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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W16
管理番号 1412460 
総通号数 31 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2023-02-08 
確定日 2024-06-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第6558400号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6558400号の指定商品中、第16類「文房具類,ブックカバー,ノートブック,ペンケース,筆入れ,筆立て」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6558400号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、令和3年6月18日に登録出願、第16類「文房具類,ブックカバー,ノートブック,ペンケース,筆入れ,筆立て,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,紙類,印刷物」を指定商品として、同4年4月19日に登録査定、同年5月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、以下の1及び2のとおりである。
1 登録第2614661号商標(以下「引用商標1」という。)は、「MONO」の欧文字を横書きしてなり、平成2年12月21日に登録出願、第25類に属する登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として同6年1月31日に設定登録され、その後、同16年2月12日付けで指定商品の書換登録がされた後、同26年1月14日付けで第16類「紙類,文房具類」を指定商品として、存続期間の更新登録がなされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
2 登録第4753644号商標(以下「引用商標2」という。)は、「MONO」の文字を標準文字で表してなり、平成15年7月30日に登録出願、「文房具類」を含む第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同16年3月5日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていう場合は「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、審判請求書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」のように、簡略して表記する場合があり、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号を省略して記載する。
1 無効理由
本件商標は、その指定商品中、第16類「文房具類,ブックカバー,ノートブック,ペンケース,筆入れ,筆立て」(以下「請求に係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第15号に該当するから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
2 具体的理由
(1)利害関係人であること
請求人は引用商標を付した最高級鉛筆(以下「請求人鉛筆」という。)その他の鉛筆、消しゴム、修正テープ、シャープペンシル、シャープ芯、ボールペン、マーキングペン等の文房具類(以下「請求人商品」という。)を永年にわたり製造、販売しており、また、「MONO」を構成要素とする登録商標を多数所有している。
したがって、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有している。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は、「mono−bo」の文字及び記号を普通に用いられる範ちゅうの方法で横書きしたもので、その構成は、欧文字の「mono」と「bo」とを記号「−(ハイフン)」を介して結合したものである(甲1)。
本件商標「mono−bo」の図案化の程度は小さく、特殊な態様ではなく、欧文字であると容易に認識することが可能である。
本件商標を構成する各語のうち「mono」の語こそ請求人商品のブランド名、又は、「単独の、単一の、一の」という意味を有するわが国では馴染みのある英語であるとしても、「bo」の語は独立の意味を有するものではなく、欧文字2字が商品の規格、型式又は種別等を表示する記号又は符号として取引上普通に使用されていることは顕著な事実であり、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
また、「−(ハイフン)」は「英文などで、合成度の浅い複合語の連結(中略)に使う」(甲4)ものであることから、これ自体に自他商品識別機能を有するものでないことは明らかである。
現に、請求人は、遅くとも1974年にはMONOブランドの鉛筆に「MONO+欧文字2字」(ブランド名+型式・種別)の構成からなる「MONOJA」の名称を採択した。
例示として挙げると、これまでに「MONO+欧文字2字」(ブランド名+型式・種別)の構成からなる商品名を多数使用しており、MONOと欧文字2字の間にハイフンを付けて表示している場合も多々ある(甲5)。
さらに、本件商標は、例えば、モノレール(monorail)、モノローグ(monologue)等のように一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれているものとも認められず、全体として一体の観念を生じるものではない。
本件商標は、「−(ハイフン)」を介して、視覚上明確に分離して観察できるため、「mono−bo」の欧文字が常に一体かつ一連のものとして、一般の取引者、需要者に認められるとは思われず、これがたとえ同じ大きさ、同じ書体の文字を一連に書してなるとしても、これを常に一体不可分のものとしてのみ理解しなければならない理由は見当たらない。
してみると、本件商標に接する一般の取引者や需要者が、これを構成する語、特に商標を識別する上で最も重要な語頭に位置し、請求人商品のブランド名として馴染みのある「mono」を、極めて馴染みがない「bo」と分離して把握し、認識する。
よって、本件商標は、構成全体として「mono−bo」の文字に相応する称呼が生じることは否定しないまでも、「mono」の文字部分に相応する称呼も生じ得る。
そして過去の審・判決例も請求人の上記主張を支持している(甲6)。
知財高裁平成28年(行ケ)第10270号(甲6の2)の判決は、まさしく本件に当てはまる。
すなわち、本件商標「mono−bo」は、「mono」部分と「bo」部分に記号「−」(ハイフン)を介して視覚上明確に分離して観察され、「bo」部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められ、構成部分の一部である「mono」の欧文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
なお、商標審査基準においても、「他人の著名商標と他の文字又は図形と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱う」とされており、本件がこの判断基準に該当するものであることは明らかである(甲7)。
他方、引用商標は、甲第2号証及び同第3号証に示すとおり「MONO」の文字からなるものであるから、この文字に応じて「モノ」の称呼を生じ、請求人の著名なブランド名の「MONO」の観念が生じるものである。
なお、インターネットの「コトバンク」(デジタル大辞泉プラス)には、「MONO」の項において「株式会社トンボ鉛筆の鉛筆、消しゴムなど筆記具、文具のブランド名」と掲載されている(甲8)。
さらに、本件商標の要部と認められる「mono」の文字部分と引用商標の「MONO」は、小文字と大文字の相違があるが、つづり字が完全に同一である上に、本件商標の書体自体が視覚上看者に強い印象を与えるほどに特徴があるものでもないので、両商標は、外観上、一定程度の類似性を有するものといえる。
永年にわたって販売され続けている商品であればあるほど、社会環境、取引慣行あるいは時代の変化等に応じて、商品に付す商標を多少変更(リニューアル)するのは通常であり、現時点の引用商標「MONO」の使用態様と多少書体やデザインの差異をつけたところで、混同が生じるおそれを排除することはできない。
ブランドの育成・保護に力を入れている企業ほど、ブランドイメージ(化体した信用)の希釈化防止等の観点から、ブランドガイドラインやロゴ使用規定等を定めて統一した商標態様で使用するよう厳格に管理しているところ、その統一された使用態様と書体等が異なることをもって混同が生じないとか類似しないと判断することは、ブランド保護のために厳格な商標管理をするほど商標の保護範囲や権利範囲が狭く解釈されることになり、商標法の趣旨に反する結果になる。
引用商標「MONO」は、請求人商品のブランド名として昭和38年から現在に至るまで継続して使用しており、我が国の文房具を取り扱う分野において周知著名となっている。
そうすると、請求に係る商品である文房具類の取引者、需要者に対しては、本件商標の構成中、「MONO」に通じる「mono」部分は特に強く支配的な印象を与え、請求人商品のブランド名を想起し得るものであって、引用商標と観念上の共通性があるといえる。
また、請求に係る商品は、一般消費者が日常的に購入する比較的安価なものなので、その購入時に需要者が払う注意力は決して高いとはいえず、需要者が本件商標と引用商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合、称呼上同一で、外観上類似する両商標を混同するおそれは極めて高いといえる。
(3)引用商標の周知著名性
請求人は、大正2年2月に創立された創業110年の文房具、事務用品メーカーである(甲9)。
請求人は、昭和38年に引用商標「MONO」を付した請求人鉛筆の販売を開始したが(甲9)、「MONO」という名前は、「唯一の」「無類の」「比類なき」を意味するギリシャ語「モノス」に由来する旨、請求人の会社創業者の妻の初代会長が著している(甲10)。
請求人鉛筆は、強度、書き味、濃さすべてにおいて、すぐれた特性を備えた鉛筆を目指して生み出された、当時から現在に至るまで請求人の代表的商品であり、昭和38年から現在に至るまで60年近く、引用商標を継続して使用している結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時の両時点において、引用商標は請求人商品を表わすものとして、周知著名となっていた事実がある。
商標審査便覧に、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」(以下「日本有名商標集」という。)に掲載されている商標について、「わが国における周知度、指定商品及び指定役務との関係等を考慮して取り扱うものとする。」という記載があり(甲11)、2004年発行の日本有名商標集には引用商標が掲載されている(甲12)。
これは、引用商標が2004年時点で既に著名であったことを示すものであり、引用商標を積極的に継続して使用していることからその著名性は現在も維持されている。
ア 引用商標の使用状況について
請求人は、現在、札幌店、東京店、中部店、大阪店、福岡店の支店があり、その支店と、主に量販店を担当する量販CS部とを通じて日本全国に請求人商品を販売している(甲9)。
請求人は、「MONO」ブランドのもと、請求人鉛筆、修正テープ、鉛筆、消しゴム、シャープペンシル、シャープ芯、ボールペン、マーキングペンなどの請求人商品を展開している。
イ カタログ、リーフレットについて
永年にわたり請求人商品に引用商標を使用している事実を示す証拠として、カタログ及びリーフレットを提出する(甲5の1、甲5の2、甲5の4〜甲5の7、甲5の10〜甲5の17、甲13)。
このような実情を考慮すると、需要者、取引者が、本件商標に接した際に、本件商標を付した商品が、請求人が展開する商品であるかのごとく、その出所につき誤認混同するおそれが極めて高い。
ウ 展示会、イベント等での使用について
請求人は、展示会やイベント等で引用商標を積極的に使用しており、また、展示会やイベント等の模様が各種雑誌に取り上げられることによって引用商標の著名性を更に高めている(甲13の67、甲14〜甲16)。
エ 商品の販売数量、販売額、シェア
請求人は、ほぼ60年にわたり、継続して請求人商品を日本全国で積極的に販売している。
「文具・事務用品マーケティング総覧」は、業界で権威ある資料であり、2019年版には、2018年の国内市場の現状を示しているが、鉛筆が31.6%の2位、修正用品(修正テープ、修正ペン、修正液)が41.9%の1位、消しゴムが32.5%の1位と請求人商品は特に高いシェアを誇っている(甲17)。
請求人は、2006年ごろまでは修正ペン及び修正液を販売していたが、現在は販売しておらず、修正テープのみを取り扱っているが、そのほぼ全量に引用商標が付されている。修正ペン及び修正液を除いた、修正テープ市場のみにおける2018年のシェアについては、請求人の推計では、請求人の「MONO」シリーズが56%と圧倒的なシェアを占めている。
また、消しゴムは、「事務・学習用消しゴム」及び「ファンシー用消しゴム」のカテゴリーに大別され、上記シェアは両方のカテゴリーを含んでいる。
請求人の主力商品である「MONO消しゴム」は事務・学習用消しゴムに分類されるが、そのほぼ全量に引用商標が付されている。
ファンシー用消しゴムを除いた、2018年の事務・学習用消しゴム市場のみにおいては、請求人の推計によると、「MONO」シリーズは、49%のシェアを占めている。
オ 請求人以外による紹介記事
請求人以外による請求人商品の紹介記事が全国一般紙等で露出されることによって、請求人商品の需要者のみならず、世間一般の需要者に対して著名性を獲得することになる(甲18の1〜甲18の3)。
各紙における客観的な記事の中においても、わが国における引用商標に係る「MONO」ブランドの知名度の高さや請求人商品のシェアの高さがうかがえる(甲18の4〜14)。
さらに、業界誌や文具に特化した雑誌等をはじめとした様々なジャンルの雑誌等に請求人商品が紹介されている(甲18の15〜甲18の19)。
カ 引用商標をモチーフにしたコラボ商品、ライセンス商品
引用商標をモチーフにしたコラボ商品、ライセンス商品が他社によって商品化されている(甲18の4、甲18の7、甲19)。
こうしたコラボ商品、ライセンス商品は、認知度が高く、多くの需要者に親しまれている有名ブランドの商標をモチーフとするのが一般的である。
こうした事実からも、請求人商品の取引者、需要者にとどまらず、広く国民一般に親しまれている著名性の高さがうかがえる。
キ 受賞歴
「MONO」ブランドの消しゴムは、1974年頃からシェアを拡大し、現在では我が国を代表する消しゴムとして認知されるに至っているが、2011年に引用商標を付した消しゴムについて、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した事実がある。
(ア)ロングライフデザイン賞の受賞の事実は、永年使用された結果、引用商標が一般世人の間で広く認識されるに至っていることを客観的に示すものである。
その受賞の概要において、「基本性能である消字性能に優れ、シンプルな青・白・黒の三色ストライプのデザイン。消しゴムと言えば「MONO」というイメージを創りあげた。今ではMONOブランドは信頼と信用の証として老若男女に愛されており、発売から42年間が経ち、日本を代表する消しゴムとして海外でも広く愛用されている。」と評されており、引用商標の著名性の高さを示す証左となる。
(イ)上記のほかに、請求人商品は、多数のデザイン賞を受賞している(甲20の2)。
請求人が2016年6月に公開した修正テープ「MONO AIR」の商品サイトは、優れたウェブサイトを評価し表彰する国際的なウェブデザインアワードである「Awwwards」Honorable Mention、「CSS Winner」 Site of the day及び「CSS DESIGN AWAEDS」 Website Of The Dayの3賞を受賞した(甲15の2、甲20の3)。
(ウ)平成30年度知財功労賞経済産業大臣表彰
請求人は、平成30年度知財功労賞経済産業大臣表彰を受賞し、特許庁発行の特許行政年次報告書2018年版等に知財活用企業(商標)として紹介され、請求人を代表する商品として引用商標を付した請求人商品の写真が掲載されている(甲20の4、甲20の5)。
(4)引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
引用商標「MONO」はギリシャ語「モノス」に由来しており、英語の「mono」に通じるとしても、我が国の文房具を取り扱う分野では直ちに請求人のブランドを連想させる。
万一、他人がこれを請求に係る商品に使用した場合、偶然の一致と考えることは不自然であり、需要者、取引者が出所の混同を生じるおそれは否定できない。
(5)引用商標はハウスマークであるか
引用商標「MONO」は請求人の主要ブランドの名称であり、昭和38年の使用開始から現在まで、請求人鉛筆、消しゴム、シャープペンシル、シャープ芯、ボールペン、マーキングペン、修正テープ等の請求人商品に継続して使用している著名商標であり、ハウスマークに準じる強い顧客吸引力を持つ商標である。
(6)企業における多角経営の可能性
請求に係る商品、すなわち、第16類「文房具類、ブックカバー,ノートブック,ペンケース,筆入れ,筆立て」と請求人商品とは、同一又は類似の商品であるから、多角経営の可能性について検討する必要性は乏しい。
(7)商品間等の関連性、商品等の需要者の共通性その他取引の実情
引用商標は、永年にわたって一貫して請求人商品に使用されている。請求人商品と請求に係る商品とは、商品の生産、販売部門、用途、流通経路、販売場所等が一致することは明白であり、これら商品間の関連性が極めて高いことはいうまでもなく、当然にその取引者、需要者も完全に一致する。
引用商標と近似する本件商標が、本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)により、請求に係る商品に付されて使用された場合には、需要者、取引者をして、請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関連を有する者の提供に係る商品であると認識し、出所について誤認混同を起こすことは明らかである。
なお、請求人の調査によると、商標権者は石川県に本社を有する合繊メーカーであり、2021年6月にオープンしたリアル店舗のファクトリーショップの名称に「mono−bo」を使用している。
商標権者のニュースリリースには、普通書体で「mono−bo」が表示されており、「繊維の魅力を皆様に体感いただけるファクトリーショップとしてオープン」した旨、紹介されている(甲21)。
そうすると、本件商標は請求に係る商品への使用実績はないか、あるとしても乏しいと推測される。
よって、請求に係る商品との関係において、本件商標に接する取引者、需要者が、商標権者を連想、想起することはあり得ない。
3 結語
以上のとおり、引用商標は、請求人商品について周知著名となっている事実があるから、商標権者が本件商標を請求に係る商品に使用すると、引用商標との間に混同を生じるおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し、なんら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、請求人は、大正2年2月に創立された創業110年の文房具、事務用品メーカーであり、昭和38年に引用商標「MONO」を付した請求人鉛筆の販売を開始したこと(甲9)、請求人は、永年に亘り、カタログ及びリーフレットによって、請求人商品に引用商標を使用していること(甲5の1、甲5の2、甲5の4〜甲5の7、甲5の10〜甲5の17、甲13)、展示会やイベント等で引用商標を積極的に使用しており、また、展示会やイベント等の模様が各種雑誌に取り上げられていること(甲13の67、甲14〜甲16)、請求人鉛筆が31.6%の2位、修正用品(修正テープ、修正ペン、修正液)が41.9%の1位、消しゴムが32.5%の1位と請求人商品は特に高いシェアを誇っていること(甲17)、全国一般紙や業界誌や文具に特化した雑誌等により請求人商品が紹介されていること(甲18)等が確認できる。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標の類似性とその程度について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、ややデザイン化された「mono」の欧文字と「bo」の欧文字とを記号「−」(ハイフン)を介して結合してなるものであるところ、本件商標を構成する「mono」の欧文字、「−」の記号及び「bo」の欧文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く、むしろ、本件商標の構成前半の「mono」の欧文字と後半の「bo」の各欧文字は、記号「−」(ハイフン)を介して視覚上明確に分離して観察される。
そして、「mono」の欧文字は、「MONO」の欧文字を小文字で表記したものと容易に認識できるところ、上記(1)のとおり、「MONO」は、請求人鉛筆等の請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当であるから、これを小文字で表記した「mono」の欧文字は、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
他方、「bo」は、欧文字2字で構成されるものであり、出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる。
そうすると、本件商標は、その構成中「mono」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるということができる。
したがって、本件商標は、その要部である「mono」の欧文字より、「モノ」の称呼が生じ、当該文字は、「モノラルの」の意味を有する英語(出典:研究社 新英和中辞典)であり、かつ、請求人商品のブランド名を表示するものであるから、「モノラルの」及び「請求人商品のブランド名」の観念が生じるものである。
イ 引用商標について
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「MONO」の欧文字を横書きしてなり、引用商標2は、上記第2の2のとおり、「MONO」の文字を標準文字で表してなるものである。
したがって、引用商標は、「モノ」の称呼が生じ、「モノラルの」及び「請求人商品のブランド名」の観念が生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類似性とその程度について
本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、両商標は、構成全体としては、「−」及び「bo」の欧文字の有無において明らかに相違するとしても、本件商標の要部である「mono」の欧文字と引用商標は、大文字と小文字の違いはあるものの、その構成文字を共通にすることから、これらは、外観上、近似した印象を与えるものである。
そして、これらは、「モノ」の称呼と「モノラルの」及び「請求人商品のブランド名」の観念が共通するものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観において近似した印象を与え、「モノ」の称呼と「モノラルの」及び「請求人商品のブランド名」の観念を共通にする互いに相紛れるおそれのある類似する商標であるといえ、類似性の程度は高いといえる。
(3)請求に係る商品と請求人商品との関係性並びに取引者及び需要者の共通性について
請求に係る商品は、「文房具類」を含む商品であり、請求人商品は、鉛筆等の文房具類に該当する商品であるから、これらの商品の関連性の程度は非常に高く、取引者及び需要者を共通にする商品である。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、外観において近似した印象を与え、「モノ」の称呼と「モノラルの」及び「請求人商品のブランド名」の観念を共通にする互いに相紛れるおそれのあり、類似性の程度は高いものであり、上記(3)のとおり、請求に係る商品は、請求人商品と商品の関連性の程度は非常に高く、取引者及び需要者を共通にする商品である。
そうすると、商標権者が、本件商標を請求に係る商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を想起又は連想するというべきであり、本件商標が使用された請求に係る商品が、請求人である株式会社トンボ鉛筆又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について、混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、結論掲記の指定商品についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(本件商標)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
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審理終結日 2024-02-28 
結審通知日 2024-03-04 
審決日 2024-04-30 
出願番号 2021075977 
審決分類 T 1 12・ 271- Z (W16)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 板谷 玲子
特許庁審判官 岩谷 禎枝
馬場 秀敏
登録日 2022-05-19 
登録番号 6558400 
商標の称呼 モノボ、モノ、モノーボ 
代理人 弁理士法人清水・醍醐事務所 
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所 

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