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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1011010 
審判番号 審判1997-15950 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-09-22 
確定日 1999-12-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第2652746号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2652746号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2652746号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成2年9月29日に登録出願、第32類「加工食料品、その他本類に属する商品」を指定商品として同6年4月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」旨の審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第13号証(枝番を含む)を提出している。
(1)本件商標の出願願書によれば、出願人(被請求人)の業務は、「しいたけ販売業」となっているが、請求人が調査した結果によれば、被請求人は当該業務及びその他本件商標の指定商品に係る業務を、本件商標の出願時を含め今日まで、自己の業務として実際に行ったことがないことが判明している。
したがって、本件商標は「自己の業務に係る商品について使用を」しないものであったこと明らかであり、商標法第3条第1項柱書きにより登録を受けることができる商標に該当しないものである。
被請求人は、本件商標の出願時以前から、富山市に本店を置く「五洲薬品株式会社」の取締役である。同社は「清涼飲料水及び滋養食品の製造販売、菓子、調味料、食料品及び飼料の製造、販売」等を目的としている。そして、本件商標の指定商品と競合する商品の製造販売を目的としている。
株式会社の取締役は、商法第264条に規定されるとおり、自己又は第三者のために会社の営業の部類に属する取引をなすには、取締役会において、その重要な事実を開示してその承認を受けなければならないことになっている。これは取締役が会社の利益を犠牲にして自己の利益を図るおそれがあることから規定されたもので、取締役が会社の営業と競合する業務を原則として禁止されているところである(取締役の競業避止義務)。
したがって、被請求人は、前記五洲薬品株式会社の営業と競合する業務を行っていないものと推測されるところ、請求人の調査によっても、被請求人が本件商標の出願時以前から、本件商標の指定商品に係る業務を自ら行っていたという事実は発見されない。
以上のとおり、被請求人は、本件商標の指定商品に係る業務を自ら行っていないものであり、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
(2)請求人は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品等の製造販売等を業とする株式会社であり、殊に「育毛・養毛剤」を中心とする頭髪用各種商品の製造会社として、需要者に広く知られている。請求人は、本件商標の出願日より遥か以前の昭和37年2月までに、薬用植物「苦尽(クララ)」及び同「延命草(ヒキオコシ)」から抽出した脱毛症の改善に有効な2成分を開発し、これらの成分に「カミゲンK」及び「カミゲンE」の名称を付し、医薬品等原料として三国株式会社(大阪市中央区所在)において委託生産するとともに(甲第7号証)、自己が製造販売する「育毛・養毛剤」の多種商品に継続して使用し、かつ、多大の宣伝をすることによって、これら「カミゲンK」及び「カミゲンE」の標章は、請求人が製造する育毛剤等原料の標章として、本件商標の登録前から需要者の間で広く認識されるに至っている(甲第8号証)。そして、この使用標章は、登録第2362794号商標として登録されている(甲第9号証の1、2)。
これに対し、被請求人は、本件商標に類似する商標である自己名義の登録第2260861号商標「カミゲン」(甲第10号証の1、2)を「日本エンザイム工業株式会社(代表者藤井良三 富山市花園町1丁目1番5号)」に使用許諾して、該登録商標を同社によって「パパヤーゼ配合ビタミン(加工食料品)」に使用していると主張している(甲第11号証)。
かような商品に本件商標が使用されるときは無論のこと、その他の指定商品に本件商標が使用される場合にも、請求人の周知標章「カミゲンK」及び「カミゲンE」との間で出所の混同を生じさせることになり、又、請求人の医薬品等原料「カミゲンK」及び「カミゲンE」が、本件商標の使用商品と同種のものと誤認されることで、請求人の原料に対する需要者の信頼が著しく損なわれることになるので、請求人は営業上多大の損害を被ることになる。本件商標の使用行為は、請求人との関係において、不正競争防止法第2条第1号に係る不正競争行為及び民法第709条に係る不法行為を構成することになるから、請求人は本件商標の使用者に対して損害賠償等を請求し得る法律上の地位を取得する。そして、本件商標が有効に存続するならば、請求人が被る営業上の損害が拡大することになる。
また、請求人は、平成7年商標登録願第33963号の出願を行っているところ、該商標出願は、前記の登録第2260861号商標「カミゲン」と類似する商標として拒絶理由通知を受けている。
当該出願商標は本件商標とも類似する商標であり、本件商標の存在自体も、請求人出願商標が登録される障害となっている(甲第12号証、甲第13号証)。
よって、本件登録無効審判請求について、請求人は法律上の利害関係を有するものである。
3 被請求人の答弁
被請求人は、上記請求人の主張に対して何ら答弁していない。
4 当審の判断
そこで判断するに、商標権者は、本件商標登録出願時に願書の業務記載欄に「しいたけ販売業」と記載して登録を受けたものである。
ところで、願書に記載する業務は、現に行っている業務を記載するか又は行っていない場合には、その業務計画書を提出しなければならないとされているところ、被請求人は、「しいたけ販売」の業務を現に行っているとして、業務計画書を提出することなく登録を受けているものである。
そして、請求人が「被請求人は、企業の取締役であることから、その企業の行う業務と競業関係にある『しいたけ販売業』を出願時より今日まで行っていないはずであるから、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものである」旨主張しているのに対し、被請求人は、その事実を容易に立証し得る立場にありながら、出願時より現在まで、上記の業務を行ってきた事実を具体的に立証する証拠を何ら提出していない。
してみれば、被請求人は、商標登録願の業務欄に「しいたけ販売業」と記載したものの、出願当初より今日まで、当該業務を行ってこなかったものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないにもかかわらず、その規定に違反して登録されたものといわなければならないから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記(1)

審理終結日 1999-07-29 
結審通知日 1999-08-17 
審決日 1999-09-10 
出願番号 商願平2-110204 
審決分類 T 1 11・ 18- Z (132 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 良一 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 小林 由美子
滝澤 智夫
登録日 1994-04-28 
登録番号 商標登録第2652746号(T2652746) 
商標の称呼 1=カミゲン 
代理人 岡嶋 完夫 

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