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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 035
管理番号 1413537 
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2023-10-26 
確定日 2024-07-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4067588号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4067588号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4067588号商標(以下「本件商標」という。)は、「ANIMO」の文字を横書きしてなり、平成7年3月9日に登録出願、同9年8月22日に登録査定され、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,競売の運営,輸出入に関する事務の代理または代行,書類の複製,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター及びワードプロセッサの貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)及び電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守に関する技術者のあっせん,その他の職業のあっせん」を指定役務として、同年10月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第8号証(以下、証拠の表記にあたっては、「甲○」又は「乙○」と表記する。)を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上(2020年11月13日から2023年11月12日まで。以下「要証期間」という。)日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用していないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
3 答弁に対する弁駁
(1)登録商標の指定役務への使用といえるか否かについて
ア 第35類「経営の診断及び指導」の具体的内容
「経営の診断及び指導」とは、特許庁商標課(編)「商品及び役務の区分解説〔国際分類第11−2022版対応〕」によれば、「このサービスは、他人の依頼に基づいて、経営の診断や経営に関する助言を行う「経営コンサルタント」等が行うサービスが該当」すると記載されている(甲3)。また、「商品・サービス国際分類表〔第12−2024版〕類別表(注釈付き)」の注釈においても、「第35類には、主として、商業的又は工業的企業の事業の経営、運営、組織及び管理、並びに広告、マーケティング及び販売促進のための企画及びその実行の代理を含む。」と記載されている(甲4)。
ここで経営診断とは、経営の健全性を明らかにするための分析方法であり、経営状況をさまざまなデータや指標を用いて分析して経営課題を明確にし、各分析を元に経営戦略を策定することである(甲5、甲6)。また、経営の指導とは、資産・損益・資金繰り等から、経営状態を分析して企業経営全体における問題・改善ポイントを明確にし、解決策の提案や経営戦略への助言をするなど、経営の方向性を指導することである(甲7)。
なお、特許庁ウェブサイト内「指定商品・指定役務を記載する際のよくある間違い及び商品・役務名のQ&A」中「商品・役務名のQ&A」(甲8)によれば、「「助言・指導」の役務は、原則として、助言・指導の内容に対応する役務と同じ区分(類)に分類されます」、との解説がなされている。
以上を踏まえると、第35類「経営の診断及び指導」が意図する役務とは、企業、事業の経営状態を分析・診断し、改善のための助言・指導を行うことであり、企業、事業の経営といった企業運営の根幹部分以外に関する診断・助言・指導はその内容に応じた他の区分に属する。
イ 被請求人が提供する役務について
乙各号証が示す被請求人の提供する役務は、以下に詳述するとおり、第35類「経営の診断及び指導」に該当するとはいえない。
(ア)乙1によれば、被請求人がS社と業務提携し提供するのは、機械設備の音響データを収録、分析し、現場熟練者の聴覚点検の定量化、正常、異常の診断モデルの構築、検査品質の向上や設備予兆保全のためのAIエンジンの開発及び生産設備への実装の実現を支援するサービスである。
答弁書中では、被請求人はこのコンサルティングサービスを通じて、顧客である他社の業務の効率化及び経営の合理化を可能としているとの記載があるが、乙1には、経営状態の分析に用いられる「資産」「資金」等の記載は一切なく、「経営戦略策定」など「経営」に関する具体的な記載はない。
すなわち、被請求人が提供するのは、設備点検の合理化を可能とするシステム導入のためのコンサルティングであって、経営の合理化を可能とする事業経営に関するコンサルティングを直接的に行うものではないから、第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとはいえない。
なお、被請求人が提供するサービスは、設備の点検に関する助言や効率化のための指導といえることから、「「助言・指導」の役務は、原則として、助言・指導の内容に対応する役務と同じ区分(類)に分類されます」との記載に基づけば、第37類「建築設備の運転・点検・整備並びにこれらに関する情報の提供」「各種機械器具の修理又は保守」や第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」といった各種機器の点検・保守及びプログラムの開発に関連するサービスであると考えるのが妥当である。
乙2は、上記乙1の広告であるとのことであるが、各広告中「2.サービス概要」欄の記載をみると「工場の装置、付帯設備、構造物など、人の聴覚等による確認(官能検査)をデジタル化していくため、音響データの音響特徴量を分析・可視化するクラウドサービスと、分析された内容からAI化の可能性と課題を抽出し、レポートとして提供するサービス」「音響AI化を目指し、生産設備・装置、付帯設備等に実装すべき項目等の要件を整理し、AI学習モデルを作成し、POC(実証実験)実施後、本番導入までを支援するサービス」との記載があるのみであり、経営状態の診断や経営に関する具体的なアドバイスを行っていることは読み取れず、第35類に属する役務の提供を行っているとはいえない。また、そもそも、いつ・誰によって頒布されたのか明確となる資料の提出もなく、実際に頒布された事実が客観的証拠によって証明されてはいない。
(イ)乙3も上記と同じ「音響診断AI化支援コンサルティング」に関する宣伝広告であるが、N社が開発する最先端の音響センサを活用することにより、稼働監視が難しかった振動センサや非接触分野への活用用途が広がり、さらに聴覚点検を実施する熟練技能者の優れた感覚や経験の可視化・数値化の分析の精緻化が可能になったことを強調しているのみである。
すなわち、乙3にも、上記と同じく、経営状態の分析に用いられる「資産」「資金」等の記載は一切なく、「経営戦略策定」など「経営」に関する具体的な記載がないとすれば、第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとはいえない。むしろ、提供しているのは、第37類「建築設備の運転・点検・整備並びにこれらに関する情報の提供」「各種機械器具の修理又は保守」や第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」といった各種機器の点検・保守及びプログラムの開発に関連するサービスである。
(ウ)乙4及び乙5は、M社に向けて行ったプレゼンの資料及び当該資料を先方へ送付したことを示すメールの写しである。
乙4によれば、音声・音響技術を利用した「ANIMO Cloud」サービスにより、設備の事故予防、労働災害の防止、事故検知が可能になることを説明していることが理解できることから、ここから被請求人が提供しているのは、第37類「建築設備の運転・点検・整備並びにこれらに関する情報の提供」といった各種機器の点検、保守又は第42類「電子計算機用プログラムの提供」に関連するサービスであることは理解できるものの、上記と同じく、乙4には、経営状態の分析に用いられる「資産」「資金」等の記載は一切なく、「経営戦略策定」など「経営」に関する具体的な記載がないことから、第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとはいえない。
答弁書において、被請求人は、当該プレゼンテーションは顧客の管理・運営等を援助し、ひいては同社の商品の販売実績を大きく向上させるための情報を提供する役務であるから、第35類「経営の診断及び指導」に該当することは明らかである旨を述べているが、上述のとおり、設備の事故予防、事前検知のシステム化により、間接的には顧客の運営を援助することにはなるが、乙4からは直接的に経営の根幹に関する診断や指導を行っているとは読み取れず、被請求人の主張は、根拠に乏しい。
(エ)乙6及び乙7は、F社に向けて行ったプレゼンの資料及び当該顧客とのやりとりがあったことを示すメールの写しである。
乙6によれば、音響及び振動を解析することにより、設備の稼働監視・点検や異常予知を可能とするサービス「AnimoWaveBase」を提供していることが理解できるから、被請求人が提供しているのは、第37類「建築設備の運転・点検・整備並びにこれらに関する情報の提供」といった各種機器の点検・保守又は第42類「電子計算機用プログラムの提供」に関連するサービスである。
被請求人は、答弁書において、上記プレゼンテーションにより、商品の生産性向上や業務の効率化を通じた経営の指導の助言を行ったことから、第35類「経営の診断及び指導」に該当することは明らかである旨を述べているが、乙6には経営状態の分析に用いられる「資産」「資金」等の記載は一切なく、「経営戦略策定」など「経営」に関する具体的な記載はないことから、上記のような役務の提供がなされたことは読み取れず、根拠に乏しい。
なお、乙7からは、被請求人がF社に訪問することはうかがい知れるが、実際に乙6が提供されたのか否か、その関連性は読み取れず、証拠として不十分である。
(オ)乙8及び乙9は、O社に向けて行ったプレゼンの資料及び当該顧客とのやりとりがあったことを示すメールの写しである。乙8は上記と同じく「AnimoWaveBase」に関するものである。乙8によれば、被請求人が提供するのは、既存の点検方法の診断、環境確認と分析、これらを基にした音響AIモデルの構築及び導入支援であり、第37類「建築設備の運転・点検・整備並びにこれらに関する情報の提供」といった各種機器の点検・保守又は第42類「電子計算機用プログラムの提供」に関連するサービスであることは理解できるものの、上記と同じく、経営状態の分析に用いられる「資産」「資金」等の記載は一切なく、「経営戦略策定」など「経営」に関する具体的な記載がないから、第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとはいえない。
なお、乙9からは、被請求人がO社とのやりとりがあることはうかがい知れるが、実際に乙8が提供されたのか否か、その関連性は読み取れず、証拠として不十分である。
(カ)乙10は、講演資料とのことであるが、単に「音響技術を活用しベテランの耳をデジタル化」と記載されているのみであり、音響技術を活用したサービスに関する講演がなされたことが漠とは理解できるが、具体的な役務の広告・宣伝とは理解できないものである。ましてや、ここから第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとは理解し得ない。さらに、「アニモ」の記載は「株式会社アニモ」との表示だけであって、単に商号を示したものであり、登録商標と社会通念上同一の商標が、出所識別機能を発揮するような商標として使用されているものではない。
(キ)乙11から何らかの講演が行われる予定であることは理解できるが、その内容はこれらの証拠資料からは明らかではなく、ここから第35類「経営の診断及び指導」を提供しているとは理解し得ない。さらに、「アニモ株式会社」との表示だけであって、単に商号を示したものであり、登録商標と社会通念上同一の商標が、出所識別機能を発揮するような商標として使用されているものではない。
(ク)乙12は社内資料であり、いつ、だれに対して講演が行われたかなど、その根拠に乏しい。さらに登録商標の使用はない。
ウ 小括
上記のとおり、乙1から乙12のいずれを検討しても、被請求人が主張する第35類「経営の診断及び指導」に係る役務を使用しているとはいえない。そして、その他第35類「市場調査,商品の販売に関する情報の提供」等について使用証拠は提出されていない。
乙各号証によれば、被請求人が提供するサービスは、第37類又は第42類に属するものであると考えるのが相当であり、本件審判の請求に係る指定役務のいずれについても使用しているとはいえない。
(2)登録商標と社会通念上同一の商標の使用といえるかについて
上記のとおり、そもそも被請求人は本件審判の請求に係る指定役務を使用しているとはいえないが、登録商標と社会通念上同一の商標を使用しているともいえない。以下に詳述する。
乙1から乙12において、被請求人が登録商標と社会通念上同一と認められる商標であると主張するのは「幾何図形及びVoice&Sound Solution ANIMO」(「ANIMOロゴ」という。)であるが、幾何図形及び文字がまとまりよく一体的に表されており、ここから「ANIMO」の文字だけを分離して把握されるとみるのは不自然である。
また、被請求人は乙4に表示される「ANIMO Cloud」についても「Cloud」の語の識別力が弱いことから、「ANIMO」部分のみが分離して把握されるとして、社会通念上同一である旨を主張しているが、外観上まとまりよく表され、生じる称呼「アニモクラウド」も一気一連に称呼し得ることから、商標全体として一体的な語句と認識されることが自然であり、ここから「ANINO」の語が分離して把握されるとはいえない。
そうとすれば、被請求人が登録商標と社会通念上同一の商標であると主張する商標はいずれも登録商標とは非類似の商標であり、乙1から乙12は、登録商標(又は社会通念上同一の商標)の使用証拠とはいえない。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1から乙12(枝番号あり。)を提出した。
2 答弁の理由
(1)被請求人による本件商標の使用
ア 1994年に創業し、自社開発の最先端音声技術を駆使し顧客のニーズや課題解決に最適なソフトウェア及びサービスを提供してきた会社である被請求人は、本件商標「ANIMO」のもと、被請求人により長年培われた音声・音響技術を活用した経営の指導や経営の指導に関する助言を、これまで何度も顧客である他社に対し行ってきた。その中で、要証期間にある代表的なものとして、次を挙げる。
(ア)「音響診断AI化支援コンサルティング」の提供開始(2021年4月)(乙1)
企業のプラントや工場では、機械設備の状態点検に熟練技能者を確保し、視覚による目視確認とともに、聴覚による異音確認が行われているが、聴覚点検では、収録や分析に習熟を要するため、熟練技能者でしか判断ができず、異音の見逃しによる設備機器の故障や品質異常は操業中断やリコール・PL事故など事業活動に大きな影響を及ぼす。また、聴覚点検を実施する熟練技能者のすぐれた感覚や経験の可視化・数値化が点検技術伝承のための課題となっている。このような課題への対応を支援するために、生産ラインの設備から完成検査品の異常検知までプラントや工場内の「現場の耳のDX化」支援を幅広く行っている会社である被請求人は、2021年4月より、S社と業務連携して、他社に対し「音響診断AI化支援コンサルティング」を提供している(乙1)。
このコンサルティングサービスは、「音響分析レポートサービス」と「音響AI導入サービス」の2点を含み、顧客である他社の経営を支援する内容となっている(乙1)。「音響分析レポートサービス」は、音響情報の分析レポートを作成し、現場熟練者の聴覚点検の定量化や正常・異常判断の可能性を案内するものであり、「音響AI導入サービス」は、音響情報の加工や詳細分析を行い、正常異常の診断モデルを構築し、検査品質の向上や設備予兆保全のためのAIエンジンの開発・調整を行い、生産設備へのAI化実装を実現するものである。このコンサルティングサービスを通じて、顧客である他社は、被請求人らによるコンサルティングサービス導入前より業務を効率化及び経営を合理化することが可能となる。こうした被請求人によるコンサルティングサービスは、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言にあたり、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
乙2は、このコンサルティングサービスの広告である。本件役務に係る乙2の各ページには、本件商標と社会通念上同一である商標「ANIMO」が大きく太く目立つように表示されており、被請求人は、こうして本件役務に関する広告に本件商標を付して展示し、かつ、頒布していた。
したがって、要証期間に、本件商標が、本件指定役務に関し被請求人によって商標として使用(商標法第2条第3項第8号)されていた。
(イ)生産設備等の「音響診断AI化支援コンサルティング」(乙3)
乙3は、S社と被請求人とで協業して2021年4月から、上述の「音響診断AI化支援コンサルティング」を提供している旨を宣伝・広告している。乙3の上部には、本件商標と社会通念上同一である商標「ANIMO」が大きく太く目立つように表示されており、被請求人は、こうして本件役務に関する広告に本件商標を付して展示し、かつ、頒布していた。
したがって、要証期間に、本件商標が、本件指定役務に関し被請求人によって商標として使用(商標法第2条第3項第8号)されていた。
(ウ)M社に対する「ロスプリベンションにむけた音声・音響技術を活用した提案」と題するプレゼンテーション(2022年5月26日)(乙4)
被請求人は、2022年(令和4年)5月26日に、M社に対しても、乙4の資料を用いて、プレゼンテーションの形式で、事故や労働災害を防止して業務や人員管理の効率化を目指すことで経営を合理化するための方策に関する助言及び情報の提供を行った。このプレゼンテーションにおいて、被請求人は、被請求人が開発・所有する音響・音声技術の活用により様々な業務サービスと技術連携を行うことができるクラウドサービス基盤である「ANIMO Cloud」を利用することで、どのように業務の省人化及び業務の効率化を図ることができるか、それによって経営をどのように合理化できるかについて説明を行った。具体的には、乙4に記載されているとおり、「ANIMO Cloud」を活用することにより、音響振動分析による設備の事故予防や、音声を活用した労働災害の防止、音響による事故検知が可能となり、その結果、設備の火災事故、労働災害、自動車事故等による損失の未然の防止につながる旨を、乙4に記載されている事例と共に詳細に説明し、情報を提供した。
こうした被請求人によるM社に対するプレゼンテーションは、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言であるとともに、M社の管理・運営等を援助し、ひいては同社の商品の販売実績を大きく向上させるための情報を提供する役務である。したがって、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
そして、このプレゼンテーションの際に実際に閲覧用の資料として用いられ、本件役務に係る乙4の表紙(1ページ目)と最終ページ(15ページ目)には、本件商標と社会通念上同一である商標「ANIMO」が大きく太く目立つように表示されている。また、乙4の3ページ目、5ページ目及び13ページ目にも「ANIMO Cloud」と単独で目立つように表示されているところ、この使用証拠「ANIMO Cloud」の構成中「Cloud」はインターネットを通じて提供されるコンピュータリソースやサービスを指す用語として一般に使用されている語にすぎないため、「ANIMO」標章のみが独立して出所識別機能を発揮する部分であり、これは本件商標と同一である。よって、この使用商標も本件商標と社会通念上同一のものとみるのが相当である。
こうして、被請求人は、本件役務に関する広告に本件商標を付して展示し、かつ、頒布していた。
なお、被請求人の従業員からM社への2022年5月26日付けのメール(乙5)において「先ほどは、ご多用の中 お時間割いて頂き誠にありがとうございました。」と記されているとおり、被請求人は、このメール送信日の2022年5月26日のM社との会議において、同社に対し、乙4の資料を閲覧してもらいながらプレゼンテーションを行った。この乙5のメールにおいては、プレゼンテーション内容のより深い理解のために、念のため乙4の資料が改めて共有されている。
よって、要証期間に、本件商標が、本件指定役務に関し被請求人によって商標として使用(商標法第2条第3項第8号)されていた。
(エ)F社に対する「音響・振動分析、音声技術を活用した作業支援ソリューション」と題するプレゼンテーション(2022年11月22日)(乙6)
被請求人は、2022年(令和4年)11月22日に、F社に対し、乙6の資料を用いて、プレゼンテーションの形式で、容易に製品の製造設備の稼働状況を監視し故障の予知・診断を実現するための方策等に関し、助言と情報の提供を行った。このプレゼンデーションにおいて、被請求人は、独自に開発したアルゴリズムによる音響・振動診断技術とAIを活用した「AnimoWaveBase」を用いて製品の生産設備の異常予兆の検知、構造物の点検、完成品検査等を行うことで、いかにして製品の生産ロス(製造現場で生じる損失)の防止や検査工程の省人化を図ることができるかについて説明を行った。具体的には、「AnimoWaveBase」の活用により、熟練者の感覚(聴感、触感)がデジタル化されることにより製品の生産設備が安定稼働し、生産性向上へ寄与し、製品の品質や歩留まり(原料の投入量に対し実際に得られた生産数量の割合)が向上すること等について、乙6の資料を用いて詳細に説明し、情報を提供した。
こうした被請求人によるF社に対するプレゼンテーションは、同社に対する、商品の生産性向上や業務の効率化を通じた経営の指導の助言であるとともに、同社の管理・運営等を援助し、ひいては同社の商品の販売実績を大きく向上させるための情報を提供する役務である。したがって、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
そして、このプレゼンテーションの際に実際にその場で用いられた資料であり、本件役務に係る情報が含まれている乙6の最終ページ(19ページ目)には、本件商標と社会通念上同一である商標「ANIMO」が、他の文字よりひときわ大きく太く目立つように表示されている。
こうして、被請求人は、本件役務の提供の用に供する物である乙6の資料に本件商標を出所標識として付しているので、本件役務に関する広告に本件商標を付して展示し若しくは頒布していたといえる。
なお、F社から被請求人の従業員への2022年11月10日付けのメール(乙7)において「ご連絡頂いた件、11月22日(火)13:00〜14:00でグラフト大阪北館31階でお待ちしています。当方、文教関係の営業2名ほど 同席させて頂きます。」と記されているとおり、被請求人は、「2022年11月22日」にF社を訪問して、同社に対し、乙6の資料を閲覧してもらいながら実際にプレゼンテーションを行い、管理・運営等を援助するための助言及び情報の提供を行った。
よって、要証期間に、本件商標が、本件指定役務に関し被請求人によって使用(商標法第2条第3項第8号)されていた。
(オ)O社に対する「音響振動診断AnimoWaveBase費用改定について」と題するプレゼンテーション(2023年4月18日)(乙8)
被請求人は、2023年(令和5年)4月18日に、O社に対し、乙8の資料を用いて、プレゼンテーションの形式で、「AnimoWaveBase」についての費用改定と「AnimoWaveBase」の導入に向けた進め方について説明した。「AnimoWaveBase」は、上述のとおり、被請求人が独自に開発したアルゴリズムによる音響・振動診断技術とAIを活用した、製品の生産設備の正常性監視を実現するための手段である。「AnimoWaveBase」を導入することにより、熟練者の感覚(聴感、触感)がデジタル化され、製品の生産設備が安定稼働し、生産性向上へ寄与し、製品の品質や歩留まりが向上する等の有益な効果がある。
こうした「AnimoWaveBase」の導入に向けた進め方についてF社に対し行われたプレゼンテーションは、商品の生産性向上や業務の効率化のための同社に対する助言の一環であるとともに、同社の管理・運営等を援助し、ひいては同社の商品の販売実績を大きく向上させるための情報を提供する役務の一部であって、経営の指導の一環として行われたものである。したがって、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
そして、このプレゼンテーションの際に、実際にその場で用いられた資料であり、本件役務に係る情報が含まれている乙8の最終ページ(7ページ目)には、本件商標と社会通念上同一である商標「ANIMO」が、他の文字よりひときわ大きく太く目立つように表示されている。
こうして、被請求人は、本件商標を出所標識として本件役務に関する広告に本件商標を付して展示しかつ頒布していた。
なお、被請求人の従業員からO社への2023年4月18日付けのメール(乙9)において「本日は、お忙しい所 お打合せのお時間をいただき誠にありがとうございました。早速ですが、本日使用した資料をお送りします。」と記されているとおり、被請求人は、確かに、同日のO社との打ち合わせにおいて、同社に対し、乙8の資料を閲覧してもらいながらプレゼンテーションを行った。
よって、要証期間に、本件商標が、本件指定役務に関し被請求人によって使用(商標法第2条第3項第8号)されていた。
(カ)「SORACOM Discovery 2023」における講演(2023年7月6日)(乙10)
被請求人は、2023年7月6日に、「SORACOM Discovery 2023」におけるセッション(「本セッションでは・・・IoTアプリケーションを開発し、それを使ってビジネス的な課題を解決していくその過程と、苦労、成功談について語っていただきます」(乙10))において、自社開発の音響技術を活用し、いかにして「異音検知」に関し更なる省人化を図るか等を含む、ビジネス的な課題について講演を行った。
こうした被請求人による講演は、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言にあたり、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
(キ)一般社団法人Nへの講演(2021年2月3日)(乙11)
被請求人は、2021年2月3日、一般社団法人Nに対して、同法人からの要請により、対価を得て講演を行った。この講演では、音響・振動診断ソリューション「AnimoWaveBase」を活用した加工業向けの事例や技術を紹介しながら、どのようにして経営の効率化や合理化を図ることができるかに関し説明を行った。この講演が、もっぱら他社向けの経営の指導及び運営の指導に関する助言であることは、乙11に「講演料 協会内規に則り、お支払いさせて頂きます。」と記載されているとおり、被請求人が講演に対する対価を得ていることから明白である。こうした被請求人による一般社団法人Nへの講演は、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言であり、本件商標の指定役務中の第35類「経営の診断及び指導」に該当する。
イ その他に、被請求人は、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言に該当するセミナーや講演を数多く行ってきており、例えば2023年だけでも、上述のとおり7月6日に「SORACOM Discovery 2023」における講演を行った以外に、複数のセミナーに出席し他社に対して経営の指導及び助言を行った(乙12)。
これまで挙げた各乙号証は、顧客である他社からの非諾情報を除外した、上記事実を客観的に立証するために必要と思われる限りの証拠であって、実際には、これらをはるかに上回る量の使用証拠があることを念のため申し添える。
以上より、被請求人は、要証期間に日本国内において本件商標及びそれと社会通念上同一の商標を第35類に属する指定役務「経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供」等について自他役務識別標識として商標法第2条第3項第8号に規定されている使用をしている。
(2)小括
以上のとおり、本件商標がその指定役務について要証期間に被請求人によって商標として使用されていたことが客観的に証明された。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は、1994年8月に創業した会社であり、その事業内容は、(ア)社会・産業インフラ分野において、DX化を支援する音声・音響プロダクトの開発、販売、(イ)コンタクトセンターにおける、業務効率化・自動化を支援する音声プロダクトの開発、販売、(ウ)音声・音響テクノロジーを核にしたクラウドサービスの開発、販売、(エ)医療福祉・ヘルスケア分野における、音声・音響サービスの開発、販売である(乙3)。
(2)ア S社によるニュースリリース(2021年4月12日付け。乙1)によれば、同社は本件商標権者と業務連携して、2021年4月から「生産設備等の音響診断AI化支援コンサルティング」(以下「本件使用役務」という。)の提供を開始した。
イ 本件使用役務は、(ア)機械設備の稼働音をスマホやICレコーダを用いて収録し、Webクラウドの分析ツールで音響情報を可視化、数値化した結果をもとに、音響情報の分析レポートを作成する「音響分析レポートサービス」、(イ)当該結果を踏まえ、中長期的なデータを収録し、音響情報の加工、詳細分析を行い、正常異常の診断モデルを構築し、さらに、検査品質の向上や設備予兆保全のためのAIエンジンの開発及び精度向上の調整を行い、生産設備へのAI化実装を実現する「音響AI導入サービス」により構成される(乙1)。
(3)ア 本件商標権者とS社が作成した「音響分析レポートサービス」及び「音響AI導入サービス」のカタログ(2021年4月現在のもの。乙2)には、別掲のとおりの書体で「ANIMO」の文字を書した商標(以下「本件使用商標」という。)を含むロゴが表示されている。
イ 本件商標権者及びS社を含めた4社が作成した「生産設備等の音響診断AI化支援コンサルティングに関する協業開始」を知らせる書面(2022年2月15日付け。乙3)には、本件使用商標を含むロゴが表示されている。
(4)本件商標権者がM社に宛てて作成した「ロスプリベンションにむけた音声・音響技術を活用したご提案」と題する資料(2022年5月26日付け。乙4)には、本件使用商標を含むロゴが表示されているところ、その内容として「ANIMOCloudのご紹介」、「音声・音響技術によるロスプリベンションへの貢献」などが記載されている。
当該資料によれば、「ANIMOCloud」とは、アニモが持つ音響・音声エンジンを、ネットワークが利用できる環境であれば、どこからでも、いつでも使えるサービス基盤を提供するもので、様々な業務サービスと技術提携を行い、省人化、業務の効率化を可能にするものである。
(5)ア 本件商標権者がF社などに宛てて作成した「音響・振動分析、音声技術を活用した作業支援ソリューション」と題する資料(2022年11月付け。乙6)には、本件使用商標を含むロゴが表示されているところ、その内容として「音響&振動診断による検査、点検支援「AnimoWaveBase」」、「AnimoWaveBase製品概要」などが記載されている。
当該資料によれば、「AnimoWaveBase製品」とは、音響、振動解析による設備の稼働監視、熟練者の聴覚、触覚をデジタル化するものである。
イ 本件商標権者がO社に宛てた「音響振動診断AnimoWaveBase費用改定について」と題する資料(2023年4月付け。乙8)には、本件使用商標を含むロゴが表示されているところ、その内容として当該製品の費用改定情報などが記載されている。
(6)ア 「SORACOM Discovery」のウェブサイト(乙10)には、「IoTエンジニアが技術目線で語る!公募セッションその2」と題する講演において、本件商標権者の従業員が登壇することが記載されている。
イ 一般社団法人Nが本件商標権者に宛てた「ご講演 依頼の件」と題する書面(2021年1月13日付け。乙11)には、2021年2月3日に開催される委員会における講演依頼が記載されている。
ウ 「【社内資料】イベント管理表」と題する書面(乙12)には、本件商標権者が関与したと思われる複数のイベントの名称などが記載されている。
2 上記の認定事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)ア 乙1から乙4によれば、本件商標権者は、音声・音響プロダクト、クラウドサービス、音声・音響サービスなどと関連する事業に関与しており、他社と業務連携をして音響診断技術を要する本件使用役務を2021年4月に提供開始し、要証期間に作成した当該役務のカタログや書面に、本件商標と社会通念上同一の本件使用商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標)を表示していたことは確認できる。
イ しかしながら、本件使用役務の内容は、機械設備の稼働音を収録、分析したり、当該結果を踏まえたAI導入を行う高度な専門知識や技術を要するものであることを踏まえると、これらは例えば「機械設備の稼働状況に関する稼働音のデータ集計を伴う調査及び分析」(第42類)、「機械設備において発生する稼働音に関する測定、分析」(第42類)、「AI導入のためのソフトウェアの開発又は提供」(第42類)などのような、主にエンジニアによる科学的及び技術的サービスといえる。
他方、本件商標の指定役務は、上記第1のとおり、事業の経営、運営、広告などと関連する、主に経営コンサルタントや広告代理店などによる企業経営や事業運営などを補助するためのサービスである。
そうすると、本件使用役務は、本件商標の指定役務とは、役務の内容や性質、取引分野などが異なり、当該指定役務の範ちゅうの役務ではない。
ウ 以上のとおり、乙1から乙4によって、本件商標と社会通念上同一の本件使用商標を付した広告が、要証期間(2021年4月頃)において頒布されていたといえるとしても、それは本件商標の指定役務に関する広告とは認められない。
(2)乙4は、本件商標権者が専門性を有する音声・音響技術や「ANIMOCloud」を取引先に説明する資料であるところ、「ANIMOCloud」とは、音響・音声エンジンを使えるサービス基盤を提供するものであり、そこで説明されているサービス内容は、例えば「音響・音声エンジンプログラムの提供」(第42類)などに相当するから、当該資料は主にエンジニアによる専門知識や技術を要する科学的及び技術的サービスの周知を図るものである。
そうすると、当該資料で紹介されているサービスは、本件商標の指定役務である、主に経営コンサルタントや広告代理店などによる企業経営や事業運営などを補助するためのサービスとは、役務の内容や性質、取引分野などが異なり、当該指定役務の範ちゅうの役務ではない。
したがって、乙4は、本件商標がその指定役務についての広告又は取引書類に使用されていたことを裏付けるものではない。
(3)乙6及び乙8は、いずれも「AnimoWaveBase」製品に関する情報を取引先に説明する資料であるところ、それは音響、振動解析による設備の稼働監視、熟練者の聴覚、触覚をデジタル化し、音響や振動診断による検査、点検支援をするサービスであり、そこで説明されているサービス内容は、例えば「機械設備の稼働状況に関する稼働音のデータ集計を伴う調査及び分析」(第42類)などに相当するから、当該資料は主にエンジニアによる専門知識や技術を要する科学的及び技術的サービスの周知を図るものである。
そうすると、当該資料で紹介されているサービスは、本件商標の指定役務である、主に経営コンサルタントや広告代理店などによる企業経営や事業運営などを補助するためのサービスとは、役務の内容や性質、取引分野などが異なり、当該指定役務の範ちゅうの役務ではない。
したがって、乙6及び乙8は、本件商標がその指定役務についての広告又は取引書類に使用されたことを裏付けるものではない。
(4)乙10及び乙11は、本件商標権者の従業員により講演が行われたことを示す証拠ではあるが、その講演内容にかかわらず、例えば「知識の教授」(第41類)、「講演会の実施」(第41類)などに相当する役務が提供されている可能性が読み取れるとしても、当該講演をして本件商標の指定役務に相当する役務(主に経営コンサルタントや広告代理店などによる企業経営や事業運営などを補助するためのサービス)やその広告が提供されたと推し測ることはできない。
そうすると、乙10及び乙11は、本件商標がその指定役務について使用されたことを裏付けるものではない。
(5)乙12は、本件商標権者が関与したと思われるイベントを列挙した一覧表にすぎず、本件商標の指定役務に相当する役務(主に経営コンサルタントや広告代理店などによる企業経営や事業運営などを補助するためのサービス)やその広告が顧客に提供されたことを直接示すものではない。
そうすると、乙12は、本件商標がその指定役務について使用されたことを裏付けるものとしては十分ではない。
(6)以上によれば、被請求人提出の証拠によっては、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件商標をその指定役務について使用したと認めることはできない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、本件使用役務を通じて、顧客は当該サービス導入前より業務を効率化及び経営を合理化することが可能となるから、それは業務の効率化を通じた経営の指導及び助言にあたり、本件商標の指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」に該当する旨を主張する。
しかしながら、被請求人は、本件使用役務が顧客の業務にもたらし得る一般的かつ副次的な波及効果を漠然と主張するにすぎず、具体的な証拠に基づいて、「経営の診断及び指導」を含む本件商標の指定役務を要証期間において顧客に提供又は広告したことを示していない。
そして、本件商標の指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」は、顧客の経営を診断、指導するものであるところ、本件使用役務は、上記2(1)イのとおり、あくまで機械設備の稼働音を収録、分析(診断)する科学的及び技術的サービスであり、両役務は診断対象や取引分野が異なるから、本件使用役務は、本件商標の指定役務の範ちゅうの役務とはいえない。
(2)被請求人は、取引先に対して乙4の資料を用いて、「ANIMO Cloud」を利用することで、どのように業務の省人化及び業務の効率化を図ることができるか、それによって経営をどのように合理化できるのかについて説明を行ったため、これは本件商標の指定役務中「経営の診断及び指導」に該当する旨を主張する。
しかしながら、被請求人は、「ANIMO Cloud」などのサービス導入が顧客の業務にもたらし得る一般的かつ副次的な波及効果を説明したことを漠然と主張するにすぎず、具体的な証拠に基づいて、「経営の診断及び指導」を含む本件商標の指定役務を要証期間において顧客に提供又は広告したことを示していない。
(3)被請求人は、取引先に対して乙6及び乙8の資料を用いて、「AnimoWaveBase」を用いて生産設備の異常予兆の検知、構造物の点検、完成品検査等を行うことで、いかにして製品の生産ロスの防止や検査工程の省人化を図ることができるかについての説明及びその費用改定などについて説明を行ったため、これは商品の生産性向上や業務の効率化を通じた経営の指導の助言であるとともに、企業の管理、運営等を援助し、ひいては商品の販売実績を大きく向上させるための情報を提供する役務であるから、本件商標の指定役務中「経営の診断及び指導」に該当する旨を主張する。
しかしながら、被請求人は、「AnimoWaveBase」などのサービス導入が顧客の業務にもたらし得る一般的かつ副次的な波及効果を説明したことを漠然と主張するにすぎず、具体的な証拠に基づいて、「経営の診断及び指導」を含む本件商標の指定役務を要証期間において顧客に提供又は広告したことを示していない。
(4)被請求人は、乙10及び乙11に示された講演は、業務の効率化を通じた経営の指導及び助言にあたり、本件商標の指定役務中「経営の診断及び指導」に該当する旨を主張する。
しかしながら、本件商標権者による講演は、その講演内容にかかわらず、上記2(4)のとおり、そこで「知識の教授」(第41類)、「講演会の実施」(第41類)などに相当する役務が提供されている可能性を示すとしても、「経営の診断及び指導」を含む本件商標の指定役務が要証期間において顧客に提供又は広告されたことは読み取れない。
(5)以上のとおり、被請求人の主張は、いずれも採用できず、被請求人提出の証拠によっては、上記2のとおり、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件商標をその指定役務について使用したと認めることはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標をその指定役務について使用をしていることを証明したものと認めることができない。
また、被請求人は、本件商標をその指定役務に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件使用商標を含むロゴ)




(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
審理終結日 2024-05-02 
結審通知日 2024-05-10 
審決日 2024-05-21 
出願番号 1995023417 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (035)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 小林 裕子
阿曾 裕樹
登録日 1997-10-09 
登録番号 4067588 
商標の称呼 アニモ 
代理人 中村 仁 
代理人 外川 奈美 
代理人 青木 篤 
代理人 土生 真之 

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