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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W36
管理番号 1416569 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-11-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2022-09-26 
確定日 2024-09-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第6152364号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6152364号商標(以下「本件商標」という。)は、「BABCOCK&BROWN」の欧文字を横書きしてなり、平成30年6月21日に登録出願、第36類「投資及び銀行業務,金融又は財務に関するコンサルティング,金融・財務分析,投資,投資資金及びプライベートエクイティファンドの管理,アセット・バックト・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・リース、セール・アンド・リースバック、リース又は融資された資産のポートフォリオ、セキュアード・デット、タックス・アドバンテージド・ファイナンスの分野における金融又は財務に関する助言,ファイナンシング・イクイップメント・パーチェシング、ファイナンシング・イクイップメント・リーシング、及びファイナンシング・イクイップメント・セールスの分野における金融又は財務に関する助言,金融又は財務に関する助言,投資の管理」を指定役務として、令和元年6月14日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年10月11日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和元年10月11日から同4年10月10日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書、令和6年2月21日付け上申書において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第7号証(以下、証拠を表記する際は、甲第○号証を甲○、乙第○号証を乙○のように表記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務(以下「請求役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)指定役務での本件商標の使用について
本件商標の通常使用権者であるBabcock&Brown Securities LLC(以下「BNB」という場合がある。)のホームページ(乙1)(以下「本件ホームページ」という。)における、「金融助言」、「資本調達サービス」、「5000万ドルから10億ドルの取引に関する、発行会社、投資家及び売主に対する助言に特化」、「ファイナンシャル・アドバイザー」等の文言は抽象的であり、本件ホームページには具体的な取扱商品の品目、種類、詳細な説明がなく、何ら具体的な取扱役務の明記は存在しない。
また、金融商品取引法上、日本において金融商品取引業を行う場合には、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができない(同法第29条)。仮に商標権者(被請求人)が外国において適法に有価証券関連業を行ういわゆる外国証券業者であったとしても原則としてそれは同様であり、外国証券業者は、日本国内における有価証券関連業の本拠として設ける主たる営業所又は事務所について登録を受けない限り、国内にある者を相手方として有価証券関連業に係る行為を行うことはできない(金商業者監督指針X−1)(甲3)。日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは、違法である(甲4)。
しかるに、BNBは、本件ホームページに「金融助言サービスを提供する未登録の機関であり」と記載を行っている点からも明らかなとおり、金融商品取引業の登録を受けておらず、また、日本における営業所又は事務所について登録がない。更に、日本国内において登録を得ていない外国証券業者がホームページ等に有価証券関連業に係る行為に関する広告等を掲載する行為を行う場合、日本国内の投資者が当該サービスの対象とされていない旨の文言を明記する等合理的措置をとる必要があるとされている(金商業者監督指針X−1−2)(甲3)。本件ホームページには「投資家のお客様」との表記があるのみで(乙1の1の2)、このような措置は一切とられていない。
このような未登録の状況で、日本国内で特に対象を限定することもなく本件商標の指定役務を行い、ホームページにおいて広告宣伝を行うことは、違法状態での業務となる。すなわち、BNBが遵法している前提に立てば、BNBは日本国内で請求役務を行っていることが想定し得ない。
したがって、本件ホームページにおける表記は具体的な取扱役務の明記はなく、また、商標権者及びBNBはいずれも金融商品取引法上の登録業者ではないことから、本件ホームページ(乙1)及び乙3は指定役務に関する使用を立証する証拠たり得ず、本件商標の使用がなされたとの証明は何らなされていない。
また、本件ホームページは、外国企業であるBNBが外国で開設したウェブサイトである。そして、上記のとおり、本件商標の指定役務を商標権者又はBNBが、金融商品取引法上の登録をせずに日本国内で行っているのであれば、違法であり、商標権者又はBNBが法令を遵守していることからすれば、本件ホームページは、外国で取引される役務情報を掲載したホームページであると理解せざるを得ない。そして、本件ホームページに掲載されている役務が日本において商取引されるという事実が客観的に認められるなどの格別の事情も存在し得ないのであり、本件ホームページは、日本国内における本件商標の使用の証拠となり得ない。
(2)要証期間内における使用について
本件ホームページ(乙1)には、「2023/01/23」「2023/01/25」の日付や、「c2022」のみが表記されている。しかし、これらの日付は本件審判の請求の登録前よりも後のものであり、本件商標が要証期間内に我が国で使用されていたことの証拠とはなり得ない。また、「c2022」はいわゆる著作権表示にすぎない。したがってこれらの表記は、本件ホームページが被請求人の主張する2022年2月からの本件商標の使用を何ら証明せず、本件審判の請求の登録前に公開されたことをも何ら証明しない。
また、本件ホームページのURLを「WaybackMachine」で検索した際の結果が提出されているが(乙2)、カレンダー上の2022年6月24日にはオレンジ円形が存在している。これは、エラーが発生しているためであり(甲5)、同日にオレンジ色の円形が付されていることは、本件ホームページがその時期から公開されていることを何ら証明せず、要証期間内における使用を立証する証拠たり得ないばかりか、仮に公開されていたとしても、その後、本件ホームページの変更修正がなされていない、すなわち、2022年6月24日の時点又は要証期間内に本件商標と同一の標章が本件ホームページ上で表示されていたかは何ら証明されていない。
実際にも、請求人は、第三者に依頼して商標の使用調査を行ったが、対象商標が過去3年以内に指定商品の範囲で使用している状況は、何ら確認されていない。
したがって、答弁書における被請求人の主張及び本件ホームページ(乙1)ないし乙2からは、要証期間内に、本件商標の使用がなされたとの証明は何らなされていない。
(3)駆け込み使用(商標法第50条第3項)について
仮に、本件ホームページ(乙1)により、本件商標の使用が証明されているとしても、以下に述べる請求人と商標権者の従前の交渉の経緯、及び使用の時期からすれば、商標法第50条第3項のいわゆる駆け込み使用であって、商標法第50条第1項の「使用」とは認められない。
すなわち、請求人は2020年5月21日に日本で「NOMURA BABCOCK&BROWN CO.,LTD.」の商標(登録第6395794号)を登録しているところ、商標権者は当該商標に対し2021年8月17日に異議申立を行っており(異議2021−900316号)、また、異議申立を行った当時の代理人も本件審判と同一である。したがって、商標権者は、遅くとも異議申立をした時点で請求人と対立関係にあったばかりか、同異議申立事件において我が国での本件商標の使用実績が提出されていない以上、それ以降、対抗措置として、本件商標の登録の日から3年経過の2022年6月15日以降は、請求人から不使用取消審判がいつかされるおそれがあることは当然に理解しているため、本件商標の使用は、審判請求がされることを知った後の使用である。また、前記のとおり、本件ホームページが2022年6月24日において使用されていたかについては立証されておらず、実際には、本件商標の登録3年の2022年6月15日の経過直後で本件審判請求がなされた2022年9月26日前3か月以内の2022年6月26日以降の使用であることがうかがわれる。したがって、本件ホームページにおける本件商標の使用は、商標法第50条第3項のいわゆる駆け込み使用であって、商標法第50条第1項の「使用」とはいえない。
3 口頭審理陳述要領書(令和6年1月9日付け)
(1)答弁書に対する意見(乙6及び乙7についての補足意見)
ア 乙6及び乙7はいずれも、BNBの、日本における本件商標の請求役務に関する使用を証明できていないこと
乙6は、件名欄に「Japanese ● Agreement」と記載があるのみで、請求先である「To」の欄、「CC」の欄、及び「Descripition」の欄がいずれも一部黒塗りであり、日本において提供されたサービスに関する支払いであること、及び、乙5及び乙5のマスキングを外した乙9(以下、総称して「乙9」という。)に関する請求であることは証明できていない。また、支払代理(Paying Agent)の銀行は米国ユタ州オグデンに所在し、支払先(Beneficiary Bank)の銀行も米国ニューヨーク州ニューヨークに所在しているので、支払いは日本で行われていない。
同様に、乙7も、件名に「Japanese ● Agreement」と記載があるのみで、「Ref」の欄、「Re:」の欄などが一部黒塗りであり、日本において提供されたサービスに関する支払いであること、及び乙5に関する請求であることが証明できていない。また、支払代理の銀行は米国ユタ州ソルトレイク・シティに所在し、支払先のBNBの口座も米国フロリダ州ジャクソンビルに所在するので、支払いは日本で行われていない。
よって、乙6及び乙7は、乙9に関する請求であること、及び日本において提供されたサービスに関する支払いであることを証明できておらず、乙6及び乙7単体では日本において本件商標が使用されていることは証明できていない。
イ 乙6及び乙7は、乙9と総合的に考慮しても、BNBの、日本における本件商標の請求役務に関する使用を証明できていないこと
上記のとおり、乙6及び乙7はいずれも乙9に関する支払いであること、又はBNBが日本において請求役務を提供したことに関し証明できていない。また、後述のとおり乙9も、BNBが日本において請求役務を提供したことに関し証明できていないので、乙6、乙7及び乙9を総合的に考慮しても、BNBが日本において請求役務を提供したことは証明できていない。
(2)令和5年8月7日付けで提出された回答書に対する意見
ア 乙4に関する補足意見
乙4記載の1条の1.2の「Licensed Services means,・・・services identified・・・in Schedule 1 annexed」の記載は、「ライセンスサービスは、別紙1に記載される商品及びサービスの総称」という意味にすぎず、別紙1が添付されていない以上、通常使用権に係る商標の使用対象及びサービスは不明であり、指定役務は推認できない点に変わりはない。
イ 乙2に関する補足意見
被請求人の述べる、知財高判平成18年(行ケ)10545号で判示されていた内容は、本件に適合しない。当該裁判例では、ホームページが現実に存在しているかが争点になっていたところ、ウェイバック・マシンを用いて確認できないとしても、当該ホームページが「現実に存在したホームページ」であるとは否定できないと述べたものにとどまり、当該裁判例では、過去における当該ホームページの存在については認定しておらず、双方争いのなかった審決日後にホームページが存在する前提で判断を行っている。
本件では、本件ホームページが現実に存在していたか否かは問題ではなく、本件ホームページと同じような内容のウェブページが、要証期間内に存在していたことが、商標の使用を基礎づけるものである。しかし、そもそも本件ホームページと同じような内容のウェブページが2022年6月24日に存在していたことは確認できないし、仮に確認できたとしても、本件商標と同一又は社会通念上同一のものを、2022年6月24日に、本件ホームページと差異なく使用されていたことを証明できていない。また、他の状況証拠からもこの点は推認できない。よって、乙1及び乙2によって、本件商標に関する日本における要証期間内における使用が証明できていない点に変わりはない。
ウ 「「日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことが違法」との点について」に関する補足意見
(ア)被請求人の主張する適用除外は金商法第58条の2括弧ただし書きに該当するときであるところ、大要として、金商法上の登録なく行うことが可能な場合は以下の2つの場合のみである(甲6)。
a 外国証券業者が、勧誘をすることなく、外国から国内にある者との間で有価証券の売買等特定の有価証券関連業に該当する行為を行う場合
上記aの行為に該当する場合、金商法上の登録なく有価証券関連業を行うことができる。しかし、外国証券業者がホームページ等に有価証券関連業に係る行為に関する広告等を掲載する行為は、日本国内の投資者との間の有価証券関連業に係る行為につながらないようにするための特段の防止措置が講じられていない限り、勧誘に該当する(甲3)。
被請求人は、本件ホームページに関し、請求役務中の「金融に関する助言」をインターネットを通じて広告している旨主張するが、仮に、本件ホームページが「金融に関する助言」として有価証券関連業に係る行為に関する広告であるとすれば、監督指針に定められているような防止措置の文言等は何ら講じられていない場合に該当するため、「勧誘」に該当する。よって、仮に、本件ホームページが有価証券関連業に係る行為に関する広告であるとすれば、外国証券業者が「勧誘をすることなく」、国内にある者の注文を受けて有価証券関連業を行う場合には該当しない。
b 金融商品取引業者のうち有価証券関連業を行う者や金商法施行令第17条の3第1号の相手方のみに対して行う有価証券関連業に該当する行為を行う場合で一定の要件を充足する場合
「一定の要件を充足する場合」とは具体的には、国内において有価証券関連業を行う金融商品取引業者である金融機関に対して勧誘を行う場合(金商法第58条の2但書等)、及び銀行・投資運用業者等の金融機関に対し、それらの自己投資活動や運用業務に関して、外国から勧誘を行う場合(金商法施行令第17条の3第1号)が該当する。
被請求人が提出した乙9における契約の相手方である法人Aは少なくとも金融商品取引業者及び金商法施行令第17条の3第1号各号の相手方に該当しない。よって、bにおける場合にも該当しない。
(イ)以上により、少なくとも乙9において開示された法人Aとの契約に基づき、仮に商標権者が実際に法人Aにサービスを提供したのであれば、当該サービスは未登録の業者が行うことが可能な有価証券関連業の例外的な場合のいずれにも該当しない。よって、商標権者及びBNBは、そもそも金融商品取引業に関するサービスを提供していないといわざるを得ない(そうでなければ、無登録の状態において違法に金融商品取引業のサービスを提供したことになる。)。
(3)被請求人が提出した口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書」という。)に対する意見
ア a社とB社との賃貸契約について
乙9は、「背景」のセクションにおいて、Burnham Sterling&Company LLC(以下「Burnham」という。)がBNBとともに、a社に対し、リースファイナンスについて助言をし、Burnham及びBNBが、a社とB社との賃貸契約(乙9「背景」項目の1段落の最終行記載の契約のこと、以下「原契約」という。)の締結を支援する旨の記載がある。しかし、原契約が開示されない以上、具体的にどのような業務を原契約で行う合意にあたるのか、原契約の構造や条文は不明のままであり、それに基づいたBNBのサービスもやはりいずれの役務に該当するか不明である。よって、原契約の構造は「背景」における説明をもってしても不明であることに変わりはなく、乙9をもって、BNBが提供する役務が請求役務に該当することは証明できていない。
イ 乙9「別添A」記載の役務について
(ア)「1」について
a 「背景」に記載されている契約の構造及び中身は明らかではない上、当該契約の締結に関する具体的な「支援」も明らかではない以上、背景に記載の契約の締結の支援は請求役務を提供したことを証明できていない。加えて、仮に当該契約の締結の支援が請求役務に該当するとしても、それは、日本における役務提供ではない。
b 「1」記載の役務は、原契約の「終了を容易にすること」である。上記のとおり、原契約が明らかではない以上、その契約の終了を容易にすることは、請求役務に該当しない。また、通常、契約の終了をする際の契約は簡易なものであり、金融又は財務に関する専門的な知識を要しない。
加えて、原契約は、最低限な基本合意であるにすぎないことが推測されるから、原契約に基づきa社が実際にB社と何らかの取引を行ったとは考えられない。更に、原契約はa社の一方的な通知によって解除できるような仕組みであることからすれば、原契約の解除には特段金融、財務に関する知識は必要ではなく、原契約の解除を容易にすることは、「金融に関する助言」、「金融又は財務に関するコンサルティング」及びその他の請求役務のいずれにも該当しない。
(イ)「2」について
「2」の「財務評価」の記載は抽象的であり、「金融・財務分析」その他の請求役務に該当することを証明できていない。
また、上記のとおり、契約の終了を容易にする業務において、金融・財務に関する知識は必要とされない。契約解除の場面は、契約締結の場面と異なり、財政的分析を行うことは通常想定されず、ましてや、a社がすでにB社に対し解除通知を発した後に、当事者で形式的に正式な解除契約を締結するだけの場面において、財務評価が行われることはおよそ想定されない。
更に、「2」の記載をもって、乙9が商標法第2条第3項第8号の役務に関する「取引書類」に該当することは証明されていない。役務に関する取引書類に該当するためには、役務の提供の事実を証明すべきであるところ、「2」では具体的な財務評価の方法、期間、範囲等に関する取り決めはなく、原契約も不明である上、「必要な場合」における財務評価を行う旨を抽象的に記載しているだけであり、上記のとおり財務評価が実際に提供されることは想定されないので、乙9は「金融・財務分析」という役務の提供の事実を裏付けておらず、役務に関する「取引書類」であるとはいえない。
よって、「2」の記載をもってしても「金融に関する助言」、「金融・財務分析」及びその他の請求役務に関し使用しているとはいえない。
加えて、BNBは金商法上の金融商品取引業者として未登録であるので、登録業者のみ行える投資助言業である、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言は当然行えない(甲7)。このことからも、「2」に記載の役務が「金融に関する助言」、「金融・財務分析」及びその他の請求役務に該当しないのであり、「2」は請求役務に関する役務提供を証明できていない。
(ウ)「3」について
「Provide assistance・・」は、支援の提供を意味し、支援という抽象的な言葉からは、助言を行うことを指すことは証明できていない。また、融資の担保付債権部分に関する支援は様々な方面からありえ、法律に関する支援、労務に関する支援、税務に関する支援、専門性が不要な事務的な補助などが考えられ、単に支援を行うと記載があるだけでは、セキュアー・デットについて助言を行ったことは証明できていない。また、そもそも契約の終了に関するサービス契約であるから、実際にa社がB社との契約で金銭のやり取りを行ったとは考えられず、第3の「支援」がセキュアー・デットの分野における金融・財務に関する知識を要する金融又は財務に関する専門的な助言であることは想定されず、「セキュアー・デットの分野における金融又は財務に関する助言」とはいえない。
(エ)「4」について
「終了契約の交渉及び締結」について、前述のとおり、実際の金銭のやり取りを伴う契約は開始していないと考えられること、及び、通知によって一方的に簡単に解除できるような契約の仕組みであることからすれば、契約の交渉及び締結には特段金融、財務に関する知識は必要ではない。また、乙9の「サービス契約」の段落で「終了契約の文書化についてB社及び第三者の法律専門家と連携することとする」と記載しているとおり、BNBは契約の締結に関し、他の専門家を探して仲介したり、紹介を行ったりしているのであり、このような業務は被請求人の主張する金融・財務に関する知識を前提とする「金融に関する助言」、「金融又は財務に関するコンサルティング」及びその他の請求役務のいずれにも該当しない。よって、「4」の記載をもってしても請求役務に関する商標の使用は証明されていない。
ウ 乙10について
(ア)乙8及び乙8のマスキングを外した乙10(以下、総称して「乙10」という。)をもって、BNBが提供する役務が請求役務に該当することは証明できていないこと
a 被請求人要領書の記載をもってしても、機密契約の構造、内容は明らかではなく、BNBが提供する役務が請求役務に該当することは証明できていないこと
乙10の「背景」には、BurnhamがB社と機密契約を締結したこと、BNBがBurhamのブローカー・ディーラーであり、B社に対しサービスを提供することが記載されている。しかし、機密契約というのはその名のとおり、機密保持に関する契約当事者の権利義務のみ定めた契約であることが通常であり、機密保持契約において、機密保持以外の取引に関する金銭のやり取りや、業務提供に関し定められていることは通常想定されない。したがって、「背景」における説明をもってしても、機密保持以外の機密契約に係る役務は何ら明らかではない。また、同「背景」には、BNBがB社に対し融資組成助言サービスを提供する旨の記載があるが、その文言は抽象的であり、BNBが金商法上の登録業者ではないことを踏まえると、投資助言業に該当する役務は提供できず、背景における記載をもって、BNBが提供する役務が取消請求に係る役務に該当することは証明できていない。
b 乙10別添書類A記載の1ないし6のサービスは、いずれも「金融又は財務に関する助言」、「金融又は財務に関するコンサルティング」又はその他の請求役務に該当しないこと
(a)「1」について
「適切な・・・の特定を支援する」ことは、支援の中身が不明である上、B社のために、適切な・・・取引先を見つけることを通常は想起させるがそれ自体は一般的な仲介業であり、金融・財務に関する助言等に該当しない。また、金商法上、金融商品仲介業は金融商品取引業に含まれ、内閣総理大臣の登録を受けていなければ行えないところ(金商法第66条)、BNBは未登録業者であるため、当該金融商品仲介業を営むことは原則認められない。
また、被請求人は、BNBのサービスにより、「B社は、その資産を運用できるのである」ことを理由に、BNBが「金融又は財務に関するコンサルティング」、「投資資金及びプライベートエクイティファンドの管理」等の「金融又は財務に関する助言」を行っている場合に該当する旨を主張するが、BNBによる仲介の結果、仮にB社が資産を運用することができたとしても、仲介業者であるBNBが金融・財務に関する助言やコンサルティングを行ったことを証明しない。BNBは上記のとおり仲介を行っているにすぎないのであるから、「1」における役務は「金融又は財務に関する助言」、「金融又は財務に関するコンサルティング」及びその他のいずれの請求役務にも該当しない。
(b)「2」及び「3」について
「適切な第三者の法律顧問を特定する」こと、及び「第三者法律顧問と協力して、・・・、又はBNBが合理的に特定した別の弁護士から・・・の草案を入手するよう努める」ことは、「特定」の意義が抽象で不明確であるが、通常法律顧問をB社に紹介し、当該法律顧問を通じて、書類を受領することを取り次ぐことが想起され、その場合、別添書類A「1」と同じく、金融・財務に関する専門知識を何ら必要としない仲介業である。したがって、上記(ア)と同じく、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「金融又は財務に関する助言」そのほかいずれの請求役務にも該当しない。
(c)「4」について
「必要な内部承認を得ることを支援する」ことは、そもそも「支援」という記載は抽象的であり、具体的な支援の内容が明らかではなく、請求役務いずれに該当するか不明である。また、「内部」とは何を指すか不明であるが、仮にB社の内部であるとする場合、内部承認を得るとは、会社法及び社内規則上要求される社内手続を完了させることを指すところ、そのための支援は金融・財務に関する支援とはいえない。したがって、「4」は「金融又は財務に関するコンサルティング」、「金融又は財務に関する助言」そのほかいずれの請求役務にも該当しない。
(d)「5」について
「第三者アドバイザーの全体的な関与を調整する」は抽象的な記載であり、具体的には何を指すか明らかではない。また、「アドバイザーの・・関与を調整」という言葉からは、通常日程調整、会議設定及び資料送付といった、専門知識が不要な事務的な、いわゆる、ロジスティクスの仕事が想定されるところ、このような事務的な仕事は、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「金融又は財務に関する助言」そのほかいずれの請求役務にも該当しない。
(e)「6」について
「・・・第三者・・を特定して雇用し・・・に関する情報を入手することができる」行為は、同じように抽象的な記載である上、当該言葉からは、他の専門家を雇用し、財務報告を受領することを取次することが想起されうるところ、「2」「3」及び「5」のサービスと同じように、金融・財務に関する専門知識を使用しない仲介業、及び事務的な業務であり、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「金融又は財務に関する助言」そのほか被請求人の主張する役務その他の請求役務のいずれにも該当しない。
加えて、「6」において、BNBは自ら財務報告を提供するのではなく、他の者から財務報告を受領するサービスが記載されていることは、BNB自身が専門知識を前提とする金融・財務の助言、又は財務情報の提供を行っておらず、他の財務・会計の専門家に頼っていることをむしろ推認させる。したがって、「6」の記載は「金融又は財務に関するコンサルティング」「金融又は財務に関する助言」そのほかいずれの請求役務にも該当せず、むしろ本記載からはBNBが請求役務を行っていないことが裏付けられる。
(イ)仮に乙10における役務が請求役務に該当するとしても、乙10は駆け込み使用であること
本件審判は2022年9月26日に提起されているところ、乙10は、その1か月以内の2022年9月2日に締結されている。上記2(3)のとおり、被請求人は、遅くとも異議申立をした2021年8月17日時点で請求人と対立関係にあったばかりか、同異議申立事件において我が国での本件商標の使用実績が提出されていない以上、それ以降、対抗措置として、本件商標の登録の日から3年経過の2022年6月15日以降は請求人から不使用取消審判がいつかされるおそれがあることは当然に理解しているため、本件商標の使用は、審判請求がされることを知った後の使用である。
加えて、BurnhamとB社の間の機密契約に基づき、当該機密契約の当事者でもないBNBがサービスを提供する旨の記載があるのは不自然な記載であり、このことからも、乙10が駆け込み使用のために作成された書面であるといえる。
エ 「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字について
(ア)「SECURITIES」がいずれの役務の普通名称を表すのか明らかではないこと
被請求人は、「SECURITIES」は「証券会社」である旨を主張する。しかし、仮に「SECURITIES」が証券会社を指し、本件商標の後ろに並列で並べられたとしても、やはり「SECURITIES」が付された「BABCOCK&BROWN SECURITIES」がいずれの役務に関し使用されているのか明らかではない点で変わりはなく、本件商標が「SECURITIES」とともに表記されていることは、役務に関する使用とはいえない。
(イ)「BABCOCK&BROWN SECURITIES」という表記は、本件商標と社会通念上同一性がなく、本件商標に関し使用しているとはいえないこと
乙8及び乙9においては、いずれも文書の冒頭上部において、白い線が三本入った正方形のマークがあり、また、同一の大きさ、同一の書体で、外観上まとまりよく一体的に「BABCOCK&BROWN SECURITIES」という形で表記されている。
このような表記は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名・片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標(商標法第38条第5項)のいずれにも該当せず、また、これと同視されるようなものに該当しない。
このような表記は、前の正方形のマーク並びに同じ字体及び文字の大きさであるSECURITIESの文字が、「BABCOCK&BROWN SECURITIES」という形で全体として一体不可分の商標であり、商標権者(バブコックアンドブラウンエルエルシー)を想起させる「BABCOCK&BROWN」とは異なる、「BABCOCK&BROWN SECURITIES」、すなわち、商標権者とは別の法人のBNBを通常認識させるものとみるのが自然であり、殊更「BABCOCK&BROWN」部分を抽出して識別標識として認識するとみるのは極めて不自然である。実際、乙9及び乙10はBNBと顧客との契約に関する記載であり、商標権者は何ら書面上登場しない状態で、「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字が付されているのであれば、需要者も当然、当該商標はBNBを指す一体の商標であると認識するのが自然である。
したがって、実際の取引形態を考えても、「BABCOCK&BROWN SECURITIES」と「BABCOCK&BROWN」は社会通念上同一の商標とはいえない。
(ウ)「証券」という言葉を付した一体的な商標が出願及び登録されることは日本において一般的に行われていること
被請求人は、「SECURITIES」を付加して使用している場合においても社会通念上同一性が認められないのであれば、その使用態様からなる商標を出願し、登録を受けることを特許庁自らが強制していることと同じである、と主張する。
しかし、例えば、野村という言葉からは、野村証券を指すのか、野村不動産を指すのか、それとも他の主体を指すのか、需要者からは読み取れず、使用態様・使用主体の別に応じて商標をそれぞれ出願することは、商標の自他商品・役務識別機能、出所表示機能からして実務上当然必要なことであるのであって、被請求人の指摘は失当である。
具体的には、(i)野村であれば、同じ第36類に属する役務であっても、異なる商標を異なる法人が権利者として商標登録を行っており、(ii)大和についても、様々な形で、同じ第36類の中にあっても、それぞれの役務を運営する主体に関し異なる法人が権利者として商標登録を行っている。
したがって、「証券」という言葉を意味する「SECURITIES」が付された「BABCOCK&BROWN SECURITIES」は、そもそもどの役務に関する使用なのか不明であるし、本件商標に役務の普通名称を付して使っている場合ともいえず、本件商標に関し社会通念上同一(商標法第38条5号第50条)の使用をしているとはいえない。
4 上申書(令和6年2月21日付け)
(1)乙9及び乙10について
ア 乙9について
(ア)被請求人は、原契約において、「金融に関する助言」、「金融上、(中略)助言を提供するもの」と主張するが、乙9において金融に関する助言であることが具体的に証明できていない以上、被請求人の主張は根拠がない。
(イ)実際に、令和6年2月7日付け上申書にて主張する業務を提供したことを証明する証拠は何ら提出されておらず、BNBが乙9の別添Aの2及び4に記載の役務を提供したことは証明できていない。
イ 乙10について
(ア)実際に被請求人が乙10に係る契約(以下「乙10契約」という。)業務を提供したことを証明する証拠は何ら提出されておらず、当該業務を提供したことは証明できていない。また、提出された乙10の記載から、別添Aの1ないし別添Aの6の役務は、いずれも請求役務に属する役務であることを証明できていない。
(イ)また、仮にBNBが当事者及び金銭条件を実際に提案したとしても、金商法上登録業者のみが行える、金融商品仲介業とは異なる業務であるから、「金融又は財務に関するコンサルティング」ないし「金融又は財務に関する助言」に該当しない。
(ウ)なお、BNBは、乙9に係る契約(以下「乙9契約」という。)において、B社を契約交渉の相手方として、a社に対し助言を行う旨の契約書を令和4年3月10日に締結しているのに対し、乙10契約においては乙9契約では相手方であったB社に対し助言を行う契約書を令和4年9月2日に締結している。乙9契約が契約の終了に関する助言サービスであるのに対し、乙10契約では、乙9契約の契約上の交渉の相手方であった者に対する助言サービスを提供する旨の記載がある。乙9及び乙10は異なる顧客に対する異なる内容の助言サービスであり、乙9契約と乙10契約に連続性・関連性はなく、乙9を原因として、より詳細な内容が記載された乙10契約が締結された、ということはできない。
(2)使用商標が、本件商標と社会通念上同一の商標であることについて
仮に本件商標が「野村」や「大和」よりも識別力が高いとしても、この事実は、「証券」という言葉を付した一体的な商標の出願及び登録が日本で一般的に行われていることを否定するものではなく、また、それぞれ別の法人であるバブコックアンドブラウンエルエルシーとBNBがそれぞれ使用する、自社名を表す商標が、社会通念上同一のものであることを基礎づけるものでもない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書、第2回審判事件答弁書、令和5年6月1日付け審尋に対する回答書、口頭審理陳述要領書、令和6年2月7日付け上申書及び同年4月11日付け上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙23(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書
被請求人は、まず、本件商標に関する通常使用権者であるBabcock&Brown Securities LLC(BNB)が、令和4年2月より、継続して、日本の需要者に対し、日本語をもって、請求役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標を付して、電磁的方法により提供していることを主張する。
本件ホームページ(乙1)は、BNB(乙1においては、「Babcock&Brown証券」と表示されている。)が、日本の需要者に対し、請求役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
なお、本件ホームページの左上に「BABCOCK&BROWN」(2つの頭文字「B」が若干大きく表されている。)が表示されており、BNBが「Babcock&Brown証券」と日本語訳されているように、証券会社であること、また、本件ホームページにおける説明文中、「Babcock&Brown証券は、資本的支出を強化する発行会社に対し金融助言及び資本調達サービスを提供する」等と記載されていることから、BNBが、請求役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標を付して、電磁的方法により提供していることは明らかである。
次に、「Wayback Machine」における乙1の1のURLの検索結果を提出する(乙2)。これにより、本件ホームページが遅くとも2022年(令和4年)6月24日以降、公開されている事実が分かる。したがって、上記使用行為が要証期間内の使用であることが立証されている。
これらにより、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者又は通常使用権者(BNB)によって、要証期間内に、請求役務について使用されていた事実が明らかである。
2 第2回審判事件答弁書(令和5年4月11日付け)
(1)乙4の1及び2
乙4の1及び2は、商標権者とBNBとの間の通常使用権許諾契約書の写し及びその訳文である。
これにより、商標権者はBNBに対し、2020年(令和2年)1月6日に本件商標及び「B&B」商標の使用を許諾していることを立証する。
(2)乙9(乙5)
乙9に係る契約書(以下「乙9契約書」という。)により、BNBは、設備投資に特化した金融アドバイス及び資本調達サービスを提供するプロバイダーであるBurnhamとともに、東京都に所在する法人Aに対し、金融に関する助言をし、それに対し、法人Aは、そのサービス料としての対価を支払うことを、2022年3月10日に契約した。
また、乙9契約書の上部に本件商標と社会通念上同一の標章が付され、要証期間内において、請求役務に関する取引書類に本件商標が付されている。
(3)乙6の1及び2
これは、上記契約(乙9契約)に基づき、2022年3月31日に、BNBによって指定された銀行が、法人Aに対し、BNBの提供に係るサービス料の支払いに関する請求書を発行した。
(4)乙7の1及び2
これは、上記契約(乙9契約)に基づき、2022年5月25日に、BNBが、自ら指定した銀行に対し、法人Aによって支払われたサービス料を、BNBの指定した銀行口座に支払うよう指示した。
(5)乙10(乙8)
これは、2022年9月2日に、Burnhamと東京都に所在するB社との間の機密契約に基づき、本件通常使用権者であるBNBが、B社のために、融資組成助言サービスを提供することを契約したものである(以下、当該契約を「乙10契約」という。)。
これらにより、本件商標が、BNBによって要証期間内に請求役務について使用された。
3 審尋に対する回答書(令和5年8月7日付け)
(1)乙9契約及び乙10契約において締結したサービスの内容と本件商標の請求に係る役務との関係の説明
これらのサービスは、請求役務に含まれる「金融に関する助言」に該当するものである。
(2)合議体の暫定的見解及び弁駁書に対する意見
ア 合議体の暫定的見解に対する意見
(ア)乙1及び乙2について
a 乙1
乙1(本件ウェブサイト)は、その内容からして、商標権者及びBNBの広告宣伝のためのものであることが容易に推認でき、かつ、下方に「(c)2022 Babcock&Brown,LLC.All rights reserved.」と記載されていることからも明らかである。
また、本件ホームページにおける下段の説明文中、「Babcock&Brown LLC(「B&B」)は、金融助言サービスを提供する」とあり、更に、「全ての有価証券に関連する活動及び/又は有価証券取引は、Babcock&Brown証券を通じて行われます。」とあること(乙14)から、商標権者とBNBは、共通の目的をもって設立された法人である。そして、「(商標権者)は金融助言サービスを提供する」及び「全ての有価証券に関連する活動及び/又は有価証券取引は、Babcock&Brown証券を通じて行われます。」とあることから、商標権者又はBNBが、「金融に関する助言」に関する広告を内容とする情報に、本件商標を付して、電磁的方法により提供していることは明らかである。
b 乙2
過去の判決(知財高判平成19年6月28日、平成18年(行ケ)10545号)によれば、2022年6月24日に、本件ホームページと同じ内容のウェブページが存在したことが確認できないとしても、それだけで当然にそれが現実に存在していたホームページであることまでを否定することはできないはずであり、他の状況証拠から、現実に存在していたことを推認できる。
(イ)乙4、乙5及び乙8について
a 乙4
乙4の第1条の1.2において、「ライセンスマークの登録で指定された商品およびサービスの総称」とあることから、本件商標に係る指定役務のすべてが使用許諾の対象であることは明らかである。
b 乙9(乙5)
本来、登録商標の使用に当たるか否かの認定に当たっては、登録商標に係る指定商品及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、個々具体的な事例に基づいて判断すべきである。
本件商標に関しても、通常使用権者であるBNBが商標権者に対し、多大な信用が化体した本件商標について、使用許諾を求め、それに役務の普通名称である「SECURITIES」を付加して使用しているにすぎない。
また、同じ第36類に属する役務について、「みずほ」といえば、「みずほ銀行」のことを指称していると容易に推認できると思料するが、これを銀行業以外の役務、例えば、証券会社について「みずほ証券」と命名したい場合に、単にその使用許諾のみならず、あえて「みずほ証券」を出願して登録を得なければ、安心して使用できない。
すなわち、商標制度は、商標が使用されることにより、その商標に化体した信用を保護することを目的としているのであるから、社会通念上の同一性についても、かかる法目的を達成する観点に基づいて判断されるべきであり、また、そのように解することが取引の実情にも合致する。
イ 弁駁書に対する意見
(ア)「日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことが違法」との点について
商標権者の業務は、日本の金融商品取引法における「外国証券会社の適用除外」(第58条の2ただし書き)に該当する。
換言すれば、乙9契約及び乙10契約に基づく取引は、金融商品取引法等の規制を受けないため、登録義務は一切発生しない。商標権者又はBNBがウェブサイトを通じて提供するその他のサービスに関しては、金商法に基づく登録が必要となる可能性があるが、商標権者又はBNBは、それを推進するために物理的に日本の地に足を踏み入れない限り、外国証券会社の適用除外に該当する。
したがって、商標権者の業務は、違法ではない。
(イ)駆け込み使用について
商標法第50条第3項にいう駆け込み使用とは、審判請求前3月から審判請求の予告登録日の間の使用である。本件審判請求日は、令和4年(2022年)9月26日であるから、駆け込み使用の期間は同年6月26日から予告登録日である同年10月11日までである。
しかし、本件ホームページ(乙1)は、遅くとも、令和4年(2022年)6月24日以降、公開されている。
そして、その準備をするため、本件ホームページに関する日本語訳を依頼している事実もある。
2021年12月23日、BurnhamのCFAであるC氏が翻訳会社に対しコンタクトを取り、翻訳会社が折り返し返信をした。その後、同翻訳会社がその翻訳を請け負うことになり、翻訳会社が翌2022年1月8日付けでBNBに対し請求書を発行するとともに、その3日後である1月11日に、その翻訳文を作成し、送信している。その後、BNB側で数回推敲が行われ、同年2月頃より、本件ウェブサイトが公開されているのである(乙11〜乙13)。
また、駆け込み使用の禁止規定が創設されたのは、事前に使用許諾等の交渉を行い、その後、不使用に基づく取消審判を請求したとしても、相手方が使用実績を作り上げたような場合を禁止しているのであって、請求人と商標権者のような対立関係を想定しているものではない。商標法第50条第3項の適用範囲が、審判請求前3月から審判請求の予告登録日の間の使用に限定されていることからも明らかである。
したがって、本件商標の使用が駆け込み使用であるとはいえない。
4 口頭審理陳述要領書(令和5年12月26日付け)
(1)通常使用権者の提供する役務が、請求役務の範ちゅうの役務かについて
ア 乙9について
(ア)乙9契約は、原契約に付随する役務又は関連する役務に係る契約であると認められるところ、原契約の構造、内容が明らかではない、との点について
原契約の内容は、「背景」に記載されているとおりである。
仮に原契約の構造、内容が明らかではないとしても、乙9契約により、BNBが法人Aに対し提供する役務が請求役務に該当することが明らかであれば、必要かつ十分なはずである。
(イ)契約書における「別添A」に示されたサービスについて
別添Aの1の原文は「Facilitate the termination of the・・・Agreement」である。かかる役務は、少なくとも、請求役務中、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「アセット・バックト・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・リース、セール・アンド・リースバック、リース又は融資された資産のポートフォリオ、セキュアード・デット、タックス・アドバンテージド・ファイナンスの分野における金融又は財務に関する助言」、「ファイナンシング・イクイップメント・パーチェシング、ファイナンシング・イクイップメント・リーシング、及びファイナンシング・イクイップメント・セールスの分野における金融又は財務に関する助言」又は「金融又は財務に関する助言」に該当する。
また、別添Aの2の原文は、「Provide financial evaluation services if needed」であるところ、これは、「必要な場合、財務評価を提供すること」である。かかる「財務評価」は、請求役務中、「金融・財務分析」に包含されるものである。更に、別添Aの3及び4については、BNBは、法人Aの受けた融資における担保付き債務(セキュアード・デット)について助言をし、法人Aのために交渉をし、第三者と締結することについて助言をするのであるから、これらもまた、請求役務中、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「投資資金及びプライベートエクイティファンドの管理,アセット・バックト・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・リース、セール・アンド・リースバック、リース又は融資された資産のポートフォリオ、セキュアード・デット、タックス・アドバンテージド・ファイナンスの分野における金融又は財務に関する助言」、「ファイナンシング・イクイップメント・パーチェシング、ファイナンシング・イクイップメント・リーシング、及びファイナンシング・イクイップメント・セールスの分野における金融又は財務に関する助言」又は「金融又は財務に関する助言」に該当する。
したがって、乙9により、BNBが法人Aに対し提供する役務が請求役務に該当することは明らかである。
イ 乙10について
(ア)当該契約書の「背景」の項目における、当該融資組成助言サービスに至った機密契約(NDA)に係るサービス(役務)の構造、内容について
機密契約を意味する「NDA」は、「Non−Disclosure Agreement」の通称・略称であるが、少なくとも、乙10契約により、BNBは、日本法人であるB社に対し、B社のために、B社が承諾し得る他社によって運航させる資産に関して1又は複数の契約のために助言をするサービスを提供することが明記されている。
また、「サービス」の項において、B社は、BNBと契約を締結することに同意し、その契約に基づき、BNBは、別添書類Aに定めるサービス(以下「本サービス」という。)を提供する、と規定されている。
したがって、本サービスが取消請求に係る役務であれば、被請求人による主張、立証は必要かつ十分である。
(イ)本サービスについて、当事者の関係を説明するために、「関係図」(乙15)を提出する。
これにより、1は、請求役務中、「金融又は財務に関するコンサルティング」、「投資資金及びプライベートエクイティファンドの管理,アセット・バックト・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・リース、セール・アンド・リースバック、リース又は融資された資産のポートフォリオ、セキュアード・デット、タックス・アドバンテージド・ファイナンスの分野における金融又は財務に関する助言」、「ファイナンシング・イクイップメント・パーチェシング、ファイナンシング・イクイップメント・リーシング、及びファイナンシング・イクイップメント・セールスの分野における金融又は財務に関する助言」又は「金融又は財務に関する助言」に該当するから、原契約に係る「別添A」のサービスとして示された行為中、1は、請求役務中、第36類「金融に関する助言」又はその他の請求役務に含まれる。
なお、2の「適切な第三者の法律顧問を特定する」、3の「第三者法律顧問と協力して、・・・又はBNBが合理的に特定した別の法律専門家から・・・の草案を入手するよう努める。」、5の「・・・(B社)の第三者アドバイザーの全体的な関与を調整する」は、BNBが、B社のために、税理士、会計士、弁護士等の専門家から取得する助言の調整、取りまとめを行うサービスを提供することを約束している。
また、4の「B社が・・・として参加するために必要な内部承認を得ることを支援する」は、B社が加わることがB社にとって利益になることを裏付けできることを支援することである。また、6の「・・・(B社)からの要請があり、別途費用に関する書面による契約を締結することを条件として、適切な第三者会計アドバイザー(「第三者会計アドバイザー」)を特定して雇用し、・・・(B社)の役割に関する財務報告に関する情報を入手することができる。」は、具体的には、物件の担保評価、及び、・・・の信用度、流動性に関する財務分析・評価をすることである。
これらは、企業金融に関する助言、あるいは企業及び個人の信用度に関する金融又は財務上の情報の提供に該当するものであり、「金融又は財務に関するコンサルティング」又は「金融又は財務に関する助言」等に該当する。
したがって、乙10契約により、BNBがB社に対し提供する役務が請求役務に該当することは明らかである。
(2)使用商標について
日本において有価証券(株式や債券など)の売買の取次ぎや引受けなどを行う証券会社中、5大証券会社と称されている会社の英文表記には、いずれも「Securities」が含まれている。このような一般的・恒常的な取引の実情があることに加え、乙9契約書に表示されている「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字(使用商標)の構成中、「SECURITIES」の文字は、それが証券会社であるBNBが用意した契約書の書面であることからしても、それが「証券会社」であると認識、理解されることは客観的に明らかである。
5 上申書(令和6年2月7日付け)
(1)BNBの提供する役務が本件商標の指定役務に属する役務であること
乙9契約は、BNBが法人Aに対し金融に関する助言をすることを約束する契約である。法人Aは、BNBに対し、その契約を終了させ混乱を解消するために、金融上、最善の方法について助言を提供するよう求め、BNBがそれに応じたのが乙9契約である。
また、乙9の「別添A:サービス」中、2の「必要な場合、金融的評価を提供すること」に関し、BNBは、実際に、その役務を提供している。すなわち、乙9契約の契約締結後、BNBは、法人Aに対し、資産価値のリアルタイムな変動、その他の金融リスク等に基づき、金融的評価を行っている。これは、同「別添A:サービス」中、4の「・・・終了契約の交渉及び締結を支援すること」に該当する。かかるBNBが提供したサービスは、法人Aのためであるが、その行為は、B社の契約終了に関し、B社の金融上又は財務上の悪影響はどのようなものか、期待される収益が得られないという事実を潜在的に相殺するにはどうすればよいか、そして、その過程での経費を削減する方法、投資された資金を分散する方法、並びに金融上の契約を終了することに関し、金融上又は財務上の最適な方法等、B社の金融情勢の分析を提供したものである。
この乙9契約の段階では、BNBはB社との取引関係はなかったが、その後、B社がBNBに対し、契約の締結を支援し助言することを求め、契約に至ったのが乙10契約である。B社は、a社及び法人Aと同様の案件を見つけたいと考えており、その支援を求めてBNBと契約したのである。
BNBの提供する役務は、具体的には、B社のために適切な取引先を見つけること、並びに、取引条件の草案を作成し、B社に提案をすることである。もとより、このような行為は、B社の資産の運用に関するものであるから、明らかに「金融又は財務に関するコンサルティング」あるいは「金融又は財務に関する助言」に該当する。
その「別添書類A:サービス」の1において「適切な・・・の特定を支援する。」とある。BNBは、昨年から今年にかけて、7回、適切な特定・提案をしたが、いずれも契約までには至っていない。BNBが特定・提案したのは、(i)関連する当事者、及び(ii)金銭的条件である。
また、BNBの主な役務は、金融に関する分析をし、助言をすることである。すなわち、(i)B社の観点から、潜在的な取引の有益性を分析し、(ii)金融上・財務上のリスク・収益についてB社に助言をしている。BNBは、機会があるごとに、金融上・財務上の利益と潜在的な金融・財務リスクを分析し、助言をするために、B社の様々な役員、取締役、部門と数多くの会議を開催してきた。これこそが、別添書類Aのサービス中、4の「B社が参加するために必要な内部承認を得ることを支援する。」に該当する。
したがって、乙10の別添書類Aのサービス中、1及び4が「金融又は財務に関するコンサルティング」ないし「金融又は財務に関する助言」であり、それ以外の2、3、5及び6は、付随的なサービスである。
なお、請求人は、金融商品取引業者であり(乙16)、被請求人の提出に係る乙号証に示した行為が金融サービスであることは当然知っている。
(2)使用商標が、本件商標と社会通念上同一の商標であること
使用商標における「BABCOCK&BROWN」部分は、「SECURITIES」部分に比し、請求役務の出所識別標識として圧倒的に強く、支配的な印象を与えるものである一方、「SECURITIES」部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
更に、「野村」及び「大和」と、「BABCOCK&BROWN」とでは、識別力に関し、大きな相違がある。すなわち、「野村」は、「名字由来net」によれば、日本全国でおよそ182,000人存在し、全国97位と、ありふれた氏姓である(乙17)。また、「大和」に関しては、国税庁法人番号公表サイトにおいて、全国で7,951社存在しており、また、東洋経済オンラインによれば、全国19位であるだけでなく、漢字では最も多い(乙18〜乙20)。
このようなありふれた氏姓や商号の要部と、本件商標とを同一視することは決してできない。請求人としても、1998年3月に、バブコック・アンド・ブラウン社と資本提携を解消しているにもかかわらず、なお社名に「バブコックアンドブラウン」を使用しているのは、そこに多大に化体した業務上の信用があるからに他ならない。
しかも、BNBは、乙4として提出しているように、本件商標の商標権者から本件商標の使用を許諾された上で、本件商標を使用しているのである。
(3)その他、請求人の主張が誤りであることについて
金商法違背とされている同法第28条第8項各号に掲げる行為は、基本的に有価証券に関するものであるが、本件におけるBNBの行為は、金融に関する助言であり、有価証券に関するものではない。この点に関し、BNBは、事前に日本の法律専門家の確認を取った上で事業を営んでいる。したがって、商標権者の行為は金商法に違反していない。
また、請求人は、乙10は駆け込み使用である旨、主張している。
商標権者は、請求人の登録商標に対し登録異議申立てをしているが、それは、請求人の登録商標中に本件商標と同一又は類似の文字を含むからであり、駆け込み使用が禁止された理由とは何ら関係がない。
それどころか、本件商標は、令和元年(2019年)6月14日に設定登録されたものであり、その後、直ちに本件商標の使用を開始すべく、2020年1月6日に商標権者は、BNBに対し、使用を許諾すべく契約を締結し、2021年12月以降、商標権者及びBNBのウェブサイトの日本語版を作成するため、翻訳会社とのコンタクトを取っている。
6 上申書(令和6年4月11日付け)
令和4年(2022年)9月2日に乙10契約が締結された後、C氏が同年9月24日から7日まで、東京のホテルに宿泊予約をした記録である(乙21)。
C氏は、乙10契約においてBNBを代表して署名した人物である。また、B社は、東京都に所在する法人である。
次に、乙10契約に伴い、N社からBNBに対し対価の支払いがなされた事実を立証する。
令和4年(2022年)10月12日付けのBNBからB社への請求書(乙22)、及び同年10月31日付けの入金確認メールである(乙23)。
これらは、要証期間経過後の事実であるが、要証期間内に締結された乙10契約に基づき履行されたものであることは、乙22の中段「Description」の記載及び下段の「Ref:」の記載から明らかである。
したがって、BNBは、B社に対し、乙10契約に基づく「金融又は財務に関するコンサルティング」又は「金融又は財務に関する助言」を現に提供している。
なお、その後、BNBとB社は、令和4年(2022年)11月30日付けで、乙10契約に続く「ファイナンスリースレッサーサービス契約」を締結している。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)商標権者は、「BABCOCK&BROWN SECURITIES LLC」(BNB)との間で、2020年1月6日を発効日とする「BABCOCK&BROWN」の文字からなる商標を含む商標についての使用許諾契約を締結した(乙4)。
上記使用許諾契約には、「「ライセンスサービス」とは・・・ライセンスマークの登録で指定された商品及びサービスの総称を意味する。」及び「ライセンサーは・・・ライセンスマークを使用するための・・・ワールドワイドのライセンスをライセンシーに付与する。」との記載がある。また、上記使用許諾契約の契約期間は、発効日から10年間とされている。
(2)BNBは、東京都所在の法人Aとの間で、2022年3月10日付けで、BNBが法人Aに対し、日本においてサービスを提供することを内容とする契約(乙9契約)を締結した(乙5、乙9)。
(3)乙9契約に係る契約書(以下「乙9契約書」という。)1葉目の左上には、別掲のとおりの「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字(以下「本件使用商標」という。)が表示されている。
乙9契約書の「別添A」には、BNBが法人Aに提供するサービスの内容が記載されているところ、「別添A」の項番2に「必要な場合、財務評価を提供すること。」の記載がある。
また、乙9契約書本文には、法人AがD銀行を通じて、BNBに対しサービス料金の支払いを行うこととする旨の記載がある。
(4)2022年3月31日に、D銀行により、日本における契約に基づきBNBが提供したサービス料の支払いに関する請求書が発行され、同年5月25日に、BNBがD銀行に対し、上記のサービス料を自らの銀行口座に送金するよう、文書により指示を行った(乙6、乙7)。
2 判断
上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)通常使用権者について
本件商標権者は、BNBに対し、本件商標と同一のつづりからなる「BABCOCK&BROWN」の文字を含む標章についての使用を許諾しているところ、当該使用許諾契約の発行日は2020年1月6日であるから、BNBは、要証期間中の2020年(令和2年)1月6日より本件商標の通常使用権者といえる。
(2)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「BABCOCK&BROWN」の文字を横書きしてなる。これに対し、本件使用商標は、別掲のとおり「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字を横書きしてなる。
本件使用商標の構成中の「SECURITIES」の文字部分は、「有価証券」を意味する語(新英和中辞典第7版 研究社)であって、請求役務との関係においては、通常、役務の業種名を表す語と認識されるものであって、自他役務の識別標識としての機能を有しないことから、本件使用商標の構成中、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「BABCOCK&BROWN」の文字にあるというべきであり、これは、本件商標と書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものであるから、社会通念上同一のものといえる。
したがって、当該「BABCOCK&BROWN」の文字に自他役務の識別標識としての機能を有しない「SECURITIES」の文字を付加した本件使用商標も、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用役務について
乙9契約によれば、BNBは、法人Aに対し、必要な場合に「財務評価」(以下「使用役務」という。)を提供するものと認められる。
そして、当該使用役務「財務評価」は、企業の財務諸表を分析して、その企業の財政的健全性や業績を評価するプロセスであるから、本件商標の請求役務中、「金融・財務分析」の範ちゅうの役務を含む役務と認められる。
また、使用許諾契約には「ライセンスマークの登録で指定された商品及びサービスの総称」とあることから、使用役務は使用許諾契約に係る役務を含む役務である。
(4)使用者及び使用時期について
乙9契約は2022年3月10日付けで締結されているから、当該日付において、乙9契約書がBNBから法人Aに頒布されていたとするのが自然である。したがって、使用商標の使用者は、通常使用権者であるBNBであって、当該日付は要証期間である。
(5)使用行為について
上記1(2)のとおり、本件使用商標が付された乙9契約書は、BNBが法人Aに対し、使用役務を含むサービスを提供することを内容とするものであり、かつ、上記(4)のとおり、BNBから法人Aに頒布されたといえるものであって、これは、役務に関する取引書類に商標を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
また、上記1(4)のとおり、当該締結日から間もない時期(2022年3月から同年5月頃)に、D銀行は、BNBによるサービス料の支払いに関する請求書の発行や、BNBへのサービス料の送金の指示を受けており、法人AはBNBに対し、D銀行を介してサービス料を支払ったものであるから、乙9契約に係る役務が実際に行われたものと推認することができ、そのことからも、乙9契約書が頒布された(乙9契約が締結された)ことが裏付けられる。
なお、乙9契約書には、「ライセンサーは・・・ワールドワイドのライセンスをライセンシーに付与する。」との記載があること、及び、乙9契約は日本においても有効であり、かつ、法人Aが東京都に所在することを踏まえれば、日本国内において、BNBから法人Aに対し、乙9契約に基づくサービスが提供されたものとみるのが相当である。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙6及び乙7に係る請求書等が、乙9契約書に基づく取引に関するものであること、及び、日本において本件商標が使用されていることが証明できていないから、被請求人の提出に係る証拠をもって、BNBが日本において請求役務を提供したことが証明されていない旨主張する。
しかしながら、上記2(5)のとおり、乙9契約書と乙6及び乙7の請求書の内容や作成時期は整合するものであるから、これらの書類がBNBと法人Aとの間の一連の取引において作成されたものとみることに特段の支障はない。また、法人Aは東京都所在の企業であるから、BNBから法人Aに対するサービスの提供は、日本国内において行われたものというのが相当である。
(2)請求人は、本件使用商標の構成中、「SECURITIES」の文字がいずれの役務の普通名称を表すのか明らかでない旨、及び本件使用商標は、「BABCOCK&BROWN SECURITIES」の文字を同一の大きさ、同一の書体で外観上まとまりよく一体に表記した、全体として一体不可分の商標であり、本件商標権者とは別の法人のBNBを通常認識させるものであって、殊更構成中の「BABCOCK&BROWN」の文字部分を抽出して、識別標識として認識されるとみるのは極めて不自然である旨を述べ、本件商標と本件使用商標が社会通念上同一の商標とはいえない旨主張する。
しかしながら、本件使用商標が、各文字の大きさや書体を同じくするとしても、上記2(2)のとおり、本件使用商標の構成中の「SECURITIES」の文字は、請求役務との関係においては業種名を表すものと認識されるものであって、自他役務の識別標識としての機能を有しない部分といえることからすれば、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならない理由は見いだせず、構成中の「BABCOCK&BROWN」の文字部分が、自他役務の識別標識としての機能を果たし得る部分とみるのが相当である。
(3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)請求人は、本件の審理の終結後、令和6年7月23日付け上申書を提出しているが、その内容を検討するも、上記の判断に影響を及ぼし得るものではないから、審理を再開する必要はないと判断した。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が請求役務について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件使用商標)(乙9)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
審理終結日 2024-07-10 
結審通知日 2024-07-17 
審決日 2024-08-21 
出願番号 2018081521 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W36)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 小林 裕子
大森 友子
登録日 2019-06-14 
登録番号 6152364 
商標の称呼 バブコックアンドブラウン、バブコックブラウン、バブコック 
代理人 尾本 太郎 
代理人 田中 尚文 
代理人 上村 莉愛 
代理人 古関 宏 
代理人 田中 浩之 

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