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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 124
管理番号 1029128 
審判番号 審判1997-3685 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-03-06 
確定日 2000-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2521231号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成10年12月21日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11年(行ケ)第58号平成11年9月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第2521231号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 理 由
第1 本件商標
本件登録第2521231号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示した構成よりなり、第24類「おもちゃ、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年10月17日登録出願、同5年3月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第1367329号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示した構成よりなり、第24類「運動具、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和49年12月29日登録出願、同53年12月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第302号証を提出している。
1 本件商標
本件商標は、その構成中の文字部分は独立して要部をなすものと看取されるから、本件商標に接する取引者、需要者は、この文字部分によって取引を行うことが決して少くない。
してみると、本件商標は、その構成中の文字部分は「TSURUYA」の欧文字を表したものと理解されるから、「ツルヤ」と称呼されるものである。
かかる請求人の主張が正当であることは、例えば平成1年審判第3311号審決、及び平成1年審判第8692号審決で認定していること等によっても明らかである(甲第1、2号証)。
2 引用商標
引用商標においても、本件商標と同様の理由により、その構成中の文字部分によって取引を行うことが決して少くないから、引用商標は、「TSURUYA」の文字部分より「ツルヤ」と称呼されるものである。
3 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は、いずれも「ツルヤ」の称呼が生じるから、外観、観念について検討するまでもなく、称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。
また、本件商標と引用商標は、その指定商品を同じくするものである。
4 答弁に対する弁駁
(1)「つるや」、「ツルヤ」あるいは「鶴屋」が屋号、商号としてありふれたもので、いわゆる特別顕著性を有しないとの被請求人の主張は妥当なものでなく、本件商標及び引用商標中の「TSURUYA」の欧文字部分は、特別顕著性を有しているものであるから、本件商標と引用商標が取引において「TSURUYA」の欧文字部分によって「ツルヤ」と称呼される場合のあることは免れない。
(2)すなわち、「つるや(鶴屋)」の如き姓氏は、わが国の“十大姓”や“代表姓氏100”はもとより、“ベスト2000氏”にも含まれていない(甲第3号証)ものであり、また、「ハローページ東京都港区版」(乙第4号証)に「ツルヤ」並びに「つるや」の文字を含む名称が合計15件掲載されているとしても、最近の飛躍的な電話の普及状況よりしたときは、この程度の件数が掲載されていることによっては、「つるや(鶴屋)」に相当する姓氏は、ありふれた氏に該当するものでない。
このことは、例えば、社団法人発明協会発行「実例でみる商標審査基準の解説」や昭和58年審判第13686号審決、あるいは、極く最近において、「鶴屋」の文字よりなる商標が、商標法第3条第1項第4号に規定するありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当しないとして、登録されたことからも明らかである(甲第4〜6号証)。
(3)したがって、「鶴屋」の欧文字表記に相当する本件商標及び引用商標の「TSURUYA」の欧文字部分は、商標法第3条第1項第4号の規定に該当しない、いわゆる特別顕著性を有しているものである。このことはまた、弁理士会編集の公告文字商標集または登録文字商標集で、「TSURUYA」の欧文字が称呼の生じるものであるとされていることからも裏づけられる(甲第7、8号証)。
なお、被請求人は、「鈴屋」(昭和52年審判第17342号)、「シマヤ」(昭和46年審判第166号)の審決を引用して主張するが、これらはいずれも本件の「TSURUYA」の欧文字とは事例を異にするものである。
また、被請求人は、登録、公告された商標例(乙第5〜9号証)を挙げているが、このような商標が登録、あるいは公告されているとしても、かかる事実はこれら商標の非類似を確定したものでなく、必然的に登録無効審判によって後願の商標の登録が無効とされ得るものであることはもとより、審査に過誤無きことを期し難いことも周知の事実であることよりして、このような商標の登録、公告によって、常にその先願先登録の商標との非類似が確定するものでないことも明らかである。このことは、例えば、昭和32年(行ナ)第48号、同第49号判決からも理解できるところであり、しかも、本件商標及び引用商標の如く、文字と図形が結合した商標にあっては、例えば、昭和52年(行ケ)第209号判決の如く、文字部分が他の図形部分に比して看者の注意を引くため、その文字部分が顕著性の乏しい権利不要求の部分であったとした場合でも、なおその文字部分のみによる称呼が生じるとした事例によっても認識できるところである(甲第9、10号証)。
(4)甲第11号証(平成5年3月1日、日本電信電話株式会社発行のハローページ東京都23区企業名全区版・下巻)によれば、企業名「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」の件数及びその概要は、それぞれ次のとおりである。
ア (a)「ツルヤ」((株)や(有)等の会社の種類を示す文字は無視する。以下同じ。)について
「ツルヤ」及びこれを一部に含む企業名の掲載件数は約40件であるが、このうち単に「ツルヤ」のみの企業名は6件あるにすぎない。
(b)「つるや」について
「つるや」及びこれを一部に含む企業名の掲載件数は140件強であるが、このうち単に「つるや」の企業名は45件あるにすぎない。
(c)「鶴屋」について
「鶴屋」及びこれを一部に含む企業名の掲載件数は40件弱であるが、単に「鶴屋」の企業名は9件あるにすぎない。
(d)「鶴家」について
「鶴家」及びこれを一部に含む企業名の掲載件数は、4件であるが、単に「鶴家」の企業名は2件あるにすぎない。
(e)このように、東京都23区内において「ツルヤ」の称呼を生ずる企業名としては、僅かに62件であるにすぎない。
イ 指定商品との関係
東京都23区における「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」は、その記載の業種から通覧すると、飲食店関係は36件であり、被服関係12件であるが、旧第24類の指定商品を取り扱う企業名は見当たらない。
さらに、「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」を一部に含む企業名に拡大しても、6件を見い出すにすぎない。
なお、このうち1件(つるやゴルフ八重洲店)は、請求人の直営店である。
したがって、「ツルヤ」の称呼を生ずる企業名は、決してありふれたものではない。
(5)請求人「つるや」の周知性
ア マスメディアによる広告宣伝
請求人は、ゴルフ用品、ゴルフ用の衣類、雨具、競技の記念品等を取り扱う小売店であり、また、ゴルフクラブを中心とした自社製品の製造販売も行い、本件商標の登録査定がなされた平成4年10月9日頃には、全国各地に支店(直営店)及びグループ店69店を擁していた(甲第86、89号証)。
請求人は、新聞、雑誌に広告を掲載して販売促進に努めて、現在でも継続して行っており(甲第12〜268号証)、また、テレビ広告を現在でも継続して行っている(例えば、甲第269号証の1〜9)。これらの広告には、請求人取扱い商品の外、請求人の商号略称「つるや」やその欧文字表記の「TSURUYA」を表示している。
イ アンケート調査結果にみる請求人「つるや」の周知性
(a)「日経ゴルフ総合調査」(平成3、4年)の結果
日本経済新聞社の広告局マーケッティング企画部は、アンケート調査「日経ゴルフ総合調査」を1991年(平成3年)5月17日から5月31日、及び1992年(平成4年)5月16日〜6月2日に行っている(甲第270、271号証)。
これらのアンケート調査によれば、請求人の自社製造に係るゴルフクラブのうち、ウッドクラブの知名度は、前者が29.3%、後者が34.1%であり、アイアンの知名度は、前者が24.3%、後者が27.8%であり、その知名度は向上している。
(b)「朝日コーポレートリサーチ’93」の結果
朝日新聞大阪本社広告局はアンケート調査「朝日コーポレートリサーチ’93」を企画し、東京地区では、1993年8月30日〜9月21日に株式会社市場調査社東京が、大阪地区では、1993年8月31日〜9月21日に株式会社市場調査社大阪が行った。
このアンケート調査によれば、請求人は、参加企業100社中、企業の知名率・クラス評価は、それぞれ大阪地区で44位、72位であり、東京地区で67位、88位である(甲第272号証)。
ウ 以上のとおり、請求人は、その広告に「つるや」やその欧文字表記の「TSURUYA」を使用し、これらは、請求人の商号略称として、あるいは請求人取扱い商品の識別標識として、その称呼「ツルヤ」とともに、広く認識され、少なくとも本件商標の登録査定時には周知となっている。
したがって、本件商標や引用商標の構成中の、「TSURUYA」の欧文字やこれから生ずる「ツルヤ」の称呼は、現に市場において自他商品識別力を十分発揮しているから、本件商標と引用商標は「ツルヤ」の称呼を共通にする類似の商標である。
(6)過去の登録例
「ツルヤ」の称呼を生ずる商標が、さらに、商品名や業種名等を加えてなる商標が登録されている(甲第273〜296号証)から「鶴屋」や「TSURUYA」等、「ツルヤ」の称呼を生ずる文字のみからなる商標であっても、識別性は十分あるから、識別性なしとしてその登録を拒絶することはできない。
なお、甲第297〜302号証に示した請求人の出願に係る商標は、現在審査に係属しているが、「TSURUYA」や「つるや」の文字を要部とするために、本件商標等を引用して、拒絶理由通知を受けている。この事実からも、「つるや」、「ツルヤ」、「鶴屋」、「鶴家」、「TSURUYA」等、「ツルヤ」の称呼や略称を生ずる文字に、十分な自他商品の識別力があることは明らかである。
(7)上述したとおり、「つるや」や「TSURUYA」等の「ツルヤ」の称呼を生ずる標章は、特に原告の取扱い商品であるゴルフ用具について使用するときは、一層高い識別力を備えるに至っているのが取引界の実状であるから、引用商標中の「TSURUYA」の文字部分は、「ツルヤ」の称呼を生ずる部分として需要者、取引者の強く注意を引くところであり、最も識別性が高い部分である。したがって、本件商標は、「TSURUYA」の文字部分を共通するために、両商標の各図形部分が相違するにもかかわらず、需要者、取引者は、親しまれた「ツルヤ」の称呼を生ずる「TSURUYA」の文字部分に強く注意を引かれて、その出所を混同するおそれが極めて大きいから、両商標は全体としても相紛らわしく、類似するものである。
5 以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似するものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、同法第46条第1項の規定によって無効とされるべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出している。
1 本件商標
本件商標は、正円内に翼を広げて立つ鶴の図を白抜きにして表し、その右にデザイン化したローマ字「TSURUYA」を横書きするとともに、その中央上側に小さな黒円を2個斜めに描出したものである。
2 引用商標
引用商標は、ゴルフクラブの図を横書きし、その上に右から左へ飛んでいる鶴の図を描出するとともに、ゴルフクラブの図の下に白抜きの正円とローマ字「TSURUYA」を左から右へ一連に表してなるものである。
3 ところで、両商標の構成中における「TSURUYA」の文字が請求人並びに被請求人の名称の要部「つるや」「ツルヤ」のローマ字表記をデザイン化したものであるところ、屋号、商号として「つるや」「ツルヤ」あるいは「鶴屋」が極めてありふれた名称であり、これを商標として採択したところで、商標法第3条第1項第4号に規定するところの、いわゆる特別顕著性を認めることのできない商標の一であることは、たとえば1995年11月10日、株式会社岩波書店発行「広辞苑」に「つるや(鶴屋):姓氏の一」と明記されていること、また電話帳として、平成8年3月、日本電信電話株式会社発行「ハローページ 東京都港区版」において「ツルヤ」並び「つるや」の名称が東京都港区内のみで合計15件を数え、これが東京都内全域に至っては相当多数存在することを容易に想像し得ることより明白である(乙第3、4号証)。
4 すなわち、「TSURUYA」の表記は極めてありふれた名称「ツルヤ」「つるや」等を単にローマ字で表したものに過ぎず、例えば、「yoshinoya」(昭和48年審判第9162号)、「鈴屋」(昭和52年審判第17342号)、「シマヤ」(昭和46年審判第166号)のように、過去の多くの審決においても、ありふれた名称であって、それ自体としては商標として機能せず、したがって、他の特殊な構成要素を付加することで始めて全体として自他商品の識別機能を具有するに至るものであるとされている。
5 してみれば、本件商標は取引者、需要者をして「翼を拡げて立っている鶴のマークのツルヤ」を印象づけるものであり、他方、引用商標は「ゴルフクラブと飛んでいる鶴」といった特異なデザインが強く看者に対して印象を与えるものであって、両商標はたとえ同種の商品に使用されたとしても印象を別異のものとし、取引者、需要者の払う通常の注意力をもってすれば、彼比混同を生ずる余地の全くない、非類似の商標である。このように解釈することが商標法第3条第1項第4号の規定の趣旨に合致して正当であることは、例えば、次の登録例、公告例からも容易に認められるところである。
(1)登録第3063436号商標が、引用商標と指定商品「遊戯用カード」において抵触するにもかかわらず商標登録を受けている(乙第5、6号証)。
(2)本件商標と同一の構成からなる商標(平成2年商標登録願第116008号)が登録第1284721号商標と類似せず、出願公告の決定を受けている(乙第7〜9号証)。
6 請求人は、甲第11号証に関して、(1)単に「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」のみの企業名は、それぞれ6件、45件、9件、2件のみである。(2)本件商標や引用商標の指定商品を取り扱う業界には、「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」の名称が極めて少ない旨主張する。
(1)について、「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」に請求人のいう各種の業種名、業態名を付したところで実際の商取引においては、単に「ツルヤ」と略称されることが多く、「ツルヤ」の称呼を生ずる上記各文字に各種業種名、業態名が付されるものが多数存在することによってもツルヤが極めてありふれたものである点が否定されることが無いのは明らかである。
因みに、いささか古いが、大正11年(オ)第1010号商標登録無効審判請求事件における上告事件(大正12年5月26日判決)においても、「鶴屋ナル文字ハ普通ニ使用セラルル商号トシテ世上ニ類例多キモノナレハナリ」と判示するとおりである(乙第10号証)。
また、甲第195号証(被請求人はこれを乙第11号証として提出する。)は、本件商標の登録後に請求人が掲載した新聞広告であるが、偶然とはいえその隣にまったく別人と思われる「鶴屋」が広告しており、この事実からしても「ツルヤ」の称呼の生じる名称がいかにありふれているかが容易に想到しうるのである。
(2)について、ありふれた名称とは、「その業界」でありふれたものを指称せず、取引界において一般にありふれたものをいうのであって指定商品とは関係なく、この点が通説であることは、例えば、平成11年12月10日株式会社有斐閣発行、網野誠著「商標〔第5版〕」によれば、「ありふれた氏・名称とは、その業界でありふれたものであることを要しない。すなわち、取引界において一般にありふれたものとして使用されているようなものであれば、商標の指定商品や指定役務に関する業界でありふれていなくても、ありふれた氏・名称であることに変わりないから登録すべきではないであろう。たまたま登録の時期にその業界に存在していなくても、商標権存続の期間中に同じ業界でありふれた氏姓・名称となる可能性も多分に存在するからである。」とあることからも明白である(乙第12号証)。
7 請求人は、「つるや」や「TSURUYA」の表記が請求人の商号略称として、あるいはその取扱い商品の識別標識として本件商標の登録査定時には周知となっていた旨主張する。
しかしながら、広告を行ったという甲第12〜269号証(枝番を含む。)においては、「つるや」や「TSURUYA」の商標は使われておらず、そこに使われている商標は、平仮名文字「つるや」を横長にデザインし、しかも「つ」の部分を小さくしてその上に欧文字「GOLF」を乗せたように表すとともに、これらの文字を白抜きに描いた、つまり特殊なデザインを施したものである。しかも、本件商標に類似すると主張する引用商標が使用され、周知になっている旨の主張、立証はない。
因みに、本件審判事件は、請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたと主張する登録無効審判事件である。
なお、上記新聞広告(甲第12〜267号証)のうち、甲第99〜267号証は、本件商標の登録後の刊行物である点を付言する。
8 請求人は、「鶴屋」や「TSURUYA」等、「ツルヤ」の称呼を生ずる文字のみからなる商標であっても、識別性は十分あり、例えば、甲第273〜280号証に示す4件の商標、及び甲第281〜296号証に示す商標が登録されている旨主張する。
しかしながら、甲第273〜280号証に示す商標はいずれも「普通に用いられる方法で表示したもの」ではないので、請求人の主張は正当でない。
また、甲第281〜296号証に示す商標はいずれも「ツルヤ」等の文字に他の語が連結表記されているので、それらの登録例をもってして単なる「ツルヤ」等が識別力を有し、「ツルヤ」等がありふれたものでないとの主張はまったく失当である。
さらに、請求人はその出願に係る商標登録願につき、審査において本件商標等を引用された旨主張する(甲第297〜302号証)が、これらの出願商標は引用商標とその構成も異なり、本件とは事案を別異のものとするのでその主張は取るに足らない。
9 以上のとおり、本件商標と引用商標は、その構成に顕著な差異を有し彼比混同を生ずるおそれの全く無いものであるので、これを類似と論ずる請求人の主張は失当である。

第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標の類否について
(1)両商標の指定商品の取引者、需要者
「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」(最高裁昭和43年2月27日第3小法廷判決)ところ、本件商標及び引用商標は、その指定商品を、いずれも商品区分第24類の全商品を指定商品とするものである。
そして、この指定商品の取引者、需要者は、特定範囲の専門業者に限られるというものではなく、一般の取引者のみならず、広く一般の消費者をも含めたものがその対象となるから、本件商標と引用商標との類否の判断をするに際し、その称呼、観念を認定するに当たっては、これら一般の取引者、消費者の認識を基準とすべきものである。
これを前提として、以下、本件商標と引用商標との類否について検討する。
(2)本件商標と引用商標の外観について
ア 本件商標
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、黒塗り円図形内に鶴の特徴を端的に捉えた鳥が羽を広げ立っている様子を白抜きに図案化して描いた図形を左に配し、その右上段に2つの小さな黒塗り円図形を8の字状に接合させ、右に傾斜させて配し、さらに該2つの小さな黒塗り円図形の下段にやや図案化した「TSURUYA」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして、本件商標中の「TSURUYA」の文字部分は、本件商標のほぼ中央部に位置し、かつ、その占める面積も他の構成要素に比べ大きいものであるから、その位置及び大きさからして看者の注意を惹きやすいものである。しかも、やや図案化されているものであるとはいえ、一文字一文字も大きく簡明に書され、読みやすい書体であるということができる。
イ 引用商標
引用商標は、別掲(2)に示したとおり、嘴から足に至るまで、一見して鶴と理解される鳥が飛んでいる様子を写実的に描いた図形を上段に大きく描き、その下にゴルフクラブと思われる図形を配し、さらにその下左にゴルフボールと思われる円輪郭を配し、該ゴルフボールの右に「TSURUYA」の欧文字を書してなるものである。
そして、引用商標中の、写実的に描かれた鶴の図形部分は、上段に位置し、その大きさからも看者の注意を惹くものということができるが、その一方で、下段に書された「TSURUYA」の文字部分は、読みやすい書体で書されているうえに、やや付記的に描かれていると認められるゴルフクラブ及びゴルフボールの各図形に装飾されるように配置されており、上段の鶴の図形部分に勝るとも劣らない程度に看者の注意を惹くものと認められる。
ウ してみると、本件商標と引用商標はいずれも、その構成において、「TSURUYA」の文字部分が看者の注意を強く惹く部分といえるものであって、しかも、該文字部分は読みやすい書体で書されているものと認められる。
(3)本件商標と引用商標の称呼、観念について
ア 本件商標
本件商標は、その構成全体から、一般に親しまれた称呼、観念が生ずるものとは認め難いところである。
一方、その構成中、「TSURUYA」の文字部分は、図案化された鶴の図形と相俟って、古来より縁起の良い象徴として屋号等に使用され、一般世人に馴染まれている「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」などの屋号が想起されるものとみるのが相当である。
してみると、本件商標に接する、その指定商品の取引者、需要者は、その構成中、大きくて読みやすく、かつ、屋号等として親しまれている「TSURUYA」の文字部分に着目し、これより生ずる「ツルヤ」の称呼をもって商品の取引に当たる場合も決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成中の「TSURUYA」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといわざるを得ず、これより単に「ツルヤ」の称呼を生ずるものといわなければならない。
イ 引用商標
引用商標は、本件商標と同様に、その構成全体から、一般に親しまれた称呼、観念が生ずるものとは認められないものである。
しかしながら、引用商標に接する、その指定商品の取引者、需要者は、「TSURUYA」の文字部分が親しまれている「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」などの屋号が想起されることも相俟って、目に付きやすく、かつ、読みやすい該「TSURUYA」の文字部分に着目し、これより生ずる「ツルヤ」の称呼をもって商品の取引に当たる場合も決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、引用商標は、その構成中の「TSURUYA」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといわざるを得ず、これより単に「ツルヤ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
(4)対比
本件商標と引用商標は、前記したそれぞれの構成よりみて、商標全体の外観は区別し得る差異を有するものであり、また、全体としての観念は、いずれも親しまれた特定の観念は生じないものと認められる。
しかしながら、両商標は、いずれも独立して自他商品の識別機能を有する構成中の「TSURUYA」の文字部分より単に「ツルヤ」の称呼を生ずるものであるから、「ツルヤ」の称呼を共通にするものであり、また、強いていうならば、該「TSURUYA」の文字部分と鶴の図形部分とが相俟って、いずれも「鶴のマ-クのツルヤ」なる観念及び「ツルノマ-クノツルヤ」の称呼を生じさせる場合もないとはいえないものである。
してみると、本件商標は、引用商標と上記称呼及び観念において相紛らわしく、これを同一と認められるその指定商品について使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、引用商標に係る商品との間で、商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれが高いものといわざるを得ない。
(5)被請求人の主張について
被請求人は、本件商標及び引用商標中の「TSURUYA」の文字部分は、屋号等として極めてありふれた名称であるから、これ自体自他商品の識別機能を有せず、したがって、両商標は、その構成全体をもって区別されるものであるから、称呼上類似するものではない旨主張する。
甲第11号証によれば、「ツルヤ」の称呼を含む企業名が220店舗余りあり、そのうち「ツルヤ」のみの称呼を生ずる企業名が62店舗存在し、前記したように、「ツルヤ」、「つるや」、「鶴屋」、「鶴家」などの屋号は、我が国では古来より縁起の良い象徴として多く使用されていることが認められるところであるが、そうであるとしても、本件商標や引用商標の如く、「TSURUYA」の文字部分が看者の注意を惹き、かつ、読みやすい態様で表され、加えて、その商品の取引者、需要者には広く一般の消費者が含まれていることを考慮するならば、該「TSURUYA」の文字部分を拠り所として、該文字部分より生ずる「ツルヤ」の称呼をもって商品の取引に当たる場合があることは否定することはできず、そのように判断することは、むしろ自然であるといえる。
したがって、この点に関する被請求人の主張は採用することができない。
また、上記以外の被請求人の主張についても、上記認定に照らし、採用することができない。
2 むすび
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標

(2)引用商標

審理終結日 1998-11-25 
結審通知日 1998-12-11 
審決日 1998-12-21 
出願番号 商願平2-116007 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (124)
最終処分 成立  
前審関与審査官 半戸 俊夫板垣 健輔 
特許庁審判長 小野寺 強
特許庁審判官 関根 文昭
茂木 静代
小池 隆
大橋 良三
登録日 1993-03-31 
登録番号 商標登録第2521231号(T2521231) 
商標の称呼 ツルヤ 
代理人 東尾 正博 
代理人 鎌田 文二 
代理人 鳥居 和久 
代理人 野本 陽一 

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