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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1411577 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-07-25 |
確定日 | 2024-05-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6715077号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6715077号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6715077号商標(以下「本件商標」という。)は、「Orbic Journey Pro」の文字を標準文字により表してなり、令和5年1月24日に登録出願、第9類「スマートフォン及び携帯電話機」を指定商品として、同年6月2日に登録査定、同年7月6日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は、以下の1ないし6であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。 1 登録第2267160号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり、「オービック」の片仮名及び「OBiC」の欧文字を2段に横書きした構成からなり、昭和62年9月3日に商標登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年9月21日に設定登録され、その後、同22年12月1日に指定商品を第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 登録第2267161号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり、「OBiC」の欧文字を横書きした構成からなり、昭和62年9月3日に商標登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年9月21日に設定登録され、その後、同22年12月1日に指定商品を第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされたものである。 3 登録第3254140号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成6年4月8日に商標登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具・回転変流機・調相機,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具およびその部品,電気アイロン・電気掃除機,磁心・抵抗線・電極」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録されたものである。 4 登録第4585946号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成13年2月22日に商標登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同14年7月19日に設定登録されたものである。 5 登録第5252765号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成19年6月29日に商標登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同21年7月31日に設定登録されたものである。 6 登録第5252768号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲6のとおり、「OBIC」の欧文字を横書きした構成からなり、平成19年6月29日に商標登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同21年7月31日に設定登録されたものである。 なお、引用商標1ないし引用商標6を、まとめていうときは、以下「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであり、本件商標は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号の表記について「甲第○号証−1」を「甲○の1」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。 1 本件商標の構成について (1)本件商標は、「Orbic」の文字と「Journey」の文字、及び「Journey」の文字と「Pro」の文字との間には、それぞれ1文字分の空白がある。 (2)「Orbic」の文字は、特段の意味を有さない造語である(甲2の1)。 (3)「Journey」の文字は、「(特に陸上の長い)旅行、旅」を意味する英語であり(甲2の2)、「Pro」の文字は、「プロ、職業選手」を意味する英語である(甲2の3)。 これらは、本件商標の指定商品「スマートフォン及び携帯電話機」との関係から、「スマートフォン又は携帯情報端末であって旅のプロに適したもの」程度の意味合いが暗示されるとしても、本件商標全体として、まとまった意味合いが認識される熟語等ではない。 2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について (1)引用商標への認識について 引用商標1及び3ないし5を構成する「オービック」の文字、引用商標1、2及び6を構成する「OBiC(OBIC)」の文字も造語であるが、「コトバンク(日本の企業がわかる事典2014−2015)」によれば、「オービック」は、「正式社名「株式会社オービック」。英文社名「OBIC Co., Ltd.」。情報・通信業」と認識されている(甲2の4)。 (2)本件商標の称呼について 本件商標全体「Orbic Journey Pro」からは、「オービックジャーニープロ」の称呼が生ずるが、「Orbic」の文字部分からは「オービック」の称呼が生ずる。 「OR」の次に子音が来る英単語については、通常「オル**」ではなく「オー**」と日本語表記がされ、「オー」と称呼される。辞書を参照するに、「O」、「R」及び「子音」の順の英単語のうち、一般にも親しみのある中学学習語又は高校学習語の10語は、「オル」ではなく「オー」と発音されるといえ、これらの単語についてウェブ検索をしたところ、日本語のウェブサイトでは、「オー**」という表記が圧倒的に多い(甲3)。 この結果からも、造語である「ORBIC」についても、指定商品の需要者は、頭の中では称呼である「オービック」によって記憶し、「OBIC」を想起するものといえる。 上記のとおり、「OR」について、「オー」と読まれる場合が、「オル」と読まれる場合よりも圧倒的に多いことから、本件商標の商標権者が「オルビック」と併記したとしても、必ず「オルビック」の称呼が生じ、「オービック」の称呼が生じないといえるものではない。 (3)引用商標の著名性について 「OBIC」及び「オービック」の文字からなる引用商標は、商品「コンピューターソフトウェア」等について、本件商標の登録出願時及び登録査定時において著名である。 ア 申立人の沿革、業態、売上げ等(甲4) 1968年4月、大阪にて「(株)大阪ビジネス」として設立、1997年4月、統合業務ソフトウェア「OBIC7 シリーズ」を開発、2018年12月、「OBIC7 シリーズ」累計導入社数2万社突破、17年連続No.1を獲得(2002〜2017年ERP主要ベンダー(ライセンス売上高シェアトップ10)における累計導入社数(株)矢野経済研究所調べ2017年12月現在)。 2023年3月末現在、売上高、連結約1,001億円、単体約933億円等。 イ 昭和51年(1976年)より、三菱電機の代理店としてコンピューターショーを行い、その後独立系ディーラーとして発展してきたことが、当時の日経産業新聞等にも掲載されている(甲5)。 ウ 申立人による引用商標に関する宣伝等 (ア)テレビコマーシャル 2009年10月1日から2023年5月26日まで、「オービック」のロゴを表示し、著名なプロゴルファーが出演するテレビコマーシャルを継続的に行ってきた(甲6)。 (イ)オービックシーガルズ 2003年からアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」として、全国リーグでの活動を続けていて、2021年「ライスボウル」で7年ぶりの日本一、2023年には4年ぶりのパールボウルで4連覇、9度目の優勝を果たしている。 多数の観客が来場する駅や、スタジアム看板、ユニフォーム等に「オービック」や「OBiC7」が使用されている(甲7)。 (ウ)球場等の広告看板 東京ドーム、甲子園球場、横浜スタジアムのフェンス等に「オービック」の看板が掲げられている(甲8)。 (エ)新聞・雑誌広告 読売・朝日・毎日・日経等の新聞、日経ビジネス等の雑誌に、「オービック」や「OBIC」の広告を継続的に行っている(甲9)。 (オ)駅広告・自動車教習所関係広告 京橋駅(東京都)等で「オービック」の広告を行い(甲10)、雑誌「自動車学校」でも広告を行っている(甲11)。 (カ)御堂筋ビル 大阪市のオービック御堂筋ビルは、イベント等を開催し、地域ではよく知られた存在である(甲12)。 エ 紹介記事等 本件商標の登録出願日から登録査定日までについて、引用商標に関して、「コンピューターソフトウェア」等について、業界紙・一般紙でも「オービック」及び「OBIC」の文字を表示した商品が数多く露出し、それらの商品は好評を博し、ウェブ等の各種ランキングで上位を占める等、幅広い取引者・需要者に知られている(甲13)。 よって、本件商標の登録出願時から登録査定時に至るまで、「オービック」及び「OBIC」は信用が蓄積されたブランドとして認められており、その商品に表示されている「オービック」及び「OBIC」の文字からなる商標は、著名商標であるということができる。 オ ブランドランキング・ブランドシェア等 矢野経済研究所によれば、OBIC7は、年商500億円の中堅・中小企業向けERP(経営資源管理)パッケージのライセンスについて、2017年ないし2019年の売上高が、それぞれ13,929百万円、14,196百万円、15,456百万円、シェアが22.4%、21.8%、22.5%とトップである(2019年は見込み)(甲14の1)。 ミック経済研究所によれば、中堅企業向けERPパッケージの出荷金額・シェアについて、「オービック」の2017年ないし2020年の売上高が、それぞれ38,440百万円、42,600百万円、46,200(見込み)百万円、49,000(推定)百万円で、2017ないし2019年のシェアが24.8%、24.9%、25.1%とトップである(2019年は見込み)(甲14の2)。 カ 防護標章登録 「オービック」の片仮名からなる商標登録第3017459号について最初の防護標章登録が令和2年に認められ、特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標検索」にも、この登録防護標章について掲載されている(甲15)。 キ 不正競争事件に係る裁判所の認定 不正競争防止法に係る民事訴訟で、東京地方裁判所は、「オービック」及び「OBiC」の文字からなる標章を著名なものと認め、類似し、混同のおそれがあるものを使用する被告の行為を不正競争行為とし(平成19年5月31日判決。平成18(ワ)17357)、知的財産高等裁判所も同様に判断して控訴を棄却している(平成19年11月28日判決。平成19(ネ)10055。甲16)。 (4)本件商標の分離観察について 著名商標である「オービック」と同一の称呼を生じる「Orbic」を一部に含む本件商標については、本件商標の構成中「Orbic」部分が著名商標「オービック」及び「OBIC」を想起せしむるため、構成中「Journey Pro」部分に比べて極めて強い印象を与えるから、分離観察が許される。 本件商標がその指定商品に使用された場合には、その構成中「Orbic」の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、構成中の「Journey Pro」の部分は、指定商品と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字であって、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情も認められないから、出所の識別標識としての称呼、観念は生じないか極めて弱いものである。 つまり、本件商標については、造語ゆえに、構成中の「Orbic」が著名商標「オービック」及び「OBIC」を想起させ、構成中の「Journey Pro」の識別力がないか極めて弱いことと併せて分離観察することが許されるのである。 (5)本件商標と引用商標との類否 上記(4)のとおり、本件商標については、「Orbic」と「Journey Pro」とに分離観察することが許される。 ア 外観について、「OBIC」の欧文字と「Orbic」の欧文字とは類似し、「オービック」の片仮名と「Orbic」の欧文字とは外観が異なるが、本件商標、引用商標とも記憶に残るような特徴のある外観を有するものではない。 イ 称呼については「オービック」の称呼を共通にする。 ウ 観念について、「OBIC」、「オービック」及び「Orbic」は、いずれも造語であって特段の観念を有さない。 エ 以上により、本件商標と引用商標の要部とは、観念については比較することができず、外観において一部近似し、称呼において紛らわしいものである。 そして、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標は、著名であるが、印象的な外観を有するものとまではいえないから、需要者に与える印象や記憶については称呼によるものが大きい。 そうすると、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標と、標準文字からなる本件商標とは、少なくとも外観の相違が称呼の類似性を凌駕するものとはいえない。 よって、本件商標は、引用商標の商品又は役務に類似する商品「スマートフォン及び携帯電話機」に使用した場合、商品の出所につき混同を生じるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 (6)商品等の類否 本件商標の指定商品「スマートフォン及び携帯電話機」と引用商標の指定商品及び指定役務とは同一又は類似するものである。 (7)商標法第4条第1項第11号に関するまとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を取り消すべきものである。 3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の著名性について 上記2(3)のとおり、商標「オービック」及び「OBIC」は、「コンピューターソフトウェア」等について著名なハウスマークである。 (2)本件商標と引用商標との類似性について 上記2(5)のとおり、本件商標と引用商標とは、「オービック」の称呼を生ずる点が共通し、少なくとも類似性がないとまではいえない。 (3)商品等の類似性について 上記2(6)のとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品等と類似する。 また、本件商標の指定商品である「スマートフォン」を取り扱う企業において、コンピューターソフトウェアを取り扱う企業(グループ会社を含む)が少なからず存在する。 (4)申立人の国内グループ会社 申立人の国内グループ会社として、商号の一部に「オービック」を含むものが存在する(甲4)。 よって、本件商標を需要者が目にした場合には、それが「株式会社オービック」並びにその著名な「オービック」及び「OBIC」の文字からなるブランドに関連するものであると認識する。 (5)商標法第4条第1項第15号に関するまとめ 本件商標は、「コンピューターソフトウェア」等につき著名な商標「オービック」及び「OBIC」と、称呼において共通する「Orbic」の文字並びに相対的に識別力の弱い「Journey Pro」の文字からなる。 よって、本件商標を商標権者が使用すれば、申立人と少なくともいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある。 以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、その登録を取り消すべきものである。 4 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について 上記2(3)のとおり、「オービック」及び「OBIC」は著名商標であり、申立人の社名「株式会社オービック」及び英文社名「OBIC Co., Ltd.」(甲4の2)の著名な略称に該当する。 本件商標は、申立人の名称の著名な略称「オービック」及び「OBIC」に酷似するものを含む商標であるが、商標権者は、商標登録を受けることにつき申立人の承諾を得ていない。 よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反するものであるから、その登録を取り消すべきである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「Orbic Journey Pro」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成各文字は、「Orbic」、「Journey」及び「Pro」の間に1文字分のスペースを有しているとしても、同じ書体で、等間隔にまとまりよく表されているもので、視覚上一体的に看取されるものであり、いずれかの文字部分が看者の注意を引くような構成とはいえない。 また、その構成文字全体からは「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるといい得るもので、当該称呼は、やや冗長ではあるものの、無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、「Orbic Journey Pro」の文字は、全体で特定の意味合いを有する語として、一般的な辞書等に載録されておらず、かつ、特定の意味合いをもって親しまれているような事情も見いだせない。 そうすると、本件商標は、その構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標1ないし引用商標6は、別掲1ないし別掲6のとおり、「オービック」の片仮名及び「OBiC」の欧文字を2段に横書きした構成からなるか、「オービック」の片仮名、「OBiC」又は「OBIC」の欧文字を横書きした構成からところ、それぞれの構成文字に相応して、「オービック」の称呼を生じるものである。 そして、当該文字は、特定の意味合いを有する語として、一般的な辞書等に載録されておらず、かつ、特定の意味合いをもって親しまれているような事情も見いだせない。 そうすると、引用商標は、その構成からは特定の観念を生じない造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。 したがって、引用商標は、「オービック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について ア 本件商標と引用商標1との類否について 本件商標と引用商標1との類否を検討すると、両商標は、それぞれ上記第1及び第2の1のとおりの構成よりなるところ、外観においては、欧文字部分において2文字目における「r」の文字及び「Journey Pro」の文字の有無の差異並びに「B(b)」及び「C(c)」の文字における大文字と小文字の差異、片仮名の有無の差異の相違を有するものであり、両者は明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標は、「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるのに対し、引用商標1は「オービック」の称呼が生じるところ、それぞれの音構成や音数が明らかに異なることから、両商標は、称呼上、聞き誤るおそれはないものである。 さらに、観念において、両商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標1とは、観念において比較し得ないものの、外観において明らかに相違し、称呼において、聞き誤るおそれがないものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 イ 本件商標と引用商標2との類否について 本件商標と引用商標2との類否を検討すると、両商標は、それぞれ上記第1及び第2の2のとおりの構成よりなるところ、外観においては、欧文字部分において2文字目における「r」の文字及び「Journey Pro」の文字の有無の差異並びに「B(b)」及び「C(c)」の文字における大文字と小文字の差異の相違を有するものであり、両者は明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標は、「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるのに対し、引用商標2は「オービック」の称呼が生じるところ、それぞれの音構成や音数が明らかに異なることから、両商標は、称呼上、聞き誤るおそれはないものである。 さらに、観念において、両商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標2とは、観念において比較し得ないものの、外観において明らかに相違し、称呼において、聞き誤るおそれがないものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 ウ 本件商標と引用商標3ないし5との類否について 本件商標と引用商標3ないし5との類否を検討すると、両商標は、それぞれ上記第1並びに第2の3ないし5のとおりの構成よりなるところ、外観においては、欧文字と片仮名の文字種の差異及び構成文字数の差異の相違を有するものであり、両者は明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標は、「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるのに対し、引用商標3ないし5は「オービック」の称呼が生じるところ、それぞれの音構成や音数が明らかに異なることから、両商標は、称呼上、聞き誤るおそれはないものである。 さらに、観念において、両商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標3ないし5とは、観念において比較し得ないものの、外観において明らかに相違し、称呼において、聞き誤るおそれがないものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 エ 本件商標と引用商標6との類否について 本件商標と引用商標6との類否を検討すると、両商標は、それぞれ上記第1及び第2の6のとおりの構成よりなるところ、外観においては、欧文字部分において2文字目における「r」の文字及び「Journey Pro」の文字の有無の差異並びに「B(b)」、「I(i)」及び「C(c)」の文字における大文字と小文字の差異の相違を有するものであり、両者は明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標は、「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるのに対し、引用商標6は「オービック」の称呼が生じるところ、それぞれの音構成や音数が明らかに異なることから、両商標は、称呼上、聞き誤るおそれはないものである。 さらに、観念において、両商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標6とは、観念において比較し得ないものの、外観において明らかに相違し、称呼において、聞き誤るおそれがないものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)判断 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものというのが相当である。 その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 申立人の主張及び同人から提出された証拠によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、1968年4月に、大阪にて「(株)大阪ビジネス」として設立し、1997年4月に統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」を開発、2018年12月に「OBIC7シリーズ」の商品が、累計導入社数2万社を突破し、17年連続No.1になっている(甲4の1)。 イ 申立人は、2009年10月1日から2023年5月26日まで、「オービック」のロゴを表示し、著名なプロゴルファーが出演するテレビコマーシャルを継続的に行ってきた(甲6)。 また、申立人は、2003年からアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」のスポンサーであり、多数の観客が来場する駅やスタジアムの看板、ユニフォーム等に「オービック」や「OBiC7」の文字を使用している(甲7)。 ウ 申立人は、読売・朝日・毎日・日経等の新聞、日経ビジネス等の雑誌に、「オービック」や「OBIC」の広告を継続的に行っている(甲9)。 エ 「日経業界地図2021年度版」(令和2年8月21日発行)に、「「オービック」は、ソフトウェア業界を代表する企業の一つとして、「ERPソフト国内大手」」との記載がある(甲13の3)。 オ 以上、上記アないしエによれば、引用商標を構成する「オービック」の文字及び「OBIC(OBiC)」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ERPソフトウェアを取り扱う業界において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に認識されているといい得るとしても、申立人提出の証拠からは、本件商標に係る指定商品の需要者を含む一般消費者の間にまで広く認識されているものと認めることはできない。 (2)出所の混同のおそれについて 上記(1)のとおり、引用商標を構成する「オービック」の文字及び「OBIC(OBiC)」の文字がERPソフトウェアを取り扱う業界において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に認識されているといい得るとしても、本件商標に係る指定商品の需要者を含む一般の需要者の間にまで広く認識されているものと認めることはできず、かつ、上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標は、引用商標の独創性の程度、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度、需要者の共通性などを併せ考慮しても、商標権者がこれを指定商品について使用した場合に、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない 3 商標法第4条第1項第8号該当性について (1)商標法第4条第1項第8号における「含む」の意義について 商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起・連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号、同21年10月20日判決参照)。 (2)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について 上記(1)を踏まえて検討すると、本件商標は、上記第1のとおり、「Orbic Journey Pro」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体で、等間隔にまとまりよく表されているもので、視覚上一体的に看取されるものであり、いずれかの文字部分が看者の注意を引くような構成とはいえない。 また、その構成文字全体からは「オービックジャーニープロ」又は「オルビックジャーニープロ」の称呼が生じるといい得るもので、かつ、構成全体をもって特定の観念が生じない造語を表したものである。 そうすると、引用商標を構成する「オービック」の文字及び「OBIC(OBiC)」の文字が申立人の著名な略称といい得るとしても、本件商標はその構成中の「Orbic」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではなく、しかも、「Orbic」の文字と「オービック」の文字及び「OBIC(OBiC)」の文字とはつづりが異なることからすれば、当該文字部分が直ちに申立人の略称として客観的に把握され、申立人を想起・連想させるものとはいい難く、本件商標は、他人(申立人)の著名な略称を「含む」ものとはいえないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する商標ということはできない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標1(登録第2267160号商標) 別掲2 引用商標2(登録第2267161号商標) 別掲3 引用商標3(登録第3254140号商標) 別掲4 引用商標4(登録第4585946号商標) 別掲5 引用商標5(登録第5252765号商標) 別掲6 引用商標6(登録第5252768号商標) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-05-16 |
出願番号 | 2023006536 |
審決分類 |
T
1
651・
23-
Y
(W09)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
渡邉 あおい 杉本 克治 |
登録日 | 2023-07-06 |
登録番号 | 6715077 |
権利者 | リライアンス・コミュニケーションズ、エルエルシー |
商標の称呼 | オービックジャーニープロ、オービック、ジャーニープロ、ジャーニー、プロ、ピイアアルオオ |
代理人 | 浅見 浩二 |
代理人 | ▲桑▼原 史生 |
代理人 | 山田 一範 |
代理人 | 弁理士法人酒井国際特許事務所 |