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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 015 審判 全部無効 商3条1項1号 普通名称 無効としない 015 |
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管理番号 | 1053772 |
審判番号 | 審判1999-35518 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-09-24 |
確定日 | 2002-01-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4271277号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件商標登録第4271277号に係る商標(以下「本件商標」という。)は、「VIBRAMUTE」の欧文字を横書きしてなり、平成8年12月3日登録出願、第15類「楽器,演奏補助品,音さ,調律機」を指定商品として、同11年5月14日に登録されたものである。 第2 請求人の主張の要点 1 請求の趣旨 「商標登録第4271277号の登録は、無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、」旨の審決 2 請求の理由 (1)請求人の利害関係について (ア)請求人は、1968年(昭和43年)から現在に至るまで、請求人が製造販売するエレキギターに取り付けられていた「ミュート」すなわち「弱音器」の部品名として、標章「VIBRAMUTE」及び「Vibramute Unit」を使用している(甲第1号証)。 甲第1号証は、請求人が現在使用しているパンフレットであり、このパンフレットが1997年(平成9年)に作成、配布されたことを示している。 (イ)被請求人は、雑誌「Player」1999年(平成11年)10月号に、『VIBRAMUTE MOSELEYは、フィルモア楽器代表「遊佐典之」の専有する登録商標(トレードマーク)であり、許可なく使用することは出来ません。無断で使用している小売店、業者には厳重に警告致します。』との警告文を掲載した(甲第2号証)。 (ウ)請求人は、標章「VIBRAMUTE」の使用につき、被請求人からこのような警告を受けたのであるから、本件商標の登録を無効とする審判請求の利害関係人である。 (2)本件商標について (ア)本件商標「VIBRAMUTE」は、「ビブラミュート」「ヴィブラミューート」「ヴァブラミュート」と称呼され、英語の「vibrato」と「mute」との組み合わせからなるものである。 「vibrato」は音楽用語で、平易な英語(甲第5号証)であって、我が国の音楽教育の普及度から普通の中学生でも「ビブラート」といえば「振動音」「音を震わせること」の意味であることを理解している。ギターの奏法では、ピッキング(指やピックを使って弦をつまびくこと)後に押さえた弦を押し上げたり、押し下げたりして音程を変える奏法を繰り返してつける」ビブラートとトレモロ・アームなどを使ったビブラートがある。 他方、「mute」も、普通の中学生程度でも「ミュート」といえば「弱音器」の意味であることを理解している(甲第6号証)。 本件商標「VIBRAMUTE」は、「音を振動させる弱音器」「振動弱音器」という意味である。即ち、本件商標は、これら特徴を有する「弱音器」を指称し、このような「弱音器」の普通名称である。 (イ)被請求人は、ギターの宣伝広告に使用しているパンフレットにおいて「Vibramute」と記載し、ギターの一部品の普通名称として、ギターに取り付けられた「弱音器」の普通名称として使用している(甲第7号証)。 被請求人は、昭和62年1月30日発行の「THE楽器」に掲載の宣伝広告の説明中において「ヴァイブラ・ミュート」と記載して、ギターの一部品である「弱音器」の普通名称として使用している(甲第8号証)。 雑誌「Player」1998年(平成10年)2月号、同年4月号、同年6月号に、それぞれ掲載されたワルツ堂の宣伝広告に「ヴィブラミュート フルセット」として「ヴィブラミュート」は、ギターの一部品である「弱音器」の普通名称として使用されている(甲第9号証の1ないし3)。 (ウ)請求人は、1992年(平成4年)11月24日 意匠に係る物品 ビブラミュート とする意匠出願をし、1993年(平成5年)9月24日登録査定、1994年(平成6年)1月28日意匠権設定登録を得た。即ち、平成5年9月24日の登録査定の時点で、特許庁は、既に「ビブラミュート」は、エレキギターの一部品である「弱音器」の普通名称として認定されていた事実がある(甲第10号証)。 (エ)請求人とも被請求人とも無関係に営業をしている第三者である申立外の有限会社サウンド トラベルが1997年(平成9年)に、その顧客に配布した価格表には、「VIBRAMUTE ¥30,000」と記載され、「VIBRAMUTE」は、エレキギターの一部品名(取引の対象となる商品名)として使用されている事実がある(甲第11号証)。 (3)結語 本件商標は、その指定商品中「弱音器」に使用するときは、商標法第3条第1項第1号に該当し、「弱音器」以外の指定商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものであるから、同法第4条第1項第16号に該当し、同法第46条により、その登録を無効とすべきものである。 3 証拠方法 請求人は、審判請求書及び弁駁書に記載のとおり甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。 第3 被請求人の答弁の要点 1 答弁の趣旨 結論掲記の審決 2 答弁の理由 (1)請求人の利害関係について 請求人は、昭和43年から現在に至るまで、請求人が製造販売するエレキギターに取り付けられていた弱音器の部品名として、標章「VIBRAMUTE」及び「Vibramute Unit」を使用しているとし、甲第1号証を提出しているが、このパンフレットが1997年(平成9年)に作成、配布されたことを意味するならば、その事実は認め、本件審判請求について請求人が利害関係があることは認める。 (2)本件商標について (ア)商標「VIBRAMUTE」は、本来、モズライト(MOSRITE)ギターの生みの親のセミー・モズレー氏が造語命名した商標であり、商標登録されていた(乙第1号証)。 (イ)甲第8号証に係る雑誌は1987年に発行、被請求人はすでにその当時から標章「VIBRAMUTE」を使用していた。当時の被請求人の使用は、セミー・モズレー氏が製造したエレキギターに付されていたもので、それを輸入し自店で販売していた。このギターに付されている商標「VIBRAMUTE」をパンフレットや広告に明示した。 (ウ)標章「VIBRAMUTE」は、前記のとおりセミー・モズレー氏がモズライトギターに命名した造語であったが、同氏が死去、その関係者による会社が倒産、その後現在に至るまで、セミー・モズレー氏ゆかりのモズライトギターとともに使用されていないことから、被請求人において、この商標を採択、現在、米国カリフォルニア州において製造しているモズライトギターにこの商標を使用して我が国に輸入し販売している。 そうすると、請求人は、前記意匠の出願及び登録時に、他人の登録商標を物品の普通名称として使用していたことになるから、審査自体が意匠法第7条の規定に違反していた(乙第3号証)。 したがって、本件商標を普通名称とする請求人の主張は失当である。 (エ)サウンドトラベル社は、被請求人にとって第三者ではなく、被請求人の製品を取扱っている楽器店(小売店)であり、価格表は被請求人が同店に配布したものである(乙第2号証)。被請求人は、「VIBRAMUTE」を普通名称として使用しているつもりはない。 (3)むすび 請求人提出の証拠からは、本件商標が普通名称であり、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とする客観的な確認を得ることはできない。 以上、商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第16号の規定違反を理由とした請求人の主張は理由がない。 3 証拠方法 被請求人は、答弁書に記載のとおり乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 第4 当審の判断 1 請求人の利害関係について 請求人が本件審判請求をする利益があることについては、両当事者間に争いはない。 2 無効事由1(商標法第3条第1項第1号) (1)本件商標は、「VIBRAMUTE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、その構成中の前半の「VIBRA」の文字は、特定の語義を有する語はないが、本件指定商品である楽器等の商品との関係では、音楽用語として「VIBRATO」の語があり、振動、振動音、ビブラート(弦楽器の指板上に弦を押さえる時手を揺すりながら出す振動音)を意味する語であること、後半の「MUTE」の文字は、「弱音器」を意味する語であること、「VIBRAMUTE」全体の文字については、特定の意味を有する語として辞書には掲載されていないことが認められる(甲第5号証、同第6号証)。 (2)当事者の主張の趣旨及び甲第7号証、同第8号証、同第9号証、同第11号証、乙第2号証、同第4号証によれば、次の事実が認められる。 (ア)「VIBRAMUTE」は、モズライト(MOSRITE)ギターの生みの親であるアメリカ人セミー・モズレーが造語命名した商標であり、我が国において、同人を商標登録出願人として出願、商標登録第2025895号として登録されていたものである(昭和60年12月20日登録出願 第24類「ギター、その他の楽器、その他本類に属する商品」昭和63年2月22日設定登録 平成10年2月22日存続期間満了により商標権消滅)。 (イ)セミー・モズレーは、それまでのカスタムギターに搭載されていたビグスビー社が開発したトレモロアームシステム(トレモロとは震音の意味であり、これを発生させるためのアームがトレモロアーム)よりも狂いのないトレモロアームシステムのユニットを完成させ、モズライトギターに採用した。上記商標「VIBRAMUTE」は、このトレモロアームシステムのユニットに付されていたものである。 (ウ)その後、平成4年(1992年)8月7日セミー・モズレーが死亡、同人が代表者であったユニファイド・サウンド・アソシエーション・インコーポレーテッドが倒産したことを知った被請求人は、上記商標権は、存続期間の更新がされることはないと考え、本件商標を登録出願し、その登録を得た。 そして、被請求人は、ギターに関して「VIBRAMUTE」「Vibramute」「ヴァイブラミュート」の文字を商品パンフレット、雑誌等において宣伝広告に用いている。 (エ)本件商標と関連する文字として、件外のワルツ堂がギターの部品について「ヴィブラミュートフルセット」の語を雑誌に掲載している。 被請求人は、ワルツ堂に本件商標の商標権に基づき、「VIBRAMUTE」の商標を付したギターの無断販売を中止することを請求する平成11年9月21日付け警告書を発した。 (3)以上の認定事実よりすると、本件商標「VIBRAMUTE」は、全体として特定の語義を生ずる商品の普通名称であるものとする事実はなく、前示のとおりセミー・モズレーがトレモロアームシステムのユニットについて造語命名した創造語であって、楽器を取り扱う取引者、楽器の需要者において、セミー・モズレーのトレモロアームシステムのユニットに付された商標「VIBRAMUTE」が広く知られた結果、セミー・モズレーの取扱いに係るトレモロアームシステムのユニットを指称するものとして認識されるに至っていたとみるのが相当である。 そして、セミー・モズレーが「VIBRAMUTE」商標を採択する意図が、請求人主張のとおり「音を振動させる弱音器」であったとしても、それは、かかる意味合いを暗示させるに止まる創造語であって、「VIBRAMUTE」がトレモロアームシステムのユニットに使用された結果、「音を振動させる弱音器」「振動弱音器」という商品を意味する語として商標が稀釈化し、商品の普通名称であるとする事実を認めることはできない。 (4)請求人は、被請求人が昭和62年1月30日発行の「THE楽器」に掲載の宣伝広告の説明中において「ヴァイブラ・ミュート」と記載し、あるいは、ギターの宣伝広告に使用しているパンフレットにおいて「Vibramute」と記載し、ギターの一部品の普通名称として、ギターに取り付けられた「弱音器」の普通名称として使用していると主張している。 しかしながら、本件商標が、被請求人の上記記載により直ちに商品の普通名称となるものではなく、この記載により本件商標が稀釈化し、商品の普通名称となったとする事実は認めることはできない。 (5)請求人は、第三者であるワルツ堂が雑誌「Player」1998年(平成10年)2月号、同年4月号、同年6月号に、それぞれ掲載された同人の宣伝広告に「ヴィブラミュート フルセット」として「ヴィブラミュート」は、ギターの一部品である「弱音器」の普通名称として使用されていると主張する。 しかしながら、前示認定のとおり被請求人は、ワルツ堂に本件商標の商標権に基づき、「VIBRAMUTE」の商標を付したギターの無断販売を中止することを請求する平成11年9月21日付け警告書を発しているところであるから、ワルツ堂が宣伝広告に「ヴィブラミュート フルセット」として「ヴィブラミュート」は、ギターの一部品である「弱音器」の普通名称として使用しているとしても、この事実をもって、「VIBRAMUTE」が楽器を取り扱う取引者、楽器の需要者の間において「弱音器」の普通名称と認識されているとみることはできない。 (6)請求人は、意匠に係る物品「ビブラミュート」とする意匠出願をし、意匠権設定登録を得た、即ち、登録査定の時点で、特許庁は、既に「ビブラミュート」は、エレキギターの一部品である「弱音器」の普通名称として認定されていた旨主張する。 しかしながら、当該商標が商標法第3条第1項第1号にいう「商品の普通名称」であるか否かについては、取引者、需要者を主体にして認定判断すべきことであって、当該商標と同趣旨の表示が意匠の物品名として掲載されたからといって直ちにその商標が「商品の普通名称」となるわけではないから、請求人の主張は採用できない。 3 無効事由2(商標法第4条第1項第16号) 本件商標「VIBRAMUTE」は、前記3で認定判断したとおり「弱音器」の普通名称ということはできないから、本件商標をその指定商品中「弱音器」に使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある商標ではない。 4 結語 以上のとおりであり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項第1号に該当しないから、その商標登録を無効とすべきものではない。 よって、本件審判請求については、成り立たないものととし、審判費用の負担について商標法第56条第1項、特許法第169条第2項、民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-02-23 |
結審通知日 | 2001-03-06 |
審決日 | 2001-03-21 |
出願番号 | 商願平8-135627 |
審決分類 |
T
1
11・
272-
Y
(015)
T 1 11・ 11- Y (015) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳原 雪身、楠元 彩子 |
特許庁審判長 |
廣田 米男 |
特許庁審判官 |
佐藤 敏樹 山田 忠司 |
登録日 | 1999-05-14 |
登録番号 | 商標登録第4271277号(T4271277) |
商標の称呼 | ビブラミュート |
代理人 | 市東 譲吉 |
代理人 | 牛木 理一 |