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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W182528
管理番号 1412492 
総通号数 31 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-10-25 
確定日 2024-06-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6728587号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6728587号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6728587号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和5年1月26日に登録出願、第18類「レザークロス,皮革,皮革製包装用容器,ペット用被服類,かばん類,袋物,バックパック,旅行かばん,旅行かばん用タグ,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊靴,運動用特殊衣服(「水上スポーツ用特殊衣服」を除く。),野球靴」及び第28類「ペット用おもちゃ,おもちゃ,人形,運動用具,野球用具,野球用グローブ,運動用バット」を指定商品として、同年7月14日に登録査定、同年8月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の1ないし3の登録商標であり、これらの商標権は、現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第1464996号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第25類「Footwear; sports shoes; boots; clothing; waterproof clothing; hats; hosiery; gloves [clothing]; neckties; mantillas; swimsuits; bathing trunks; strap [clothing]; gymnastic shoes.」
国際商標登録出願日:2019年2月5日
設定登録日:令和2年8月14日
2 国際登録第1465009号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第25類「Footwear; sports shoes; boots; clothing; waterproof clothing; hats; hosiery; gloves [clothing]; neckties; mantillas; swimsuits; bathing trunks; strap [clothing]; gymnastic shoes.」
国際商標登録出願日:2019年2月5日
設定登録日:令和2年8月14日
3 国際登録第1641296号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
指定商品:第25類「Clothing; layettes, clothing; shoes; hats; gloves, clothing; girdles; religious costume; hosiery.」
国際商標登録出願日:2021年12月1日
設定登録日:令和4年12月23日
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」のように記載する。
1 申立人及び申立人の商標について
申立人である中国老舗ファッションメーカー(グループ創業1927年)「シャンハイ・ウォリアー・シューズ・カンパニー・リミテッド(SHANGHAI WARRIOR SHOES CO.,LTD.)は、引用商標の権利者である(甲1〜甲3)。
また、申立人は、引用商標を「運動靴」等において、Amazon、AliExpress、日本販売店等で使用している(甲4〜甲6)。
引用商標に基づくブランドでの、「運動靴」等の販売は、古くから(グループ創業1927年)行われており、引用商標を付した商品は、我が国においても、数多く販売されてきている。このような活動を経て、引用商標は、古くから、我が国や外国の需要者において、広く認識されるに至っている。
さらに、申立人には、引用商標の独占的な所有権を得る権利があり、引用商標と類似した商標の登録は、申立人の所有権を侵害し、公共の利益に反する。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、引用商標の上下を反転させ、上方向に伸びる2本の線をやや本線の中央側に配置し、かつ、本線の両端を先細り形状にしただけのものであり、極めて、引用商標に類似するものといえる。例えば、「運動靴」に本件商標を付した場合、需要者が、商品確認のため、その「運動靴」を上下させると、そこに見える商標は、引用商標と明らかに類似する。
また、仮に、本件商標を上下逆さにして、「運動靴」に付した場合は、そこに見える商標は、引用商標とより明らかに類似する。
したがって、本件商標は、「運動靴」等について我が国や外国の需要者の間に広く認識されている申立人の商標と類似する商標であり、「運動靴」等と同一又は類似する商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用商標の上下を反転させ、上方向に伸びる2本の線をやや本線の中央側に配置し、かつ、本線の両端を先細り形状にしただけのものであり、極めて、引用商標に類似するものといえる。つまり、先行商標である引用商標と類似する商標であって、指定商品の一部は、引用商標の指定商品と、同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり、引用商標は、我が国や海外の需要者に広く認識されている。
本件商標は、引用商標の上下を反転させ、上方向に伸びる2本の線をやや本線の中央側に配置し、かつ、本線の両端を先細り形状にしただけのものであり、極めて、引用商標に類似するものといえる。
また、仮に、本件商標を上下逆さにして、「運動靴」に付した場合は、そこに見える商標は、引用商標とより明らかに類似する。
さらに、本件商標の指定商品は、申立人の商標に係る「運動靴」等とは、流通経路や需要者が共通することが容易に分かる。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用する時は、これが他人である申立人の業務に係る商品であるかのごとく出所の混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、引用商標は、我が国や海外の需要者に広く認識されている。
本件商標は、引用商標の上下を反転させ、上方向に伸びる2本の線をやや本線の中央側に配置し、かつ、本線の両端を先細り形状にしただけのものであり、極めて、引用商標に類似するものといえる。
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人の商標が、我が国や海外において周知となっているのにもかかわらず、本件商標の出願をし、登録を得たものであり、申立人のブランドの名声に便乗して不正な利益を得ていると考えられる。
このような本件商標権者の行為は、我が国又は外国において需要者に広く認識されている他人の商標と同一又は類似する商標を不正の目的をもって使用するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 商標法第4条第1項第7号について
上記のとおり、本件商標の出願の経緯には、社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)申立人は、1927年に創業した中国老舗ファッションメーカーである(申立人の主張)。
(2)「Amazon」のウェブサイトにおいて、ブランドとして「ウォリアー」の記載とともに、引用商標と類似の商標を付した運動靴の写真が掲載されており、「製品詳細 初回公開日」として、「24 Apr 2021」の記載がある(甲4)。
また、「AliExpress」のウェブサイトにおいて、引用商標と類似の商標を付した運動靴の写真が掲載されているが、掲載日は確認できない(甲5)。
さらに、「寿百貨」のウェブサイトにおいて、「1927年に中国・上海で創業した百年老店「回力(フイリー)」のキャンパススニーカーです。・・・日本国内に代理店がなく、ほぼ流通することのない回力のスニーカーですが・・・」の記載とともに、引用商標と類似の商標を付したスニーカーの写真が掲載されているが、掲載日は確認できない(甲6)。
(3)上記よりすれば、複数の販売サイトや百貨店において、申立人に係る引用商標と類似の商標を付した「運動靴(スニーカー)」が販売されていたことはうかがえるが、本件商標の登録出願前に存在していたと推認できる証拠は、わずか1件のみである。
そして、申立人が提出した甲第6号証には、「・・・日本国内に代理店がなく、ほぼ流通することのない回力のスニーカーですが・・・」の記載があり、これよりすれば、申立人に係る商品(スニーカー)は、我が国においてほぼ流通していないことがうかがえるとともに、引用商標を使用した商品の販売実績、市場シェア、広告宣伝の方法、規模など引用商標の周知性を判断するための具体的な証拠も確認できない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間にどの程度認識されていたか明らかではない。
したがって、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、記号の「π」様に、右斜め方向に両端を先細り形状にした波線(以下「波線部分」という。)の中央部分から2本の直線を斜め下方向に配した構成の図形よりなるものである。
また、本件商標は、特定の事物を表するものとして知られているものではないから、本件商標からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は、別掲2のとおり、「F」の欧文字様の図形を横向きにし、右斜め方向に両端を直線状にした線(以下「直線部分」という。)の左端部分から2本の線を上方向に垂直に配した構成の図形よりなるものであり、また、引用商標2及び引用商標3は、別掲3及び別掲4のとおり、引用商標1と同一の構成の図形を含む構成よりなるものである。
さらに、引用商標1、引用商標2及び引用商標3の図形部分は、特定の事物を表するものとして知られているものではないから、引用商標からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、両者は、その構成中に2本の線を有する点において共通するとしても、本件商標が記号の「π」様に表され、右斜め方向に両端を先細り形状にした波線の中央部分から2本の線を斜め下方向に配した構成の図形よりなるのに対し、引用商標は、いずれも「F」の欧文字様の図形を横向きにし、右斜め方向に両端を直線状にした線の左側部分から2本の線を上方向に垂直に配した構成の図形よりなるかその構成の図形を含むものであるところ、両者は、「π」と「F」の態様における違い、波線部分と直線部分及び2本の線の向きなどの差異により異なる印象を与えるものであるから、たとえ、引用商標の上下を反転させた場合であっても、外観上、明確に区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないから、称呼及び観念において比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において明確に区別し得るものであるから非類似の商標である。
したがって、本件商標と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、また、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、いずれも、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いというべきである。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似性の程度が低いものであることからすれば、本件商標と引用商標とは、その商品及び需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標は、本件商標権者がその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、申立人の業務に係る商品を連想又は想起し、同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、上記4のとおり、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する需要者が申立人の業務に係る商品を連想又は想起し、同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
また、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような図形からなるものではない。
また、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、そのような本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものであって、かつ、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれもないものである。
その他、本件商標の登録出願の目的や経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、その指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1)



別掲3(引用商標2)



別掲4(引用商標3)




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異議決定日 2024-06-03 
出願番号 2023007290 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W182528)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 小田 昌子
馬場 秀敏
登録日 2023-08-22 
登録番号 6728587 
権利者 レオニアン シンガポール プライベート リミテッド
代理人 川崎 仁 
代理人 三嶋 景治 
代理人 中里 浩一 
代理人 中里 卓夫 
代理人 藤井 健一 

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