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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
管理番号 1021260 
審判番号 審判1998-35159 
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-04-09 
確定日 2000-07-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第2531159号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2531159号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2531159号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲したとおりの構成よりなり、平成2年11月27日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成5年4月28日に設定登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第46号証(枝番を含む)を提出している。
1.商標法第4条第1項第8号について
本件商標の構成は、英文字で「ANTONIO・GIE」と左横書きするとともに、サイン書を含むものであるが、以下に述べるように、そこに表示された「ANTONIO・GIE」氏は、イタリア宝飾界を代表する彫金デザイナーの氏名であり、またその大きなサイン書は同氏のサインにほかならない。
「ANTONIO・GIE」氏のプロフィールを簡単に述べると、同氏は1938年イタリア生まれ、若い頃から熟練工とともに働いて腕を磨いた。 14歳でヴェネチア美術学校に入学し、1973年には美術修士号を得た。「ANTONIO・GIE」氏のデザインは、絶えざるデザイン素材の探究と古典デザインに対する独自の現代的な解釈を通じて結実したものであり、これが同氏の独創的なデザインの特徴を構成する要素といわれている。
精力的な創作活動と独創的な作品の発表を通じて、同氏が宝飾界を代表する彫金デザイナーとして国際的に確固たる地位を獲得していることは、次のような国際的なコンクールにおける受賞などにより明らかである。
1968年、作品名「タンポポ」の指輪に対して「ダイヤモンド・インタ ーナショナル賞」受賞
1971年、「ダイヤモンドトゥデイ賞」受賞
1972年、ミラノ「The Museum of Arts and Modern Techniques」より金賞受賞
同年、 商工業熟練技能大臣より金賞受賞
1973年、「ダイヤモンドトゥデイ賞」受賞
同年、 ヴァレンツィア アートスクールのマスターの称号を得る
同年、 「ダイヤモンド・インターナショナル賞」受賞
1994年、「ダイヤモンド・インターナショナル賞」受賞
1996年、「ダイヤモンド・インターナショナル賞」受賞
1996年、日本で開催された(主催者、平和堂貿易株式会社)ダイヤモンド・インターナショナル賞の受賞者によるジュエリーの新作発表会「クイーン・ジュエリー・DIAWコレクション」のパンフレットによれば、「ANTONIO・GIE」氏について「芸術に大いなる愛情を注ぐ、国際的宝飾デザイナーであり、金細工師であるアントニオ・ジーエ。幼い頃から熟練工と共に働いてきた彼は、そのすぐれた職人としての技術と天性的才能を生かし、古典的なデザインに現代的なアレンジを加え、彼独自の新しい様式を創り出した。現在、DIAアカデミー会員として活躍中。」と紹介されている。
また、2度目の受賞作品となった1994年の「エモーション」(Emotion)と名付けられた作品(指輪)のデザインについては、「グラデーションの見事なバランスとモダンなデザインは、まさにダイヤモンドジュエリーの極致。」と絶賛されている。
因に「ダイヤモンド国際賞」とは、1994年にデ・ビアス社の主宰により設立された「世界で最も権威と歴史のある」賞であり、「宝飾デザインのグラミー賞」といわれている。
また、1978年からは応募の質を高めるために隔年開催となり、1996年で34回を迎えたが、1996年には43カ国から2,285点の応募があり、その中から30点が入賞の栄誉を与えられ、パリのオペラ座でその授章式が行われた。
「ダイヤモンド国際賞」受賞の栄誉に輝くことは、世界各国のジュエリーデザイナーの憧れの的であり、洗練された感性と優れた技術を確信する証しとも言えるものである。
「ANTONIO・GIE」氏は、このような「ダイヤモンド国際賞」の受賞の栄誉に3度も輝き、1996年には「ダイヤモンド国際アカデミー」の会員に選任されている。
被請求人は、かつて「ANTONIO・GIE」氏のデザインにかかる商品を請求人から購入した経緯がある。請求人は、約20年前にわが国で商標「ANTONIO・GIE」の登録を取得したものであるが(登録第1289722号、商公昭52ー1640号)、該登録商標の商標権の存続期間の更新がなされないで消滅した後に、被請求人により本件商標の出願、登録が無断でなされたものである。
請求人は、再度「ANTONIO・GIE」につき商標登録出願(商願平7ー84943)をしたところ、本件商標を引用した拒絶理由の通知があり、被請求人の無断登録の事実を知った。
なお、「ANTONIO・GIE」氏は、請求人のパートナーであり、商願平7ー84943号の商標登録出願にあたっては、同氏の同意書が作成され、特許庁に提出されている。
以上のように、宝飾界を代表するデザイナーとして国際的に知られている「ANTONIO・GIE」氏の氏名を含むものである以上、本件商標が商標法4条1項第8号に該当し、登録無効事由に該当することは明らかである。
2.商標法第4条第1項第10号について
わが国は、今や世界第2位のダイヤ輸入国であり、宝飾用ダイヤの年間の小売額は、約370万カラット、約1兆6千億円に達するといわれている。 これは、わが国の取引者・需要者の指輪等の宝飾用ダイヤに対する関心の高さを示すに十分なものである。
宝飾用ダイヤに大きな付加価値を付与するがデザインであり、デザインは商品の価値を決定する重要な要素であるから、美術工芸品のように優れたデザイン(作品)に対して高い評価が与えられるのは当然である。
デザインに対する評価を表彰するのがそのデザイナー名であり、またそのデザイナー名が商品の出所表示の標識として把握されたものが「デザイナー・ブランド」といわれる商標にほかならないが、「ANTONIO・GIE」はまさにこのような「デザイナー・プランド」の1典型でもある。
長い伝統をもち、優れたデザインを提供しているイタリアの宝飾業界に対するわが国の関係者の高い関心と、実際の交流関係を考えるとき、また「ANTONIO・GIE」氏が「ダイヤモンド国際賞」の受賞の栄誉に3度も輝いた国際的な宝節デザイナーであることを考えるとき、デザイナーブランドである「ANTONIO・GIE」については、本件商標の出願時において、すでに、需要者の間に広く知られていた商標というになんらの支障はない。
3.商標法第4条第1項第15号および同16号
また、前記の理由により、本件商標を「ANTONIO・GIE」氏以外の者がその指定商品である指輪等に使用したときは、あたかも「ANTNINIE・GIE」氏のデザインにかかる商品であるかのごとく、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである(第4条第1項第15号)。
特に、後述のように、本件商標には、「ANTONIO・GIE」氏のサインが大きくかつ顕著に表示されているが、サインの本来の機能が特定人の同一性を示すことにあることを考えるとき、これが同氏を表彰するデザイナーブランドと認識される蓋然性はさらに大きい。
そして、また同様の理由により、「ANTONIO・GIE」氏の創作にかかるデザインであるかのごとく、商品の品質につき誤認混同を生ずるおそれがある(第4条第1項第16号)。
4.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、すでに述べたように、他人の氏名をその承諾を得ることなく登録されたものであり、人格権の保護を目的とする商標法第4条第1項第8号に違反するが、さらに商標法第4条第1項第7号にも違反する。
蓋し、国際的に知られた工芸家、デザイナーの氏名を第三者に独占権である商標権として保護する正当な根拠は、全法体系に徴してもを見いだすことはできないからである。
しかも、本件商標には、前記のように、「ANTONIO・GIE」氏のサインが顕著に表示されているが、サインは単に人格的な意義をもつだけでなく、欧米では自己の同一性を示す手段・方法として社会的にも法律的にも重要な意味をもっている。このようなサインは、その性質上、本人のみが正当になしうるのはもちろんのこと、契約などの重要な法律行為の成立の証明となるなど法的な意義をもつ標識でもある。してみれば、本人の承諾を得ることなくこれを表示する行為は、それ自体すでに公序良俗に反するというべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
本件商標は、別掲したとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中の「ANTONIO GIE」の欧文字は、請求人の提出した甲第3号証及び同第4号証によれば、本件商標出願前である1938年3月14日生まれのイタリア国・ヴァレンツァ市在住の宝飾デザイナー(彫金デザイナー)「ANTONIO・GIE」氏の氏名と同一のものであり、また、甲第3号証によれば、本件商標中の上記欧文字の上部に書されたサインと思しき部分は、同人のサインと同一のものと認められる。
さらに、甲第8号証の1乃至同第10号証及び同第21号証によれば、同人は、本件商標の出願日以前から、1971年度「ダイヤモンド・インターナショナル賞」等の国際的な賞を受賞している著名な宝飾デザイナー(彫金デザイナー)であると認められる。
してみれば、本件商標は、他人の氏名を表示したものであり、かつ、その他人の承諾を得ずに登録されたものであるから、他の法条について該当するか否かを検討するまでもなく、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項1号によりその登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標


審理終結日 2000-05-09 
結審通知日 2000-05-19 
審決日 2000-05-31 
出願番号 商願平2-132054 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (121)
T 1 11・ 23- Z (121)
T 1 11・ 271- Z (121)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野上 サトル山本 良廣 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 箕輪 秀人
滝沢 智夫
登録日 1993-04-28 
登録番号 商標登録第2531159号(T2531159) 
商標の称呼 ジー、ジエ、アントニオジー、アントニオジエ 
代理人 山内 淳三 

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