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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項14号 種苗法による登録名称と同一又は類似 無効としない 025
管理番号 1051886 
審判番号 無効2000-35061 
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-01-27 
確定日 2001-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4199535号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4199535号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成8年3月11日に登録出願され、「ROYALSPENCER」の文字を横書きしてなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として、平成10年10月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号含む。)を提出している。
1.請求の利益
請求人は、商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,エプロン,えり巻き,靴下,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,帽子,靴下止め,ズボン吊り,バンド,ベルト,靴類(『靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具』を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(『乗馬靴』を除く。),乗馬靴」について、商標「ROYALSPENCER」(以下、「引用出願商標」という。)を商標登録出願(平成11年商標登録願第66560号)したところ、本件商標を引用して、平成11年10月6日付で拒絶理由通知書を受領した。
よって、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
2.請求の理由
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は.欧文字「ROYALSPENCER」を横書きにして構成される。そして、同欧文字は、明らかに「ROYAL」と「SPENCER」の部分とに区分して理解することができ、前者は「国王の」「王室の血を引く」「王族である」「王者らしい」などの意味を、後者は英国の人名であることをそれぞれ容易に読み取ることができる。即ち、同欧文字の前者と後者の各部分を連続してこれを記載することにより、「王室の血を引く又は王族であるSPENCER卿」との意味が容易に読み取るとができる。
そして、同名が英国において極めて著名な故プリンセス・ダイアナの兄であるスペンサー卿の氏名からなる商標であることは明らかであり、このことは、日本国内においても極めて広く認識されているところである。
したがって、本件商標は、「他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号・・・略称を含む商標」に該当し、被請求人はその他人の承諾を得ていないから本件商標は商標登録を受けることができない商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、前項記載のスペンサー卿との間の平成7年8月17日付ライセンス契約に基づいて、同年以来現在に至るまで、引用出願商標を同指定商品に使用しており、また同契約に基づき引用出願商標の出願をしたものである。他方で、本件商標については、同スペンサー卿と全く関連のない企業により登録されたものであり、その商標登録を許すならば、本件商標が指定商品に使用されることにより、同商品について出所の混同を生じることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
英国では勿論、我国やその他の国際社会において著名な名称又は略称を本人の何らの同意なく商標として登録されている本件商標自体、国際社会における公の秩序を著しく害するものということができる。
(4)結び
以上、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第7号にそれぞれ該当するので、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
3.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標が、「ROYAL」の部分と「SPENCER」の部分とに分離して考察できることを認めている。
しかし、このような2つの部分に分離して「ROYAL」とは「すばらしい」との意味で、「SPENCER」が普通名詞であると主張するのであれば、それはあたかも「すばらしい服」のように一般名詞を出願登録したものであって、そもそも商標法第3条第1項第1号普通名称を登録商標とするものであり、それ自体無効であり、また、同商標を「体にぴったりした婦人服のウエスト丈ジャケット」以外に使用すれば、商品の品質誤認を生ずるおそれがある商標として、同法第4条1項16号に違反することになる。
(2)もっとも、乙第10号証及び乙第14号証を除く乙第8号証ないし乙第15号証には、いずれもその「最初の着用者であるスベンサー伯爵に由来する」旨の記載がある。そして、英国においては、伯爵家が世襲であって、その家系は現在まで綿々と承継されていることは我が国でも周知の事実であり、しかも、1981年にチャールズ皇太子と故ダイアナ妃との御成婚にあたって、同ダイアナ妃が上記スベンサー伯爵家の当代スベンサー卿の妹であることが大々的に報ぜられたことは、日本国の人々の記憶にも脈々と残っているのである(甲第3号証の1ないし3、甲第4号証の1ないし3、これ以外の週刊誌、テレビ、その他の報道機関でもその過熱した報道ぶりは、それらを引用するまでもなく、周知の事実である。)。
さらに、1997年に同ダイアナ妃が交通事故死で亡くなられた際にも(甲第5号証の1ないし4)、その伯爵家の敷地であるオルソープ・ハウスにダイアナ妃が埋葬され、連日のごとく悲しみにくれる大勢の人々から花が飾られたことは、記億に新しい(甲第6号証)。
(3)確かに、「SPENCER」については、上記の乙各号証で示された「由来」もあるが、それ以上に「ROYAL」との用語が冠せられることによって故ダイアナ妃の生家である「SPENCER」卿を連想させることは詳述するまでもなく明らかである。
そして、乙第8号証などで記載されている「スベンサー伯爵」は、17世紀のチャールズ2世国王の一族であるスベンサー家における家系であり,また、ダイアナの父親である8代目スベンサー伯爵はエリザベス女王の父親ジョージ6世の侍従武官を務め、現女王の即位後も1954年までは、同じ役職を務めたことは、我が国でも広く報じられている(甲第3号証の1)。
なお、現スベンサー伯爵は、9代目で、ダイアナ妃の兄がこれを承継している。
そして、甲第1号証の“the Licensor”として「THE EARLSPENCER」との表示は、まさしく、かかる9代目「スペンサ-伯爵」の表示であり、英国ではかかる表示のみで表現されているのである。
(4)なお、請求人は、甲第1号証のライセンス契約に基づいて、多くの指定商品で商標出願をしており(甲第7号証)、また、多くの商品を「ROYALSPENCER」の商標で販売している(甲第8号証)。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると要旨次のように答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号含む)を提出した。
1.請求の利益
請求人が、引用出願商標について商標出願をした事実は不知。
これまで、請求人からは、何の連絡も申し出も受けていない。
2.答弁の理由
被請求人は、商標法第4条第1項第8号に該当する旨の主張は否認する。本件商標の「ROYALSPENCER」は、他人の氏名やこれを含む商標として使ったものでない。甲第1号証によっても、請求人には、「ROYALSPENCER」の使用が認められている訳でない。同第15号に該当する旨の主張は不知ないし争う。指定商品につき、出所の混同が生じることはない。及び同第7号に該当する旨の主張は否認する。請求人のいうスペンサー卿は、我が国において知る者がなく、後述のように、物(上衣)の普通名詞を使って公の秩序を害することなどおよそ考えられない。
(1)被請求人は、婦人服の製造・販売を業とするものであり、これまで、主として、ジャケット、ブラウス、フレアスカート、パンツ、スーツ、アンサンブル等を扱ってきており、「スペンサー」もその中に数多く含まれている。
一般に「スペンサー」として親しまれているのは、長袖で丈がウエストラインまでの短いジャケットのことであり、スペンサー・ブルゾンとか、スペンサー・ジャケットとか呼ばれたりもする。
名称の始まりは、イギリスのスペンサー伯爵(1758ないし1834年)が好んで着用し流行させたことに由来するが、「長袖の短い上衣」はその時期以前からも使われていたし、ミディ・スカートがはやったのに伴い、これとバランスの合うショート・ジャケットが現われることになり、「スペンサー」もそのうちの一つであった。
それが定着して、「スペンサー」といえば、体にぴったりした婦人用のウエスト丈ジャケットのことを指す物の普通名詞として、人々に愛用されてきた。
そこで、被請求人は、自社が製造・販売している「スペンサー」に、多くの消費者に親しまれ、かつ「すばらしい」とか、「堂々たる」という意味合いを持たせるため、「ROYALSPENCER」という一個の造語を作ることにした。
それに、請求人のいうスペンサー卿のことは知る者とておらず、請求人の場合、ことさらに、スペンサー卿なる人物と接近して、同人とのつながりを商売に利用しようとしているようであるが、被請求人は、一般に人気のある上衣としての「スペンサー」に、とてもすばらしくて堂々たる感を持つスペンサーと命名している。
このように、SPENCERといっても、かつての政治家で亡きスペンサー伯爵のことを連想することがあったにせよ、上衣の名称そのものにつき、請求人のいうスペンサー卿を思い浮かべる人はまずいない。
このことは、他人の氏名を含む商標と捉えて見ても、結論は変らず、およそ著名であるとはいえない。ましてや、商標や商品との関係は一切出てこない。
(2)次に、請求人は、出所の混同が生ずるとしているが、(ア)請求人が「ROYALSPENCER」の商標を使っていても、極めて著名であるなどといえる筈がなく、(イ)請求人のことは結婚式場を営む「高砂殿」と受け止められているところ(乙第17号証)、被請求人はアパレル業者であって互いに共通するものがないし、(ウ)出所混同の有無は、単なる商標の対比だけではなく、それぞれの商品の取引の実情に応じ広く一般社会の客観的事情を参酌して決定されるべき問題であるが、これを充足する事情としては、何もない。
(3)さらには、公序良俗を害するとの主張も、物としての「スペンサー」をストレートに取り上げたことのどこに公序良俗性があるというのか。
(4)したがって、本件請求は、何ら理由がなく、すみやかに却下されるべきである。

第4 当審の判断
1.請求の利益
本件審判請求に関し、当事者間において利害関係の有無につき争いがあるので、この点について判断するに、請求人の出願に係る平成11年商標登録願第66560号商標は、本件商標を引用されて拒絶理由通知を受け、現在審査に継続中であることを確認し得た。
そうすると、請求人は、本件商標が有効に存続することにより直接不利益を受ける関係にある者といえるから、本件審判を請求するについて法律上の利害関係を有するものと認められる。
2.無効の理由
そこで本案に入って審理するに、本件商標は、上記のとおり「ROYALSPENCER」の文字を書してなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品とするものであるところ、請求人は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたとする無効事由が存在すると述べているので、その当否について判断する。
(1)商標法第4条第1項第8号
請求人は、「本件商標は、『国王の』、『王室の血を引く』、『王族である』、『王者らしい』等の意味合いを容易に想起させ得る『ROYAL』の文字と、英国人の人名を想起させる『SPENCER』の文字とを『ROYALSPENCER』と一連に表示したものであり、これよりは『王室の血を引く又は王族であるSPENCER卿』の意味合いを容易に読み取ることができる。そして、同名が英国において極めて著名な故プリンセス・ダイアナの兄であるスペンサー卿の氏名からなる商標であることは明らかであり、このことは我が国においても広く認識されている。また、請求人は平成7年8月17日付けでスペンサー卿との間でライセンス契約を結んでいる。」旨主張している。
そこで、請求人の提出に係るライセンス契約書(甲第1号証)及びその抜粋された訳文(甲第2号証)を精査するに、該ライセンス契約書及びその抜粋された訳文には、「ROYALSPENCER(ロイヤルスペンサー)」の表示を見出すことができないものであり、請求人がスペンサー卿との間でいかなる標章についてライセンス契約を結んだのかは明らかでない。
さらに、新聞報道等により1981年にチャールズ皇太子と故ダイアナ妃との御成婚にあたって.同ダイアナ妃が上記スペンサー伯爵家の当代スペンサー卿の妹であることが大々的に報ぜられたこと(甲第3号証の1ないし3、甲第4号証の1ないし3)、及び1997年に同ダイアナ妃が交通事故死で亡くなられた際にも、その伯爵家の敷地であるオルソープ・ハウスにダイアナ妃が埋葬され、連日のごとく悲しみにくれる大勢の人々から花が飾られたことは(甲第5号証の1ないし4甲第6号証)、我が国でも大きな話題を集めたことは認め得るとしても、これをもって「スペンサー卿」が「ROYALSPENCER(ロイヤルスペンサー)」と呼称(又は略称)されていたとする記述はなくこれをこれを想起し得るものとする証拠とするには困難であって、そのほか請求人提出の甲各号証によっては、その事実を見出し得ないものである。したがって、「ROYALSPENCER(ロイヤルスペンサー)」が我が国において著名であるとする点は認められな。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の氏名若しくは名称若しくはこれらの著名な略称を含む商標」に該当するものとは認められない。
(2)商標法第4条第1項第15号
請求人の提出に係る甲各号証をみるに、甲第7号証は、請求人による「ROYALSPENCER」に関する商標の出願及び登録の状況を示すに止まり、また、甲第8号証の1ないし12は、請求人が経営する結婚式場「高砂殿」の引き出物のカタログであって、該カタログには「2001 Bridal gift」の文字が表示されているところからみて、2001年(平成13年)に使用することを目的として発行されたものであり、本件商標の登録出願日である平成8年(1996年)3月11日以降に発行されたこと明らかである。したがって、これら甲各号証からは「ROYALSPENCER」の文字よりなる請求人使用商標が本件商標の出願前より著名であった事実を証する書面として足りないものといわざるを得ず、更に、本件商標の商標登録出願の時における請求人使用商標の著名性を認めるに足りる具体的な証拠(例えば、該商標の使用に係る商品の販売実績、広告宣伝の方法、使用期間、同業者若しくは取引者の証明等)の提出もないから、請求人使用商標が本件商標の商標登録出願時すでに著名性を得ていたものとは認められない。
してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品について使用した場合、その商品が請求人若しくは請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
(3)商標法第4条第1項第7号
本件商標は上記に示すとおりの構成よりなるところ、これより特定の人物ないしは称号を指称するものと認定し得ないこと前記のとおりであり、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字又は図形からなるものでなく、また、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとすべき事実は認められず、他の法律によってその使用が禁止されている事実も認められない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-17 
結審通知日 2001-10-22 
審決日 2001-11-06 
出願番号 商願平8-25677 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (025)
T 1 11・ 21- Y (025)
T 1 11・ 22- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 高野 義三
涌井 幸一
登録日 1998-10-16 
登録番号 商標登録第4199535号(T4199535) 
商標の称呼 ローヤルスペンサー 
代理人 大野 幹憲 

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