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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 018
管理番号 1038130 
異議申立番号 異議1997-90161 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-10-17 
確定日 2001-02-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第4013244号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4013244号商標の登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4013244号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年9月27日登録出願され、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第18類「毛皮,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」を指定商品として、平成9年6月20日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、別掲に示したとおりの構成よりなり、全体として「ポロプレーヤー」の観念を生ずるものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンによって主宰されている被服類、眼鏡その他のファッション関連用品の製造、販売企業である。そして、申立人は、甲第2号証ないし甲第4号証に示すマレットを振り上げ騎乗してポロ競技を行っているポロプレーヤーを表示した標章(以下「引用標章」という。)を、申立人が製造、販売する商品及び直営店、専門店に長年使用しており、本件商標の出願日以前から取引者・需要者の間に広く認識されている著名な商標であるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、申立人等又は申立人等と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第第15号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、つぎのとおりである。
〈取消理由〉
本件商標は、ポロ競技を人馬をもって象徴的に表してなるものと認められるから、その構成全体より「ポロ」の称呼、観念をも生ずると認められる。
引用標章中の「Polo」「RalphLauren」、「Polo」「byRalphLauren」と共に表されているいわゆる「ポロプレーヤー」図形部分は、アメリカの著名なデザイナーであるラルフローレン氏の考案によるもので、1970年頃にはアメリカでは著名になり、日本では前記「ポロプレーヤ一」図形、「Polo」「Ralph Lauren」の各文字及びこれらの組み合わせの商標を付した「ネクタイ」、「洋服」のファッションの衣料等の販売活動に当たり、我が国においても、少なくとも本件商標の出願前、既に著名なものとなっていて、「ポロ」と略称されていたと認められるものである。
そうとすると、前記「ポロプレーヤー」の図形よりは、「ポロ」の称呼、観念をも生ずると認められる。
してみれば、本件指定商品と前記「ポロプレーヤー」図形の使用に係る商品とは、共に装粧品といわれ、同一店舗で取り扱われる場合も少なくなく、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用するときは、該商品が、恰も申立人若しくは申立人と何らかの関係を有する者の製造.販売に係る商品であるかの如く、その出所について混同をおこすおそれがあるものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見
上記3の取消理由通知に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べた。
(1)取消理由通知書の判断は相当ではなく、本件商標はその登録を維持すべきものである。以下、その理由を詳述する。
(2)本件商標は、疾走する右横向きの馬と、この馬の前方に、棒状のものを左斜め上方の向きに所持して立つ人物を描いてなるものであり、第18類「毛皮,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」を指定商品として、平成7年9月27日に出願され、平成9年6月20日に設定登録された商標である。
これに対して、申立人の引用標章は、馬に騎乗した人物が、右手に持ったマレットを振りかざしている様子を左斜め前方から描いた「競技中のポロプレーヤー」の図形である。
そこで、本件商標と引用標章を比較して見ると、両者が以下のように対比的に観察される場合には、一見して明らかに構成の軌が異なるので、この判然と区別し得る外観上の差異により、誤認混同されないことは明らかである。 また、両者は、馬とポロ競技のプレーヤーと思わしき人物を描いている点で共通するとしても、その構図、表現方法において根本的な差異があるので、市場において、時と処を異にして隔離的に対比される場合についても、誤認混同されるおそれは、全く無いものである。
なぜなら、疾走する右横向きの馬と、この馬の前に立つ人物を描いていなる本件商標の構図は極めて独創的であり、本件商標は、この特異な外観によって取引者・需要者に把握されるものであるから、馬に騎乗した「競技中のポロプレーヤー」を左斜め前方から描いた引用標章と誤認混同されるようなことは、およそ考えられないものである。また、本件商標は、人物の黒い帽子、半そでのポロシャツ、乗馬靴と、白いズボン、腕、顔及び首が、コントラストをもって表現されているので、馬に騎乗した「競技中のポロプレーヤー」を、黒塗りの表現で描いた引用標章とは、看者の受けるイメージとしても、全く異なるものと言うべきである。
(3)そして、本件商標は、ある人からは、「ウマノマエニタツジンブツ」と称呼され、「馬の前に立つ人物」のイメージで取引きされるかも知れないし、別の人からは、「ヒトノハイゴヲカケルウマ」と称呼され、「人の背後を駆ける馬」のイメージで取引きされるかも知れない。要するに、本件商標は、その特異な外観によってのみ取引者・需要者に把握されるものであって、特定の称呼、観念を生じさせるものとは認められない。したがって、仮に引用標章が、取引者・需要者間で、「ポロ」と称呼し、観念されているものだとしても、両商標は、称呼及び観念の点では比較すべくもないと判断されるべきである。
よって、いかに引用標章が、ラルフ・ローレンが自己のデザインした商品に使用する商標として、需要者に知られているものだと仮定しても、それは、「競技中のポロプレーヤー」を描いたものとして取引者・需要者に記憶されているのであって、本件商標は、「競技中のポロプレーヤー」を描いたものではなく、「ポロ」の称呼及び観念が生じるものでもないから、本件商標によって、引用標章が想起されるようなことは、全く有り得ないと言わざるを得ない。
そうとすれば、本件商標のような、引用標章とは別異の商標が、「毛皮,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」の商品に使用されたとしても、申立人あるいは同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれは、全く無いものと判断されるのが相当である。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではなく、商標法第43条の3第2項の規定に基づいて取消されるべきものではないと確信する。
よって、本件商標の登録維持を求めるものである。

5 当審の判断
(1)申立人より提出された甲第3号証の「男の一流品大図鑑」(講談社 昭和53年7月20日発行)の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・フアツシヨンズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シヤツ、セーター、靴、カバンなどのデサインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コテイ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギヤツツピー」の主演俳優ロバート・レッドフオードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPHLAUREN」の文字及び馬に乗つたポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、同じく甲第7号証の昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
他に、これを覆すに足りる証拠はない。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決(東京高裁平2(行ケ)183、平成3.7.11)がある(甲第5号証)。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、上記の各商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として遅くとも昭和55年頃までには既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(2)本件商標は、別掲に表示するとおりの図形よりなるところ、疾走する右横向きの馬を描き、その馬の前に棒状のもの(マレット)を所持して立つ人物を描いてなるものであるが、該人物が特徴ある棒状のもの(マレット)を所持していることにより、ポロ競技を人馬をもって象徴的に表してなるものとみるのが相当といえるものであり、その構成全体より「ポロ」の称呼、観念を生ずると認められるものである。
この点について商標権者は、本件商標の構図は極めて独創的であり、「競技中のポロプレーヤー」を描いたものではなく、「ポロ」の称呼及び観念が生じるものではない旨主張しているが、一方で、本件商標と引用標章は、馬とポロ競技のプレーヤーと思しき人物を描いてなる点で共通していることを認めており、かかる主張は前記の認定判断に照らし失当であり、採用することができない。
(3)他方、申立人が甲第2号証ないし甲第4号証で表示する引用標章は、 その構成に係る「Polo」「RalphLauren」、「Polo」「byRalphLauren」等の文字と共に表されているいわゆる「ポロプレーヤー」の図形部分は、アメリカの著名なデザイナーであるラルフ・ローレンの考案によるもので、1970年頃にはアメリカでは著名になり、前記「ポロプレーヤ一」の図形、「Polo」「Ralph Lauren」の各文字及びこれらの組み合わせよりなる商標を付した「ネクタイ」、「洋服」、「眼鏡」等が販売され、我が国においても、少なくとも本件商標の出願前、既に著名なものとなっていて、これら引用標章が「ポロ」と略称されていたことが認められる。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、前記実情から、これに接する取引者、需要者は、その構成に係る馬とポロ競技のプレーヤーの図形に注目し、前記周知になつているラルフ・ローレンに係る馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形標章を連想し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(4)以上によれば、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標


異議決定日 2000-03-29 
出願番号 商願平7-100175 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (018)
最終処分 取消  
前審関与審査官 福島 昇 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 板垣 健輔
上村 勉
登録日 1997-06-20 
登録番号 商標登録第4013244号(T4013244) 
権利者 株式会社メイポール・エス・アー・ジャパン
代理人 曾我 道照 
代理人 溝上 哲也 
代理人 溝上 満好 
代理人 岡田 稔 
代理人 黒岩 徹夫 

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