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審決分類 |
審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない 029 |
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管理番号 | 1039971 |
審判番号 | 審判1999-35418 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-07-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-08-10 |
確定日 | 2001-05-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4176595号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4176595商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成5年6月30日登録出願、第29類「名古屋コーチンを使用した鶏肉,名古屋コーチンを使用した鶏肉製品,名古屋コーチンの卵,名古屋コーチンの加工卵」を指定商品として、平成9年8月29日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張の要点 1 請求の趣旨 「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決。 2 請求の理由 (1)請求の利益について 請求人は、名古屋コーチンを含む鶏肉及び鶏肉製品の流通(販売等)に関与しており、本件商標の商標権により名古屋コーチンの名称を含む標章の使用に制約を受けるので、本件審判請求をするにおいて利害関係を有する。 (2)無効理由について (2-1)本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができず、自他商品識別力を有しないから、商標法第3条第1項第6号に該当する。 (2-2)具体的理由 (a) 本件商標は「純系名古屋コーチン」の文字を有する。 しかし、「名古屋コーチン」は、甲第3号証に、「鶏の一品種。コーチン種と在来種の地鶏との雑種を名古屋地方で改良したもの。現在は名古屋種として固定。体丸く、羽は褐色。卵肉兼用。」と記載されているように、普通名称である。 また、「純系」も、甲第3号証に、「すべての遺伝子についてホモである固体から自家受精で生じ、同じ遺伝子型を持ち続ける個体群。」と記載されているように、純粋種であることを意味する用語である。 よって、「純系名古屋コーチン」は、「純粋な種類の名古屋コーチン」を認識させるに過ぎず、本件商標の指定商品との関係で需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないから自他商品識別力を有しない。 (b) 本件商標は、2羽の名古屋コーチンの写真又は写実絵を含む。 しかし、名古屋コーチンを示す写真又は写実絵は、単に一般的な名古屋コーチンを認識させるに過ぎず、本件商標の指定商品との関係で需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないから自他商品識別力を有しない。 (c) なお、本件商標には、下側に小さく「名古屋コーチン普及協会」及びその印影が付記されている。 しかしながら、この付記表示の「名古屋コーチン普及協会」の文字列は、単に「名古屋コーチンを普及させるための団体」を認識させるに過ぎず、また印影もごく普通のものであって、その文字列及び印影から、本件商標の指定商品との関係で需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。 「名古屋コーチン普及協会」を含む本件商標の商標権者は、「浅井 章」氏の個人所有であり、もし仮に「名古屋コーチン普及協会」がいわゆる自他商品識別力を有するなどとすれば、名古屋コーチンを普及しようとする団体が、正に名古屋コーチンを普及する目的で、名古屋コーチンを使用した鶏肉等に「名古屋コーチン普及協会」と付することを、個人の名においていっさい排除することになってしまう。 かかる権利行使が仮に許されるとすれば、これはもはや本来何人にも使用を確保すべき、独占適応性を有しない記述・説明的標章の使用を一律に禁止することとなり、これでは商標権者と第三者との利益の調和の上に、自他商品識別力を有する商標を保護して商品流通秩序を維持しようとする商標制度の本来の目的に完全にもとることになる。 そもそも「○○を普及させようとする団体」を表すにすぎない「○○普及協会」に、商標の自他商品識別力を認めたのでは(しかも1個人の名において)、「○○を普及させようとする善意の活動」が著しい制約を受けることは論をまたず、これでは我が商標法の趣旨を完全に逸脱するもので、あってはならない事態である。 なお、上記のように本来独占適応性がない「名古屋コーチン普及協会」なる文字列を含む本件商標が、ひとたび登録されてしまうと、当該登録商標のシール等を媒介として、仕入れ先・販売先・販売数量等の報告義務が課されるなど、本来自由であるはずの名古屋コーチン商品の流通が制約を受ける恐れを否定できないのである。 (d) 以上より、本件商標は、全体として、その指定商品との関係で、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであることは明かである。 (4)以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。よって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。 3 証拠方法 請求人は、証拠として甲第1号証ないし同第4号証を提出した。 第3 被請求人の答弁の要点 1 答弁の趣旨 結論掲記の審決 2 答弁の理由 [1]「(1)請求の利益について」に対する反論 請求人が提出した甲第1乃至2号証からも明らかなように、本件商標の指定商品は「名古屋コーチンを使用した鶏肉,名古屋コーチンを使用した鶏肉製品,名古屋コーチンの卵,名古屋コーチンの加工卵」であるから、「名古屋コーチン」が普通名称であることは、請求人の主張を待つまでもなく、本件商標が自ら証明している。したがって、請求人のみならず、何人も、本件商標の商標権により名古屋コーチンの名称の使用に制約をうけることは、あり得ない。 [2]「(2)無効理由について」に対する反論 [2-1]「名古屋コーチン普及協会」と請求人との関係について 請求人並びに代理人が、「名古屋コーチン普及協会」が実在する協会であること及びその実態を熟知した上で、故意に曲解してなされた主張であることは明白であるので、以下に、その点について述べる。 まず、本件商標の権利者が浅井章という個人となっているが、実際の使用者は、同人が会長を務める法人格を有しない「名古屋コーチン普及協会」であること、同協会が出願人適格を有しないために、同協会の会長である浅井章が出願人となって本件商標を出願したことは、本件の審理の過程において平成10年6月4日付で提出した「早期審理に関する事情説明書」において、既に述べた通りである。 請求人は、この点を充分に承知しているはずである。なぜなら、前記事情説明書に添付した「役員名簿」から明らかなように、請求人の代表者自身が、「名古屋コーチン普及協会」の理事を務めているからである。役員名簿には「理事 愛知県海部郡大治町大字西像字附田106-3 (株)さんわコーポレーション 古川隆二」の名がある。この住所・氏名は、本無効審判請求書に添付された委任状に記載された住所・代表者名と同一であるから、請求人の代表者が「名古屋コーチン普及協会」の理事を務めていることは明白である。 この(株)さんわコーポレーションについて付記すると、同社が登録商標第4090310号「鶏/尾張/純鶏名古屋コーチン/三和/創業昭和8年」を所有しているから「名古屋コーチン」の語にも商標権が及ぶこと、したがって、「名古屋コーチン」の文字を含む商標の使用は、当該商標権を侵害するものである旨の警告を、口頭で受けたという経緯がある。この主張こそ、「(1)請求の利益について」の項で請求人が自ら本件商標に対して主張していることにほかならない。 さらに「名古屋コーチンを使用した○○」を指定商品とする本件商標の場合とは異なり、当該商標は「名古屋コーチン」の語を含んでいながら、指定商品は単に「鶏肉,鶏肉製品」という不適切なものであったため、その点に対して本商標権者である浅井章が異議申立を行っている。 このように、請求人は、「名古屋コーチン」を指定商品とする本件に対し、「本件商標の商標権により名古屋コーチンの名称の使用に制約をうける」ことを理由として審判請求を行っている一方で、自身が取締役を務める会社は、商標の構成中に「名古屋コーチン」の文字を含んでいながら「鶏肉,鶏肉製品」を指定商品とする商標を所有しており、当該登録商標の指定商品が名古屋コーチンに限定されたという通知は未だ受けていない。 名古屋コーチン普及協会は、名古屋市農業センター内に事務局が設けられている。同センターは、名古屋市農業センター条例に基づいて設置され、「名古屋コーチン普及協会」は同センターにおける名古屋コーチン復活の取り組みの一環として設けられたものである。 また、「名古屋コーチン」は、上記の通り、名古屋市がその普及を積極的に支援すると共に、愛知県も、種の保存に取り組むことによって、地域産業の一つとしてその振興を図っている。その関係から、同協会では、愛知県及び名古屋市の関係各部署、例えば愛知県からは、愛知県農業水産部畜産課長・愛知県畜産総合センター種鶏場長など、また、名古屋市からは、名古屋市農政緑地局長・名古屋市経済局長などを顧問として迎えるなど、名古屋市や愛知県とも密接な関係を有している。 したがって、このような背景を有する「名古屋コーチン普及協会」こそ、請求人のいう「名古屋コーチンを普及しようとする団体が、正に名古屋コーチンを普及する目的で、名古屋コーチンを使用した鶏肉等に『名古屋コーチン普及協会』と付する」者であることにほかならない。そして、同協会が「名古屋コーチン」と称するさまざまな鶏肉の存在(充分な運動をさせずに飼育されたもの、外国で飼育されたものなど、不適切な飼育をされたもの)が氾濫する事態を憂慮して、真に「名古屋コーチン」と呼ぶにふさわしい鶏肉の普及を図るため、その品質を保証するマークとして、本件商標を採用したものである。請求人の代表者は、同協会の理事でもあるから、この経緯は熟知しているはずである。 また、同協会は、このような組織背景を有しているから、任意団体とはいえ、会長・事務局長・理事などの役員を有し、厳密な規約に基づき、組織だった活動を行っている。当然、本商標の出願の経緯についても、全て理事会において検討・報告されているので、同協会の理事である請求人の代表者が、「この出願によって付与される権益の全ては、名古屋コーチン普及協会会長として名古屋コーチン普及協会の利益のためのみに行使し、他のいかなる目的・立場でも行使いたしません」「名古屋コーチン普及協会会長の職を離れた時は、この出願によって付与される権益の全てを、後継名古屋コーチン普及協会会長に直ちに無条件で無償譲渡いたします」と書かれた本件商標権者から同協会あての念書の存在(その写も既に前記事情説明書に添付して提出してある)、及び本件商標の登録の真の目的を知らなかったはずがない。 それにも拘らず、今回の無効審判請求において、同協会が「名古屋コーチンを普及しようとする団体が、正に名古屋コーチンを普及する目的で、名古屋コーチンを使用した鶏肉等に『名古屋コーチン普及協会』と付すること」を目的として所有する登録商標に対し、同協会の理事目らが、まるでその背景を知らぬかのように「個人の名においていっさい排除することになってしまう」などと主張するのは、全く不自然というほかない。 また、請求人が(c) の文末で主張する「本来自由であるはずの名古屋コーチン商品の流通が制約を受けるおそれを否定できないのである。」もまた、不当なものである。 任意の団体が、業界における品質の保持を図るために、一定基準に達した商品(役務)だけに特定のマークを付する行為により、当該業界において「流通が制約を受ける」ものではないことは、国際羊毛事務局により世界的規模で行われている「ウールマーク」を筆頭に、多くの産業において行われている現実から明らかである。これら任意の団体は、当該マークを付さない商品の流通を制限する法的拘束力を有しないからである。したがって、「○○普及協会」を含むいずれの商標が登録されたとしても、当該業界における流通の自由を制約するものではないから、「本来自由であるはずの名古屋コーチン商品の流通が制約を受けるおそれを否定できないのである。」という請求人の主張は失当である。 [2-2]本件商標の識別力について 以上、ここまで権利者は、「名古屋コーチン普及協会」の名称を同人の名義で有することの正当性について、「名古屋コーチン普及協会」の存在をもとに述べてきたが、以下、本件商標の登録性について述べることとする。 まず、「名古屋コーチン普及協会」の語自体に登録性があるという点について述べる。商標法第3条第1項第5号についての「商標審査基準」によれば、「行政区画名と業種名とを結合してなる会社名については、普通に採択される名称である場合でも、他に同一のものが現存しないと認められる時は、この限りでない」と規定されている。この点は、組織の名称と認められる名称であっても同様であると解される。したがって、登録査定時において「名古屋コーチン普及協会」という組織が同協会ただ一つであれば、上記審査基準に照らしても、当然に充分な登録性を有するものである。 この点については、「普及協会」あるいはそれに類する語を含む、多数の登録商標の存在により立証されるものと思料するので、参考までにその一部を例示する。 (1)登録商標第1539585号 「日本手づくりネクタイ普及協会」(ネクタイ) (2)登録商標第1709975号 「日本健康普及協会」 (磁気治療器など) (3)登録商標第2131518号 「霊園普及協会」 (石材など) (4)登録商標第2386954号 「日本ディスボーザー普及協会」(家庭用電動ディスポーザーなど) (5)登録商標第2513986号 「日本自然塩普及会」 (塩) (6)登録商標第3151737号 「日本ステンドグラス普及協会」 (建築用ガラス) 上記の如く、そもそも「商品名+普及協会」より構成される標章を、個人もしくは法人が商標登録することは、何ら差し支えないことは、過去の登録例が示す通りである。 さらに、本件商標は、上述の通り、充分な識別力を有する「名古屋コーチン普及協会」の文字が書かれているのみならず、上部に独特な毛筆体で「名古屋コーチン」の文字が書かれ、中央部には、名古屋コーチンの雄鶏が手前に非常に大きく、雌鶏が後方に小さく描かれている。このような特徴的構成を有する本件商標が充分な識別力を有することは、極めて明白である。 以上の通り、本請求は請求人にとって利益のないものであるし、「名古屋ゴーチン普及協会」と請求人との関係からみても、また本件商標の識別力についてみても、請求人の申立てはいずれも理由のないものであって、本件商標は、自他商品識別標識としての機能を充分に有する標章である。 3 証拠方法 被請求人は、証拠として乙第1号証ないし同第7号証[証拠方法の(1)を乙第1号証と、証拠方法の(2)を乙第2号証と、証拠方法の(3)を乙第3号証と、証拠方法の(4)を乙第4号証と、証拠方法の(5)を乙第5号証と、証拠方法の(6)を乙第6号証と、証拠方法の(7)を乙第7号証と置き換えた。]を提出した。 第4 当審の判断 商標法第3条第1項第6号において、自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは、日常の消費物資等について、同一商標の使用をした商品は、以前に購入した商品と同等の品質があるだろうとの予測の下に購入するのが実情だから、商標のもつべき本質的機能としては自他商品又は自他役務を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させることができれば十分である旨を規定しているものと解すべきである。 これを本件についてみるに、本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、本件商標の構成中「純系」の文字部分は、「すべての遺伝子についてホモである個体から自家受精で生じ、同じ遺伝子型を持ち続ける個体群」の意味を有するものである。 また、本件商標の構成中「名古屋コーチン」の文字部分は、「鶏の一種である名古屋コーチン」の意味を有するものであり、「純系名古屋コーチン」の文字部分は、「純粋な鶏の一品種である名古屋コーチン」の意味合いを認識させるものである。 さらに、本件商標の構成中、中央に表された鶏の図形は、上部の「名古屋コーチン」の文字部分よりみて「名古屋コーチン」を表したものとみるのが相当である。 そうとすれば、本件商標の構成中「純系名古屋コーチン」の文字及び鶏の図形部分は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。 ところで、被請求人の提出した乙第1号証によれば、「名古屋コーチン普及協会規約」の「第3条」の目的には、「この会は、名古屋コーチンの生産・供給体制を確立して、その普及を推進し、併せて養鶏経営の安定に資することを目的」とし、また、同規約「第4条」の事業には、「(1)名古屋コーチン普及宣伝のための事業」及び「(2)名古屋コーチンの保存、改良、増殖の関すること」、その他の事業を行っているものである。 さらに、同規約の第3章において、「会員」について定められている。 してみれば、本件商標の構成中の「名古屋コーチン普及協会」の文字部分は、一定の目的で事業を行っている団体を表示したものであって、商標のもつべき本質的機能としての自他商品を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させるべき、自他商品の識別標識としての機能を十分果たし得るものである。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項1号に該当しないものであるから、その登録を無効とすべき限りでない。 以上のとおり、請求人の審判請求は、理由がないから成り立たないものとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、請求人の負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本 件 商 標 (注)色彩については、原本を参照されたい。 |
審理終結日 | 2001-03-09 |
結審通知日 | 2001-03-23 |
審決日 | 2001-04-09 |
出願番号 | 商願平8-17449 |
審決分類 |
T
1
11・
16-
Y
(029)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 久成 |
特許庁審判長 |
廣田 米男 |
特許庁審判官 |
宮下 行雄 大島 護 |
登録日 | 1998-08-14 |
登録番号 | 商標登録第4176595号(T4176595) |
商標の称呼 | ジュンケイナゴヤコーチン、ナゴヤコーチンフキューキョーカイ |
代理人 | 飯田 堅太郎 |
代理人 | 菅原 正倫 |
代理人 | 飯田 昭夫 |