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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 030 |
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管理番号 | 1049060 |
審判番号 | 審判1996-17301 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1996-10-07 |
確定日 | 2001-11-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3051745号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3051745号商標(以下「本件商標」という。)は、「絹そうめん」の文字と「瀬戸の舞」(「絹そうめん」の文字に比して2倍程度に大きく書してなる。)の文字とを2行に縦書きしてなり、平成4年12月21日登録出願、第30類「そうめんのめん」を指定商品として、平成7年6月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 2 請求人の引用する登録商標 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第644351号商標(以下「引用商標」という。)は、別記(1)に表示したとおりの構成よりなり、昭和35年9月17日登録出願、第32類「素麺」を指定商品として、昭和39年6月10日に設定登録され、その後、昭和50年1月28日、同59年6月20日及び平成6年6月29日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。 3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、請求の理由、答弁に対する弁駁の理由及び証拠調べ通知書に対する意見を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第18号証(枝番号を含む)、参考甲第1号及び同第2号および第1号証ないし第10号証(枝番号を含む)を提出している。 (1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第46条1項第1号により、無効にすべきものである。 (2)(ア)本件商標は、漢字および平仮名からなる縦書した「瀬戸の舞」4字の右肩に、漢字および平仮名からなるやや小さく同様に縦書した「絹そうめん」5字を併記している。 そこで、実例でみる審査基準の解説に基づいて本件商標を評価した場合、それは明らかに「絹そうめん」と「瀬戸の舞」とは、「大小のある文字からなる商標」に相当するものであるし、また「絹そうめん」と「瀬戸の舞」とは、前述のとおり併記された態様であることから、「著しく離れた文字の部分からなる商標」に相当するか、もしくはそれに準じたものである。 その理由としては「絹そうめん」および「瀬戸の舞」のそれぞれが自他商品の識別力を有するものとして機能し、両者の間の構成上の一体性もなく、常に分離して看取される二語からなる商標である。 (イ)ところで、請求人は甲第3号証の1(商公昭38-18471号公報)、同第3号証の2(商標登録第644351号原簿謄本)、同第3号証の3(商標登録第644351号の商標登録通知書)に示す登録商標を所有している。 請求人の製造販売に係る商品「そうめん(素麺)」に、甲第3号証の登録商標を永年にわたり使用し、それは自他商品の識別力を有するものである。 これに対し、本件商標の構成態様中の「絹そうめん」は、甲第3号証の要部たる「絹そうめん」と称呼上同一であることは多言を要しない。また、その書体を比較すると僅かに相違するものの、それは外観上実質的に同一であり、更には観念上も同一である。 なお、本件商標の他の構成態様である「瀬戸の舞」は、造語(創作語)商標に相当するものである。 本件商標についてみた場合、「絹そうめん」と「瀬戸の舞」とは、結合してはじめて特異な意味を有するものとして認識される、構成上の一体性を有しないし、客観的にみて一体化した商標と理解しなければならない必然性を有しないものである。 殊に、縦書二行として併記されていることと、前記両者を称呼した場合、「キヌソウメンセトノマイ」と多数音構成の11音であることもあって、商取引上「キヌソウメン」または「セトノマイ」いずれかにについて簡略称呼されるのが自然であると判断しても誤りがない。 しかも,本件商標の指定商品が「そうめんのめん」であるが故に通常、主婦を含めて、多くの女性を購買者層とすること、また商品の性格から高齢の女性も対象範囲に含まれることを考え合せれば、称呼に際しては、本件商標の構成態様の中で、なじみがあり、読み易い「絹」および「そうめん」に関心がもたれるから、「絹そうめん」について「キヌソウメン」と称呼することの多い。 よって、本件商標は甲第3号証の登録商標と称呼、外観並びに観念上同一または類似であり、指定商品も相互に共通する。 (ウ)次に、請求人の主張を裏付ける証拠として、甲第4号証(商願平5ー83198号の出願包袋一式)および甲第5号証(商願平5ー83199号の出願包袋一式)を挙証する。 甲第4、5号証ともに、件外人の「株式会社 戸田久」(以下、件外出願人と称する。)が平成5年8月9日付で出願し、平成6年12月8日付の拒絶理由通知書(甲第4、5号証の書類に編綴されている。)をもって、「登録第644351号(商公昭38-18471号)」(以下、甲第4、5号証の引例という。)を引用し拒絶理由が示され、件外出願人はその理由に承服し、平成7年4月27日付で拒絶されて既に確定している。 前記甲第4、5号証の引例は、前述した請求人の所有に係る甲第3号証の1および2を指すものである)。 上記甲第4、5号証の審査事例は、甲第3号証の商標と類似し、その指定商品が類似することを理由に登録出願が拒絶されているのである。 (エ) 以上のとおり、本件商標の審査上(甲第1号証の3参照)、その構成態様中の「絹そうめん」が、甲第4、5号証の商標構成態様と比較し、より一層甲第3号証の1および3のそれに類似しているにもかかわらず甲第3号証の1および2を挙示して拒絶理由通知の引例とされずに、出願公告の決定、更には登録査定を経て設定登録されたのは甲第3号証を看過したものと言わざるを得ない。 (3)よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の要件を具備していないものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきである。 (4)答弁に対する弁駁について (ア)本件商標の構成態様中、「絹そうめん」の文字の有する意味が品質、材質などを表示したり、あるいは性状を表示する品質表示であるとの主張は、以下の理由により、被請求人の矛盾した態度を示すものである。 (a)請求人は、既に本件審判請求書を通じて指摘した件外人(株式会社戸田久)の甲第4号証および甲第5号証の出願商標からも明らかなとおり、そうめんのめんを含む我国製麺業界においては、「絹」、「絹そうめん」、「絹うどん」あるいは「絹めん」などの文字は自他商品識別力を有する商標と理解していたからこそ、前記件外人は甲第4、5号証を出願したものと窺えるものである。 (b)同様に、被請求人自身も甲第10号証(被請求人の商願平4‐315526号)の商標登録を受けようとする商標を表示した書面(以下「商標見本」という。)を明示した願書と、それを非表示とした願書。甲第11号証(被請求人の商願平4ー315527号商標見本)を明示した願書とそれを非表示とした願書及び甲第12号証(日本特許情報機構発行の甲第10,11号証の審査経過を示す商標検索回答)を通じて明らかとおり、出願した事実がある。 この客観的事実からみて、被請求人自身、甲第10、11号証に示す商標が自他商品識別力を有すると判断したからこそ出願したものと理解される。 従って、被請求人は、申第10、11号証では自他商品識別力ありとの立場で出願しながら、本件商標の審判事件では、手の平をかえすように「絹そうめん」が自他商品識別力を有しないと主張しているのであって、それは答弁に窮した、何人がみても矛盾のある主張である。 (c)因みに、甲第10号証の出願商標は、甲第13号証(拒絶理由通知書)で引用されたとおり(甲第11号証も同様である。)、登録第2469825号(商公平4 ー 21963号。甲第14号証「シルク」)が、後に(平成8年4月1日付)、不使用による商標登録取消審判請求事件において取消されたものの、審査上では少くとも識別力を有する商標であるとの前提に立って登録されていたのが事実であり、これからみても本件商標の構成態様中、「絹そうめん」の文字は被請求人の言う「自他商品識別力、出所表示機能」を有するものである。 (イ)以上、明らかにしたように、本件商標は、「絹そうめん」も「瀬戸の舞」もともにに「要部」であるから、前記「絹そうめん」は甲第3号証の1ないし3で引用した登録商標と類似している。 (ウ)甲第3号証の商標は、前掲甲第2号証について言及したように、構成態様中、中央部分に大書した「絹そうめん」が「星野物産」とともに明らかに「要部」であり、「風鈴の図柄」は夏季における涼気を誘うことを意味した付記的な図形に過ぎず、該図形を「要部」と主張するに至っては牽強付会の説にすぎないのであって、被請求人の主張は誤りである。 よって、甲第3号証の「要部」である「絹そうめん」と本件商標とは明らかに類似するものである。 4 当審における平成13年1月5日付けの証拠調べ通知書に対する請求人の意見 意見書において、「絹素麺」(商標登録第636783号)、「絹そうめん」(商標登録第644351号)の商標権者である請求人は、これらの商標の希釈化防止に留意していること、これら商標が普通名称化されていないことを次に説明する。なお、以下にこれら各商標を総称する場合に、単に本件両商標という。 (ア)請求人は、審判長からこの通知書を受けるまで、同書に示されている用語「絹そうめん」がこのように使用された事実があることを知らなかった。 しかし、従来から、本件両商標の侵害に対しては、添付の証拠に示すように、その都度積極的に警告を発するなどして、本件両商標の希釈化防止に努めている。 (a)先ず、請求人は平成8年6月17日に、「絹そうめん」、「絹うどん」を商標として「そうめんのめん」、「うどんのめん」(以下、単にそれぞれ「そうめん」、「うどん」と略称する)について使用しているシルバーアートレ有限会社(被請求人)に対し、第1号証に示す警告書を内容証明、配達証明付書留便により送付した。 この警告に対して、シルバーアートレ有限会社は「絹素麺」(商標登録第636783号)に対しては平成8年審判第11007号、「絹そうめん」(商標登録第644351号)に対しては平成8年審判第11008号において、不使用取消審判を請求したが、何れも使用事実が証明され請求不成立の審決を受けている。 (b)請求人は第2号証のように、平成10年6月26日発行の麺業新聞に社告を掲載し、本件両商標が請求人所有の登録商標であることを通知し、侵害に対する注意を喚起している。 (c)請求人は平成10年6月30日に、「絹そうめん」を商標として「そうめん」に使用している全国養蚕農業協同組合連合会(以下「全養連」という)に対し、第3号証の1のように警告書を配達証明付書留便により送付した。 請求人と全養連との間では、その後の交渉を経て、平成10年10月15日に第3号証の2に示すような覚書を交わし、請求人は全養連に対し一定の範囲で、「絹素麺」、「絹そうめん」の使用を許諾した。従って、全養連加入の麺メーカーでは、これらの登録商標を使用している場合がある。 このように、本件両商標の商標権者である請求人は、普通名称化して希釈化することの防止について、十分な努力を払っているところである。このような請求人の努力によって、本件両商標は決して普通名称とは評価されることのないものである。 (d)上記した措置を講じた場合に、普通名称とは認められないとして判断した判決が(東京高判昭和42年12月21日。行集18巻12号1761頁)「セロテープ」事件として知られており、その判旨は請求人の前記意見を支持するものである。 (イ)一方、顕著な事実として、東京高裁平成9年(行ケ)第62号商標権行政訴訟事件(以下、「うどんすき事件」という)が知られている。 (a)この「うどんすき事件」は、登録第2350456号商標(「杵屋うどんすき」。第32類、うどんめん、うどんめんを主材にした加工食料品。以下、「うどんすき事件の対象商標」という)の登録無効の審判事件に関し判断された審決の当否が争われたものである。 その判決に当たり、うどんすき事件の対象商標の構成中「うどんすき」が、その登録査定時を判断基準としたとき、普通名称化していたかどうかについて争点とされた。その結果、相当数の証拠をもって「うどんすき」の文字の自他商品の識別機能を否定し、引用商標1〜3(登録第553621号、同第518559号、同第2167935号)とは外観、呼称、観念において非類似の商標であるとした審決が正当である旨支持されたのである。 (b)ここで重要なことは、うどんすき事件の対象商標が引用商標1〜3と外観、称呼、観念において非類似とした前記判断根拠の存在をもって、直ちに本無効審判事件(平成8年審判第17301号)の対象たる商標登録第3051745号(「絹そうめん 瀬戸の舞」)の判断上の指針とは、仮にもなり得ないことである。 (c)即ち、うどんすき事件における「うどんすき」の文字の自他商品の識別機能を否定するに至った所以は、明らかに否定するに相応するだけの証拠が存在したことによるのである。 それは、文献としてその存在を熟知していると思われる第4号証の1〜5(麺類百科事典。昭和59年1月26日発行。株式会社食品出版社。表紙、第18頁、540頁、584頁。奥付)のとおり、株式会社美々卯の会社役員(薩摩列一)が「うどんすき」について「うどんを主役に、色とりどりの季節の具を配したうどん料理」(同証の2。第18頁、左欄29、30行)と自認している事実、文献として「うどんすき物語」(同証の4。584頁左欄1行)の存在事実がある。これらに限らずうどんすき事件の判決「理由」の第2に提示された根拠に従えば、確かに「うどんすき」の文字は「識別力のない商標」に相当することは、客観的にも納得できるものである。 (ウ)これに対し、意見書に添付の第5号証は請求人の商品カタログ、第6号証は実際に使用している「絹そうめん」の包装袋であり、それに示すとおり、「絹そうめん」は現在においても請求人は識別力のある商標(所謂特別顕著性を有する商標)として使用している。 しかもその使用は古く、例えば第4号証の3(第540頁)に示す請求人の事業紹介頁中に記載されていた「絹素麺ゴールド」の記事に見られるように、少なくとも同証の発行当時(昭和59年)から主力商品の1つとして市場に提供され、今日に至っているものである。 (エ)各添付資料には、シルクパウダーを食品に混入して食することが記載されている。そのうち、資料1、2、3、4、6にはシルクパウダーを麺類に混入した食品が示唆されているが、資料5にはシルクパウダーを麺類に混入することについての記載はない。 そして、資料1、2には確かに「絹そうめん」の字句が見受けられる。このことから、「絹そうめん」の語が「シルクパウダー入りそうめん」を表示するものとして、資料1の1992年9月19日付朝日新聞を閲売した購読者、及び資料2の1992年7月21日号「週刊女性」の購読者の一部の読者が読む機会のあったという事実の存在は認められる。しかし、資料1、2は単に1992年(平成4年)発行の新聞、雑誌に単発的に掲載されたものであるに過ぎず、かかる事実だけで本件商標(登録第3051745号)の登録査定時の平成7年3月10日の時点で、もはや本件両商標が識別力のない商標となっていると即断し、それは普通名称として使用されるに至っているとの証拠としては、極めて不十分である。 例えば、特許庁が商標法第3条第2項の使用による識別性を認める場合に、商標審査基準で規定する相当数の資料を要求していることから考えても、本件両商標を指して識別力のない商標に相当すると判断するには、それ相応の証拠資料が必要である。 請求人は「絹そうめん」の使用者に対してその辺の事情を確認しようとした。資料中、「絹そうめん」の使用者として唯一特定できる資料2に記載の京都府与謝郡加悦町「加悦総合振興株式会社」に対し、電話による問い合わせをするためにNTT104番で照会したが、該当の会社は登録されていないとのことであった。また、インターネットのヤフージャパンにおいて加悦町役場のホームページで特産品を調べてみたが、「絹入りせんべい」はあっても、「絹そうめん」に類するものは全く見い出すことはできなかった。 (オ)また、「絹そうめん」、「絹うどん」に類する商標が、次に説明するように出願されたことがあるが、何れも請求人所有の登録商標「絹素麺」等により拒絶されている事実がある。 (a)第7号証の1、第8号証の1のように、平成5年8月10日に株式会社戸田久は、「絹饂飩/きぬうどん」(商願平5一83198号)、「絹麺/きぬめん」(商願平5-83199号)を出願したが、請求人所有の「絹素麺」(商標登録第644351号)の存在を理由に、それぞれ第7号証の2、第8号証の2のように平成6年12月8日に拒絶理由通知を受け、第7号証の3、第8号証の3のようにそのまま拒絶査定を受けている。 このことは、これらの出願商標が識別力のある商標にして自他商品識別力を具備するとの蓋然性を当業者たる出願人が有していたに他ならず、また審査官が「絹素麺」を引例としたのも、「絹素麺」が識別力のある商標であることを認めたからである。 (b)本件審判の被請求人であるシルバーアートレ有限会社は、平成4年11月20日に「絹シルクそうめん(シルクは小文字書き)」(商願平4一315526号)を第9号証の1のように出願している。このことからも、被請求人は「絹シルクそうめん」が識別力のある商標であるとの蓋然性を持っていたからに他ならない。 そして、被請求人は平成6年審判第18483号の拒絶査定に対する不服審判において、本件審判請求人所有の登録第636783号商標(商公昭38-18470号)、登録第644351号商標(商公昭38一18471号)、登録第1425753号商標(商公昭53-26072号)の存在を理由に、第9号証の2のように平成9年9月3日付で、拒絶理由通知を受けている。 同様に、被請求人は平成4年11月20日に「絹シルクうどん(シルクは小文字書き)」(商願平4一315527号)を第10号証のように出願したが、平成6年審判第18484号の拒絶査定に対する不服審判において、請求人所有の同じ登録商標によって平成9年9月3日付で同様な拒絶理由を受けている。 これらの不服審判における引用商標は、それぞれ請求人所有の「絹素麺」、「絹そうめん」、「絹ひもかわ」であり、平成9年9月3日の拒絶理由通知時において、本件両商標について識別力のある商標、即ち旧法に云う特別顕著性を認めている証左である。 (カ)このように「絹そうめん」が、たとえ資料1、2に示すように一時期、一部の新聞、雑誌で使われた事実、或いはシルクパウダーを麺類に混入することが学術雑誌その他の雑誌で平林潔教授の名を共通して挙げて紹介された事実があるとしても、その間においてもこれら本件両商標は有効に存続していたことはまぎれもない事実であり、資料1、2の存在を頼りに、本件商標の登録査定時において本件両商標が普通名称化されていたとの判断がなされるようであれば、それは不当である。請求人は依然としてこれらの本件両商標が自他識別力を持つものである。 5 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求の理由、弁駁に対する答弁の理由及び証拠調べ通知書に対する意見を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第4号証(甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証とあるのを乙第1号証、乙第2号証、乙第3号証及び乙第4号とそれぞれする。)を提出している。 (1)本件商標は、太文字部分の「瀬戸の舞」と、これに付記した小文字部分の「絹そうめん」から構成されているが、上記のうち付記的部分の「絹そうめん」は、その文字の有する意味と、小文字で付記した態様を併せ考えると、絹の入ったそうめんであることの品質、材料等を表示したり、あるいは絹のようななめらかな性状を表示する品質表示そのものと見るのが自然である。したがって、付記的部分「絹そうめん」には自他商品識別力、あるいは出所表示機能はないものと云わざるをえない。してみると本件商標の要部は太文字部分「瀬戸の舞」にあり、自他商品識別力も出所表示機能もこの要部にのみ依存しているのである。 このことからすると、請求人が主張するように「絹そうめん」の部分のみが分離して看守されるというのは、極めて不自然であって理由がないといわざるをえない。 (2)つぎに、請求人が無効理由の根拠として主張する甲第3号証商標であるが、これは図形商標であって、一見して短冊形の外形をしており、その内部には風鈴、すだれ、川の流れ、といったような絵が描かれ、「星野物産謹製」および「絹そうめん」の文字が書されている。しかるに、短冊のバックと「絹そうめん」の文字が共に黒色であり「絹そうめん」の文字はそう目立つものではなく、また、「絹そうめん」の文字は、絹入りそうめん等の品質表示の機能のあることは前述のとおりであるので、請求人がいうように「絹そうめん」の文字部分に要部があるとは認めがたい。むしろ風鈴や川の流れなどの図形的な面が目立ちやすく、甲第3号証商標は、図形部分または「星野物産謹製」の部分に、出所表示機能がより強く存するものと認められる。 してみると、甲第3号証商標は本件商標とは類似しないこと明らかである。 以上の理由により、本件商標は先願既登録の甲第3号証商標とは同一でもなく類似してもいないので、商標法第4条第1項第11号の規定に反するものではない。 (3)(ア)件外人の出願の存在や被請求人の出願の存在を問題にしているが、このようなことは次元を異にする問題だからである。つまり、商標の1部が品質表示である付記的部分であるかどうか、あるいは自他商品識別力や出所表示機能を有する本質的部分であるかどうかは、専らその商標の態様に基づいて検討すべき問題であるにもかかわらず、請求人はそのような商標の態様に基づく反論は一切していない。このこと自体、請求人の主張が、実体的内容に乏しいことを物語っている。 (イ)なお、被請求人の商標出願である「絹シルクそうめん』(商願平4-315526号)と『絹シルクうどん』(商願平4-315527号)は、本件商標の付記的部分である「絹そうめん」とは、デザインが異なり(前者はデザイン化されており、後者は通常の活字体)、さらに「シルク」の文字の有無(前者は無く、後煮は有り)が異なるので、同一視する訳にはいかない。本件商標の「絹そうめん」の文字は単なる品質表示であっても、前記2件の出願中の商標そのデザインや文字構成により、自他商品識別力を有しているかいるから、矛盾はしないのである。 (ウ)以上のとおりであり、請求人は、弁駁理由で本件商標の「絹そうめん」と「瀬戸の舞」は共に要部であると結論付けているが、この主張には、何の根拠もない。 (4)請求人は相変わらず甲第3号証商標が本件商標と類似していると主張しているが、何の説得力も見出せない。それらが互いに非類似であることは、答弁書(第1回)で、非類似と判断される要素を分析的に抽出し、詳述したとおりである。そこで、本答弁書においては、前記分析結果をまとめた総合的判断により、再度反論する。 いったい、なぜ甲第3号証商標のような数10年も前の古色蒼然としたデザインの図形商標が、本件商標である文字商標に類似すると判断できるのか、まことに以て不思議である。 6 当審における平成13年1月5日付けの証拠調べ通知書に対する被請求人の意見 被請求人の平成8年12月20日付けの答弁書における、「本件商標は、太文字部分の『瀬戸の舞』と、これに付記した小文字の『絹そうめん』から構成されているが、上記のうち付記的部分の『絹そうめん』はその文字の有する意味と小文字で付記した態様を併せ考えると、「絹の入ったそうめん』であることの品質・材料等を表示したり、あるいは『絹のようななめらかな性状』をする品質表示そのものと見るのが自然である。したがって、付記的部分『絹そうめん』には自他商品の識別力、あるいは出所表示機能はないものといわざるをえない。」旨の主張を裏付けるものである。 したがいまして、本件商標は、太文字部分の「瀬戸の舞」を要部とすることが明らかである。また、その要部「瀬戸の舞」は、甲第3号証商標とは類似しないことが明白である。 7 当審の判断 本件商標は、「絹そうめん」の文字と「瀬戸の舞」の文字とを二行に縦書きしてなるところ、指定商品を取り扱う業界において、「絹素麺」及び「絹そうめん」の文字は、1992年(平成4年)9月19日付けの朝日新聞によれば、「絹の溶液を配合しし化粧水や、せっけんなしで顔が洗える絹の洗顔パフ、タオル。絹織物の裁ちくずを使った絹パウダー配合の絹あめ、絹がゆ、絹せんべい、絹素麺(そうめん)」なども展示されている。」(別添1)と記載され、同じく、「週刊女性」(主婦と生活社 1992年7月21日号)によれば、「現在、加悦町では、第3セクターの『加悦総合進行株式会社』がシルクパウダーを作り、町おこし会で『絹粥』『絹飴』『絹せんべい』『絹そうめん』などの絹食品が製造・販売されている。」(別添2)と記載がそれぞれされているものである。 また、「シルクうどん」の文字は、「週刊女性」(主婦と生活社 1994年11月15日号)によれば、「つやつやしてコシの強いシルクうどん」の文字と「シルクうどんの写真」(別添5)が掲載されているものである。 さらに、「シルクの科学」(株式会社朝倉書店 1994年5月25日 発行)によれば、「シルクの食品について、シルクを水溶性粉末とすることにより、その消化、吸収性が向上し、機能性(コレステロール値の抑制、血糖値の低下、アルコールの代謝促進)を発揮することが、・・・現在、京都府加悦町では、このシルク粉末を飴、せんべい、おかゆ、そば、うどん、豆腐等に添加し、シルク食品として売り出している。・・・」(別添3)と記載され、そして、「新発見”食べる絹”(株式会社ハート出版 平成7年4月26日 発行)によれば、「しかし、すでにシルク入り食品、たとえば、ケーキ、クッキー、そば、ウドン、飴、ゼリー、アイスクリーム、お粥など挙げればきりがないほど『シルク食品』が売り出され、好評を博しているのが現実です。」と記載され、「わたしの健康 1993年7月号 」((株)主婦の友社 1993年7月1日 発行)によれば、「大評判の絹の食品」「シルク」の記載及び「『絹の食品』には肝臓を守り、コレステロールを下げ、美肌を作るアミノ酸がいっぱい」の「着る絹から『食べる絹』へ注目したい絹のタンパク質」の項に「・・・いまでは、絹の飲み物を初めとして、麺類やパンなどに絹のパウダーが使われるようになっています。」の記載がそれぞれされ、本件商標の登録査定時(平成7年2月23日)前に「絹そうめん」「絹素麺」「シルクうどん」及び「シルクを材料としてなる麺類」等が紹介されているものである。 以上の事実によれば、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、少なくとも、本件商標の登録査定時(平成7年2月23日)前に、本件商標の構成中「絹そうめん」の語は、「シルクパウダーを配合してなるそうめん」等の意味合いを有するものとして認識、理解されるものと判断するのが相当である。 そうとすれば、本件商標の登録査定時(平成7年2月23日)前に、本件商標の構成中「絹そうめん」の文字部分は、「シルクパウダーを配合してなるそうめん」等の意味合いを有するものとして認識され、即ち、商品の品質、原材料を表示するにすぎないから、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといわざるを得ない。 そうすると、本件商標の構成中の「瀬戸の舞」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認識して、これより生ずる称呼をもって取引に当たる場合も決して少なくないものと判断するのが相当である。 してみれば、本件商標の登録査定時(平成7年7月23日)前に、本件商標に接する取引者、需要者は、「絹そうめん」の文字部分を省略して「瀬戸の舞」の文字部分をもって取引にあたる場合はあっても、「瀬戸の舞」の文字部分を省略して「絹そうめん」の文字部分のみをもって取引にあたる場合はないとみるのが相当である。 そうとすると、本件商標は、その構成文字に相応して「キヌソウメンセトノマイ」の一連の称呼のほか、その構成文字中の「瀬戸の舞」の文字部分に相応して、「セトノマイ」の称呼を生じ、「キヌソウメン」のみの称呼は生じないものといわざるを得ないから、本件商標と引用商標とは、称呼において類似しないものである。 また、本件商標と引用商標とは、その外観、観念においても十分区別し得るものである。 なお、請求人は、警告を発するなどして、希釈化防止に努め、被請求人に対しても、平成8年6月及び同10年6月26日発行の「麺業新聞」に社告を掲載し、侵害に対する注意を喚起し、また、全国養蚕農業共同組合連合会に対し、同10年6月に警告をし、その後、同10年10月に覚書を交わし、使用の許諾したものであり、さらに、「絹そうめん」の文字が識別力のある商標である旨主張しているが、該警告及び覚書は、登録査定時以降のものであり、「絹そうめん」の文字は、識別力のない商標であること上記したとおり判断し得るものであるから、この点の請求人の主張は採用することができない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は、同法第46条により無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
記 引用商標 (登録第644351号商標) (色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2001-08-31 |
結審通知日 | 2001-09-05 |
審決日 | 2001-09-26 |
出願番号 | 商願平4-327025 |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(030)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柴田 良一、巻島 豊二 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
米重 洋和 宮下 行雄 |
登録日 | 1995-06-30 |
登録番号 | 商標登録第3051745号(T3051745) |
商標の称呼 | キヌソウメンセトノマイ、セトノマイ |
代理人 | 日比谷 征彦 |
代理人 | 安達 信安 |
代理人 | 山内 康伸 |