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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W39
管理番号 1420583 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2025-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-03-15 
確定日 2025-02-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6768586号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6768586号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6768586号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年6月9日に登録出願、第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年12月11日に登録査定、同6年1月10日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、申立人が「自動車」について使用し、日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているとするものである。
1 別掲2のとおりの構成からなるブラジル登録第912796863号商標(以下「引用商標1」という。)
2 別掲2のとおりの構成からなる欧州連合登録第18155734号商標(以下「引用商標2」という。)
3 別掲3のとおりの構成からなる欧州連合登録第10851038号商標(以下「引用商標3」という。)
4 別掲2のとおりの構成からなる国際登録第922784号商標(以下「引用商標4」という。)
5 別掲4のとおりの構成からなる欧州連合登録第10851021号商標(以下「引用商標5」という。)
6 別掲5のとおりの構成からなる欧州連合登録第10851053号商標(以下「引用商標6」という。)
7 別掲2のとおりの構成からなる欧州連合登録第10511591号商標(以下「引用商標7」という。)
8 別掲2のとおりの構成からなるトルコ登録第200736254号商標(以下「引用商標8」という。)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、別掲1の態様からなる商標であり、その指定役務、登録出願日、登録査定日及び設定登録日は上記第1に記載のとおりである。
2 引用商標について
引用商標は、ブラジル登録商標1件(引用商標1)、欧州連合商標5件(引用商標2、3、5、6及び7)、国際登録商標1件(引用商標4)及びトルコ登録商標1件(引用商標8)の計8件で、別掲2ないし別掲5の態様からなり、申立人が製造・販売し、我が国を含む世界中でよく知られる自動車、通称「タイプ2」の第1世代(T1)の形状からなる立体商標又はこれを特定の方向からみた平面商標であり、本件商標の出願日よりも前に、外国において「名声を得ている商標」又は「(高度)著名商標」の認定を受けている。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、バスの図形と文字からなる結合商標である。
文字部分と図形は構成上一体化しているとはいえず、また、文字部分「WAKUWAKUBUS」が、その指定役務が車両を使った輸送・運搬や旅行関連であることから識別力が弱く、一方で図形部分は、申立人が製造・販売する著名な自動車を描いてなるものである。
よって、本件商標の要部は構成中の図形部分である。
以下、要部である図形部分と引用商標の類否を検討する。
ア 外観
自動車には、例えばタイヤが前後左右に4本備えられていること、窓が付いていること、ヘッドライトが正面に付いていること、人が乗り降りする又は荷物等を出し入れするためのドアが備えられていることなど、機能上又は法規上求められる共通する構成部分があるとはいうものの、その形状や配置は千差万別であり、自動車メーカーは、自動車の機能だけではなくその外観においても他社品との差別化を図っている。
本件商標の要部である図形は自動車の形状からなり、側面の窓の下をやや斜めに下りながらフロント部に至り、そのままバンパー中央に向けてV字状に落ちる線が描かれており、また、このV字の両外側にコロンとした丸いヘッドライトが設けられている。さらに、前輪部分のフェンダーはタイヤが全て見えるように切れ上がっている一方で、後輪部分のフェンダーは、タイヤ上部を隠すように台形状となっている。これらのクラシックで独特なデザインは申立人が製造・販売する自動車、通称「タイプ2」の第1世代(T1)の特徴であり、また、当該自動車の形状を基とする引用商標の特徴である。
本件商標は若干様式化されているため細かい線が省かれているが、それだけに引用商標に固有のこれらの特徴が際立っている。
よって、本件商標は引用商標に極めて類似する商標である。
イ 称呼
本件商標の要部及び引用商標は、いずれも図形又は立体形状のみからなる商標であるから、称呼は生じない。
ウ 観念
引用商標は、国内外における需要者に広く認識されており、また、「名声を得ている商標」又は「著名商標」の認定や登録を各国で得ている。
したがって、引用商標を若干様式化したものといえる本件商標と引用商標からは、いずれも「申立人が製造・販売する各国で著名な自動車、通称「タイプ2」の第1世代(T1)」の観念が生じるから、本件商標と引用商標の観念は同一である。
エ 小括
前記のとおり、本件商標は、外見においては引用商標と極めて類似し、称呼は比較ができず、観念は同一である。
よって、本件商標と引用商標は、商標において同一・類似である。
(2)引用商標の著名性について
ア ブラジル
ブラジルにおいて、引用商標1(甲2の1、甲2の2)は、本件商標の出願日よりも前、2020年6月16日付けで、「ブラジルで高度に著名な商標」と認定され公告されている(甲2の1、甲2の3)。
ブラジルの高度著名商標の認定は、商標登録とは別に認定申請を請求し、(ア)幅広くブラジル全土にわたり幅広く需要者によって認識されていること、(イ)指定商品・役務について高い名声を持っていること、(ウ)相当の識別力を獲得していることを立証して獲得されるものである(甲2の4、甲2の5)。
したがって、ブラジルにおいて、引用商標1は極めて高い著名性を得ている。
イ ポルトガル
ポルトガルにおいて、引用商標2(甲3の1)は、本件商標の出願日よりも前、2020年12月4日付公報において公告された、他人の商標登録出願に係る商標に対する異議決定の中で、「名声を得ている商標」であると認定されている(甲3の2、甲3の4)。
欧州連合において「名声を得ている商標」であるという評価を得るためには、原則として特にその商標の市場シェア、使用の頻度、地理的範囲及び期間並びに商標権者が宣伝に投資した額など名声のあらゆる関連する事実について証明しなくてはならず、若しくは、欧州連合域の実質的な部分において、その商標が適用される製品又は役務に関連する公衆の重要な部分によって当該欧州連合商標が知られており、かつ、その加盟国の領域が欧州連合領域の実質的な部分を構成するとみなされる必要がある(甲10)。
そして「名声を得ている商標」には特定性の原則を超えた特別な保護、すなわち異なる商品・役務に対する広い保護が認められており(欧州連合商標に関する2017年6月14日付け欧州議会及び欧州理事会規則2017/1001、8条5項)、現行の商標に関する加盟国の法律を近接させるための欧州議会及び欧州理事会指令(EU)2015/2436、5条2項a)は、非類似の商品・役務を指定している他人の商標についても「名声を得ている商標」をもって相対的拒絶理由とするよう義務付けており(甲10)、ポルトガル産業財産法にも、当該規則及び指令に準じた定めが設けられている(甲3の5)。
ウ スペイン
スペインにおいては、本件商標の出願日よりも前、2015年3月27日付けで発行され同日に官報に掲載された他人の商標登録出願に係る商標に対する異議決定の中で、引用商標3(甲4の1)が著名であると認定されている(甲4の2〜甲4の4)。また、本件商標の出願日よりも前に、引用商標2ないし引用商標7が著名性又は名声を獲得していることを根拠として登録が認められなかった他人の商標の一例として、甲第4号証の5がある。
これらの商標には文字及び/又は他の図形が含まれているが、著名である又は名声を獲得している引用商標と同一・類似する図形が商標中にあることを理由として、いずれも登録は認められなかった。
すなわち、引用商標と同一・類似する図形が係争商標の要部であると認定されたことになる。
エ トルコ
トルコで申立人が所有する引用商標8(甲9の1)は、本件商標の出願日よりも前に、少なくとも3件の他人の商標登録出願に係る商標に対する異議事件の中でその著名性が認められている(甲9の2〜甲9の4)。現地代理人が申立人に2017年3月16日付けで送ったメールには、トルコ特許商標庁が引用商標8の高度著名性を認めたことが記され(甲9の2)、2017年3月21日付けでトルコ特許商標庁が発行した異議決定(甲9の3〜甲9の4)において、引用商標8は名声を獲得している(甲9の3)と認定され(出願人は審判提起をせず当該異議決定は確定)、2019年4月26日付けで同庁が発行した異議決定(甲9の4)においては、係争商標中に含まれている乗物の図形と引用商標8が「高レベルな類似性があること」、引用商標8に係る申立人が製造・販売する車両が消費者に認知されていること、引用商標8(異議決定中では「先の商標」と呼ばれている。)は名声を獲得していること、よって係争商標の登録を認めると「先の商標の価値を希薄化し、先の商標の名声に損害を与える可能性がある」こと、また車輌の形状デザインの類似度が一致する場合には「先の商標のものと関係なく偶然に選択する可能性はない」と認定されている。
オ 小括
上記したように、同一の商標態様からなる引用商標1、2、4、7及び8(立体商標)は、ブラジル、ポルトガル、スペイン、トルコにおいて、それぞれ「高度に著名な商標」「名声を得ている商標」「高レベルの著名度を有している商標」と認定されており、引用商標1、2、4、7及び8(立体商標)にかかる自動車の形状のうち、正面視を商標態様とする引用商標3(平面商標)、左側面視を商標態様とする引用商標5(平面商標)及び斜視を商標態様とする引用商標6(平面商標)はスペインで「著名商標」であると認定されている。
これは、立体形状はもちろんのこと、その正面視、側面視、あるいは斜視だけの態様であっても、世界各国においてこれら引用商標を見る一般大衆が、これは申立人に係る商標であると容易に認知するだけの高い著名度を、引用商標は有していることを意味する。
(3)不正の目的について
申立人が製造・販売する、引用商標の基となる自動車は、通称「タイプ2」と呼ばれ、特にその第1世代(T1)は今でも世界中で絶大な人気を誇り、我が国においても「ワーゲンバス」と呼ばれて愛されている(甲11)。この「タイプ2」を源流とする商用車は、モデルチェンジを繰り返し現在もラインアップされ、今では7代目(T7)が発売されている(甲11、甲12)。
第1世代(T1)又はこれを擬人化したキャラクターは様々な映画に登場し(甲13、甲14)、第1世代(T1)を特集する本や雑誌が現在でも出版され(甲15、甲19)、中古車は高値で取引されて(甲11)、特にキッチンカーや移動販売車、キャンピングカーとして人気がある(甲15)。
また、他社の自動車が「タイプ2」の第1世代(T1)に外観を似せて改造され、「ワーゲン風」「ワーゲンバス仕様」として販売されている実情があるが(甲20〜甲22)、改造前の自動車(甲23〜甲26)と比較すると、改造された箇所は、上記(1)アで述べたうち、側面の窓の下をやや斜めに下りながらフロント部に至り、そのままバンパー中央に向けてV字状に落ちる線が描かれている点、このV字の両外側にコロンとした丸いヘッドライトが設けられている点が共通している。これはすなわち、これらの改造点が「ワーゲン風」「ワーゲンバス仕様」に見せるための重要なポイントであることを意味する。より「タイプ2」(T1)に似せることを目指す業者は、これらの改造点にプラスして、後輪部分のフェンダーをタイヤ上部が隠れるように台形状としている(甲20、甲21)。
本件商標内の図形及び引用商標は、これら構成上顕著な特徴を全て含んでいる。
本件商標の要部である図形と引用商標が極めて類似していることは既に述べたとおりであり、当該図形は、引用商標及び自動車「タイプ2」(T1)を知得することなく無関係に又は偶然に採択したとは到底考えられず、引用商標及びその基となる自動車「タイプ2」(T1)の外観をほとんどそのまま流用したものといえる。
また、日本で業を行っている商標権者の業務内容には、「旅行斡旋業、旅行業法に基づく旅行業、一般貸切旅客自動車運送業、ハイヤー・タクシー業務、中古車売買」が含まれているから(甲27)、商標権者は商用車を使った運送、輸送、貸切、貸出及び手配の分野及び中古車売買の分野に関して深い知識を持つ者である。
「タイプ2」の第1世代(T1)は現在中古車しか流通しておらず(甲11)、また、「ワーゲン風」や「ワーゲンバス仕様」の車も中古車市場で売られている(甲28)。
したがって、「タイプ2」が申立人に係る自動車であることを商標権者が知らないはずはない。
これらを総合すると、本件商標は、要部となる図形が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一若しくは類似の商標であることを承知の上、引用商標の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し不当な利益を得るなどの目的のもとに出願され、権利を取得されたものといえるから、不正の目的をもって使用する商標に該当する。
(4)むすび
本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして国内外における需要者の間に広く認識されていて、かつ、構成上顕著な特徴を有する引用商標と同一又は類似の図形を商標中に含んで出願された商標であって、信義則に反する不正の目的をもって使用をするものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、通称「タイプ2」の第1世代「T1」と呼ばれている自動車(以下「申立人自動車」という。)を1950年に販売を開始し、1967年まで製造、販売した。その後、申立人自動車は、何度かモデルチェンジを重ね、現在では7代目(T7)が発売されている(甲11、甲12)。
イ 申立人自動車又はこれを擬人化したキャラクターは、映画に使用され、また、我が国において、2003年ないし2021年に申立人自動車に関する本及び雑誌(バックナンバーを含む。)が発行ないし販売されている(甲13〜甲19)。
ウ 同一の構成態様からなる自動車の立体形状を正面図、背面図、右側面図並びに背面右側からみた斜視図及び正面左側からみた斜視図の5図面で表してなる引用商標1、引用商標2、引用商標4、引用商標7及び引用商標8(以下、これらをまとめて「引用立体商標」という。)は、ブラジル、ポルトガル、スペイン、トルコにおいて、それぞれ「高度な著名商標」「名声を得ている商標」「高レベルの著名度を有している商標」、また、引用立体商標の正面図、右側面図及び正面左側からみた斜視図である引用商標3、引用商標5及び引用商標6は、スペインで「著名商標」と認定されていることがうかがえる(甲2〜甲4及び甲9)。
エ 申立人自動車は、我が国においては、「ワーゲンバス」と称され、中古車が高値で取引されている(甲11)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は申立人自動車を1950年から販売を開始、その後1967年まで製造、販売し、我が国においても、申立人自動車に関する本や雑誌が発行され、中古車が高値で販売されていることなどからすれば、申立人自動車は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における一部の需要者(愛好家)の間にある程度知られているといい得るものの、申立人自動車はすでに1967年に製造が終了しており、現在我が国においては、中古車しか販売されていないこと及び我が国における販売実績及び市場シェア等、申立人自動車の周知、著名性を確認できる証拠の提出は見いだせないことからすれば、申立人自動車は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の需要者の間において広く認識されていたとはいえない。
また、申立人自動車の形状と同一視又は酷似する引用商標がブラジル、ポルトガル、スペイン及びトルコにおいて、「高度に著名な商標」や「名声を得ている商標」などと認定されていることがうかがえるとしても、これらの国における取引の実情を確認できる証拠は見いだせず、これらの認定のみをもって、申立人自動車が本件商標の登録出願時及び登録査定時に外国の需要者の間において広く認識されているとまではいい難い。
そうすると、申立人が、申立人自動車を基にしたとする引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国又は外国における需要者の間において広く認識されているものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「WAKU WAKU BUS」の文字(構成中「KU」の文字は、「A」の文字の上部にやや小さく表され、かつ、「U」の文字の内側に黒点を有している。また、「BUS」の文字は、「WA」の文字より少し低い位置に配されている。以下同じ。)を表し、上記「BUS」の文字の上部に、バスを図案化したとおぼしき図形(以下「本件図形部分」という。)を配してなるところ、本件図形部分は、車体の前側中央部をV字形に白色で、それ以外を赤色に着色し、窓は前部と側部に分かれ、前輪部分のフェンダーはタイヤが全て見え、後輪部分のフェンダーはタイヤの上部が見えない形状で、二つの丸いライトは内側に青色と白色を配した「目」を想起させるものであって、全体としてバスを擬人化したと理解され得るものである。
そして、本件図形部分と文字部分とは接することなく配置されており、視覚上分離して看取されるといえる。
また、本件図形部分は、バスを擬人化して表したものと理解され得るものの、特定の観念を生じるとまではいえず、他方、「WAKU WAKU BUS」の文字部分は、辞書類に記載のない語であり、特定の意味合いにおいて親しまれている語でもないから、本件図形部分と文字部分とが観念上の結びつきを有するものともいえず、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そうすると、本件商標は、構成中の本件図形部分と文字部分のそれぞれが、自他商品の識別標識として機能するといえるから、本件図形部分のみを分離抽出し、これを本件商標の要部として引用商標と比較することも許されるというべきであり、本件図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じない。
(2)引用商標について
引用立体商標は、別掲2のとおり、自動車の立体形状を正面図、背面図、右側面図並びに背面右側からみた斜視図及び正面左側からみた斜視図の5つの図面からなり、当該自動車の前面は上部から中央部に向かってV字状に描かれ、前面の窓は中央部で区切られた2枚、側面は小窓を含む5枚の窓から構成され、前輪部分のフェンダーはタイヤが全て見え、後輪部分のフェンダーはタイヤの上部が見えない形状で、ライトは丸い構成からなる、全体として小型のバスを写実的に表したと認識されるものであり、また、引用商標3、引用商標5及び引用商標6は、それぞれ、引用立体商標の正面図、右側面図及び正面左側からみた斜視図と同一の構成からなる。
そして、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものではなく、申立人自動車を直ちに想起するとはいえないから、特定の称呼及び観念は生じない。
(3)本件商標と引用商標の比較
ア 本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は、図形と文字からなるのに対し、引用商標は、図形のみからなることから、両商標は、その構成全体の比較において明らかに相違するものである。
イ 次に、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る本件図形部分と引用立体商標とを比較すると、両者は、前面がV字状となっていること、前輪部分と後輪部分のフェンダーの形状及びライトが丸いという共通点を有するものの、本件図形部分は窓が前面と側面に分かれているのみであるのに対し、引用立体商標は前面が中央部で二つに分かれ側面も5つの窓から構成されていること、本件図形部分は全体としてバスを擬人化したものと認識されるのに対し、引用立体商標はバスを写実的に表したと認識されるものであって、その印象が大きく異なることを踏まえると、両者は外観において相紛れるおそれはない。
また、本件図形部分と、引用立体商標の正面図、右側面図及び正面左側からみた斜視図である引用商標3、引用商標5及び引用商標6を比較しても、外観において相紛れるおそれはないといえる。
そして、本件図形部分と引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないから、称呼及び観念において比較することができない。
そうすると、本件図形部分と引用商標は、称呼及び観念において比較できないとしても、図形商標を検討する上で重要な外観において相紛れるおそれはないから、これらを総合的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 以上から、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものではなく、また、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、さらに、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標。色彩は原本参照。)



別掲2(引用商標1、引用商標2、引用商標4、引用商標7、引用商標8)



別掲3(引用商標3)



別掲4(引用商標5)



別掲5(引用商標6)





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異議決定日 2025-01-29 
出願番号 2023063807 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W39)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 康浩
特許庁審判官 小林 裕子
大島 勉
登録日 2024-01-10 
登録番号 6768586 
権利者 株式会社星新
商標の称呼 ワクワクバス、ワクワク 
代理人 田崎 恵美子 
代理人 江崎 光史 
代理人 高橋 正宏 
代理人 佐久間 洋子 

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