ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25 |
---|---|
管理番号 | 1420396 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-06-16 |
確定日 | 2025-01-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6368388号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第6368388号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6368388号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年8月25日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,帽子」を指定商品として、同3年1月20日に登録査定され、同年3月25日に設定登録されたものである。 第2 請求人が引用する商標 1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号又は同項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲2、別掲3及び別掲4のとおりの構成からなる商標(以下、それぞれ「引用商標1」、「引用商標2」及び「引用商標3」という。)であって、本件商標の登録出願前から、我が国又は外国において、同人の業務に係る商品「被服」等について使用して周知著名となっている商標と主張するものである。 2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(4)の登録商標であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4057070号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 登録出願日:平成5年12月2日 設定登録日:平成9年9月19日 指定商品:第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」)を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」 (2)登録第4731324号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成11年8月9日 設定登録日:平成15年12月5日 指定商品:第18類「かばん類,袋物,傘」及び第25類「履物(げた,草履類を除く。)」 (3)登録第6161392号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲5のとおり 登録出願日:平成30年6月11日 設定登録日:令和元年7月12日 指定役務:第35類「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,頭飾品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身飾品(「カフスボタン」を除く。)・衣服用き章(貴金属製のものを除く。)・衣服用バックル・衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。)・衣服用ブローチ・帯留・ボンネットピン(貴金属製のものを除く。)・ワッペン・腕章の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,うちわ・せんすの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,カフスボタン・ボタン類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,つけづめ・つけまつ毛・ひげそり用具入れ・ペディキュアセット・まつ毛カール器・マニキュアセット・耳かき・携帯用化粧道具入れ・懐中鏡・鏡袋・つけあごひげ・つけ口ひげ・ヘアカーラー(電気式のものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,傘の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,つえ用金属製石突き・ステッキ・つえ・つえ金具・つえの柄の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 (4)登録第6161393号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲6のとおり 登録出願日:平成30年6月11日 設定登録日:令和元年7月12日 指定役務:第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ヘッドバンド(運動競技用)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という場合があり、引用商標4ないし引用商標7をまとめていうときは、「11号引用商標」という場合がある。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和4年8月25日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同5年1月27日付け審判弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証(枝番号を含む。)を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように簡略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。 1 登録を無効とすべき法律上の根拠 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項により、無効とされるべきものである。 2 審判請求書による請求の理由 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 本件商標と引用商標の構成について (ア)本件商標は、別掲1のとおり、欧文字「C」を左右反転したものの上部に略正三角形を2つ円周に配し、その内部を縦に略三等分し、真ん中を外周及び三角形と同じ青色で着色し、閉じられた半円部分を赤色、左側は地の色のままとしており、これの内部中央の青色の部分には、動物の目と鼻と口のようなものが描かれているもので(以下「本件図形部分」という。)、さらに、本件図形部分の下方には、筆記体のような字で「Nyanpion」の欧文字が青色で横一段書きに書されている(以下「本件文字部分」という。)。 本件図形部分と本件文字部分は、それぞれに重なり合うことなく、各部分が独立した態様で配置されていることから、視覚上分離して認識されるものであり、また、これらが一体となって特定の観念や称呼を生ずるものでもなく、さらに、本件図形部分と本件文字部分とを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の事由はないから、両者は分離して把握されるものであり、本件図形部分及び本件文字部分が、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質等を表示するものである等、本件図形部分及び本件文字部分が殊更に、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特段の事由はないから、本件図形部分及び本件文字部分は、これらが独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものである。 (イ)引用商標1は、別掲2のとおり、欧文字「C」をロゴ化したもの(以下「Cロゴ」という。)の下に「Champion」を筆記体の書体でロゴ化したもの(以下「Championロゴ」という。)を横一段書きに書して構成されている。 「Cロゴ」は、「C」の内部が縦に略三等分されており、真ん中が外周と同じ青で着色され、閉じられた半円部分を赤、右側が地の色のままとされている。Championロゴは、「Champion」の文字を筆記体のような文字で記載し、欧文字「C」がCロゴとなっている。 CロゴとChampionロゴは、それぞれに重なり合うことなく、各部分が独立した態様で配置されていることから、両者は視覚上分離して認識されるものであり、また、これらが一体となって特定の観念や称呼を生ずるものでもなく、さらに、CロゴとChampionロゴとを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の事由もないから、両者は分離して把握されるものであり、CロゴとChampionロゴが、請求人の業務に係る商品との関係において、商品の品質等を表示するものである等、CロゴとChampionロゴが、殊更に、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特段の事由はないから、CロゴとChampionロゴは、これらが独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものである。 (ウ)引用商標2は、別掲3のとおり、引用商標1の「Championロゴ」と同一である。 (エ)引用商標3は、別掲4のとおり、引用商標1の「Cロゴ」と同一である。 イ 称呼上・外観上の類否について (ア)本件商標と引用商標1の類否について 商標の類否の判断に当たっては、商標の外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察して行うところ、本件商標と引用商標1には、外観、称呼において、次のような共通点がある。 本件図形部分と引用商標1のCロゴを比較してみると、欧文字「C」をモチーフとしている点、この内部を縦に略三等分し、真ん中を外周と同じ青色で着色している点、閉ざされた半円部分を赤で着色しているという引用商標1の図形部分の主要な特徴を同一にするものであり、上記共通点が強く印象付けられるから、両商標の類似性の程度は相当程度高い。 本件文字部分と引用商標1のChampionロゴを比較してみると、本件文字部分は「ニャンピオン」の称呼が生じ、引用商標1のChampionロゴからは「チャンピオン」の称呼が生じる。 両者は、語頭部の「ニャ」と「チャ」の音が異なるが、その他の「ンピオン」部分の音を共通にしており、全体として相紛らわしい。 また、両文字部分を構成する文字は8文字であり、そのうち5文字「a」、「p」、「i」、「O」及び「n」の文字を共通にし、本件文字部分は引用商標1の文字部分に近いフォント、デザインであえて表されており、外観上、類似性の程度は相当程度高い。 (イ)本件商標と引用商標2及び引用商標3の類否について 引用商標2について、上記(ア)における、引用商標1のChampionロゴについて述べたとおりであり、また、引用商標3について、上記(ア)における、引用商標1のCロゴについて述べたとおりである。 ウ 観念上の類比 引用商標は、請求人の周知商標であり、その著名性に相応して「あのチャンピオンブランド」の観念が生じ、本件商標は、周知著名となっている請求人の引用商標と同じ特徴を持つ図形部分と文字部分からなるものであり、「請求人の周知商標」、又は請求人と何らかの関係のある商標との観念が生じる。 エ 引用商標の周知著名性について (ア)歴史 Championブランドの所有者であるヘインズブランズ・インク(以下「ヘインズブランズ社」という。)は、ニューヨーク株式市場に上場し、我が国のほか、香港、台湾、オーストラリアや中米に拠点を有するグローバル企業であり、「Cロゴ」や「Championロゴ」を始めとした、ヘインズブランズ社が商標権を保有する商標は、全てヘインズブランズ社の子会社で、米国デラウェア州法に基づき設立された商標等の管理会社である請求人に権利が帰属している。 そして、請求人の社名でCロゴ商標等について商標登録されており、登録商標は我が国だけでも303件の商標登録を有している(甲3)。 ヘインズブランズ社の日本法人であるヘインズブランズジャパン株式会社(以下「ヘインズブランズジャパン社」という。)は、請求人から、我が国における独占的な使用権を許諾されており、この独占的な権利をもとに、自社で製造販売した商品にChampionのマークを付して販売するとともに、他社とライセンス契約を結び、ロイヤルティの収入を得ている。 Championブランドといえば、スポーツウェアやカジュアルウェアの定番として米国で定着している。現在、ヘインズブランズ社において、Championは、ヘインズ(Hanes)に次ぐ大きなブランドである(甲4)。 設立当初は、主にセーターの販売を手がけ、1919年に米国ニューヨーク州ロチェスターにてサイモン・フェインブルーム氏がセーター等の販売を始めた頃まで遡り(甲5、甲6)、フェインブルーム氏の事業は、1920年に同氏の息子達に引き継がれ、彼らにより「Champion」の名においてシャツ等の販売が行われるようになった。その後、1924年にはミシガン大学と契約することとなり、同大学の学生アスリートが着用するスウェットシャツとして採用されたことで、以後、急速に全米の大学にChampionブランドが広がることとなった。 1938年には、いまや著名なブランド名ともなっている「リバースウィーブ」と呼ばれる被服製造方法の特許が成立し、同製法を用いた製品は全米で人気を博するようになった。また、大学だけでなく、米海軍との取引にも事業が拡大し、同時に一般にも親しまれる定番ブランドとして、米国全土において順調に成長していった。 Championのブランドは、スポーツとの関わりも深く、1992年のバルセロナオリンピックにおいて、Championブランドの製品がアメリカ代表男子バスケットボールチーム(ドリームチーム)の公式ユニフォームとして認められ、このドリームチームは全勝して金メダルを獲得し、当時の雑誌の表紙にChampionブランドのユニフォームを着たドリームチームの写真が掲載されている(甲7)。 その後も、Championブランドは、1994年のリレハンメルオリンピック、1996年のアトランタオリンピックにおいて、アメリカ代表チーム等の公式ユニフォーム・サプライヤーとなった。 2014年以来、ヘインズブランズジャパン社は、一般社団法人日本車いすバスケットボールチームのサポーターとしてユニフォームの提供などサポートを行っており、2021年は東京パラリンピックにおいて車いすバスケットボール日本代表ユニフォームのオフィシャルサプライヤーであったが、車いすバスケットボールチーム男子は銀メダルに輝き、その注目された試合においてCロゴの付されたユニフォームを着て活躍した選手たちの活躍は記憶に新しい(甲8)。 このように、米国においてカジュアルウェアやスポーツウェアの定番として定着したChampionブランドであるが、1970年代には、ヨーロッパやアジアといった米国以外の国・地域でも商品展開がされるようになった。 我が国におけるChampionの歴史は、日本サラ・リー設立前の1970年代、株式会社ゴールドウイン(以下「ゴールドウイン社」という。)が、米国法人との提携関係に基づきChampionブランドのスポーツウェアとソックス、バッグ等のスポーツ用品を展開したことに始まり、米国の商標権者からライセンスを受けた日本法人である日本サラ・リー(現在のヘインズブランズジャパン社)が商標のサブライセンサーとなり、ゴールドウイン社を始めとする複数の我が国の会社との間で商標ライセンス契約を締結するビジネスモデルを展開した。 ヘインズブランズジャパン社は、他社へのライセンスビジネスだけではなく、独自に製品を開発し、Championブランドの下で、カジュアル衣料品、ソックスやアンダーウェアを中心に、製造卸販売、直営店やウェブサイトでの直販も展開している(甲9〜甲11)。 特に、Championの伝統的な製法であるリバースウィーブ製法を用いた製品は、高品質でデザイン性に優れた製品として我が国の消費者に広く受け入れられ、結果、Championブランドの我が国におけるブランドイメージの向上に寄与している。 このように、米国のみならず我が国でも消費者に広く受け入れられたChampionブランドの製品であるが、ブランドイメージの向上・確立のため、製品におけるロゴデザインの使用につき、歴史的に以下のように統一したブランド戦略を採用している。 すなわち、1969年に、後に「Cマーク」あるいは「Cロゴ」と一般的に呼ばれるようになる(甲5)、「Champion」の頭文字の「C」の内部に太い縦線を配したロゴデザインが編み出された。 それまでChampionブランドの製品では、創業以来様々なロゴデザインが用いられていたが、その方針が改められ、以後は、配色等に多少の変更が加えられる場合もあるものの、Championブランドで販売される大多数の製品には、製品自体のワンポイントマークとして、あるいは、織りネームや下げ札に付される等して、Cロゴが付されるようになった。 1984年以降は、Championブランドの主力製品であるスウェットシャツやTシャツのほとんど全ての製品の左袖や胸部分に、ロゴデザインが付されるようになった。 1970年代より「Champion」の頭文字にロゴを組み込んだChampionロゴが製品に頻繁に用いられているが、CロゴとChampionロゴは、それぞれ単独で、あるいは、両者を組み合わせて用いられ、スポーツウェアにおいて組み合わせて用いる場合には、通例、Cロゴを上段に、Championロゴを下段に配置する(引用商標1の態様)ことが多い。 引用商標1は、本件商標の登録出願前までに、請求人の使用権者であるヘインズブランズジャパン社が運営する店舗において、広告ディスプレイや、洋服のタグ、プレスリリースの広告、LINE「チャンピオン公式オンラインストア」のトップ画面、2018年に行ったスポーツイベント会場における売店用商品ボックス、商品のタグとして、30年ほど使用されており(甲11〜甲25)、商品タグ(甲24)は、青地のものが、日本法人が設立された1992年7月頃から使用され、白地のものが2010年代から使用されている。 以上のとおり、1969年以降は統一的なブランド戦略の下で、Championブランドの大多数の製品にCロゴ及びChampionロゴが付されるようになった。 まれにCロゴやChampionロゴが商品自体に付されていないデザインのものもあるが、その場合もタグ(下げ札)にはCロゴとChampionロゴが付されているのが通常である。 (イ)国内店舗 ヘインズブランズジャパン公式ウェブサイトによれば、全国に直営店だけでも46店舗ある(甲9)。 (ウ)宣伝広告 世界的規模で事業活動を行っている請求人は、毎年多額の宣伝広告費を費やしており、その宣伝広告活動の具体的な内容は、ファッション雑誌への広告掲載や商品紹介記事の掲載、スポーツチームに対するチームウェアの提供等、これらの手段を介して製品の宣伝広告・周知に努めている。 上述したように、1992年バルセロナオリンピックにおいて男子バスケットボール“ドリームチーム”の公式ユニフォームサプライヤーとなり(甲7)、1994年リレハンメルオリンピックにおいてアメリカ代表チームの公式ユニフォームのサプライヤー、さらに、バスケットボール世界選手権で優勝したドリームチームIIの公式ユニフォームサプライヤー、1996年にはアトランタオリンピックにおいてアメリカ代表チーム及びバスケットボールのドリームチームIIの公式ユニフォームサブライヤーとなった。 2006年FIBAバスケットボール世界選手権で、スポーツウェアで唯一のオフィシャルスポンサーとなり(甲5)、さらに、NBAの全チームとの間で2000年まで、NFLの全チームとの間で1999年から2000年まで、レプリカジャージのライセンス契約を結んでいた。 我が国では、2016年からプロバスケットボールチーム「サンロッカーズ渋谷」のオフィシャルサプライヤー(ユニフォーム提供)(甲21)、2020年9月には国内トップの男子プロバスケットボールリーグB1リーグに初昇格した「広島ドラゴンフライズ」オフィシャルサプライヤーとなる複数年契約を締結(甲19)、2014年からパラリンピック車いすバスケットボールチーム日本代表へのオフィシャルサプライヤーとなり、2021年1月にはプロゴルファーの女子選手のオフィシャルアウトフィッター(甲26の1)として広告の活動を、2022年5月に国内メジャー初優勝を飾った女子選手のゴルフウェア提供契約(甲26の2)、2021年9月にはグローバルブランドキャンペーンとして人気俳優、人気女優を起用して広報活動をするなど、様々な広告活動をしている(甲27、甲28)。 請求人が過去に請求した無効審判事件(無効2012−890042)においても、「Cロゴ」が周知著名であること、独創性が高く、強い出所表示機能を有する商標であることが認められた(甲29)。 以上のように、Championブランドのイメージの普及、定着及び周知に努めた結果、マスコミや需要者の注目を集めることに成功し、製品の高品質性と相まって世界的なファッションリーダーとして認知されている。 引用商標は、カジュアルウェア等のブランドとして本件商標の登録出願日及び現在において、海外及び我が国で著名となっている。 2018年から2020年にかけての我が国における雑誌などにおいて、請求人の引用商標を使用したスウェットシャツ、スウェットパンツ、バッグ、バスケットボールウェア、帽子、ヘアバンド等が掲載されている(甲30〜甲32)。 オ 結論 以上のように、本件商標は、周知著名となっている引用商標と外観、称呼において混同を生じるほど近似しており、高い類似性を有する商標であり、また、観念も共通しているものであり、その指定商品も互いに同一又は類似するものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 本件商標は、引用商標に類似する。 引用商標は、請求人の周知著名な商標であり、欧文字「C」を縦に三等分し、赤、青、地の色の鮮やかな3色で色分けするという点で、他に類を見ない洗練された独創的な商標である。 また、本件商標の指定商品と、引用商標の使用に係る商品は、共に被服、履物、帽子等であり関連性を有するものであって、さらに、本件商標の需要者と引用商標が使用された商品の需要者は、共に若者を中心としたカジュアルファッションの購買者であり、共通する。 以上を総合的に判断すると、本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。 以上の事情に照らせば、本件商標がその指定商品に使用されると、これに接する取引者及び需要者は、顕著に表された独特な図形部分とその下に横一段書きにされた欧文字との組み合わせ部分に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、請求人の商品であると誤認し、需要者が商品の出所について混同するおそれがあり、さらに、当該商品が請求人又はそれと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 イ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号について 請求人の引用商標は、本件商標の登録出願日前より、外国及び日本国内の需要者の間に、カジュアルウェアのブランドとして広く認識されていたことや、引用商標と本件商標が類似の商標であることを認識しながら、被服等を指定商品等とする本件商標を商標登録し、実際に本件商標を使用してパーカの製造、販売をしており、本件商標を付したパーカ、ティーシャツがインターネットのフリーマーケットで取引されている。 インターネットのフリーマーケットへの出品者が、「チャンピオンを可愛いくオマージュしたニャンピオンのプルオーバーパーカーになります。春先に一着で着用しやすいデザインです。」と、購入者が「チャンピオンのパロディですね」とコメントしている(甲42〜甲44)。 また、本件商標権者は、本件商標以外にも著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願している(甲45)。 これらのことからも、本件商標権者は、請求人の著名商標にフリーライドしていることは明らかであり、このような行為は、引用商標1の出所識別力を希釈化するものであり、不正の目的をもって使用するものと確信する(甲41)。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標は、引用商標4から引用商標7に類似し、その指定商品も同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 イ 引用商標4は、引用商標3のCロゴと同一の商標であり、本件商標と類似する。 また、その指定商品も、同一又は類似する。 ウ 引用商標5は、引用商標2のChampionロゴと同一の商標であり、本件商標と類似する。 また、その指定商品も、同一又は類似する。 エ 引用商標6は、引用商標2のChampionロゴを白黒で表したものであり、本件商標の構成中「Nyanpion」の文字部分と欧文字5文字を共通にし、また、観念も共通し、称呼も、語頭の「ニャ」と「チャ」の一音相違であり、全体として類似する。よって、本件商標全体とも総合的に考察して類似する。 また、その指定役務中、第35類「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が本件商標の指定商品中、第25類「履物」と類似する。 オ 引用商標7は、引用商標3のCロゴと色違いの商標であり、本件商標の図形部分とCをモチーフとしてCの内部を三分割している点、真ん中部分を外周と同じ色で塗りつぶしている点等が共通しており、外観が近似している。 また、引用商標7が周知著名となっているCロゴであることから、引用商標3と同様に、観念も類似するから、本件商標と類似する。 また、その指定役務中、第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ヘッドバンド(運動競技用)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、本件商標の指定商品と同一又は類似する。 カ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、引用商標1が著名であることを知り、意図的に引用商標1と略同様の態様による図形部分を用い、また、周知著名なChampionロゴの構成文字と5文字共通する「Nyanpion」の文字を付記して全体として引用商標1に酷似した構成態様に仕上げることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標1を連想、想起させ、引用商標1に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものである。 また、同様に、引用商標2及び引用商標3が著名であることを知り、意図的に引用商標2ないし引用商標7と略同様の態様による図形部分を有し、Championロゴの構成文字と5文字共通する「Nyanpion」の文字を付記することにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標2ないし引用商標7を連想、想起させ、引用商標2及び引用商標3に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・登録出願し登録を受けたものである。 そして、本件商標をその指定商品に使用する場合には、引用商標1ないし引用商標7の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、それらに化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがある。 そうすると、本件商標は、引用商標1ないし引用商標7に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、それら商標の特徴を模倣して登録出願し商標登録されたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 弁駁書による主張の要旨 (1)被請求人は、「本件商標は、その文字構成に相応して「ニャンピオン」の称呼が生じるが、構成全体を考慮しても特定の観念は生じない。」と述べている。 しかし、本件商標は、その構成全体を考慮すれば、被服等について周知著名となっている特徴的で独創的である引用商標3の「Cロゴ」をモチーフとしていることは明らかであり、さらに、「Nyanpion」の語も請求人の周知著名な「Champion」商標に基づいて「Ch」を「Ny」、「m」を「n」に変更しただけの文字の羅列であって、「あのチャンピオン」と何らかの関係があるであろうとの認識を生じさせる。 よって、本件商標の構成全体を考慮すると、その指定商品との関係において、「請求人の周知商標」又は「請求人と何らかの関係のある商標である」との観念が生じることは明らかである。 (2)被請求人は、引用商標4から、具体的な称呼及び観念までは生じないと述べているが、被服等について周知著名となっている特徴的で独創的である「Cロゴ」であり、指定商品との関係において、「あのチャンピオンブランド」との観念が生じることは明らかである。 (3)被請求人は、引用商標5及び引用商標6について、「優勝者。チャンピオン。」程度の観念を生じる、と述べているが、被服等について周知著名となっている請求人の商標であり指定商品との関係において「あのチャンピオンブランド」との観念が生じることは明らかであり、また、引用商標7からも「特定の称呼及び観念は生じない。」と述べているが、これも請求人の被服等について周知著名となっている特徴的で独創的である「Cロゴ」であり、指定商品との関係において「あのチャンピオンブランド」との観念が生じることは明らかである。 (4)被請求人は、本件商標と引用商標4との比較において、「観念において比較できないとしても、外観において判別は可能で、称呼において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。」と述べているが、本件商標はその構成全体を考慮すれば、被服等について周知著名となっている特徴的で独創的である引用商標4をモチーフとしていることは明らかであり、指定商品との関係において「請求人の周知商標」又は「請求人と何らかの関係のある商標である」との観念が生じることは明らかであるから、観念において相紛らわしく混同が生じるおそれがあり、また、外観においても引用商標4をモチーフとしていることは明らかであり、外観上も相紛らわしく混同が生じるおそれがある。 よって、総合的に考察すれば、相互に相紛らわしく混同が生じるおそれがある。 (5)本件商標と引用商標5との比較においては、「Nyanpion」の文字と「Champion」の文字とは、冒頭の「Ny」と「Ch」及び4文字目の「n」と「m」が相違するものの、「a」と「pion」の文字部分は共通であり、全体として近似した印象を与える。 また、観念について、「本件商標は特定の観念は生じないものの、引用商標5は特定の観念「優勝者。チャンピオン。」を生じるから、互いの印象において相違し、相紛れるおそれはない。」と述べているが、本件商標の構成全体を考慮すると指定商品との関係において「請求人の周知商標」、又は「請求人と何らかの関係のある商標である」との観念が生じることは明らかであり、互いの印象は近似するものであり、相紛らわしい。 (6)本件商標と引用商標6との比較においても、「外観及び称呼において判別は容易で、観念において相紛れるおそれはない」と述べているが、本件商標から生じる観念や外観的特徴を総合考慮すれば、本件商標との間に出所混同を生じるおそれがあることは明らかである。 (7)本件商標と引用商標7との比較においても、観念において比較できないとしても、外観において判別は可能で、称呼において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはないと述べているが、本件商標から生じる観念や外観的特徴を総合考慮すれば、本件商標との間に出所混同を生じるおそれがあることは明らかである。 (8)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について、本件商標は、その構成文字に相応して「ニャンピオン」の称呼が生じるが、構成全体を考慮しても、特定の観念は生じないと述べているが、誤りであり、本件商標の構成全体を考慮すると指定商品との関係において「請求人の周知商標」、又は「請求人と何らかの関係のある商標である」との観念が生じることは明らかである。 また、本件商標と引用商標の比較も、本件商標から生じる観念を正しく認識し、外観上の特徴の共通性等を考慮し総合的に判断すれば引用商標と相紛らわしく類似する商標であることが分かる。 (9)商標法第4条第1項第15号該当性について、「本件商標の構成中「Nyanpion」の文字部分は、請求人ブランド「Champion」とは、その構成文字が明らかに異なる別異の語を表してなると容易に理解できる」とあるが、文字構成が似通っており、相紛らわしい。 また、被請求人は、「引用商標1から引用商標3が、請求人ブランドに係る商標として、我が国の需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標であるとしても、それらは本件商標とは類似性の程度が低く、文字部分(Nyanpion)によりそれぞれの差異が強調されているから、本件商標から請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することは考えにくく、その商品の出所について誤認を生じるおそれはない。」と述べている。 しかしながら、文字部分も図形部分も請求人の商標に依拠して採択されていることが外観上、観念上、称呼上明白であり、その差異が強調されているとはいい難く、依拠した結果近似していることを凌駕するほどのものではない。 また、「本件商標から請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することは考えにくく、その商品の出所について誤認を生じるおそれはない。」というのは被請求人の主観にすぎず、客観的にはその近似性や依拠性から請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかのように連想、想起されるおそれがある。 (10)商標法第4条第1項第19号該当性についても、「本件商標は、(中略)引用商標1から引用商標3とは、(中略)類似する商標ではない」と述べているが、これまで述べてきたように本件商標と引用商標1ないし引用商標3とは外観、称呼、観念を総合的に考慮して、相紛らわしい。 (11)商標法第4条第1項第7号においても「本件商標は、(中略)引用商標1から引用商標3とは類似するものではな」いと述べているが、これまでも請求人が述べているように本件商標から生じる観念等についての解釈の誤りに基づく判断であり、誤っている。 また、「請求人ブランド「Champion」やそれら商標とは商品の出所につき誤認を生じるおそれがあるとはいえないから、不正の目的をもって出願されたということはできない」と述べているが、この点についてもこれまで述べてきたように、外観、称呼、観念の近似性により、請求人のブランド「Champion」に関連するものであり、請求人の商品であるかのように誤認混同が生じるおそれがあり、誤りである。 (12)不正の目的については審査基準等の例が列挙されているが、これに限定されるものではない。 被請求人は、請求人の引用商標以外にも、他の人気ブランドや高級ブランドの商標に依拠し、これに近似した商標を多数出願している。 そして、いくつかの商標については審査過程において拒絶理由通知が出され拒絶査定が出され、また異議申立てにより取消し、無効審判により無効とされている。 本件商標も請求人と何ら関係のあるものとは認められない被請求人が、本件商標を自己の商標として採択、使用することは、公正な商取引の秩序を乱すおそれがあるとともに、社会公共の利益及び国際信義に反するものであって、穏当でないといわざるを得ないものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1 引用商標の周知性について (1)請求人は、ヘインズブランズ社に属する商標の管理会社であるところ、同社の「Champion」ブランド(以下「請求人ブランド」という。)に係る商標権を含む権利を所有していると主張する。 そして、我が国においては、ヘインズブランズ社の日本法人であるヘインズブランズジャパン社が請求人ブランドに係るビジネスを展開している(甲4)。 (2)請求人ブランドは、米国においては1920年から「チャンピオン・ニッティング・ミルズ社」により使用が開始されており、セーター、スウェット、アスレチックウェアなどを取り扱うアメリカンスポーツカジュアルブランドである(甲5、甲6)。 そして、我が国においては、1970年代に、請求人ブランドに係るスポーツウェア、ソックス、バッグ等のスポーツ用品が展開されるようになり、直営店(46店舗)やウェブサイト等を通じて販売されている(甲9〜甲11)。 (3)請求人ブランドのロゴとして、引用商標と構成態様が共通する標章が使用されており、店舗における広告ディスプレイや、ウェブサイトのトップページ、被服のタグ等に表示されている(甲11〜甲25)。 (4)請求人ブランドは、スポーツ選手やスポーツチーム等への用具提供(ユニフォーム等)のほか、俳優等も起用した広報活動をしている(甲5、甲8、甲19、甲21、甲26〜甲28)。 また、請求人ブランドに係る商品(引用商標1〜引用商標3に相当するような標章を付した商品含む。)は、2018年ないし2020年に発行された複数の雑誌において継続的に商品紹介をする記事が掲載されている(甲30〜甲32)。 (5)以上(1)ないし(4)の事実によれば、請求人ブランドに係る商品(被服)は、我が国において40年以上、日本全国に所在する直営店やインターネット通信販売等を通じた販売実績があり、スポーツ選手やスポーツチーム等への用具提供、雑誌等における商品紹介等が継続して行われているから、同ブランド、ひいてはそのロゴとして商品や店舗等において使用、表示されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間のおいて広く認識され、周知、著名な商標となっていたと認められる。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、左端が開いた楕円の内部を縦に3つに分けて、右側を赤色、中央を青色(内部に白抜きの点及び線を配置して、顔をモチーフにしたような図を描いてなる。)、左側を白抜きとし、その楕円の上部に2つの三角形を配置してなる図形と、その下に「Nyanpion」の欧文字を筆記体状の書体で表してなるものである。 そして、本件商標の構成中、「Nyanpion」の欧文字部分は、辞書等に載録された語ではなく、具体的な意味合いを認識、理解させるものではない。 また、本件商標の構成中、本件図形部分は、楕円輪郭の中に、顔をモチーフにしたような図を表し、その上部には耳に相当するような三角形を2つ配置しているから、構成全体としては、猫の顔をモチーフにした図形のような印象を与えるものの、特定の観念までは生じない。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ニャンピオン」の称呼が生じるが、構成全体を考慮しても特定の観念は生じない。 (2)11号引用商標について ア 引用商標4は、別掲4のとおり、右側が開いた楕円の内部を縦3つに分けて、左側を赤色、中央を青色、右側を白抜きとした図形を表してなるものであるところ、これは「C」の欧文字をモチーフに図案化した図形であるとの印象を与えるとしても、具体的な称呼及び観念までは生じない。 そうすると、引用商標4は、特定の称呼及び観念を生じない。 イ 引用商標5は、別掲3のとおり、引用商標4と同様の図形と、その右側に「hampion」の文字を筆記体状の書体で表してなるものであるところ、その構成中、図形部分は、「C」の欧文字をモチーフに図案化した図形であるとの印象を与えるから、構成全体としては「Champion」の欧文字を表してなると看取できる。 そして、「Champion」の文字は、「優勝者。チャンピオン。」の意味を有する、我が国でも親しまれた英語である。 そうすると、引用商標5は、その構成文字に相応して、「チャンピオン」の称呼を生じ、「優勝者。チャンピオン。」程度の観念を生じる。 ウ 引用商標6は、別掲5のとおり、右側が開いた楕円の内部を縦に3つに分けて、左側を白抜き、中央を黒色、右側を白抜きとした図形と、その右側に「hampion」の文字を筆記体状の書体で表してなるものであるところ、その構成態様は、引用商標5と色彩を除いて共通するものである。 そうすると、引用商標6は、上記イのとおり、引用商標5と同様に、「チャンピオン」の称呼を生じ、「優勝者。チャンピオン。」程度の観念を生じる。 エ 引用商標7は、別掲6のとおり、引用商標6の図形と同様の図形を表してなるものであるところ、その構成態様は、引用商標4と色彩を除いて共通するものである。 そうすると、引用商標7は、上記アのとおり、引用商標4と同様、特定の称呼及び観念を生じない。 (3)本件商標と11号引用商標の比較 ア 本件商標と引用商標4を比較すると、外観については、図形部分の輪郭が楕円形で、内部を縦に3つに分けている点において共通するものの、端部の開く部分が左右で相違し、内部の色彩の配置順序(右から赤、青、白抜き、又は左から同色を配置)が相違するものである。 そして、本件商標は猫の顔をモチーフにした図形であるような印象を与えるのに対し、引用商標4は「C」の欧文字をモチーフに図案化した図形であるとの印象を与えるから、文字部分(Nyanpion)の有無も考慮すれば、互いの印象において相違し、判別は可能である。 また、称呼については、引用商標4は特定の称呼を生じないものの、本件商標からは「ニャンピオン」の称呼が生じるから、相紛れるおそれはない。 さらに、観念については、いずれからも特定の観念は生じないから、比較できない。 そうすると、本件商標と引用商標4は、観念において比較できないとしても、外観において判別は可能で、称呼において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 イ 本件商標と引用商標5を比較すると、外観については、その構成文字(「Nyanpion」と「Champion」)は互いに異なる語を表してなるものと容易に理解できるもので、本件商標の猫の顔をモチーフにした図形部分と引用商標5の「C」の欧文字をモチーフにした図形部分とは、互いの印象において相違するから、判別は容易である。 また、称呼については、全5音の構成音中、比較的聴取されやすい語頭の音(「ニャ」と「チャ」)の差異から、互いに聴別は容易である。 さらに、観念については、本件商標は特定の観念は生じないものの、引用商標5は特定の観念「優勝者。チャンピオン。」を生じるから、互いの印象において相違し、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標5は、外観及び称呼において判別は容易で、観念において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 ウ 本件商標と引用商標6を比較すると、構成態様が色彩を除いて共通する引用商標5と同様に、上記イのとおり、外観及び称呼において判別は容易で、観念において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 エ 本件商標と引用商標7を比較すると、構成態様が色彩を除いて共通する引用商標4と同様に、上記アのとおり、観念において比較できないとしても、外観において判別は可能で、称呼において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 (4)以上のとおり、本件商標は、11号引用商標と類似する商標ではないから、その指定商品について比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、上記2(1)のとおり、その構成文字に相応して「ニャンピオン」の称呼が生じるが、構成全体を考慮しても、特定の観念は生じない。 (2)引用商標について ア 引用商標2は、別掲3のとおり、引用商標5と同一の構成態様である。 イ 引用商標3は、別掲4のとおり、引用商標4と同一の構成態様である。 ウ 引用商標1は、別掲2のとおり、上段に引用商標3と同一の構成態様の商標を、下段に引用商標2と同一の構成態様の商標を表してなる。 (3)本件商標と引用商標の比較 ア 本件商標と引用商標2を比較すると、上記2(3)イのとおり、引用商標5との比較と同様に、外観及び称呼において判別は容易で、観念において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 イ 本件商標と引用商標3を比較すると、上記2(3)アのとおり引用商標4との比較と同様に、観念において比較できないとしても、外親において判別は可能で、称呼において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察しても、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 ウ 本件商標と引用商標1を比較すると、上記のとおり引用商標2及び引用商標3とも類似しないから、それら構成要素を組み合わせた引用商標1とも、誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。 (4)以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る引用商標とは、同一又は類似する商標ではないから、その指定商品と使用に係る商品について比較するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標は、引用商標とは、上記3(3)のとおり、類似する商標ではなく、類似性の程度は高くない。 また、本件商標の構成中「Nyanpion」の文字部分は、請求人ブランド「Champion」とは、その構成文字が明らかに異なる別異の語を表してなると容易に理解できるから、需要者にとっては、それぞれの差異が強調されることになる。 (2)そうすると、引用商標が、請求人ブランドに係る商標として、我が国の需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標であるとしても、それらは本件商標とは類似性の程度が低く、文字部分(Nyanpion)によりそれぞれの差異が強調されているから、本件商標から請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することは考えにくく、その商品の出所について誤認を生じるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標は、我が国において広く知られている請求人ブランドに係る引用商標とは、上記3(3)のとおり、類似する商標ではない。 したがって、本件商標は、日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標ではないから、その不正の目的の存否にかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号該当性について 請求人は、本件商標は引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択、登録出願して商標登録を受けたものであって、また本件商標をその指定商品に使用する場合、それら商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、それら信用、名声及び顧客吸引力、ひいては業務上の信用を毀損させるおそれがあるから、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものである旨主張している。 しかしながら、本件商標は、上記4のとおり、引用商標とは類似するものではなく、また、請求人ブランド「Champion」やそれら商標とは、商品の出所につき誤認を生じるおそれがあるとはいえないから、不正の目的をもって出願されたということはできない。 その他、請求人提出の証拠からは、本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くといえる事実関係や、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すというべき事情は発見できない。 そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 第5 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)請求人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 ア 請求人は、ニューヨーク株式市場に上場し、我が国のほか、香港、台湾、オーストラリアや中米に拠点を有するヘインズブランズ社が保有する商標等の管理会社であるところ、同社の「Champion」ブランド(請求人ブランド)に係る商標権を含む権利を所有している(請求人の主張)。 そして、我が国においては、ヘインズブランズ社の日本法人であるヘインズブランズジャパン社が請求人ブランドに係るビジネスを展開している(甲4)。 イ 請求人ブランドは、米国においては1920年から「チャンピオン・ニッティング・ミルズ社」により使用が開始されており、セーター、スウェットシャツ、アスレチックウェアなどを取り扱うアメリカンスポーツカジュアルブランドである(甲5、甲6)。 そして、我が国においては、1970年代に、請求人ブランドに係るスポーツウェア、ソックス、バッグ等のスポーツ用品が展開されるようになり、国内46の直営店舗やウェブサイト等を通じて販売されている(甲9〜甲11)。 ウ 請求人ブランドのロゴとして、引用商標と構成態様が共通する標章が使用されており、店舗における広告ディスプレイや、ウェブサイトのトップページ、被服のタグ等に表示されている(甲11〜甲25)。 エ 請求人ブランドは、スポーツ選手やスポーツチーム等への用具提供(ユニフォーム等)のほか、俳優等も起用した広報活動をしている(甲5、甲7、甲8、甲19、甲21、甲26〜甲28)。 また、請求人ブランドに係る商品(引用商標1から引用商標3に相当するような標章を付した商品を含む。)は、2018年から2020年に発行された複数の雑誌において継続的に商品紹介をする記事が掲載されている(甲30〜甲32)。 (2)以上の認定事実によれば、請求人ブランドに係る商品(被服)は、我が国において40年以上、日本全国に所在する直営店やインターネット通信販売等を通じた販売実績があり、スポーツ選手やスポーツチーム等への用具提供、雑誌等における商品紹介等が継続して行われているから、請求人ブランド、ひいてはそのロゴとして商品や店舗等において使用、表示されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時点において、請求人、ヘインズブランズ社又はヘインズブランズジャパン社(以下「請求人等」という。)の業務に係る被服及びスポーツウェア等を表示するものとして、我が国の需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標となっていたと認められる。 2 本件商標と引用商標及び11号引用商標との類否について (1)商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであって、綿密に観察する限りでは外観、観念、称呼において個別的には類似しない商標であっても、具体的な取引状況いかんによっては類似する場合があり、したがって、外観、観念、称呼についての総合的な類似性の有無も、具体的な取引状況によって異なってくる場合もあることに思いを致すべきである(最高裁判所平成3年(オ)第1805号同4年9月22日判決)。 (2)本件商標と引用商標3及び引用商標4との比較について ア 本件商標は、別掲1のとおり、左端に開口部を有する青色太線で描かれた横長楕円形の内部を縦に3つに分けて、右側を赤色、中央を青色で塗り潰し(内部に白抜きの点及び線を配置して、顔をモチーフにしたような白抜きの図を描いてなる。)、左側を地色で白抜き状とし、その楕円形の上部に2つの三角形を配置した構成からなる図形(本件図形部分)と、その下に「Nyanpion」の欧文字を青色の筆記体調の書体で横書きしたもの(本件文字部分)との構成からなるものである。 そして、本件図形部分は、中央に顔をモチーフにしたような白抜きの図が描かれ、横長楕円形の上部に2つの三角形が配されていることから、全体として何らかの動物の顔を表したものとの印象を与えるものといえるが、他方で、開口部を有する青色太線で描かれた横長楕円形の内部を縦に3つに分けて、中央を青色で塗り潰し、開口部を有する側を白抜き、開口部のない側を赤色とする点においては、請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等を表示するものとして、需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標となっている引用商標又はその構成部分と特徴を共通にするものであるから、当該特徴が需要者に強い印象を与えるものといえる。 そうすると、本件図形部分からは、開口部を有する青色太線で描かれた横長楕円形の内部を縦に3つに分けて、中央を青色で塗り潰し、開口部を有する側を白抜き、開口部のない側を赤色という引用商標の特徴を表したものとの印象をも与えるものといえる。 また、本件商標は、その構成中、本件文字部分からは、「ニャンピオン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 イ 引用商標3及び引用商標4は、別掲4のとおり、右側に開口部を有する青色太線で描かれた横長楕円形の内部を縦に3つに分けて、左側を赤色、中央を青色で塗り潰し、右側を地色で白抜き状とした図形からなるものである。 そして、上記1(2)のとおり、引用商標は、請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等を表示するものとして、需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標となっているものであるから、引用商標3及び引用商標4からは、特定の称呼は生じないものの、請求人等のブランドとしての観念を生じるものである。 ウ 本件商標の構成中、本件図形部分と引用商標3及び引用商標4とを比較すると、いずれも、開口部を有する青色太線で描かれた横長楕円形の内部を縦に3つに分けて、中央を青色で塗り潰し、開口部を有する側を白抜き、開口部のない側を赤色とするという点において共通するものである。 他方、本件図形部分と引用商標3及び引用商標4とは、子細に観察すれば、顔をモチーフにしたような白抜きの図及び横長楕円形の上部に配された2つの三角形の有無、横長楕円形の開口部の向き、横長楕円形内の赤色の位置といった点において相違するものの、上記共通点は、周知、著名な商標となっている引用商標又はその構成部分の特徴と共通するものであるから、需要者に対し強い印象を与えるものといえる。 そうすると、上記共通点との比較において、上記相違点は、殊更に強い印象を与えるとはいえず、需要者の記憶に残るものともいえない。 してみると、本件図形部分と引用商標3及び引用商標4とは、両者の上記共通点が需要者に強い印象を与えるものであるから、外観において相紛らわしいものと判断するのが相当である。 そして、本件商標の構成中、本件文字部分が殊更に強い印象を与えるような特段の事情は見いだせないから、「Nyanpion」の文字の有無を考慮したとしても、本件商標と引用商標3及び4とは、外観において相紛らわしいものといわなければならない。 次に称呼においては、本件商標からは「ニャンピオン」の称呼を生じるのに対し、引用商標3及び引用商標4からは特定の称呼を生じないものであるから、称呼において相紛れるおそれはないものである。 さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標3及び引用商標4からは請求人等のブランドとしての観念を生じるものであることから、相違するものといえる。 しかしながら、本件商標は、周知、著名な商標となっている引用商標又はその構成部分と共通の特徴を有し、その特徴が需要者に強い印象を与えるものであるから、本件商標からも請求人等のブランドとしての観念を想起させる場合もあるといえ、その限りにおいては、本件商標と引用商標3及び引用商標4とは、観念において相紛れるおそれがあるものである。 以上を踏まえ、本件商標と引用商標3及び引用商標4との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、取引の実情を踏まえつつ、全体的に考察すれば、たとえ、称呼において相紛れるおそれがないとしても、外観において相紛れるおそれがあり、観念においても相紛れるおそれがある場合があることからすると、引用商標3及び引用商標4が周知、著名であることをも踏まえれば、両商標は、商品の出所について、誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標と判断するのが相当である。 (3)本件商標と引用商標2及び引用商標5との比較について ア 引用商標2及び引用商標5は、別掲3のとおり、引用商標3及び引用商標4と同様の図形とその右側に「hampion」の欧文字を青色の筆記体調の書体で横書きしたものとの構成からなるものである。 そして、引用商標2及び引用商標5の図形部分は、その構成からして「C」の欧文字をモチーフにしたものとの印象を与えるものといえ、また、「Champion」の語が比較的平易な語であること、上記1(2)のとおり、引用商標は、請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等を表示するものとして、需要者の間において広く認識され、周知、著名な商標となっていることからすると、引用商標2及び引用商標5は、全体として、「Champion」の文字を表したものと認識されるといえる。 そうすると、引用商標2及び引用商標5からは、「チャンピオン」の称呼及び観念を生じるとともに、請求人等のブランドとしての観念をも生じるものである。 イ 本件商標と引用商標2及び引用商標5とを比較すると、両者の図形部分は、上記(2)ウのとおり、外観において相紛らわしいものであり、両者の文字部分を考慮したとしても、本件商標と引用商標2及び引用商標5とは、外観において相紛らわしいものと判断するのが相当である。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ニャンピオン」の称呼と、引用商標2及び引用商標5から生じる「チャンピオン」の称呼とは、2音目以降の「ンピオン」の4音を共通にするものであり、異なるところは、語頭における「ニャ」と「チャ」の音の相違のみである。しかも、当該相違音は、「ア」の母音を共通にするものであるから、当該差異音が語頭であることを踏まえても、本件商標と引用商標2及び引用商標5とは、称呼において一定程度の類似性を有するといえる。 さらに、観念においては、引用商標2及び引用商標5からは、請求人等のブランドとしての観念をも生じるところ、上記(2)ウと同様の理由により、本件商標と引用商標2及び引用商標5とは、観念において相紛れるおそれがある場合があるものである。 以上を踏まえ、本件商標と引用商標2及び引用商標5との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、取引の実情を踏まえつつ、全体的に考察すれば、外観において相紛れるおそれがあり、称呼において一定程度の類似性があり、観念においても相紛れるおそれがある場合があることからすると、引用商標2及び引用商標5が周知、著名であることをも踏まえれば、両商標は、商品の出所について、誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標と判断するのが相当である。 (4)本件商標と引用商標1との比較について 引用商標1は、別掲2のとおり、上段に引用商標3及び引用商標4と同様の構成のものを、下段に引用商標2及び引用商標5と同様の構成のものをそれぞれ配した構成からなるものである。 そして、上記(2)及び(3)のとおり、本件商標は、引用商標2ないし引用商標5と類似するものであることからすると、本件商標と引用商標1についても同様に、類似する商標と判断するのが相当である。 (5)本件商標と引用商標6及び引用商標7との比較について 引用商標6及び引用商標7は、別掲5及び別掲6のとおりの構成からなるものであり、いずれも、引用商標2ないし引用商標5における赤色部分を白抜きとし、他の構成要素を全て共通にするものであって、引用商標2ないし引用商標5とほぼ同様の外観上の印象を与え、同様の称呼及び観念を生じるものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標は、引用商標2ないし引用商標5と比較したときと同様に、引用商標6及び引用商標7との比較においても、類似する商標と判断するのが相当である。 (6)以上のとおり、本件商標は、引用商標及び11号引用商標と類似する商標といわなければならない。 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)上記2のとおり、本件商標と11号引用商標は、類似する商標である。 (2)指定商品及び指定役務の類否について ア 本件商標の指定商品中「仮装用衣服」以外の商品中には、引用商標4の指定商品中「布製幼児用おしめ」以外の商品及び引用商標5の指定商品中「履物(げた,草履類を除く。)」が含まれるものである。 イ 本件商標の指定商品中「被服,帽子」は、引用商標7の指定役務中「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似するものである。 ウ 本件商標の指定商品中「ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト」は、引用商標7の指定役務中「身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似するものである。 エ 本件商標の指定商品中「履物」は、引用商標6及び引用商標7の指定役務中「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似するものである。 オ 本件商標の指定商品中「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、引用商標7の指定役務中「運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ヘッドバンド(運動競技用)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似するものである。 カ 上記アないしオのとおり、本件商標の指定商品中「仮装用衣服」以外の商品は、11号引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。 (3)以上のとおり、本件商標は、11号引用商標に類似する商標であって、本件商標の指定商品中「仮装用衣服」以外の商品は、11号引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、その指定商品中「仮装用衣服」以外の商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性について 上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識され、周知、著名なものとなっていたから、引用商標の周知著名性の程度は高いといえる。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記2(6)のとおり、本件商標は引用商標と類似するものであるから、本件商標と引用商標との類似性の程度は高いといえる。 (3)引用商標の独創性の程度について 引用商標は、いずれも特徴的な図形又はこれを含むものであるから、その独創性の程度は高いといえる。 (4)本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等とは、いずれもファッション関連の商品又は人が身につける商品であることから、その関連性の程度は高く、取引者及び需要者を共通にするものである。 (5)出所の混同のおそれについて 上記(1)ないし(4)のとおり、引用商標の周知著名性の程度は高く、その独創性の程度も高いものであり、本件商標と引用商標との類似性の程度は高く、本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る被服及びスポーツウェア等との関連性の程度は高く、取引者及び需要者を共通にすることからすると、本件商標は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する需要者が、引用商標を連想、想起し、当該商品が請求人等又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。 (6)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「仮装用衣服」以外の商品について、商標法第4条第1項第11号に該当し、仮に該当しないとしても同項第15号に該当する。 また、本件商標は、その指定商品中「仮装用衣服」について、商標法第4条第1項第15号に該当する。 そうすると、他の無効事由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲2(引用商標1。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲3(引用商標2。引用商標5。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲4(引用商標3。引用商標4。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲5(引用商標6) ![]() 別掲6(引用商標7) ![]() (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-10-28 |
結審通知日 | 2024-10-31 |
審決日 | 2024-11-20 |
出願番号 | 2020111022 |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W25)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
山田 啓之 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 杉本 克治 |
登録日 | 2021-03-25 |
登録番号 | 6368388 |
商標の称呼 | ニャンピオン |
代理人 | 神蔵 初夏子 |
代理人 | 青木 博通 |
代理人 | 中田 和博 |