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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 128
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 128
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 128
管理番号 1042197 
審判番号 審判1998-35156 
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-04-13 
確定日 2001-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2630345号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件審判請求に係る登録第2630345号商標(以下、「本件商標」という。)は、「御柱の里」の文字を横書きしてなり、 平成3年12月27日に出願登録され、第28類「 酒類(薬用酒を除く。)」を指定商品として、平成6年2月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
「本件商標の登録を無効とする」との審決。
2 請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第16号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(2)無効原因
(i) 本件商標は、「御柱の里」と構成されてなるものである。この「御柱の里」とは、「御柱」あるいは「御柱祭」の行われる地方・里の意味を有するもので、それはとりもなおさず長野県諏訪市及び下諏訪町にある諏訪大社の神事として行われる、古くから周知・著名な「御柱祭」・「御柱」に関する意味内容を表示する言葉であって、明らかに、「御柱」・「御柱祭」と密接な関係を有するものであり、「御柱」「御柱祭」そのものを意味観念上表示しているものである。この「御柱の里」は、「御柱のある里」あるいは「御柱の行われる里」などの意味観念から「御柱」そのもの、あるいは「御柱祭」そのものを表示していることは、その構成から明白である。同時に「御柱」「御柱祭」に関する前記証拠類からも明白である。「御柱祭」あるいは「御柱」は、また「諏訪の御柱」とも言われ、かつ単に「御柱」と言うのみで、この「御柱祭」を指すものであると言うほど、周く、知れ渡っているものである。本件商標の「御柱の里」は、明白に「御柱」「御柱祭」に関するものである。したがって、本件商標は「『御柱』あるいは『御柱祭』の行われる地方あるいは里」の意味観念を有するものであり、それは「御柱」・「御柱祭」と意味観念において同一あるいは類似の商標である。
(ii)(イ)商標法第4条第1項第7号について
本件商標の「御柱の里」は、諏訪大社神事であり、諏訪信仰という宗教心によって裏打ちされて、一千年以上に渡って行われて来た「御柱祭」・「御柱」とその意味観念において同一あるいは類似の標章であって、それを示すものである。諏訪地方の人々のみならず、全国に諏訪信仰を信奉する人々は沢山いる。これらの諏訪信仰を信奉している人々以外の人々でも、諏訪大社に参拝に来る人々は、数多くいる。これらの人々にとって「御柱の里」は、あたかも「御柱祭」「御柱」を表示しているものとして認識され、少なくとも「御柱祭」「御柱」と何らかの関連を有するものと認識されるものである。信仰の対象であり、かつ神事を表示するものと認識されている「御柱祭」「御柱」と観念上類似すると思われ、少なくとも何らかの関連あるものと認識される「御柱の里」の本件商標が、諏訪大社にも、またその諏訪信仰にも直接関係のない者によって、恣しいままに、商品に附して使用されるのであれば、諏訪信仰を信奉する者にとっては信仰心上耐えられないものであると認識される虞がある。従って、「御柱祭」「御柱」とは、何ら関係のない者が、単に自己の商売の利に資するためにのみ、文化財の指定まで受けている神事の名称たる「御柱祭」「御柱」と同一の意味内容、あるいは何らかの関連あると認識されるような本件商標である「御柱の里」を商標として使用することは、諏訪信仰を信奉する人々の宗教心を損い、宗教上確立した秩序を著しく傷付ける虞がある。
また、請求人である諏訪大社は前にも記載したように諏訪信仰の中心的存在であり、神社に対する地元のみならず全国の人々から寄せられるその信用は非常に高いものである。このような中に諏訪信仰は成立しており、かつ、その中で「御柱祭」「御柱」が行われ、かつ行われてきたものである。これゆえ、本件商標の如く「御柱の里」は明らかにこの神社の信用と、その神社の行う祭りの信用にただ乗りする如くのあやかり商標であるかの如くのものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(ii)(ロ)商標法第4条第1項第15号について
諏訪地方の人々も諏訪大社の承諾あるいは暗黙の了解のもと、この神事の行われる期間中、各種商品に「御柱祭」あるいは「御柱」の標章を付して使用してきたことも事実である。もちろん、諏訪地方の人々は、この「御柱祭」「御柱」の標章が諏訪大社に帰属するものであることは十分に認識しているものである。したがって、その使用においても神社の品位・品格を傷つけるものではなく、かつその宗教心を損なうものにならないように十分に留意しているものである。このように諏訪大社において、また神社の了解のもと地元において使用されてきた「御柱祭」「御柱」の標章は前記の如く周知・著名なものとなっている。このように周知・著名な標章と観念上同一あるいは類似であり、かつ何らかの関連があると認識される本件商標を、その指定商品に付して使用するならば、それは、あたかも諏訪大社で販売しているか、あるいは少なくとも諏訪大社の関係者、もしくは諏訪大社の承諾を得た者が製造・販売をしているものであるとの誤認を生じさせる虞があるものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(ii)(ハ)商標法第4条第1項第16号について
「御柱祭」「御柱」が宗教的儀式を経て行われることは、多くの人々の知る所である。のみならず、書籍・文献からも明らかである。「御柱祭」「御柱」が、いくつもの神事を経て、総体的に、「御柱祭」「御柱」とされていることも、それらの書籍・文献が示している。またこの事は諏訪地方の人々のみならず、全国的にも広く知られていることである。このように、諏訪大社によって行われる神事の総称である「御柱祭」「御柱」は、その名称のみによっても、いかなる神事、宗教的儀式が行われるかは、諏訪地方の人々のみならず、全国の多くの人々の知っている所である。
このような名称と観念上同一又は類似、あるいは少なくとも何らかの関連を有すると認識される本件商標を、その指定商品に付して使用するならば、それはあたかも、「御柱祭」「御柱」の神事儀式を経た商品であるか、あるいは、「御柱祭」「御柱」の神事儀式に使用するための商品であるかの如き、誤認・誤解を生じさせるものである。従って、本件商標を、その指定商品に付して使用するならば、一定の宗教儀式に関与する、あるいは関与した商品であるとみられ、商品の品質に誤認を生じさせる虜れがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(iii)「御柱祭」「御柱」には、近年、観光とも相俟って、全国から多くの人々が諏訪大社へ参拝しかつ見学に訪れるものである。この「御柱祭」「御柱」に、神社においても、授与品としての、「お守り」、「和菓子」、「御神酒」などに「御柱祭」「御柱」「諏訪の御柱」などの標章を入れて、参拝者に授与するものであり、また諏訪地方の人々も、諏訪大社の承諾あるいは、暗黙の了承のもと、「タオル」、「フィルム」、「酒」、「菓子」などなどの商品に付して使用して来たものである。このように、諏訪大社を中心として、秩序ある「御柱祭」「御柱」「諏訪の御柱」などの標章使用を、旧くからして来たものを、特に「御柱祭」「御柱」とは無関係の者によって、特定商品について独占排他的に使用されることは、この秩序を乱すのみならず、諏訪大社の信用にも関わることである。
本件商標のような商標の登録が数多く認められるとすれば、このような標章を有する神社においては、その防衛上、このような標章の商標出願を多量にせざるを得ない。これによって、また年間の商標出願の量を増し、国の商標審査遅延の一助ともなる。本件商標のように、明らかにあやかり商標であり、他人と密接な関係を有するような標章の登録は認めるべきではなく、登録されても、無効審判によって、すみやかに、その登録を無効とすべきものである。
3 弁駁の理由
(1)被請求人は、「『御柱祭』なるものは乙第1号証ないし同第3号証にも明らかなごとく、『諏訪大社』のほかに『小野神社』、『矢彦神社』、『麻衣酒神社』等、随所に存するものであり・・」と主張し、神社とは切り離しては存在しないものであることを如実に認めている。まさにその通りなのであって、神社信仰なくしては「御柱」、「御柱祭」は存在し得ないのである。神社信仰の上にたって行われ、全国的に周知著名な「御柱」、「御柱祭」が諏訪大社の行う「御柱」、「御柱祭」である。そしてこの「御柱」、「御柱祭」が諏訪信仰によって支えられ行われていることも事実である。「御柱」、「御柱祭」は神事である。被請求人も「・・・請求人のみ『神事』ではなく・・・」と神社の神事であることを認めている。また、「祭」とは神を祭るのであって、神のいない祭などあり得ない。神のいない祭は、祭ではなく、単なるフェスティバルやカーニバルを指すものである。神社の行う祭に神は存在しない如きの主張をするとすれば、それは日本の伝統的祭の本質を全く見落としている。
「御柱」、「御柱祭」は諏訪大社をはじめとして小野神社や矢彦神社においても行われていることは事実である。しかし、一私企業が行っているものでないことも被請求人の主張を待つまでもなく明らかです。日本における神社神道の信仰は旧くから行われてきたものであり、今日、小野神社や矢彦神社が維持・保持されているのはその信仰心に基づく人々の努力によるものである。このことは諏訪大社においても同様である。数多くの人々の支援によって維持されている。神社への信仰心なくして、そのような支援をする人はいないのである。その支援の輪が旧くから全国的規模で広がって行われ、それによって諏訪信仰が独自に広がったものである。これによって全国各地に諏訪神を祭る神社が広がっていったことも事実である。神への信仰による神社の維持、これほどに明白な信仰の表れはない。請求人の主張は何ら独善的信仰心の領域での主張ではない。神社神道としての旧くからの正当な主張をしている。
さらに、被請求人は「・・・独占して営利的利益を得んとする目的がありありと伺うことができ、「信仰心」なる衣の下から明らかに刃が見えているといっても過言ではないものと考えられる。」と主張しているが、この主張は本件審判とどのような関係にあるのか理解に苦しむところである。被請求人の有する本件商標は商標法第4条第1項第7号、第15号及び第16号の規定に反して登録されたもので、その登録を無効にしたいと請求人は主張しているのである。しかし、前記の被請求人の主張は、そのいずれに対する答弁であるのか理解できない。請求人は自己の行う神事・祭事の名称を保護防衛するため必要な各商品区分に登録していることは事実である。恣ままに第三者によって神事・祭事の名称を商標登録されると、その商標の付された商品に欠陥などがあった場合、それらが神社に持ち込まれ、その責任を求められる場合も現実にあるのであって、神社としては心外なことなのである。このような事態を未然に防止するために神社においては神事・祭事の名称を商標として保護している。この点、何人からも批判される理由はないものと思うのである。むしろ、このような請求人の考えの延長上に本件商標が登録されているのであって、一私企業によって独占的に神社の祭事・神事の名称を商標登録することは他人の信用に只乗りし、商品の出所に混同を生じさせる虞があるから許されないと主張しているのである。
(2)被請求人の主張は、請求人が主張している商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第16号の規定のいずれに基づいて答弁しているのか不明であり、単に請求人の主張を批評しているかのごとくで、そこには全く根拠がないものである。
4 証拠方法
請求人は、証拠として、甲第1号証ないし同第25号証を提出した。

第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
結論掲記の審決
2 答弁の理由
(1)「御柱祭」なるものは、乙第1号証ないし同第3号証にも明らかな如く、「諏訪大社」の他に「小野神社」「矢彦神社」「麻衣廼神社」等随所に存するものであり、請求人のみの「神事」ではなく、「諏訪信仰」と直接結びつくものでもない、単なる「祭り」の一種でしかないものである。
「本件商標である『御柱の里』を商標として使用することは、諏訪信仰を信奉する人々の宗教心を損い、宗教上確立した秩序を著しく傷付ける虞がある。」に至っては、全く神がかり的主張であり、請求人の主観を吐露したものであるとしても、前記多数の神社での催しに対し、あまりにも独善的な信仰心の領域で主張しているにすぎないものでしかない。
「本件商標のような商標の登録が数多く認められるとすれば、このような標章を有する神社においては、その防衛上、このような標章の商標出願を多量にせざるを得ないこととなる。これによって、また年間の商標出願の量を増し、国の商標審査遅延の一助ともなる。本件商標のように、明らかにあやかり商標であり、他人と密接な関係を有するような標章の登録は認めるべきではなく、登録されても、無効審判によって、すみやかに、その登録を無効とすべきものである。」については、既に乙第4号証の如く多大な出願を行い、独占して営利的利益を得んとする目的がありありと伺うことが出来、「信仰心」なる衣の下から明らかに刃が見えていると云っても過言ではない。
以上、「御柱祭」なる「祭り」が請求人の地で有名となっていることを全く否定するものではないが、各所に於いて行われている「御柱祭」の中では知られているという事実に過ぎず、信仰心を損うことは微塵もなく、出所の混同を主張する周知・著名性も、その地域の各業者によるものであり、商標自体が全く非類似であること等に鑑み、何ら主張は成り立たないものである。
3 証拠方法
被請求人は、証拠として、乙第1号証ないし同第3号証を提出した。

第4 当審の判断
(1) 商標法第4条第1項第15号について
本件商標「御柱の里」の文字を横書きした構成よりなるところ、「御柱」の文字が、長野県諏訪市の諏訪大社の上社・下杜で、七年目ごとの申・寅の年の春に行われる神事を意味する語であるところ、被請求人の提出した乙第1号証乃至同3号証によれば、塩尻市北小野と辰野町小野とは、市町の境を接して南北に隣接しているところ、塩尻市北小野の「小野神社」、辰野町小野の「矢彦神社」とは隣り合って鎮座されており、ともに信濃国二之宮として隆盛をほこり、信濃国一之宮の諏訪大社の「御柱祭」の翌年の卯年と酉年に「御柱」、「御柱祭」が行われていることが認められる。
しかして、「御柱祭」が「御柱」(おんばしら)と略称されることがあるとしても、「御柱」は尊い「柱」を意味する場合もあり、「御柱」から直ちに「御柱祭」を意味するものと理解することは困難であり、しかも、本件商標は、「御柱の里」よりなるのであるから、誤認混同を生じるおそれは小さいものと言わなければならない。
そうすると、本件商標からは「オンバシラノサト」の一連の称呼、「御柱の行われる里」の観念が生ずるものと認められる。
そうとすれば、本件商標は、「御柱」および「御柱祭」の文字よりなり、「オンバシラ(御柱)」及び「オンバシラマツリ(御柱祭)」の称呼、観念を生ずる請求人の引用標章とは、その称呼、観念及び外観において区別し得る商標というべきであり、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者をして、その商品が請求人または同人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について誤認混同させるおそれのないものである。
(2) 商標法第4条第1項第16号について
本件商標が、「御柱」や「御柱祭」とは別異の商標であることは前記したとおりであるから、本件商標をその指定商品について使用したとしても、これが請求人の神社において祈祷などの一定の宗教儀式を経た商品であるかの如く、商品の品質につき誤認を生ずるおそれはないものというべきである。
(3) 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は「御柱の里」の文字を横書きした構成よりなるところ、該文字の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字でなく、指定商品について使用しても社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもないから、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するという理由を発見し得ないものである。
(4) 結論
したがつて、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第16号及び同第7号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項1号に該当しないものであるから、その登録を無効とすべき限りでない。
以上のとおり、請求人の審判請求は、理由がないから成り立たないものとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、請求人の負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-04-11 
結審通知日 2001-04-24 
審決日 2001-05-08 
出願番号 商願平3-134910 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (128)
T 1 11・ 271- Y (128)
T 1 11・ 272- Y (128)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 祀久山本 良廣 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 江崎 静雄
大島 護
登録日 1994-02-28 
登録番号 商標登録第2630345号(T2630345) 
商標の称呼 オンバシラノサト、オハシラノサト 
代理人 阿部 佳基 
代理人 松田 治躬 

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