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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 101 |
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管理番号 | 1021302 |
審判番号 | 審判1999-30488 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 1999-04-22 |
確定日 | 2000-07-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第769948号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第769948号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ユニセーブ」の文字を書してなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤及び医療補助品」を指定商品として、昭和41年1月21日登録出願、同43年2月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の指定商品中『薬剤』についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると主張し、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べている。 1 請求の理由 本件商標は、商標権者又は使用権者のいずれによっても、指定商品中「薬剤」について少なくとも過去3年以上使用された事実は存しないものであるから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人は、本件商標の不使用について正当な理由がある旨主張する。 しかしながら、乙第2号証によれば、被請求人は昭和62年3月2日に医薬品製造承認を受けているのであるから、同日以降は薬事法上何ら支障なく、本件商標を使用し得た状態にあったものである。それにも拘らず、現在はもとより乙第12、13号証の厚生省告示前に於いても当該製造承認後10年以上の長期間にわたり一度たりとも本件商標を使用した事実は存しない。しかも新たな医薬品について製造承認を申請した事実も存しない。 かかる事実に徴すれば、被請求人には前記厚生省告示の有無如何に拘らずそもそも本件商標を使用する意思はなかったとみなすのが相当であり、不使用の事実は単にその結果に過ぎない、と云うべきである。 換言すれば、被請求人の前記主張は、たまたま最近発せられた当該厚生省告示を奇貨として不使用の正当理由に乱用しているものに過ぎず、本件商標を保護すべき真の正当事由に該当するものではない、と云うべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第13号証を提出している。 1 答弁の理由 (1)本件商標は、本件審判請求の登録日(平成11年5月19日)前3年以内の期間内において、指定商品「薬剤」について使用していないが、この使用していないことについて「正当な理由」があるものであり、商標法第50条第2項ただし書の規定に該当し、取り消されるべきものではない。 (2)本件商標は、昭和43年2月6日登録に係り、その存続期間の更新登録が昭和53年3月6日、同63年4月20日、平成9年9月9日の3回にわたってなされたものである。 (3)被請求人(商標権者)は、本件商標を医薬品「瀉下薬」について使用するべく、薬事法に基づき、昭和61年12月25日「医薬品製造承認申請」(乙第1号証)を行い、これについて昭和62年3月2日「医薬品製造承認 承認番号(東62AP)第47号」(乙第2号証)の承認を受けた。その後更に、具体的な使用準備のため、昭和62年3月6日「医薬品製造品目追加許可申請」(乙第3号証)を行い、これについても昭和62年4月17日「医薬品製造品目追加許可」(乙第4号証)を受けた。 上記による医薬品製造許可は、乙第1号証に示されるとおり、「瀉下薬」について、名称を「ユニセーブ錠」とするものであり、その薬剤成分は、乙第1号証第3頁目に記載のとおり、下記の成分組成によるものであった。 記 成分及び分量又は本質 1日量(8錠)中 日本薬局方 フェノバリン…………………400mg 賦形剤 日本薬局方 乳糖……………………………適 量 賦形剤 日本薬局方 トウモロコシデンプン………440mg 賦形剤 日本薬局方 合成ケイ酸アルミニウム……100mg 結合材 日本薬局方 結晶セルロース………………200mg 崩壊剤 日本薬局方 カルボキシメチルセルロースカルシウム…100mg 滑沢剤 日本薬局方 ステアリン酸カルシウム………40mg 合計 2000mg もとより、上記の有効薬剤成分は、当時の薬事法施行令第15条の2第2項第1号イの規定に基づく医薬品の種類に指定されていたものであった(乙第5号証の別表第4参照)。 (4)上記の医薬品製造承認を受けたのち、被請求人は当該医薬品の具体的な販売準備に着手していたところ、折しも、当該医薬品に含まれる主成分「フェノバリン」について、発がん性が疑われる旨の一部研究者の研究報告があったとの情報が入手された。 そこで、被請求人は、既に製造承認を受けている医薬品であるとはいうものの、人体の健康に影響を及ぼすおそれのある医薬品であることの重大性と、企業としての社会的責任をも考慮し、自主的に上記商品の発売を見合わせることとしつつ、上記発がん性のおそれに関する情報の分析、新たな情報の入手に努めていた。 しかるところ、1994年〜1995年(平成6〜7年)頃に至って上記発ガン性の疑念に関する情報が顕在化しはじめ、1997年5月27日には、厚生省薬務局安全課から、乙第6号証に示されるように、同乙第6号証添付の情報資料とともに、下記のような通知を受け取った。 記 「フェノールフタレイン(フェノバリン)を含有する緩下剤について 米国でOTC緩下剤に含まれるフェノールフタレインの発がん性が問題となっています。FDAからのFAXを送りますが、FDAでは、6月13日までに規制について決定を行う方針のようです。そこで、まず、フェノールフタレイン関係の情報を集めて下さい。」 更に、同1997年8月30日には、同厚生省医薬安全局安全対策課からも、乙第7号証に示されるように、下記内容の通知を受け取った。 記 「フェノールフタレイン、フェノバリンを含む医薬品について 標記について、平成9年8月29日、米国FDAがフェノールフタレインを含有するOTC下剤の回収の方針を示しました。とりあえず、原文をFAXでおくります。 つきましては取り急ぎ、標記医薬品の現在の製造状況、市場での流通状況、医療機関、薬局、販売店への情報提供の状況について、FAXにて報告して下さい。すでに、製造を中止している場合は中止日、返品の状況についてもお知らせ願います。 追って、詳細については連絡いたします。」 更にまた、同時期に、乙第8〜11号証に示されるような同趣旨の情報が多々入手されるに至った。 (5)そして、平成10年(1998年)5月15日には、乙第12、13号証に示されるとおり、厚生省告示第148号により、前記薬事法施行令に基づく医薬品の種類の指定から、 「瀉下剤については、フェノバリン及びフェノールフタレインを削除する。」旨の厚生省告示がなされ、フェノバリンを有効成分とする瀉下剤の製造販売が法的にも禁止されるに至った。 (6)以上のような経緯により、被請求人は、本件商標を販売名称とする医薬品(薬剤)について、その製造承認を得たのち、少なくとも乙第6号証に示す厚生省薬務局安全課からの通知があった1997年(平成9年)5月27日以降は実質的に、また少なくとも乙第12、13号証に示す厚生省告示があった平成10年5月15日以降は法令による禁止により、本件商標の使用ができなかったところである。 尚、被請求人は、上記事情によって使用できなくなった本件商標を薬剤中他の薬剤について使用するべく準備中であったところ、上記乙第12、13号証の厚生省告示があってから未だ1年も経過していない平成11年4月22日に本件審判請求がなされ、同11年5月19日にその登録がなされた。 (7)商標法第50条第2項ただし書に定める登録商標の不使用についての「正当な理由」とは、a)地震、台風その他の天災地変によるもの b)類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失によるもの c)法令による全面的禁止、許認可手続きの遅延その他の公権力の発動によるもの等、指定商品についてその登録商標の使用を妨げる事情であって、商標権者の責に帰すことができない場合をいうものと解するのが相当である。 そうすると、本件商標は、乙第1〜4号証により被請求人において使用の意図があったことが客観的に明らかであった状況下において、乙第6、7号証による厚生省薬務局からの通知があった平成8年5月22日以降(乙第6号証)、または同年8月30日以降(乙第7号証)当該登録商標は「被請求人の意思によって左右されない事由」により、更には乙第12〜13号証に示される厚生省告示があった平成10年5月15日以降は、「法令による禁止により、」本件商標の使用が妨げられる事情が存したものであることが明らかである。 (8)ところで、商標法第50条第2項ただし書で「使用をしていないことについて正当な理由がある」とは「取消審判請求登録前3年以内に使用をしていないことについて正当な理由」があることを指すのであって、「3年以上連続して使用をしていないことについて正当な理由」があることを指すのではない。 してみれば、本件商標は、本件審判請求登録があった平成11年5月19日前の3年以内の期間内において、上記のとおり本件商標の不使用について正当の理由があったものであるから、商標法第50条第2項ただし書により、同法第50条第1項の規定による取消しはなされるべきでない。 第4 当審の判断 本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていなかったことについては当事者間に争いがない。 次に本件商標を使用していないことについての正当な理由の有無について検討するに、被請求人の提出した証拠によると次の事実が認められる。 (1)被請求人は、本件商標を医薬品「瀉下薬」について使用するべく薬事法に基づき昭和61年12月25日「ユニセーブ錠」を販売名とする医薬品製造承認申請を行い、同62年3月2日にその承認を受けたこと(乙第1号証および乙第2号証)、また、同じく同年3月6日医薬品製造品目追加許可申請を行い、同年4月17日にその許可を受けたこと(乙第3号証および乙第4号証)。 (2)該「瀉下薬」の薬剤成分は、「フェノバリン」を含有するものであり、これは当時の薬事法施行令第15条の2第2項第1号イの規定に基づく医薬品の種類に指定されていたものであること(乙第1号証および乙第5号証)。 (3)平成9年5月27日厚生省薬務局安全課から「フェノバリン」を含有する緩下剤について発がんの恐れを懸念しての情報収集の必要性や同年8月30日同厚生省医薬安全局安全対策課からも「フェノバリン」を含む医薬品の発がん性問題に関連し同医薬品の製造、流通、販売等の状況についての問い合わせがあったこと(乙第6号証および乙第7号証)、また、同時期の新聞その他に同趣旨の情報が掲載されていること(乙第8号証ないし乙第11号証)。 (4)平成10年5月15日厚生省告示第148号(同月25日適用)により「瀉下薬についてはフェノバリンを削除する。」旨の通知がなされ、フェノバリンを有効成分とする瀉下薬の製造販売が不可能となったこと(乙第12号証および乙第13号証)。 以上の事実によれば、被請求人は、医薬品製造承認申請を行った昭和61年12月当時はもとより、その後引き続いて本件審判請求の登録前3年から少なくとも厚生省告示第148号によりフェノバリンを有効成分とする瀉下薬の製造販売が不可能となる平成10年5月25日に至るまで、本件商標を商品「瀉下薬」に使用する意思を保有していたものの、その有効成分であるフェノバリンの発がん性の有無の懸念から同商品の発売を見合わせていたものであり、前記厚生省告示があった後は前記瀉下薬の製造販売を事実上断念せざるを得ないこととなり、結果として本件審判請求の予告登録に至るまで本件商標は使用されなかったものである。そして前記経過からすると、被請求人が前記医薬品製造承認を受けた後、販売準備段階に至って当該医薬品に含まれる主成分「フェノバリン」について発がん性が疑われる旨の一部研究者の研究報告があったとの被請求人の主張も理解しうるところであって、これを否定すべき理由はない。 そうすると、本件審判請求の登録前3年から平成10年5月25日適用の厚生省告示までの間は、すでに瀉下薬の薬剤成分「フェノバリン」について発がん性の疑いがもたれていたのであるから、たとえ製造承認を受けた医薬品であろうとも、人体の健康に影響を及ぼすおそれのある商品の性格からその安全性に客観的疑いがある以上、安全性の確認がとれるまでその発売を見合わせることは責任ある企業として至極当然のことといわなければならない。 また、前記厚生省告示から本件審判請求の予告登録までの間は、本件商標を前記瀉下薬に使用することができないことが明らかになった期間であるが、これが明らかになったからといって、直ちに他の薬剤に本件商標の使用をするというのは極めて困難なことであり、とりわけ許認可手続きを必要とする医薬品にあっては、準備期間として一定の期間が必要とされるところであり、本件にあっても前記厚生省告示から一年有余しか経過していないのであるから、この期間は、この種商品の製造、販売についての準備のために要する通常の期間の範囲を超えないものと認められる。 商標法第50条第2項の規定にいう「正当な理由」とは、取消請求に係る指定商品についてその登録商標の使用を妨げる事情で、その不使用をもって当該商標権者の責に帰することが社会通念上酷であるような場合をいうものと解すべきであり、被請求人が主張する諸事情は、これに当たるとみるのがこの種業界の実態にも合致する。 してみれば、被請求人が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標をその請求に係る指定商品に使用していないことについては、正当な理由があったものというべきである。 したがって、本件商標についての登録は、商標法第50条第2項ただし書き(不使用の正当理由)に該当し、同法第50条第1項の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-05-17 |
結審通知日 | 2000-05-26 |
審決日 | 2000-06-07 |
出願番号 | 商願昭41-2630 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(101)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
大橋 良三 |
特許庁審判官 |
小池 隆 寺光 幸子 |
登録日 | 1968-02-06 |
登録番号 | 商標登録第769948号(T769948) |
商標の称呼 | ユニセーブ |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 清水 久義 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 中島 俊夫 |
代理人 | 高田 健市 |