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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 006
管理番号 1037909 
審判番号 審判1999-35047 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-25 
確定日 2001-04-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第4116413号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4116413号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成8年9月6日登録出願、後掲に示すとおり「フローマチック」の片仮名文字を横書きに表してなり、第6類「バルブ」を指定商品として、同10年2月20日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第5号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第19号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきである。
(1)商標法第4条第1項第10号該当について
本件商標は、「フローマチック」の片仮名文字よりなり、第6類「バルブ」を指定商品とするものである。
これに対して、請求人が証拠として引用する商標「FLOMATIC」商標(以下、「請求人商標」という。)からは、「フロマティック」「フローマチック」「フローマティック」の称呼が生じるため、両商標は類似するものというべきである。また、請求人の業務に係る商品は「バルブ」であることから、本件商標に係る指定商品と同一であり、請求人商標は、本件商標の商標登録出願前に日本国内において需要者の間に広く認識されている商標である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものである。以下にその理由を述べる。
(a)請求人は、1933年米国において 「White Flomatic Corporation」という社名の下に設立された会社であり、1959年に合併により現在の社名である「Flomatic Corporation」となった。請求人は、会社設立当初から今日に至るまで、会社名と同一の文字である「FLOMATIC」を自己の業務に係る商品である「バルブ」に商標として使用し、製造販売を行っているものである(甲第1号証:Company History)。また、1991年には、請求人の本国である米国において、「FLOMATIC」及び「FLOMATICの装飾文字」について「バルブ」を指定商品として、自己の長年の使用事実を確認するため、商標登録を受けている(甲第2号証:登録第1659640号,登録第1662377号)。
(b)1988年以降の商品カタログ(甲第3号証)に示す通り、請求人の製造販売する「バルブ」の種類は、Foot Valves,Check Valves,金属製バルブ,プラスティック製バルブ等多岐にわたり、米国国内はもとより、広く海外へも輸出されている。販売数量は年間50〜60万個に及び、フランス、ドイツ、イギリス、ベルギー、イタリア、スペイン、メキシコ及び日本にそれぞれの販売店を有している(カタログの背表紙)。
日本では、「株式会社タブチ」(住所:大阪市平野区瓜被南2-1-56)が独占的販売店となって長年にわたり請求人商標「FLOMATIC」を付した「バルブ」を日本国内で販売している(甲第4号証:米国代理人からの書状)。ちなみに、商品「バルブ」について1997年度は、7,317ドル、1998年度の同社の売り上げは36,358ドルであり、販売単価を15ドルとすればそれぞれ約500個、約2,500個のバルブを販売したことになる。
本件商品は、一般消費者自らが購入して使用するものではなく、給水・排水システム等を施工する水道工事業者が購入し、家庭用、業務用の水処理施設に配設されるものである。一般の消費者に大量に消費される商品と異なり、事業者間で取り引きされるという本件商品の特殊性に鑑みれば、同社の本件商品の取扱量はかなりの数であるといえる。したがって、本件商品の取引業者であれば、「FLOMATIC」は請求人の業務に係る商品を表示するものとして認識していたものというべきである。また、同社は、本件商標の商標登録出願日より前の平成7年12月18日には、社団法人水道協会からバルブ類についての型式承認を得ているのであるから、本件商品の取引業者間では、バルブについての請求人商標の存在は、広く知られていたものといえる(甲第5号証)。さらに、請求人は、インターネット上にホームページを開設しており(http://www.flomatic.com)、請求人が「バルブ」の著名なメーカーであり、「FLOMATIC」が会社名でもあり商標としても使用されている事実を我が国からも容易に知ることが可能である。
(c)上述のように、請求人は1933年に会社を設立して以来65年以上にわたり、請求人商標「FLOMATIC」を「バルブ」について使用し続けており、販売先も米国国内だけではなく世界各国に及んでいる。したがって、請求人商標「FLOMATIC」の米国における著名性、使用期間及び使用地域、商品の販売地域に鑑みれば、本件商標の商標登録出願前に、商品「バルブ」についての請求人商標「FLOMATIC」は、日本国内の同業者、取引者の間においても、広く認識されていたものというべきである。
(d)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(2)第4条第1項第19号について
(イ)上述のように、請求人商標「FLOMATICJは、65年以上にわたり世界各国で使用されてきたものであり、請求人の業務に係る商品「バルブ」を表示するものとして日本国内又は外国における需要者間で広く認識されているものである。したがって、請求人の業務と関連のある業務を営む者は、商品「バルブ」については、請求人商標「FLOMATIC」及びそれと類似する商標を使用すると、商品の出所について誤認、混同を生じるであろうことは、当然に予測すべきであり、同一類似の商標の採択は避けるべきである。また、請求人は本件商標の出願前には、請求人商標「FLOMATIC」について型式承認を得ていたのであるから、それと類似する商標「フローマチック」を採択することは、著名商標「FLOMATIC」の名声を利用して不正の利益を得る目的が推認されるものというべきである。
(ロ)したがって、請求人商標と類似の商標「フローマチック」をあえて採択し、出願して商標登録を受けることは、不正の目的を有しているものというべきである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至乙第5号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号非該当について
(a)請求人商標の長年使用の理由をもって、直ちに需要者、取引者間に広く知られたとはいえないものであり、そのアメリカでの登録をもって請求人の商標が広く知られたことを示すものでない。
(b)請求人は、「FLOMATIC」製品の事業実績を示すものとして、甲第3号証乃至甲第5号証を提出しているが、商品カタログ(甲第3号証)は当業者であれば誰でも作成、配布し、自社の商品の宣伝、普及を図るのが通例であるから、商品カタログを作成し、配布したことをもって、請求人商標「FLOMATIC」が需要者、当業者間に周知となっていたとはいえない。
また、請求人の商品の販売量は年間50〜60万個ありフランス、ドイツ、イギリス、ベルギー、イタリア、スペイン、メキシコ、日本等広く海外にも販売され、それぞれの国に販売代理店を有しているとの主張は、その販売量について具体的な証拠がないから、単なる主張に止まるものであり、仮に事実としても、この程度の数量では、バルブの世界的な生産量からみれば、シェアは1%にも満たないと推定されるものである。そして、各国への販売実績についても、その販売量及びシェアが明らかでないので、単に取り引きされ、販売され、販売代理店を有していることをもってしては、請求人商標がこれらの国若しくは世界的に周知であるとはいえない。
(c)被請求人が請求人の会社規模、年間売上額等を調査したところ、従業員数は50〜60人程度の小企業であり、売り上げは8百万$〜1千万$であり、その内、米国での売り上げが87%、輸出が13%である(乙第1号証)。そして、請求人の全売上額を日本市場におけるバルブ生産額と比較して見た場合においても、0、24%乃至0、33%というように極めてわずかなものであり、ましてや米国内または世界的に見た場合は、微々たるものに過ぎない(乙第2号証)。
さらに、請求人の日本における販売代理店である株式会社タブチの請求人の商品の売上額と日本市場のバルブ生産額とを比較すれば、微々たるものに過ぎず、しかもその売り上げ実績として示されている年は何れも本件商標の出願の日の後である。
(d)たとえ、「FLOMATIC」製品が国内の代理人会社である株式会社タブチにより型式承認を受けたとしても、それのみでは取引業者間で広く知られるに至るとは言えないものであるばかりでなく、上記会社による請求人商品の売上額及び日本市場の生産額と比較した比率を見ても、日本国の取引業者間で広く知られたとはいえない。
また、被請求人が社団法人日本水道協会の型式承認のデータベースを検索したところ、承認された型式のバルブについては、型式・略号、呼び径、器具品名、株式会社タブチの商号及び登録番号が記載されているが、請求人の商号及び請求人の業務に係る商品「バルブ」の商標「FLOMATIC」はどこにも見当たらない(乙第3号証)。
(e)日本の販売代理店である株式会社タブチのホームページを検索したところ、請求人の商号はもとより、請求人の業務に係る商品「バルブ」の商標「FLOMATIC」も掲載されていない(乙第4号証)。
(f)請求人のホームページを検索したところ、日本の販売代理店の記述もないばかりでなく、日本向けの広告と見られるような記事も掲載されていないものであるから、請求人の商品を日本に普及するための努力をしているとは到底いえないものであり、我が国の事業者間に知られるに至ったとはいえないものである(乙第5号証)。
また、請求人の提出した甲第4号証の代理人の記述中「米国における請求人の市場占有率は30〜36%である」と述べている点については、その根拠が不明であるので不知である。
以上述べたとおり、請求人の提出に係る全証拠及び被請求人の調査した各証拠を総合勘案しても、請求人商標「FLOMATIC」が本件商標の出願の日前に全米国内はもとより世界的にも事業者間に広く知られていたとは言えないばかりでなく、日本においても広く知られていたとは到底いえないものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
(a)請求人は、本件商標は請求人商標の名声を利用して不正の利益を得る目的が推認されると主張しているが、請求人商標「FLOMATIC」は、前述したとおり、本件商標の出願の日前に米国内はもとより世界的にも事業者間に広く知られていたとはいえないものであり、日本においても広く知られていたものとは到底いえないものであり、かつ、請求人及び請求人の日本における販売代理店である株式会社タブチは、請求人の業務に係る商品「バルブ」について使用している商標「FLOMATIC」を日本において普及するための宣伝、広告の努力を全くと言っていいほどしていないものである。
(b)「FLOMATIC」について社団法人日本水道協会の型式承認を得ていたものであるとしても、そのことのみでは事業者間に周知されるものでなく、その日本における販売も本件商標の出願の日以後のものであり、型式承認のデータベースには「FLOMATIC」は掲載されておらず、しかも、その承認申請をした請求人の日本における販売代理店たる株式会社タブチのホームページにも「FLOMATIC」に関する記事は皆無であるから、本件商標の出願日前に請求人商標「FLOMATIC」がその業務に係る商品「バルブ」を表示するものとして著名であったとはいえない(乙第3号証、乙第4号証)。
(c)商品「バルブ」の製造、販売を業とする被請求人は、請求人の商標「FLOMATIC」の存在すら知らなかった(知り得なかった)ものである。被請求人は商品「バルブ」の製造、販売を業とするものであるが、その種類も多岐に亘るため、これらを識別し、需要者に覚え易く、かつ、宣伝効果もある商標の必要性を痛感して商標出願をしたものである。そこで、この商標を採択するに当たり、商品が水等の流体に使用するものであることから、これを意味する英語「FLOW」に由来する「フロー」と「automatic」の「matic」(マチック)の部分をとって「フローマチック」と合成したものを考案したものである。
そうしてみると、本件商標は、他人の著名商標の名声を利用して不正の利益を得る目的があるとは推認できないばかりでなく、不正の目的をもって出願し、登録を受けたものでないことは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同法第4条第1項第19号の何れにも該当するものでないから、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきでない。

4 当審の判断
本件商標は、「フローマチック」の片仮名文字を表してなり、第6類「バルブ」を指定商品とするものであること前記のとおりである。
本件審判において、請求人は、「FLOMATIC」の欧文字よりなる標章は、請求人会社がその業務に係る商品「バルブ」を表示するものとして本件商標の登録出願前において需要者の間に広く認識せられた商標(以下、「請求人商標」という。)であって、本件商標はこれと類似するものであり、かつ、不正の意図をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号及び同第4条1項19号に違反して登録されたものであるとして、その登録無効の理由を述べている。
これに対して、被請求人は、請求人提出に係る書証(甲各号証)によっては、請求人商標の周知・著名性は客観的に明らかでなく、また、本件商標は被請求人が独自の採択理由により使用するものであるとして、請求人主張の不当性を述べている。
そこで、請求人商標が本件商標の登録出願時において我が国需要者の間において広く認識せられたものであったか否かについて、請求人提出の甲各号証を検討する。
(1)甲第1号証は、1998年時点における「FLOMATIC CORPORATION/フロマティックコーポレーション」(以下、「請求人会社」という。)に係る「FLOMATIC(VALVES)」、「COMPANY HISTORY AND PRODUCTS」又は「History and Milestones」なる見出し表示の二枚綴りの社史及び取り扱い製品に関する解説と認められる。
同解説によれば、ニューヨーク所在の請求人会社は、バルブ(特に家庭用、都市用の水処理、廃水処理用)の製造業者であり、前身を「White Flomatic Corporation」として1933年に会社を興し、当初は、主として金属製のチェックバルブ、レギュレータ、工業用及び家庭用の温水循環器を製造し、その後、水処理及び廃水処理用のバルブに移行していったこと。また、請求人会社は1975年にフランスのバルブ会社「Socla」と共同し、自動制御バルブ及び逆流防止バルブの設計、製造を初めて導入し、或いは、1992年に最初に無鉛金属バルブ(ENVIRO-CHECK)を導入するなどして業務を拡大し、さらに、世界的な企業であるデンマークのDanfoss Groupの水処理バルブ事業部門のメンバーとなったこと。そして、現在、その製造・取り扱いに係る家庭用、工業用、都市用、注流用のチェックバルブ、フットバルブ、自動油圧制御バルブ及び逆流防止バルブは、アメリカの主要都市(ロサンゼルス、ボストン、ニューヨーク等)その他の都市において使用されている等の記述が認められる。
しかしながら、同証拠によっては、請求人商標を付したバルブがどの時期にどの位の数量のものが生産され、どの地域に販売されたものかという具体的な取引状況が明らかでなく、その販売実績が米国国内の主要都市その他の地域において相当程度の市場シェアを有する旨述べる請求人の主張を十分に理由づけるものとはいい難く、請求人商標の周知・著名性は客観的に証明されない。
(2)甲第2号証は、請求人商標のチェックバルブ等に関する米国商標登録(登録第1659640号,登録第1662377号)の登録証写しと認められるところ、商標登録の事実及び最初の使用が1959年であったこと等の点は認め得るとしても、請求人商標の具体的な使用状況又は同製品の販売状況までは明らかでないから、その販売実績が米国国内の主要都市その他の地域において相当程度の市場シェアを有する旨述べる請求人の主張を十分に理由づけるものとはいい難く、請求人商標の周知・著名性は客観的に証明されない。
(3)甲第3号証は、請求人会社に係るチェックバルブほか各種のバルブに関して制作された全8部に亘る英文による製品写真入りの商品カタログ、パンフレット類又は価格表ないしは製品リスト類であって、古くは1986年(昭和61年)、1986年(昭和63年)及び1989年(平成1年)にそれぞれ制作されたものであり、比較的最近のものでは1994年(平成6年)から1996年(平成8年)にかけてそれぞれ制作されたものである。そして、これら印刷物の表紙及び裏表紙、或いは、当該製品の紹介欄又は現物写真中(刻印使用)にも請求人商標が表示されていて、請求人商標は当該製品の商標として継続的に使用されてきた状況が窺われる。
しかしながら、同証拠によっては、請求人会社に係るいわゆるFLOMATIC製品が一定程度継続的に米国を中心とする市場の流通に供されたことを窺わせるものとしても、どの時期にどの位の数量のものがどの地域に向けて販売されたものかという具体的な取引状況までは明らかでないから、その販売実績が米国国内の主要都市その他の地域において相当程度の市場シェアを有する旨述べる請求人の主張を十分に理由づけるものとはいい難く、請求人商標の周知・著名性は客観的に証明されない。
(4)甲第4号証は、請求人会社の事業概況及び請求人商標に関して米国代理人(事務所)「Heslin & Rothenberg,P.C.」所属の「Kevin P.Radigan 」氏に係る1998年12月7日付我が国請求人代理人(事務所)宛の文書と認められるところ、同文書によれば、『請求人に係る各種バルブは,米国をはじめ広く海外へも輸出されていて、販売数量は年間50万〜60万個に及び、米国における市場占有率は30%〜36%を占め、家庭用水処理用チェックバルブにおいては米国最大の販売会社であること。また、フランス、ドイツ、イギリス、ベルギー、イタリア、スペイン、メキシコ及び日本にそれぞれの販売店を有しており、日本では「株式会社タブチ」(住所:大阪市平野区瓜被南2-1-56)が独占的販売店となって日本国内で販売していること。因みに、1997年は7,317ドル、1998年は36,358ドルのものが販売されたこと』等の事柄が紹介されている。
しかしながら、それら記述内容は、その裏付けとなる具体的な資料を何ら伴うことなく一方的に述べるのみであってみれば、該事実は俄に信じ難く、その販売実績が米国国内の主要都市その他の地域において相当程度の市場シェアを有する旨述べる請求人の主張にも拘わらず、同主張を十分に理由づけるものとはいい難く、請求人商標の周知・著名性は客観的に証明されない。
また、仮に我が国における販売実績(金額)が米国代理人の述べるとおりであるとしても、前記請求人会社に係るカタログ類の当該記載によれば、例えば「RPZ」タイプのバルブ(いわゆる逆流防止バルブ)の単価はほぼ200$(ドル)前後とされているから、前記金額を同単価で除した場合、1997年は約36ヶ,1998年は約180ヶであって、この程度の取り扱い数量をもって我が国国内における「FLOMATIC」製品又は請求人商標の周知性を客観的に推し量ることは到底困難であって、その周知性の理由を根拠に述べる請求人の主張は採用の限りでない。
請求人は、この点に関し、前記販売単価を15ドルとしてそれぞれ約500個、約2,500個としているが、後述(5)に示す機種(国内代理店会社が型式承認登録を受けたもの)との関係よりして、当該輸入に係る機種のバルブは「RPZ」タイプのいわゆる逆流防止機能を備えた一体構造のバルブであったとみるのが自然であるから、この実情を看過して当該単価を低く見積もって述べる請求人の主張は妥当でなく、採用することができない。
(5)甲第5号証は、請求人商標(「FLOMATIC」)に係る「RPZ」タイプのいわゆる逆流防止機能を備えた一体構造のバルブ(以下、「型式承認バルブ」という。)の邦文パンフレット及び同仕様書を添付してなる株式会社タブチに係る平成7年10月某日付の「給水器具(バルブ類)の型式承認申請書」に対して、同年12月18日付発行の株式会社タブチ宛社団法人日本水道協会に係る「給水器具(バルブ類)の型式承認登録証」と認められる。同記載によれば、器具の名称を「バルブ類(減圧式逆流防止器)」とし、型式または略号を「50RPZ」とし、或いは、呼び径を「50(ミリメートル)」とすること、その他、登録年月、有効期限等の登録事項が記載されていることよりして、請求人主張の国内代理店会社である「株式会社タブチ」が請求人に係る「RPZ」タイプのバルブを前記時日頃に一定数量輸入し、同機種について我が国所定の型式承認登録を受けた状況が認められる。
しかしながら、同証拠によっては、型式承認バルブが国内においてどの程度の数量需要者向けに販売されたものかという取引状況を客観的に示す証拠はなく、また、仮に前記金額のものが国内代理店会社を経由してそのまま国内の需要に供されたものとしても、その数量は僅少なものというべきこと前記認定のとおりである。したがって、型式承認登録の事実のみをもってしては、型式承認バルブの国内流通事情は不明というほかはなく、況や請求人商標の我が国国内における周知・著名性を計ることはできないから、これを理由に述べる請求人の主張は採用することができない。
以上によれば、請求人提出の甲各号証をもってしては、当該製品の流通・販売事情が明らかでなく、特に請求人に係るFLOMATIC製品又は型式承認バルブの我が国国内における取引・販売状況は不明というべく、請求人商標のこの種バルブ類の需要者ないしは上・下水道事業に関わる事業者一般に広く認識せられたものとみるのは極めて困難であって、その周知・著名性は客観的に証明されないから、請求人の述べる米国及び諸外国事情に拘わらず、その主張は採用の限りでない。このほか、前記認定を覆すに足りる証拠は見出せない。
そして、被請求人が答弁書において述べる理由、すなわち、
1)請求人会社は従業員数50人〜60人程度の小企業であって、売り上げは年間8百万$〜1千万$であり、その内、米国での売り上げが87%、輸出が13%であること。
2)請求人主張の如くバルブの年間販売量が50万〜60万個としても、世界的な生産量からみれば、シェアは1%にも満たないものであり、その全売上額を日本市場におけるバルブ生産額と比較してみた場合においても、0、24%ないし0、33%と極めて僅かであって、代理人会社株式会社タブチの取扱いに係る数量割合も微々たるものであり、しかもその売り上げ実績として示されている年は何れも本件商標の出願日後のものであること。
3)「バルブ」の製造、販売を業とする被請求人は、請求人商標の存在すら知らず、被請求人独自の採択理由により本件商標を採択・出願したものであるから、他人の著名商標の名声を利用して不正の利益を得る目的をもって出願し、登録を受けたものではないこと。
等の各点よりして、請求人主張は容認し難いものであって、提出の甲号証によっては、請求人商標(「FLOMATIC」)が本件商標の出願日である平成8年(1996年)9月6日前に米国内はもとより世界的にも事業者間に広く知られていたものでなく、日本においても広く知られていたとは到底いえないものである旨の理由を述べたのに対して、請求人は何ら弁駁の理由を述べていない。
そうすると、請求人商標は本件商標の登録出願時に需要者間に広く認識せられた周知・著名商標であったとはいえないから、その周知・著名性の存在並びに被請求人の不正目的の存在を理由に本件商標の商標法第4条第1項第10号及び同法第4条第1項第19号該当を述べる請求人の主張は正当な理由に基づくものでなく、採用の限りでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標


審理終結日 2000-10-18 
結審通知日 2000-10-31 
審決日 2000-11-14 
出願番号 商願平8-100894 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (006)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中束 としえ 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 野口 美代子
宮川 久成
登録日 1998-02-20 
登録番号 商標登録第4116413号(T4116413) 
商標の称呼 フローマチック 
代理人 鈴木 康仁 
代理人 小泉 勝義 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 鵜沼 辰之 
代理人 吉岡 宏嗣 
代理人 佐藤 一雄 

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