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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1416811 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-01-23 
確定日 2024-10-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6754358号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6754358号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6754358号商標(以下「本件商標」という。)は、「ROYAL OAK」の文字を標準文字で表してなり、令和5年5月12日に登録出願、第33類「ウイスキー,スピリッツ(飲料),リキュール,洋酒」を指定商品として、同年9月14日に登録査定、同年11月15日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議申立ての理由として引用する商標は、「ROYAL OAK」の欧文字(以下「引用商標1」という場合がある。)、「ロイヤルオーク」の片仮名(以下「引用商標2」という場合がある。)及び別掲のとおりの構成からなるもの(以下「引用商標3」という場合がある。)であり、同人が「腕時計」に使用して、著名であると主張するものである。
なお、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第285号証(枝番号を含む。また、枝番号を全て表示する場合は、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 申立人の業務に係る腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」について
(1)申立人について
申立人は、1875年にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲにより創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、日本及び米国を含む世界の高級腕時計市場において自社製品を販売している。申立人は、腕時計の専門誌において「世界3大時計ブランドの一つに並び称される」(甲2)、「世界3大ブランドの一角を占めるオーデマ ピゲ」(甲3)、「時計業界で『世界3大ブランド』といえば、パテック、ヴァシュロン、オーデマピゲ。」(甲4)、と紹介されているとおり、申立人及び申立人の製品は日本国内においても極めて高い著名性を有している。
(2)腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」について
腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」(以下「申立人商品」という。)は、「時計界のピカソ」と称されるイタリア人時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによってデザインされ、1972年に最初のモデルが発売された(甲5、甲6)。当時18金よりも高価であったステンレススチールを採用した初めてのラグジュアリースポーツウォッチであり、発売以来今日に至るまでの50年以上にわたり販売されている。
申立人商品は、英国海軍の戦艦Royal Oak号の八角形の舷窓に因んで採用された、八角形のベゼルのそれぞれの角に六角形のネジを配置し、「グランドタペストリー」と名付けられた立体的な格子模様を施した文字盤を備えた特徴的な形状を有し(甲3、甲7、甲8)、日本国内はもとより、米国、カナダほかの世界の市場においても極めて高度の著名性を獲得している。
(3)販売実績について
我が国においては、1991年まではスイスのデスコ・フォンシュルテス社が、1991年から2006年まではデスコ・フォンシュルテス社の日本法人である日本デスコ株式会社が、それ以降は申立人の日本法人であるオーデマピゲ株式会社が日本における申立人の輸入代理店となり東京・名古屋・大阪に直営店であるオーデマ ピゲ ブティックを構える他、東京に2箇所、札幌・神戸・岡山・高松・福岡に各1箇所ある正規代理店を通じて申立人商品をはじめとする自社製品を販売している(甲9)。
申立人商品は日本において継続的に販売されており、2015年ないし2020年の売上は4,536万186スイスフラン(約52億8,718万3,280円)ないし1億964万6,028スイスフラン(約127億8,034万1,023円)である(甲10)。
また、申立人商品を含む原告の製品を再販売する事業者は日本全国に多数存在しており、少なくとも50店舗以上見受けられる(甲11)。申立人商品の定価は極めて高価であるにもかかわらず、正規販売価格の倍額以上の価格で買取も行われている(甲12)ことからも申立人商品は国内市場において高い人気、評価を受けていることがわかる。
(4)宣伝・広告等
申立人は、申立人商品について積極的に宣伝・広告を行ってきており、時計雑誌の他に、全国紙、週刊誌、女性向け雑誌やウェブサイト等、多数のメディアに広告を出稿しており、1972年から現在に至るまで、時計雑誌、ファッション誌のみならず週刊誌・全国紙を含む多種の新聞・雑誌に少なくとも160回以上その広告又は紹介記事が掲載され、また、申立人商品をはじめとする申立人の製品を宣伝するための展示会への出展、新製品の発表会、顧客を集めてのイベントやゴルフトーナメントのスポンサーシップといったイベントも数多く行っている(甲6〜甲8、甲15〜甲78、甲81〜甲85、甲87〜甲91、甲93〜甲95、甲97〜甲99、甲101〜甲105、甲108〜甲140、甲142〜甲231、甲233〜甲236、甲239、甲241、甲242、甲246〜甲252、甲259、甲260、甲263〜甲265、甲280)。
申立人商品については、日本においても多額の費用を投じて宣伝・広告を行っており、例えば2015年ないし2020年の宣伝・広告費は、6億950万679円ないし3億5,733万6,750円である(甲13)。
(5)雑誌等での申立人商品についての掲載記事等
雑誌記事等において、申立人商品は、申立人の製品を代表するモデルとして日本を含む世界各国の高級腕時計市場において高い評価を得ている(甲2〜甲5、甲12、甲70、甲80、甲86、甲92、甲96、甲100、甲106、甲107、甲141、甲228、甲229、甲232、甲237、甲238、甲240、甲243〜甲245、甲253〜甲256)。
また、著名人にも「ロイヤルオーク」の愛用者が多数存在することからも申立人商品の人気の高さがわかり、著名人が愛用する製品ということで申立人商品の認知度がさらに高まっている(甲198)。
(6)我が国での商標登録取得状況
引用商標は申立人にとって最も重要な商標である。申立人は莫大な費用と時間を投じて世界各国で「Royal Oak(ロイヤルオーク)」に関する商標を登録し、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」に表象された業務上の信用の維持に努めており、その結果、引用商標は著名性及び多大な顧客吸引力を形成している(甲14)。
なお、我が国においても複数の商標登録を有している。
(7)小括
以上のことからすれば、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」に係る申立人商品が継続的に我が国において販売され、長年にわたって広告・宣伝を行い、雑誌等のメディアにおいて申立人商品の特徴を認識できるような態様で紹介される等した結果、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」は申立人の製品を代表するモデルとして日本を含む世界各国腕時計市場において高い評価を得ており、本件商標の登録出願時も、また現在に至るまで引用商標は需要者が申立人の業務に係る商品として国内外において周知・著名であるといえる。
2 商標法第4条第1項第15号が適用されるべき点について
本件商標は申立人の周知著名な商標である腕時計に係る引用商標と同一又は類似である。そして、近年、商品の付加価値の向上・新規顧客の獲得・認知度の向上等のため、企業やブランド同士がコラボレーションし商品開発や販売促進を行うことがある。腕時計やファッションの分野においても異業種とのコラボレーションの例が多数みられる(甲266〜甲275)。
また、申立人自身も、過去数十年にわたり、ファッション、音楽、エンターテイメント等、様々な異業種の企業・ブランドとのコラボレーションを行っている(甲276〜甲279、甲282〜甲284)。
以上のような状況から、本件商標が指定商品について使用されれば、これに接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る商品、又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同する蓋然性が極めて高い。
なお、引用商標は、現在のみならず、本件商標が出願された時点においても広く知られていた。
したがって、本件商標は出願時より商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号が適用されるべき点について
本件商標は我が国を始め世界中で周知著名な引用商標と同一又は類似する商標である。実際、米国では、「Royal Oak」が高級時計に関して非常によく知られた商標であると判断されている(甲281)。また、中国でも「Royal Oak」は「Oak」という文字を含む第三者の商標に対する異議申立において、一定の影響力があることが認められている。
そのため、仮に、本件商標の使用が前述のような出所混同を生じるおそれがないとしても、本件商標は周知著名な引用商標の価値に乗じようとする意図又はその価値を希釈化させるといった不正の目的をもって出願されたと見るのが相当である。また、引用商標は、現在のみならず、本件商標が出願された時点においても広く知られていたことは先に述べたとおりである。
したがって、本件商標は出願時より商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号が適用されるべき点について
先に述べたとおり、引用商標は我が国をはじめ世界中で周知著名である。そのような強い顧客吸引力を獲得した非常に商業的価値の高い商標を、これと何らの関係を有しない者が、これを自己の商標として採択使用することは、その周知著名な商標に化体した名声や信用に故なく便乗するものといわざるを得ない。
本件商標を登録することは、指定商品について本件商標権者にその独占的使用を認めることとなり、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ない。本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、1875年にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲによって創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、日本及び米国を含む高級腕時計市場において自社製品を販売している(申立人主張)。
イ 申立人は、腕時計の専門誌において、世界3大時計ブランドの一つとして紹介されている(甲2〜甲4)。
ウ 腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」(申立人商品)は、イタリア人時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによってデザインされ、1972年に最初のモデルが発売され(甲5、甲7)、その後、多数のバリエーションが販売されている(甲174、甲190等)。
エ 我が国においては、1991年まではスイスのデスコ・フォンシュルテス社が、1991年から2006年まではデスコ・フォンシュルテス社の日本法人である日本デスコ株式会社が、それ以降は申立人の日本法人であるオーデマピゲ株式会社が日本における申立人の輸入代理店となり東京・名古屋・大阪に直営店であるオーデマ ピゲ ブティックを構える他、東京に2箇所、神戸・高松・福岡に各1箇所所ある正規代理店を通じて申立人商品を販売している(甲9)。
また、申立人の腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」(申立人商品)は、2023年12月13日時点において、上記店舗による販売以外に、インターネットにおいて、約50店舗で再販売されている(甲11)。
オ 申立人は、我が国における2015年ないし2020年の売上げは、2015年が4,536万186スイスフラン(約52億8,718万3,280円)、2016年が6,129万4,671スイスフラン(約71億4,450万6,851円)、2017年が7,294万4,995スイスフラン(約85億246万8,617円)、2018年が9,412万3,405スイスフラン(約109億7,102万4,086円)、2019年が1億964万6,028スイスにフラン(約127億8,034万1,023円)及び2020年が4,964万9,051スイスフラン(約57億8,709万3,384円)であるとして、「Royal Oak製品 売上高(2015年〜2020年、単位:スイスフラン)」(甲10)を提出している。
カ 申立人商品について、1972年以降、外国で刊行されているものを含め、時計雑誌、ファッション誌、週刊誌・全国紙を含む多種の新聞・雑誌等において広告が掲載され、また、申立人及び申立人の輸入代理店は申立人商品の宣伝のためのカタログの配布、展示会への出展、新製品の発表会などのイベントを行っている。(甲8、甲15、甲16、甲18〜甲37、甲39〜甲46、甲49〜甲61、甲63〜甲66、甲68、甲69、甲71〜甲78、甲81〜甲85、甲87、甲89、甲91、甲93、甲95、甲97、甲101、甲103、甲105、甲115〜甲117、甲119〜甲129、甲132〜甲135、甲138、甲140、甲142〜甲148、甲150、甲152〜甲171、甲173、甲174、甲177、甲186〜甲194、甲196、甲197、甲199〜甲202、甲205、甲206、甲208〜甲215、甲217、甲222〜甲225、甲230、甲231、甲233〜甲236、甲239、甲241、甲259、甲280)。
キ 申立人商品について、2002年以降、雑誌等において紹介されており(甲2〜甲8、甲79、甲80、甲86、甲90、甲92、甲93、甲96、甲100、甲104、甲106、甲107、甲228、甲229、甲232、甲237、甲238、甲240、甲242〜甲245、甲253〜甲257)、上記記事において、「ロイヤルオークのターゲットとなる富裕層に対してブランド名もモデル名もネームバリューは絶大。」(甲3)、「「ロイヤル オーカー」とは、あのオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」を手にしたハイクラスな艶女&艶男たちのことでございます。」(甲106)、「APのロゴで知られるオーデマ・ピゲ。日本では以前から雲上ブランドとして認知されていて人気が高い。その名を不動のものにしたのが1972年に発表された「ロイヤル オーク』だ。」(甲256)の記載がある。
ク 申立人は、宣伝広告費(2015年〜2020年)について、2015年に4億6,628万9,341円、2016年に6億782万4,104円、2017年に6億950万679円、2018年に5億4,181万2,520円、2019年に4億675万4,000円、2020年に3億5,733万6,750円であるとして「Audema Piguet宣伝広告費(2015年〜2020年)」(甲13)を提出しているが、これが申立人商品に係るものであることは確認できない。
ケ 申立人は、他社とのコラボレーション事業として、「マーベル」、「アリクス」を手がけ、限定版の腕時計を販売した(甲276〜甲278)。
コ 米国特許商標庁商標審判控訴委員会は「ロイヤルオークは高級時計に関連して非常によく知られた商標であると結論付ける。」という判断をした(甲281)。
(2)上記(1)によれば、「ROYAL OAK」及び「ロイヤルオーク」の文字並びに別掲の引用商標3と同じ商標を使用した申立人商品は、1972年の発売以降、現在に至るまで50年以上販売されており、我が国おいては1972年頃から販売され、広告宣伝、イベント等が継続して行われていることがうかがえること、雑誌等において、世界三大時計ブランドのように記載されている申立人の代表的な商品といえることなどからすれば、「ROYAL OAK」の欧文字からなる引用商標1、「ロイヤルオーク」の片仮名からなる引用商標2及び別掲の構成からなる引用商標3は、高級時計の購入者やこれに関心を有する需要者、取引者の間では、申立人に係るものであると認識されているといい得るものである。
また、外国においても、雑誌等で広告宣伝がされており、米国においては、「ROYAL OAK」の商標は、高級時計に関して、周知性が認められることから、我が国と同様に高級時計の購入者やこれに関心を有する需要者、取引者の間では、申立人に係るものであると認識されているといい得るものである。
しかしながら、申立人商品について、我が国において上記(1)オの売上げがあるとしても、当該商品は高額商品であり、販売個数が多いとは考え難く、また、販売額をもって市場シェアを推し量ることはできないこと、申立人商品の国内における販売店は限定されており、申立人商品を再販売する店舗についても、申立人商品のような高額商品を取り扱うオンラインストアが約50店舗存在するにすぎないものであって、広く一般消費者が目にするものとはいえず、広告宣伝費についても、これが、申立人商品に係るものであるかが確認できない。
そして、そのことは、外国においても同様であると推認できる。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内又は外国において、本件商標の指定商品の需要者である一般需要者の間に至るまで広く認識されていると認めることができないものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり「ROYAL OAK」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応し「ロイヤルオーク」の称呼を生じ、構成中「ROYAL」及び「OAK」の文字は、「王室の」及び「オーク《ナラ・カシなどブナ科コナラ属の総称》」の意味を有する平易な英語(いずれも「新英和中辞典(第7版)」株式会社研究社)であるが、これらの語を組み合わせてなる本件商標は、その構成全体から直ちに特定の意味合いを想起させるものではなく、また、「ROYAL OAK」の文字は、「米国Michigan州東部の都市。」「英国王Charles二(ローマ数字の2)がWorcesterの戦いに敗れて(1651年)、この木に隠れて助かったそのオークの木」の意味を有する語(「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館)であるものの、上記意味合いをもって我が国において親しまれている語ではないため、一種の造語と認識されるものといえ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1は「ROYAL OAK」の欧文字からなり、引用商標3は別掲のとおり「Royal」の文字と「O」と「a」の文字は一部が重なって表されている「Oak」の文字を一文字程度のスペースを空けて一連に書してなるものであり、いずれも本件商標と構成文字を同じくするものであるから、「ロイヤルオーク」の称呼を生じ、上記アと同様に特定の観念を生じないものである。
また、引用商標2は、「ロイヤルオーク」の片仮名からなるところ、その構成文字に相応し、「ロイヤルオーク」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に掲載のない語であるから、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1及び引用商標3は、そのつづりを同じくするものであり、外観において同一又は近似した印象を与え、また、「ロイヤルオーク」の称呼を共通にし、観念は生じないものであるから、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、観念において比較することができないとしても、外観において近似した印象を与え、称呼を共通にすることから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標2は、外観においては、欧文字と片仮名の差異があるものの、いずれも平易な書体で表されており、欧文字及び片仮名を相互に変更して表記することが我が国において一般的に行われることからすると、本件商標と引用商標2は、「ロイヤルオーク」と読む語を、欧文字で表記するか、片仮名で表記するかの相違にすぎないものである。
また、称呼においては、本件商標及び引用商標2は、「ロイヤルオーク」の称呼を共通にするものであり、特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較できないとしても、称呼を共通にするものであり、両者の外観が相違するとしても、「ロイヤルオーク」と読む語を欧文字及び片仮名で表したにすぎず、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
(2)引用商標の独創性の程度
本件商標は「ROYAL OAK」の文字よりなるところ、当該文字は、上記(1)アのとおり、いずれも親しまれている英語である「王室の」及び「オーク 《ナラ・カシなどブナ科コナラ属の総称》」の意味を有する「ROYAL」と「OAK」の語を組み合わせてなるものであり、その構成文字全体である「ROYAL OAK」の文字は「米国Michigan州の都市。」「英国王CharlesIIがWorcesterの戦いに敗れて(1651年)、この木に隠れて助かったそのオークの木」の意味を有する成語であるから、独創性の程度は高いものとはいえない。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、「ウイスキー,スピリッツ(飲料),リキュール,洋酒」であり、一般需要者を対象としているところ、申立人商品は、上記1(2)のとおり、高級腕時計の購入者やこれに関心を有する者を需要者とするものであって、その需要者の範囲が一部共通にする場合があるとしても、それらの商品を製造、販売する事業者やその用途は大きく異なるものであるから、両者の関連性並びに取引者及び需要者の共通性は低いものである。
申立人は、商品の付加価値の向上・新規顧客の獲得・認知度の向上等のため、企業やブランド同士がコラボレーションし商品開発や販売促進を行うことがあり、腕時計やファッションの分野においても異業種とのコラボレーションの例が多数みられ、申立人自身も過去数十年にわたり、様々な異業種の企業・ブランドとのコラボレーションを行っている旨主張している。
しかしながら、申立人が、上記1(1)ケのとおり、コラボレーション事業を行い、限定版の腕時計を製造、販売していることは確認できるものの、それが一般的な取引の実情を示しているものとはいえず、当該事業と本件商標の指定商品との関連性は直接的なものではなく、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品「腕時計」とは、一般的には同一の事業者が提供する商品ではなく、関連性の程度は高くはないというべきである。
(4)出所の混同を生ずるおそれについて
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は類似といえるものである。
しかしながら、本件商標は、上記1(2)のとおり、本件商品の取引者、需要者の間に広く認識されていると認めることはできず、また、上記(2)のとおり、引用商標の独創性の程度は高いものとはいえないものであり、さらに、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性も低いものである。
以上を踏まえて、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人又は引用商標との具体的な関連性を連想又は想起するとは考えにくく、また、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その指定商品の日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標が類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記2のとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。
その他、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲(引用商標3)


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異議決定日 2024-10-16 
出願番号 2023051439 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W33)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 高野 和行
特許庁審判官 大森 友子
小俣 克巳
登録日 2023-11-15 
登録番号 6754358 
権利者 セントミハエルワインアンドスピリッツ株式会社
商標の称呼 ロイヤルオーク、ロイアルオーク、ローヤルオーク、ロイヤル、ロイアル、ローヤル、オーク、オオエイケイ 
代理人 前川 砂織 
代理人 大倉 桂子 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 岡野 真未子 
代理人 山崎 和香子 
代理人 森田 拓 
代理人 松永 章吾 
代理人 前川 純一 

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