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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 042
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 042
管理番号 1051891 
審判番号 審判1999-35701 
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-29 
確定日 2001-12-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4114027号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4114027号商標(以下、「本件商標」という。)は、「マルス」の文字を横書きしてなり、平成4年9月25日に登録出願、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機等を用いて行う情報処理,電子計算機システムに関する助言,宿泊施設の提供に関する情報の提供」を指定役務として、同10年2月13日に設定登録されたものである。

2.請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3319554号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成4年9月25日に登録出願、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)に関するコンサルティング,電子計算機のシステムの導入及び開発に関する診断・指導・又は助言,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,自動販売機・自動釣銭機構又は貨幣若しくはカードの制御機構の製造に関する技術コンサルティング」を指定役務として、同9年6月6日に設定登録されたものである。

3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第22号証(枝番号含む。)を提出している。
(1)請求人会社「Mars Incorporated.」は一般に「Mars」と略称されることが多く、国際的に有名な企業であり、その傘下には色々な子会社を有し、いわゆる「MARS GROUP」としても国際的によく知られている。「Mars Electronics」はそのグループ企業の一つで、エレクトロニクス事業に関して「MARS GROUP」の一事業部門として名声を獲得している。この著名な商号であり、ハウスマークである「Mars」と本件商標「マルス」は類似する。
したがって、本件商標がその指定役務に使用されたときは、「マルス」と「Mars」とが相紛らわしいので、業界の取引者・需要者は、「Mars」の提供するサービスであると出所を混同するおそれがきわめて高い。
(2)請求人は、米国最大手の菓子メーカーである(甲第1号証)。
商標「MARS」は、世界的企業である請求人のハウスマークであり、請求人の製造するチョコレートバーの商標として世界的に著名な商標である(甲第2号証及び甲第3号証)。
また、商標「MARS ELECTRONICS」は、世界の各国で出願、登録され、紙幣収受機、データターミナル,硬貨選別機,自動入改札機構等、エレクトロニクス関連商品に付されて販売されている(甲第7号証)。
請求人のこれらの製品は業界新聞「ベンディングジャーナル」に掲載されているように(甲第9号証)、ビッグサイトで開催された1998年度自販機フェアにも出展している。
このように、請求人は、スナック菓子のみならず、ベンディングマシーン、エレクトロニクス事業において世界のリーダー的存在となっている(甲第10号証)。
(3)本件商標と引用商標の類否について
引用商標は、「MARS ELECTRONICS」の文字を大きく「international」の文字を小さく二段に併記した構成よりなり、構成中の「MARS ELECTRONICS」と「international」の文字は異なった書体で書されているものであるから、「MARS ELECTRONICS」の部分が要部となるものである。そして、「ELECTRONICS」の文字部分は役務の内容、提供分野等を容易に看取させるものであるから、指定役務との関係で識別力に乏しい語である。
請求人の商標「MARS ELECTRONICS」は「MARS」グループの「ELECTRONICS」部門を表わすものである。
そうした場合、需要者は、冠される企業グループの企業名あるいはその略称に着目する。
そして、「MARS」は、世界的企業である請求人の著名な商標であるから、外観態様、識別力の強弱、需要者の印象度といった点から、引用商標から「MARS」の部分が要部として抽出されるのはきわめて自然である。
そこで、引用商標の要部「MARS」と本件商標「マルス」を対比した場合、まず、称呼はそれぞれ「マース」と「マルス」になるが、語頭音の「マ」は強く発音され、差異音である中間音である「一」と「ル」は語頭音に少し吸収された形で弱く聴取されるので、全体として称呼した場合、両者は聴別しにくい。
また、「MARS」、「マルス」は、それぞれ「火星」の意を有する英語とその片仮名表記であり、両者は観念が同一といえる(甲第15号証)。
そうすると、本件商標と引用商標は称呼・観念において類似する。
さらに、本件商標と引用商標の指定役務は同一又は類似の関係にある。
(4)本件商標は、「MARS」と「マース」の文字を二段に併記してなり、第11類「電気機械器具、電子応用機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第2537557号商標(甲第16号証)及び「MARS」の文字を横書きしてなり、指定商品については、第7類「化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具」及び第9類「自動販売機,遊園地用機械器具」に書換登録された登録第1442902号商標(甲第17号証)との間で出所の混同を生ずるおそれがある。
請求人は、スナック菓子、食品、ペット・ケア食品、またエレクトロニクス、および飲料自動販売機といった幅広い事業において世界のリーダー的存在である。
請求人は、世界30ヶ国以上に50を超える事業体を有し、世界各地80ヶ所以上に及ぶ拠点があり、その売り上げは年間90億ドルを超える。
請求人グループのハウスマークである「MARS」は、これらのあらゆる分野の商品、役務について世界中で登録、使用され著名性を獲得している。
「MARS ELECTRONICS」という「MARS」を要部とする形で、商標「MARS」がエレクトロニクス関連システムのハード及びソフトに継続的に使用されている。請求人の前記各登録商標は、これら関連の需要者・取引者にも、広く一般に知られている。
そして、本件商標の指定役務の提供と各登録商標の指定商品とは、エレクトロニクス関連商品の製造・販売は同一事業者によって行われるのが一般的で、用途、需要者の範囲が一致する等、両役務・商品は共通の要素を持つ密接な関係にある。
したがって、世界的な著名商標である「MARS」に類似する本件商標が、その指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守等」に使用された場合には、需要者は請求人あるいは請求人と何等かの関係がある者の提供する役務であるかのごとく誤認し、役務の出所について混同するおそれがきわめて高い。
よって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反したものであり、同法第46条の規定によって無効とされるべきである。
(5)答弁に対する弁駁
被請求人は請求人の提出証拠の個々について指摘し、これらの証拠は請求人の商標「MARS」が「電気機械器具、電子応用機械器具、自動販売機」及び本件の指定役務の分野で周知であることを証明するものとして十分なものではないとする。
しかし、これらの証拠の証明力は総合的に判断するものである。
例えば、「会社案内」は請求人が世界的企業である旨、マースエレクトロニクスインターナショナル(以下、「MEI」という。)がマースグループの一員であり関連商品役務の分野で世界的な事業展開を図っていること、「商品カタログ」は、請求人の傘下企業MEIが多種の関連商品を製造・販売し、これらの商品には「MARS」を要部とする商標が付されている事実、「関連分野での特許の取得」は当該分野で最先端の技術を開発し、トップメーカーの位置を維持し、発展し、また、該分野の商品はいわゆるソフトウエア関連商品なので、必然的に関連役務の業務も行っている事実を示すものである。各種のフェアは一般に最新の技術、新システムや近未来への取り組みを紹介するものである。「MEIの自販機フェアへの出展」の事実は、当該分野の業界においてMEIが知られているメーカーであること、そして、出展製品が世界各国の紙幣に対応可能な紙幣識別機であることはMEIが最先端の技術で業界をリードしていることを示すものといっていい。
また、被請求人は、本件商標は周知である旨を主張している。
しかし、その証拠資料の文献は、被請求人の関連団体の発行によるものや、極めて限定された読者向けのもの等で、その関連商品・役務分野の者でも通常は目にしたりしないものである。その内容は「MARS」という名称のネットワークシステムが存在した事実を示すものにすぎない。
そして、ここでの「マルス」は特定のシステムの名称であり、商標として使用されているものでもない。

3.被請求人の主張
被請求人は結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第12号証及び参考資料1〜4を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標は、互いに非類似である。すなわち、引用商標は、「MARS ELECTRONICS」と「international」の文字を二段併記した構成からなるが、「MARS ELECTRONICS」は特に冗長でなく、分離すべき特別の理由もないことから、一体として認識され、引用商標からは、「マースエレクトニックス」又は「インターナショナル」という称呼のみが生じ、「マルス」という称呼が生じる本件商標とは非類似である。
請求人は、その略称である「MARS」という商標が周知著名であるので、引用商標からも、「マース」という称呼が生じると主張しているが、「MARS」という商標は、本件商標の指定役務の分野においては、周知著名でないので、引用商標が「マース」と称呼されることはない。
また、仮に、引用商標が 「マース」と称呼されるとしても、「マース」と「マルス」は、非類似である。すなわち、「マース」と「マルス」は、第2音が「母音アの長音」又は「ル」である点で相違するところ、これら相違音は、音質を全く異にし、両商標共に短い音構成であるため、音質の差が称呼全体に及ぼす影響が極めて大きいので、両商標は、容易に識別し得るものである。
また、そもそも本件商標と引用商標は、出願日が同じであるので、商標法第4条第1項第11号の規定は適用されない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人が提出した証拠を参酌すると、請求人の略称「MARS」は、菓子の分野においては、周知であるかもしれないが、「電気機械器具,電子応用機械器具,自動販売機」及び本件の指定役務などの分野においては、周知著名であるとはいえない。請求人は、前記の分野に関しては、商品カタログ、会社案内、商標原簿などを証拠として提出するだけで、周知著名性を立証するに十分な証拠は提出されていない。
すなわち、甲第1号証乃至甲第3号証及び甲第10号証は、商標「MARS」が商品「菓子」について使用されていることを示すものである。甲第5号証は、「MARS ELECTRONICS」の会社案内であり、甲第6号証は、「MARS ELECTRONICS」の商品カタログであるが、会社案内などを発行しているからといって、周知著名であるとはいえない。また、請求人が「電気機械器具,電子応用機械器具,自動販売機」の分野において、特許を取得していることは、商標が周知であることの理由にはならない。
甲第9号証は、1998年度の自動販売機フェアに「MARS ELECTRONICS」が出展したことを立証するものであるが、自動販売機フェアに出展したからといって周知著名であるとはいえない。
また、商標法第4条第1項第15号は、本件商標の出願日前の周知著名性を問題にするところ、甲第2号証乃至甲第4号証は、いつ発行されたものか明らかでなく、甲第8号証は、1999年に発行されたものであり、甲第9号証は、平成10年11月30日に発行されたもので、本件に関して周知著名性を立証する証拠になりえない。
なお、請求人は、商標「MARS」の周知著名性を立証する証拠として、甲第4号証、甲第7号証及び甲第8号証を提出しているが、これらは、日本語で記載されていないため、何が書いてあるか不明である。仮に、審判請求書の「証拠方法」欄に記載されているように甲第4号証及び甲第7号証が商品等のパンフレットであっても、上述したように周知著名性を立証する証拠になりえず、甲第8号証がインボイスであっても、どのような商品のインボイスか不明であるので、本件の指定役務の周知著名性を立証する証拠にはなりえない。
さらに、請求人が扱っている「菓子,電気機械器具,電子応用機械器具,自動販売機」などは、本件商標の指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機等を用いて行う情報処理,電子計算機システムに関する助言,宿泊施設の提供に関する情報の提供」と、その製造販売又は提供が同一事業者に行われていることは少なく、用途も異なり、販売場所又は役務の提供場所も異なることから、本件商標が請求人の略称「MARS」と出所の混同を生じさせることはない。
また、仮に請求人の商標「MARS」が周知著名であるとすると、商標「MARS」からは、「マース」という称呼しか生じないところ、「マース」と「マルス」は、非類似であるので、出所の混同が生じることはない。
(3)本件商標の周知性
本件の指定役務の分野においては、本件商標「マルス」は被請求人の商標として周知著名である。
昭和52年4月23日、社団法人鉄道通信協会発行「XYZ」(乙第1号証)中には、本件商標「マルス」は請求人の前身である日本国有鉄道の座席予約システムのシステム名称であり、このシステムは昭和35年から使用されており、昭和47年には世界最大級の座席予約システムが完成されたこと、昭和50年3月には東京都区内では家庭に居ながらにしてプッシュホンで指定席の予約ができる「電話予約システム」が可動を開始したこと等が記載されており、被請求人若しくはその前身である日本国有鉄道の座席予約システム「MARS」は「マルス」と呼ばれて広く知られ親しまれている。よって、本件商標が請求人の略称である「MARS」と混同することはない。

4.当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標及び引用商標の登録出願日についてみると、両者の登録出願日は、前記したとおり、いずれも平成4年9月25日に登録出願されたものであるから、商標法(平成3年法律第65号)附則第4条第2項(施行後六月間にした商標登録出願についての先願の特例)の規定に該当するものである。
してがって、本件商標に対し引用商標をもって商標法第4条第1項第11号に該当する、という請求人の主張は認められない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
先ず、請求人の提出した甲第1号証乃至甲第3号証及び甲第10号証をみるに、請求人は、米国の菓子メーカーとして著名であり、「MARS」、「マース」の文字よりなる標章を商品「菓子」に使用し著名であることは認め得るとしても、商品「菓子」と本件商標の指定役務との関係では、その業種において明らかに異なるから、前記標章の著名性は本件商標の指定役務にまでは及ばないものと判断するのが相当である。
次に、甲第4号証及び甲第5号証(紹介パンフレツト)、甲第6号証及び甲第7号証(製品パンフレット)、甲第9号証(ベンディングジャーナル)等をみると、請求人のグルーブ企業が引用商標或いは「MARS ELECTRONICS」、「マースエレクトロニクス」、「マースエレクトロニクスインターナショナル」の文字よりなる標章(以下、纏めて「使用標章」という。)を商品「紙幣収受機、硬貨選別機、自動販売機」等に使用していることは認め得るとしても、これらの証左では、著名性を獲得しているものというには乏しいばかりでなく、「MARS」又は「マース」のみの標章を使用している事実は認められない。しかして、本件商標は、前記したとおり「マルス」の文字よりなるものであるから、これよりは「マルス」の称呼を生ずるものである。他方、請求人の使用標章は、前記したとおりであるところ、「MARS ELECTRONICS」「マースエレクトロニクス」の文字部分は全体としてまとまりよく構成されており、かつ、これより生ずると認められる「マースエレクトロニクス」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、構成中の「ELECTRONICS」の文字部分が「電子工学,電子技術」の意味合いを有し、その指定役務の質を表示するものとして使用される場合があるとしても、かかる構成においては役務の質を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものとも言い難いところである。
そうとすれば、使用標章「MARS ELECTRONICS」、「マースエレクトロニクス」の文字部分より生ずる称呼は「マースエレクトロニクス」のみであるとみるのが相当である。
しかして、本件商標より生ずる「マルス」の称呼と使用標章より生ずる「マースエレクトロニクス」の称呼とは、明らかに聴別し得るものである。
また、「MARS ELECTRONICS」、「マースエレクトロニクス」の文字は、全体として特定の観念を生じない造語とみるのが相当あるから、本件商標とは観念上比較できないし、それぞれの構成よりみて外観上も区別し得るものである。
したがって、本件商標と使用標章とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似のものというべきである。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、請求人若しくは請求人と関係のある者の業務に係る役務であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 引用商標


審理終結日 2001-07-23 
結審通知日 2001-07-27 
審決日 2001-08-08 
出願番号 商願平4-210329 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (042)
T 1 11・ 271- Y (042)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 涌井 幸一
高野 義三
登録日 1998-02-13 
登録番号 商標登録第4114027号(T4114027) 
商標の称呼 マルス 
代理人 村木 清司 
代理人 中山 健一 
代理人 鳥羽 みさを 
代理人 松原 伸之 
代理人 右田 登志男 
代理人 浜田 廣士 
代理人 千且 和也 

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