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審決分類 審判 全部無効  審決却下 132
管理番号 1045592 
審判番号 審判1999-35092 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-26 
確定日 2001-08-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第2430898号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2430898号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成1年12月8日に登録出願、後掲(イ)に示すとおりの構成よりなり、第32類「卵」を指定商品として、平成4年6月30日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効を述べる理由に引用する登録第2549288号商標(以下、「引用商標」という。)は、昭和62年5月29日に登録出願、後掲(ロ)に示すとおりの構成よりなり、第32類「食肉、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成5年6月30日に設定の登録がされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、との審決を求めると申立て、その理由および被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証を提出している。
(1)本件商標と引用商標とはともに第32類の指定商品について使用するものである。引用商標はギリシア文字「π」と「ウォーター」なるカナ文字との結合よりなるところ、「ウォーター」は水を意味する英語として本件商標出願日のはるか以前から親しまれており、殆んど日本語の普通名詞と同様に扱われている。したがって「πウォーター」の自他商品識別の機能を果たす主要部はギリシア文字の「π」にあり、これにより「パイ」の称呼をも生ずるものである。
本件商標の丸は極めて簡単なありふれた形状であるから、自他商品識別の機能を果たす主要部はカナ文字「パイエッグ」に求めるべきである。ところで上記カナ文字の構成後部の「エッグ」は「卵」を意味する語として日本語同様に親しまれているものであるから、該文字は商標の品質を表示した部分と看取、認識され、自他商品識別の機能を果たす主要部は構成前部の「パイ」にあり、これよりは「パイ」の称呼をも生ずるものである(甲第10号証参照)。
したがって、本件商標と引用商標とは、自他商品識別の機能を果たす称呼「パイ」について共通しているので、本件商標は引用商標に類似するもの、と断定出来る。
以上に主張した通り、本件商標はその登録出願の日前の商標登録出願に係る他人(本件請求人)の登録商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品について使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当し、商標法第46条第1項第1号の規定にもとづいて無効とされるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
(a)引用商標の周知性について
引用商標は請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(周知商標)である。以下にこれを証明する。
請求人である有限会社アイ・ビー・イーの代表取締役 牧野進自(通称伸治)氏は、甲第11号証(「パイウォーターの奇跡」巻頭推薦のことば)にあるように、名古屋大学農学部山下昭治氏とともにパイウォーターを創設し、甲第12号証(請求人登記簿謄本)にあるように昭和50年(1975年)12月10日パイウォータ-を広める目的で請求人会社を設立した。以後、請求人会社は農業、畜産業、医学等にこのパイウォーターを広めるために積極的な努力を行い、昭和62年(1987年)5月29日には甲第3号証の商標(引用商標)の出願を行い、該引用商標は平成5年(1992年)6月30日に登録された。請求人会社のパイウォーターと云う名称は次第に巷に広まり、ついには現代に広く知られた用語として甲第13号証(「現代用語の基礎知識」1992年版)にも掲載されるに至り、さらには甲第14号証(「食品工業」1993年4月15日号)、甲第15号証に明らかなように、雑誌、新聞にも請求人会社のパイウォーターとして掲載されるようになった。
そして甲第14号証、特に甲第15号証、更に甲第11号証:第149頁ないし第154頁や甲第15号証:第6頁に明らかなように、パイウォーターは養鶏、養卵の分野にも積極的に取り上げられている。さらに甲第16号証(パイテック・フォーラム’98爽春号)に明らかなように、牧野伸治氏が理事長をしているパイテック・フォーラムには広い業界の人々が役員として参加されている。
今までに請求人会社からどのような製品が販売されているかは、甲第17号証ないし甲第21号証を参照されたい。また請求人会社の代理店、特約店は甲第22号証に明らかなように、全国津々浦々に広がっている。
したがって、引用商標が卵に係る周知商標であることは云うまでもない。
(b)本件商標と引用商標との類似について
本件商標は5個の仮名文字「パイエッグ」を横書きし、丸(まる)で囲ったものである。
一方、引用商標はギリシア文字「π」と仮名文字「ウォーター」を一連に横書きに書してなるものである。
そして、「エッグ」および「ウォーター」はそれぞれ「卵」および「水」を表すものとして普通名称となっていることから識別力を有さない。したがって「パイ」および「π」がそれぞれ本件商標と引用商標の要部であり、分離観察されうる。
そうとすると、両商標からは「パイ」との共通する称呼が生じる。
さらに、πウォーターが養鶏分野においても周知であることより需要者、取引者は「パイ」より容易に「πウォーター」を想起する。そうとすると本件商標に接する需要者、取引者は本件商標が付された卵について「πウォーター」と何らかの関連があるのではないかと思うのが通常であると考えられる。したがって本事案の具体的事情からは外観の差を考慮するとしても、出所混同のおそれがあり、商標法第4条第1項第10号の立法趣旨が一定の信用を蓄積した周知商標との出所の誤認混同を防止することにあることから、本件商標と引用商標は商標法第4条第1項第10号に云う類似する商標に該当する。
また、本件商標は指定商品を第32類「卵」とするものであるので、引用する周知商標が使用されている商品と同一の商品について使用するものである。
以上から、本件商標はその出願時である1989年12月および登録査定時である1991年において他人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品について使用するものであるので、商標法第4条第1項第10号の規定に該当していたものである。
(c)不正競争の目的について
上記の通り、請求人は1975年にはπウォーターを応用化する業務を開始し、「πウォーター」は比較的新しい造語であるにもかかわらず本件商標の出願時である1989年末には種々の分野で全国的に知られるようになっていたことが認められる(甲第13号証:1992年版現代用語の基礎知識)。なぜなら、用語の採取や選択および出版準備期間を考慮すれば、このような用語辞典に掲載されるには通常2ないし3年前には周知となっている必要があるからである。
また、πウォーターは様々な分野で応用されるとともに(甲第14号証:「食品工業」1993年4月15日号他)、「πウォーター」および「πウォーター」に関連する商標も使用されているものである(甲第15号証ないし甲第21号証)。
そうとすると、被請求人についても本件商標の出願時において周知商標である「πウォーター」および「πウォーター」に関連する商標へのアクセスが容易になされたものと推認することができる。
また、甲第14号証ないし甲第16号証からも明らかなように、πウォーターには様々な効能があり評判となっていたことが認められる。そして、上記のように引用商標や引用商標に関連する商標は種々の分野で全国的に知られアクセスも容易であったのであるから、引用商標の要部である「π」を単に仮名書きに変換したものに普通名称を組み合わせた本件商標には周知商標へのフリーライドの意図が認められるものと云うべきである。
したがって、本件商標は商標法第47条かっこ書きに該当し5年の除斥期間の適用から除外される。
以上から、本件商標は登録査定時において商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録され、かつ、商標法第47条かっこ書きに該当するので、商標法第46条第1項によりその商標登録は無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件の請求は成り立たない、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。
(1)本件商標は、平成11年2月26日現在では商標法第4条第1項第10号に基づく登録無効の審判請求ができないものである。即ち、本件請求人は審判請求書の「無効理由の欄」の結論において「本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当し、商標法第46条第1項第1号の規定に基づいて無効にされるべきである」としている。しかし、本件商標の登録日は平成4年6月30日にして、本件審判請求日の平成11年2月26日までに6年8ヶ月を経過していることから、商標法第47条の「商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない」に該当する。
本件請求人の審判請求書の「請求の理由」は理由説明と結論が矛盾して一貫性がなく不明瞭なものであり、他人の登録商標の無効性を主張する内容を満たしていない。
即ち、本件請求人は審判請求書の「無効理由の欄」の3において、自己の商標登録出願の審査例に基づいて「本件商標は先願の他人の商標登録出願のものと類似している」と詳述し、結論として「本件商標は本件商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人(本件無効審判請求人)の登録商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品について使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号の商標に該当し、商標法第46条第1項第1号の規定にもとづいて無効にされるべきである」としている。
しかるに、商標法第4条第1項第10号は「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」にして、周知商標と同一・類似の商標登録を排除する規定である。
従って、本件審判請求書の「請求の理由」の欄の主張と結論は一貫性がなく矛盾しており、その上、本件請求人が指摘する「π」なる先願商標の周知性、すなわち、商標法第4条第1項第10号該当を述べる理由の前提となる先願商標の周知性を証明する客観的証拠・証明が全く示されていない。
なお、付言すれば、前記「請求の理由」の欄の結論における適用条文が商標法第4条第1項第11号の誤記であるとして本件請求人が補正しても、その補正は要旨変更に当たるものであり、その上、商標法第4条第1項第11号第4条第1項第10号と同じく商標登録の日から5年を経過した後は登録無効の審判請求ができないものである。
さらに、付言すれば、本件商標は「パイエッグ」なる一連5文字を丸枠で囲った構成にして、一連簡潔にして語調も良いことから取引者・需要者において「パイ」と略称されるおそれは実質的に極めて少く、他人の先願商標の「π」または「πウォーター」から生ずる単なる「パイ」とは明瞭な呼称上の相違があって両者が混同するおそれは極めて少く、この両者の間に類似性は存在しない。以上の点は本件商標の審査においても前記「π」が引用されなかった事実からみても客観的に明白である。

5 当審の判断
(1)本件商標は、その構成後掲(イ)に示すとおり、図円内上部に「パイエッグ」の片仮名文字を表し、指定商品を「卵」として平成4年6月30日に設定の登録がされたものであること前記1に述べたとおりである。
(2)本件審判の請求は、本件商標の商標法第4条第1項第10号該当を理由にその登録の無効を求めるものである。しかして、無効審判における当該無効理由とその除斥期間の適用について商標法第47条は、商標法第4条第1項第10号該当を理由とする無効審判の請求については、不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き当該商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することができない旨定めている。
そうすると、本件審判の請求は、本件商標の登録の日(平成4年6月30日)から5年の期間を大きく徒過した平成11年2月26日にされたものであるから、その請求が前記除斥期間の定めに照らし適法であるというためには、本件商標の登録が不正競争の目的でされたとする理由が前提要件とされる。そして、この前提となるべき理由(不正競争目的)の主張・立証がされず、あるいは十分でないため実質的にその存否を判断し得ないものであった場合は、本件審判請求は不適法なものとして却下すべきものと解するのが相当である。
(3)ところで、「不正競争」とは、たとえば、商標や商号などの形で他の事業者が営々と築き上げた信用や名声を冒用したり売れ筋の商品形態をそっくり模倣して自らの商品として売り出したり、競争相手の顧客リストを入手して自らの顧客開拓に使用したり、あるいは原産地や品質を偽って商品を売り出したりするような行為等をいうものとされているから(社団法人発明協会発行,山本庸幸著,「要説新不正競争防止法」より)、本件審判において、不正競争を目的として本件商標の商標登録がされたというためには、被請求人(商標権者)による前記冒用・模倣等による不正競争の目的を客観的に明らかにする事実、すなわち、当該他人の営業を表彰しあるいはその業務に係る特定の商品を表示する商標と本件商標の構成並びにその指定商品とが具体的にどのように関連し、さらには被請求人(商標権者)による前記冒用・模倣等の意図を直接・間接に示しあるいはそれを十分に推認させるような具体的事実関係の存在等について、証拠に基づき具体的に主張・立証することが必要と解される。
(4)これを本件についてみるに、請求人は、当初の審判請求書における請求の理由において本件商標の不正競争目的に関して全く述べるところはなく、被請求人の答弁書に対する弁駁の段階において初めて前記3(2)(c)に示す不正競争の目的に関する主張をし、甲第13号証ないし甲第21号証を提出したものである。
しかしながら、その主張は、本件商標の採択理由または被請求人のいわゆるフリーライドの意図等に関して単なる推論を述べるのみであって、その提出に係る証拠も、請求人の営業を表彰しあるいはその業務に係る特定の商品を表示する商標と本件商標の構成並びにその指定商品との関連事情を具体的に示すものでなく、また、被請求人(商標権者)による前記冒用・模倣等の意図を直接・間接に示しあるいはその状況を推認させるものとはいえないから、その主張は、主観論の域を出ないものであって本件商標の不正競争目的の存否を実質的に判断することができないものといわなければならない。
すなわち、たとえ、請求人主張の「πウォーター」なる文字(以下、「引用標章」という。)が本件商標の出願時である1989年末において、「人間の体内の3分の2を占める生体水に限りなく近く、超微量の2価3価鉄塩を含んでいる水」(甲第13号証)の意味合いで一般に理解され、かつ、種々の産業分野で利用される状況であったとしても、本件商標は、後掲(イ)に示すとおり、やや太めの円輪内上部位置に「パイエッグ」の片仮名文字を配したものであって、同文字部分は視覚上まとまりよく一体的に看取し得るものであり、かつ、意味上において、前半の「パイ」の文字部分からは「pai(麻雀の駒)」または「pie(小麦粉とバターとを練り合わせ・・・天火で焼いた料理)」等の意味合いをも看取し得るものであって、必ずしも請求人主張の「π(パイ)」のみが想起されるものでもないから、この点において、本件商標より直ちに引用標章を想起し或いはそれと関連づけて考察されるとする合理的必然性は見出せない。
そして、本件審判における請求人主張の全趣旨によれば、引用標章は殆どの場合、「πウォーター」(パイウォーター)の文字全体をもって当該(生体)水を指称するものとして用いられている語であって、これがたとえば「π(パイ)」のごとく略されて普通一般に用いられるという事情はなく、また、請求人に係る引用商標が本件商標の出願時においてその指定商品中の特定の商品(食品)について周知・著名性を有していたとする事情も見出せない。
以上のとおり、請求人の述べる本件商標の不正競争目的の主張は、商標自体の構成において引用標章または引用商標と本件商標との関係が希薄であり、ほかに、被請求人による冒用・模倣等による不正競争の目的を推認するに足りる事情も何ら見出せないから、結局、その主張は、本件商標の不正競争目的の存否を実質的に判断し得ないものというべきである。
(5)以上によれば、本件商標の不正競争目的の理由を前提に本件商標の商標法第4条第1項第10号該当を主張する本件審判の請求は、その前提を欠くものというべく、前記除斥期間の適用を免れるものとすることはできない。その他、本件審判の請求において除斥期間の適用を免れるものとする事由は存しない。
してみれば、本件審判の請求は、不適法なものであって補正することのできないものであるから、商標法第56条において準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (イ)


(ロ)


審理終結日 2001-06-20 
結審通知日 2001-06-28 
審決日 2001-07-12 
出願番号 商願平1-139874 
審決分類 T 1 11・ 01- X (132)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 川津 義人鈴木 幸一 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 野上サトル
高野 義三
登録日 1992-06-30 
登録番号 商標登録第2430898号(T2430898) 
商標の称呼 パイエッグ、パイ 
復代理人 木村 達矢 
代理人 宇佐見 忠男 
代理人 岡 賢美 
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