくとも前記代表取締役を通じて、デザイナーの氏名及びその商標の存在を知っていたものと推認される。
以上によれば、商品の国際取引が盛んになり国際的な商業情報収集が一般的に行われる今日にあって、被請求人は、身飾品等を取り扱う当業者として、本件商標の登録出願前に、前記商品(身飾品等)に請求人会社が使用する商標、あるいはその創設者(デザイナー)の氏名を知り得る立場にあったというべきであり、その商標等の存在を知りながら、その指定商品について請求人が我が国において登録出願していないことを奇貨として、請求人に無断で本件商標を登録出願し、その登録を受けたものといわざるを得ないものである。
かかる被請求人の行為に基づいて登録された本件商標は、国際商業道徳に反するものというべきであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものといわなければならない。
したがって、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-12-20 
結審通知日 2001-12-26 
審決日 2002-01-11 
出願番号 商願昭63-84636 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (121)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩浅 三彦小松 裕 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 小川 敏
野上 サトル
登録日 1991-01-31 
登録番号 商標登録第2295767号(T2295767) 
商標の称呼 オルリンガード、オルリングガード 
代理人 小林 久夫 
代理人 佐々木 宗治 
代理人 木村 三朗 
代理人 大村 昇 
代理人 逢坂 宏 
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