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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1414411 
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-01-25 
確定日 2024-08-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6754988号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6754988号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6754988号商標(以下「本件商標」という。)は、「GOLFNAVI」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年5月16日に登録出願、第9類「ゴルフスイングの分析用の測定装置,ゴルフ用のクラブのスイング速度・角度及び球速分析・測定機械器具,ゴルフ競技用シミュレーション装置,ゴルフ練習用シミュレーション装置」を指定商品として、同5年10月23日に登録査定、同年11月17日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は、申立人の業務に係る「ゴルフシミュレーション装置」(以下「申立人装置」という。)に使用する、別掲のとおりの構成からなる「Golf Navi」の飾り文字を含む商標(以下「引用商標1」という。)、「Golf Navi」の欧文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「ゴルフナビ」の片仮名からなる商標(以下「引用商標3」といい、これらをまとめて「引用商標」という。)である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標とは、いずれも「ゴルフナビ」と発音するものであって称呼は同一であり、引用商標1及び2については外観も類似し、本件商標と引用商標3の外観は、アルファベットか片仮名かの相違にすぎない。
また、「Navi」とは行き先を指示することを意味する「Navigation」の略であり、いずれも「ゴルフにおいて行き先を指示する」という同一の観念を生じさせる。
したがって、本件商標と引用商標とは同一又は類似の関係にある。
イ 商品の対比
本件商標の指定商品は、上記1のとおりであって、引用商標が付されている申立人装置は、ゴルフ競技のシミュレーション、ゴルフの練習のシミュレーション、ゴルフのスイングの分析、ゴルフクラブのスイング速度、角度及びボールの球速を分析・測定可能な装置である。
したがって、本件商標の指定商品と申立人装置とは同一又は類似している。
ウ 引用商標の周知性
申立人は、本件商標の登録出願前である2019年4月より申立人装置の発売を開始した(甲9)。申立人装置の販売に伴って、同装置は、雑誌に記事として取り上げられたり、また、申立人がその広告を出稿したり、ゴルフに関する展示会に出展したりしている(甲5〜甲15)。
申立人は、申立人装置を紹介するウェブサイトを立ち上げ(甲3)、また、「スポーツナビ」、「イプロスものづくり」及び「ゴルフシミュレータ徹底比較サイト」のウェブサイトにも申立人装置が紹介されている(甲16〜甲18)。
申立人装置は、本件商標の登録出願日前において合計145台が納品・設置されている(甲19)。その後も販売・設置数は拡大し、令和4年6月28日までの時点で合計154台となり(甲19)、それ以降は令和5年8月4日までの間に57台が納品・設置されている(甲20)。したがって、本件商標の登録査定日時点で、申立人装置は、合計211台が納品・設置されている。
上記のとおり、申立人は、本件商標の登録出願日よりも3年以上前から引用商標を付した申立人装置を販売しており、その販売は本件商標の登録査定に至るまで継続している。また、雑誌による申立人装置の紹介や広告の掲載も、継続して反復して行われ、ウェブサイトにおいても、引用商標が申立人のものであることが示されている。本件商標の指定商品の需要者は、ゴルフ練習場、アミューズメント施設などの設置・運営業者に限られることに鑑みれば、申立人装置が掲載された雑誌の発行部数が18,000部、10,000部であることは、引用商標が申立人のものであると周知されるのに十分な発行部数である。
そうすると、引用商標は、申立人装置について、申立人のものとして周知である。
エ 商標法第4条第1項第10号該当性に関する判断
以上より、本件商標は、申立人装置を表示するものとして周知である引用商標に同一又は類似し、かつ、その指定商品が同一又は類似しているから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 本件商標の商標権者と株式会社ゴルフナビ(以下「ゴルフナビ社」という。)及びチ・ミンガン(以下「チ氏」という。)との関係
チ氏は、現在、ゴルフナビ社の取締役副社長である(甲21、甲22の2)。また、同社の代表取締役(甲23)は、本件商標の商標権者である株式会社アーチ(以下「アーチ社」という。)の代表取締役も務めている(甲24)。ゴルフナビ社の会社概要(甲23)には、同社とアーチ社との関係について明示されていないものの、代表取締役が同じであることからすれば、両社は別会社であるものの、実質的には一体性のある関連会社である。
イ 申立人装置の開発及び販売におけるチ氏の関わり
チ氏は、申立人の元社員であり、退職後に帰国して韓国の「KJ ICHEM.CO.,LTD」(以下「KJ社」という。)に勤務していたところ、平成24年11月1日に、申立人の社員(以下「M氏」という。)に宛てて、「今後は仲良くしていきたい」、「ゴルフ用品、電気関係・消耗品等を紹介できる」との電子メールを送信した(甲25)。この電子メールを受け、同年11月30日から12月2日に東京ビックサイトで行われるクリーニング業界の展示会「クリーンライフビジョン21」に、KJ社が日本の「株式会社ASOPORI」とともに出展するため、来日するチ氏とM氏との間で会う約束がなされた(甲26)。それをきっかけに、両者の間で連絡を取り合うようになった。
その後、チ氏が仲介者となり、韓国で製造されたシミュレーションゴルフ装置を日本でも販売すべく申立人に紹介することとなり、平成27年6月にはNSGOLF(甲27)が、平成28年4月にはREDGOLF(甲28)がそれぞれ紹介された。これらについて、申立人とチ氏とのやり取りが繰り返され、採用するか否かの検討がなされた(甲29〜甲41)。
申立人は、申立人装置の開発に協力・貢献したチ氏を韓国側の直接取引先とし、同氏に対し、最初の10台を発注して日本に輸入した(甲42)。その後も、申立人は、受注状況を見極めながら、韓国側の直接取引先であるチ氏に見積書を求め(甲43)、所望する台数を同氏から購入・輸入し、日本国内の顧客に申立人装置を販売した(甲19、甲20)。
令和3年2月15日には、申立人装置の価格について、ゴルフパートナー向けと、それ以外の一般向けとの2つの価格設定がされ、2台以上の発注を求める確認が双方の間でなされた(甲44の1)。また、装置に不具合があれば、申立人からチ氏に対してその指摘をして対処を求め(甲45)、製品としての完成度を高めていった。
申立人が、第56回ジャパンゴルフフェア2022に出展した際には(甲13〜甲15)、チ氏は申立人の一員として参加した。
ウ チ氏による申立人の排除と申立人装置の購入の途絶
申立人は、韓国製の「G−SWING」をチ氏の協力を得て日本仕様に改良した申立人装置を、チ氏を韓国側の直接取引先として韓国より輸入・購入し、引用商標を付して日本国内で販売していたが、引用商標の登録出願をしていなかった。
そのような状況で、アーチ社は、令和4年5月22日に、本件商標について登録出願をした頃、チ氏は、引用商標とロゴタイプの異なる「GOLFNAVI(Nをロゴ化したもの)」(甲21)を使用したゴルフシミュレーション装置(以下「権利者装置」という。)を、株式会社フェローズ(以下「フェローズ社」という。)及び日幸物産株式会社(以下「日幸物産」という。)とともに、日本国内で販売することを目論み、営業活動を始めた(甲46)。権利者装置を売り込むための製品説明資料の表紙には、「ITD COMPANY」と記載されている(甲46)。権利者装置の販売網に申立人は存在せず、フェローズ社及び日幸物産の関係者が経営陣として名を連ねるゴルフナビ社が新たに設立され、チ氏も同社の取締役となり、同社が権利者装置の販売総代理店となるという商流であった(甲46)。また、権利者装置の販売実績として、それまでに申立人が申立人装置を販売してきた実績が挙げられている(甲46)。
チ氏を含む権利者装置の販売関係者がこのような営業活動を始めたことを知った申立人の担当執行役員(以下「申立人役員」という。)は、チ氏に対して電話で事情を問い合わせた。これに対する回答として、令和4年7月4日に、チ氏は、申立人役員に対し、ゴルフナビ社が日本で営業活動をしていることを認めるとともに、今後は、装置一式として従前含まれていたパソコン、キオスク、ケーブル関係、モニター、スイングモーションスタンドを含まない基本価格を80万円とし、かつ、年間台数125台を購入するという条件を申立人が受け入れない限り、申立人装置を供給しないと通知した(甲47)。
上記のようなチ氏を含む権利者装置の販売関係者の動きを知った申立人は、令和4年6月3日、引用商標について登録出願をしたものの、出願日は本件商標の登録出願よりも後になった。なお、本件商標の登録出願について、申立人は事前に知らされていなかった。
現在、チ氏は、ゴルフナビ社の取締役副社長を務め、権利者装置について、「韓国のGTR社とITD社とが共同で独自に開発・製造したものを、ITD社が日本に輸出。ITD社も経営に参画しているゴルフナビ社が日本で展開。リーズナブルでラウンド練習も思うがままの「GOLFNAVI」を発売したのが昨秋のことだ。」(甲22)と対外的に表明し、その開発はチ氏(ITD)が「独自」に行い、2022年秋に発売したとして、申立人については何ら言及していない。
また、アーチ社とチ氏は、本件商標の商標登録後に、申立人に対し、引用商標を使用していることについて、使用中止を求めるとともに、商標法違反に対する責任追及をすること、さらには、チ氏との取引により輸入して申立人装置を販売したことが不正競争防止法違反であるとし、その事実の公表やあらゆる法的措置を取ることを検討する旨の警告を行っている(甲48)。
エ 商標法第4条第1項第7号該当性に対する判断
チ氏は、韓国製の「G−SWING」を日本向けに改良した申立人装置の開発において、申立人の名刺を持って申立人の一員として深く関与し、韓国メーカーとの交渉や取りまとめ役としての業務を担った。製品完成後も、チ氏は、申立人との取引当事者(売主)となっていた。そのため、チ氏は、申立人装置に使用される名称が引用商標であることを熟知していた。
それにもかかわらず、チ氏は、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標の商標登録を得て、自らが取締役副社長を務めるゴルフナビ社がこれを排他的に使用し、申立人が引用商標を申立人装置に使用できなくなることを狙い、申立人の事前承諾を得ることなく、先取り的に商標登録出願した。
なお、本件商標の出願人は、チ氏ではなくアーチ社であるが、同社は、チ氏が取締役副社長となっているゴルフナビ社と実質的には一体であって、本件商標を実際に使用するのはゴルフナビ社であるし、権利者装置の商流においてアーチ社は全く関与しない。
そして、チ氏及びゴルフナビ社による先取り的な登録出願の意図は、本件商標を排他的に使用し、引用商標を申立人装置に使用できなくすることで、従前、申立人が積み上げてきた申立人装置の販売実績や、引用商標が獲得してきた業務上の信用性や周知性フリーライドし、権利者装置の日本での販売による利益を独占することにある。その独占は、チ氏が、申立人を通じて行う日本での販売よりも、より多く利益を得ることにつながる。この点は、権利者装置の説明資料(甲46)に申立人装置の販売実績が記載されていること、チ氏が申立人に対し、従前の取引価格の1.5倍を超える価格と、年間125台の購入義務を課すという、申立人が受け入れられない供給条件を提示したこと、本件商標の登録後に、申立人に対し、引用商標の使用中止や法的措置を取ることの警告をしたことからも裏付けられる。
なお、仮に引用商標の周知性が否定されるとしても、申立人が従前行ってきた営業活動からすれば、引用商標は、需要者の間で、ある程度知られる状況にまで至っていた。そのため、チ氏及びゴルフナビ社は、その状況にフリーライドしようとしたことに変わりはない。さらに、引用商標の周知性が仮に否定される場合、本件商標の審査過程において、引用商標が周知である旨の拒絶理由がいったん出されながらそうなった原因は、チ氏が申立人に対して申立人装置の販売を停止して、申立人装置の販促・営業活動に支障が出る状況を作っておきつつ、アーチ社が申立人と交渉中である旨の上申を行うことで審査の先延ばしを図り、その間、権利者製品の営業活動や販売を進めて引用商標に対する周知性希釈化させたことにある。
結局のところ、本件商標は、申立人が日本でのゴルフシミュレーション装置販売事業を準備する段階において、申立人の名刺を持って申立人の一員として深く関与するとともに、申立人装置の発売後は申立人と直接の取引関係にあったチ氏、同人が取締役副社長を務めるゴルフナビ社が、アーチ社という形式的出願人を装って、他人(申立人)が引用商標を使用することを阻止し、申立人による販売実績、信用、引用商標の周知性フリーライドし、本件商標を用いたゴルフシミュレーション装置による利益の独占を図る意図という不正な目的でしたものであって、剽窃的なものである。その出願経緯には社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反し到底許されない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人装置に付された引用商標は、日本国内で広く知られている商標である。本件商標は、これと同一又は類似する。
そして、申立人装置の開発及び日本国内での販売に関する前述した経緯や、本件商標出願後や登録後のチ氏の申立人に対する対応からすれば、チ氏及びゴルフナビ社と実質的に一体であるアーチ社による本件商標の出願は、信義則に反する不正の目的によるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標が申立人の業務に係る申立人装置を表示するものとして需要者の間に広く認識されているかについて
ア 申立人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
(ア)申立人は、引用商標を申立人装置に使用しており(甲2〜甲4)、申立人装置は、平成31年4月に発売を開始した(甲9)。
(イ)申立人は、自社のウェブサイトにて、申立人装置を広告し(甲3)、また、「Sportsnavi」(2021年(令和3年)11月12日付け)、「イプロス ものづくり」(掲載日不明)及び「ゴルフシミュレーター徹底調査サイト」(2023年(令和5年)6月時点の調査による記事)の各ウェブサイトにおいて、申立人装置が紹介されている(甲16〜甲18)。
(ウ)「月刊レジャー産業資料」(綜合ユニコム株式会社発行)2020年(令和2年)7月号、同2021年(令和3年)6月号、同2022年(令和4年)2月号、「月刊ゴルフ用品界」(株式会社ゴルフ用品界社発行)2019年(平成31年)4月号、同2020年(令和2年)11月号及び「月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド」2023年(令和5年)11月号において、申立人装置に関する紹介記事又は広告が掲載されている(甲5〜甲7、甲9〜甲11)。
なお、「月刊レジャー産業資料」の発行部数は1万8千部であり(甲8)、「月刊ゴルフ用品界」(2021年(令和3年)5月から「月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド」に誌名変更)の発行部数は1万部である(甲12)。
(エ)令和4年3月11日から13日に開催された「第56回ジャパンゴルフフェア2022」において、申立人装置が出品された(甲13〜甲15)。
なお、当該フェアにおける来場者数は、延べ約3万人である(甲14)。
(オ)申立人装置は、本件商標の登録出願前までに145台、令和4年6月28日までの時点で合計154台が設置され(甲19)、その後、令和5年8月4日までに更に57台が設置されている(甲20)。
イ 前記アで認定した事実によれば、申立人は、平成31年4月から引用商標を申立人装置に使用しており、申立人装置は、申立人及び第三者のウェブサイト並びに月刊誌において、広告又は紹介され、令和4年3月11日から13日に開催された「第56回ジャパンゴルフフェア2022」に出品されており、また、一定程度の台数が設置されていることが認められる。
しかしながら、申立人装置の発売期間はさほど長いとはいえず、ウェブサイト及び月刊誌への広告及び紹介記事の掲載回数もさほど多いとはいえず、展示会への出品も僅か1回であり、また、申立人装置の設置台数が一定程度認められるものの、その市場シェアは不明である。
そうすると、「月刊レジャー産業資料」及び「月刊ゴルフ用品界」(2021年(令和3年)5月から「月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド」に誌名変更)の発行部数並びに「第56回ジャパンゴルフフェア2022」の来場者数を考慮したとしても、引用商標は、申立人の業務に係る申立人装置を表示するものとして、需要者の間にある程度は認識されているといえても、需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。
なお、引用商標は、外国においては、何ら使用の実績は認められない。
したがって、引用商標は、申立人の業務に係る申立人装置を表示するものとして日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性について
前記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る申立人装置を表示するものとして日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
そうすると、本件商標は、たとえ引用商標と同一又は類似する商標であるとしても、本件商標の指定商品と申立人装置との類否及び本件商標が不正の目的をもって使用をするものであるかについて判断するまでもなく、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(ア)チ氏は、申立人の元社員であり、退職後にKJ社に勤務していた平成24年11月1日に、申立人の社員であるM氏に宛てたメールをきっかけに、両者の間で連絡を取り合うようになった(甲25、甲26、申立人の主張)。
(イ)その後、チ氏は、韓国で製造されたシミュレーションゴルフ装置に関する仲介者となり、平成27年6月以降、申立人とチ氏とのやり取りが繰り返され、検討がされた(甲27〜甲41、申立人の主張)。
(ウ)申立人は、申立人装置の開発に協力・貢献したチ氏を韓国側の直接取引先とし、同氏を通して、最初の10台を令和元年5月頃、日本に輸入し、その後も、申立人は、受注状況を見極めながら、韓国側の直接取引先であるチ氏に見積書を求め、所望する台数を同氏から輸入し、日本国内の顧客に申立人装置を販売した(甲19、甲20、甲42、甲43、申立人の主張)。
(エ)チ氏は、令和4年5月11日に、フェローズ社及び日幸物産とともに、引用商標とロゴタイプの異なる「GOLFNAVI(Nをロゴ化したもの)」の文字からなる商標が表示された権利者装置の製品説明資料を作成した(甲46)。
(オ)アーチ社は、令和4年5月16日に本件商標を登録出願した(甲1)。
(カ)令和4年6月9日に、ゴルフナビ社が設立され(甲23)、チ氏はゴルフナビ社の取締役副社長であり(甲21、甲22の1)、ゴルフナビ社の代表取締役はアーチ社の代表者でもある(甲23、甲24)。
(キ)アーチ社及びチ氏は、令和5年12月22日付けで、申立人に対して引用商標の使用の中止を求める警告を行った(甲48)。
イ 前記アで認定した事実によれば、チ氏は、申立人の元社員であり、退職後、平成24年11月1日より申立人の社員であるM氏と連絡を取り合うようになり、その後、韓国で製造されたシミュレーションゴルフ装置に関する仲介者となって、平成27年6月以降、申立人とやり取りが繰り返されるようになり、令和元年5月より、申立人は、申立人装置の開発に協力・貢献したチ氏を韓国側の直接取引先として、取引が行われるようになったことが認められる。
そうすると、申立人は、チ氏とは申立人装置の製造及び販売において協力関係にあり、両者は、申立人装置に関する業務上密接な関係にあったといえる。
また、申立人は、前記(1)ア(ア)のとおり、平成31年4月に申立人装置の発売を開始したが、その後、本件商標が登録出願される令和4年5月16日までの間に、自ら引用商標を登録出願したり、チ氏との間でチ氏又はその関係者が自ら商標登録しないことを約する契約を行ったりするなどの措置を講じたといった事情は見受けられない。
そして、本件商標の商標権者であるアーチ社は、その代表者がゴルフナビ社の代表取締役であり、チ氏はゴルフナビ社の取締役副社長であることからすると、アーチ社はチ氏の関係者といえる。
そうすると、たとえ、アーチ社及びチ氏が申立人に対して引用商標の使用の中止を求める警告を行ったとしても、申立人は、引用商標を自ら登録出願することやチ氏との間で契約等の適切な措置を講じることを怠っていたというべきであり、このような状況において、本件商標の登録は、申立人とチ氏との間における商標権の帰属等をめぐる当事者同士の私的な問題であって、当該私的な問題として解決すべきものというべきである。
してみると、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないようなものということはできない。
また、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大しなければならない特段の事情は見いだせない。
他に、本件商標が「公の秩序や善良な風俗を害するおそれがある商標」であるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものではなく、その登録は同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲 引用商標1




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異議決定日 2024-08-16 
出願番号 2022054675 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大橋 良成
特許庁審判官 山田 啓之
渡邉 あおい
登録日 2023-11-17 
登録番号 6754988 
権利者 株式会社アーチ
商標の称呼 ゴルフナビ 
代理人 早瀬 久雄 

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