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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
管理番号 1411504 
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-06-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2023-03-07 
確定日 2024-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第6163733号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6163733号商標の指定商品中、第9類「全指定商品」について、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6163733号商標(以下「本件商標」という。)は、「TVIS」の文字を標準文字で書してなり、平成30年9月6日に登録出願、第9類「半導体・プリント回路基板又は電子部品の外観検査装置,半導体・プリント回路基板又は電子部品の検査装置,製品の欠陥を探すための製品検査機械器具,検査用機械器具,検出探知装置(測定機械器具),測定機械器具,半導体・プリント回路基板又は電子部品の検査に用いる電子計算機用プログラム,コンピュータ操作用プログラム(記憶されたもの),電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,記録済みCD−ROM・DVD及びその他の記録媒体,電気通信機械器具,電気磁気測定器」及び第7類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年7月19日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年3月23日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)3月23日ないし同5年(2023年)3月22日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のとおり主張した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第9類「全指定商品」(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
また、請求人は、令和5年7月11日付けで弁駁書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
(1)本件商品の販売の事実について
ア 乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第8号証
被請求人は、「本件検査装置」及び「本件プログラム」から構成される「本件検査ユニット」が販売されていることの証拠として、乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第8号証を提示している。(審決注:「本件検査装置」、「本件プログラム」及び「本件検査ユニット」の定義については、下記第3の1(1)アを参照。)
しかしながら、乙第1号証に示されたYPMシリーズ、及び乙第2号証に示されたFMSシリーズにおいて、「本件検査ユニット」が組み込まれていることについては記載されていない。
乙第3号証(1)の写真を参照すると、被請求人は、右から2つ目のユニットが検査ユニット部分であると主張しているが、乙第2号証において、検査ユニットが含まれることについて何ら触れられていない。被請求人の商品を取り扱う分野において、このようなセールスポイントとなるユニットについて、何ら触れられていないのは不自然である。さらに、完成された本件検査装置を販売するに当たっては、そのセールスポイントを説明したカタログを用意するのが常識的であるが、このようなカタログが存在しないのも不自然である。
また、乙第3号証において、(1)の検査ユニット部分の操作画面の写真と、その拡大写真とする(2)の写真とでは、相互間で画像が異なっており不合理である。さらに、(3)のYPMシリーズ全体写真のどれが検査ユニットに該当するのか不明であり、(4)の検査装置であるとする写真はピントすら合っておらず、(4)の写真の装置がいかなる装置であるのか不明である。
また、被請求人は、乙第3号証の写真を提示して、シンギュレーション装置に、「本件検査ユニット」が含まれている旨を主張しているが、(1)ないし(5)の写真からは、検査ユニットとしての具体的な装置構成を認識することができず、(1)ないし(4)の「本件検査ユニット」と(5)の検査ユニットの同一性すら確認できない。
また、乙第8号証は、検査ユニットの操作画面の写真であると主張されているが、乙第8号証の操作画面の写真は、乙第3号証において検査ユニット部分であると主張される写真の操作画面とは一致しておらず、当該操作画面が検査ユニットの操作画面であるか不明である。また、乙第3号証は要証期間外の2023年4月28日に撮影され、乙第8号証は同じく要証期間外の同年3月28日に撮影されているが、両者間で操作画面の写真が一致していないのは不合理である。
さらに、乙第8号証は、「TVIS」のアイコンが表示された操作画面の写真であるが、この写真は起動前の写真とされており、起動後の写真が提示されていないことに鑑みれば、実際に、アイコン「TVIS」に対応するコンピュータプログラムが存在するのかどうか疑問である。乙第8号証によっては、アイコン「TVIS」に対応するコンピュータプログラムが存在すること及び当該コンピュータプログラムが動作することについて、何ら立証できていない。
また、乙第3号証及び乙第8号証は、要証期間外に撮影されたものであり、撮影された「本件検査ユニット」が要証期間に被請求人の商品として存在していたことの信憑性が疑われる。
以上のように、乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第8号証をもってしては、被請求人が本件検査ユニットを市場に提供できる程度に完成した状態で、要証期間に所持していたことを証明することができていない。
イ 乙第11号証ないし乙第20号証
乙第11号証及び乙第12号証は乙第14号証と重複するものであり、いずれも被請求人の管理システムに格納された電子データであると主張されるものであるが、その内容は変更可能であって、証拠としての信憑性が疑われる。また、乙第14号証は、一私人の証言であって証拠としての客観性に欠ける。
乙第13号証も同様に、被請求人の管理システムに格納された電子データであると主張されるものであり、その存在や、日付を客観的に立証することができないものである。
乙第15号証は、「運送依頼書(兼)送り状」の写しとして提出され、WBS番号がA−046947−03−09である「YPM1180ユーザオプション」を搬送したことの証拠として提出されているが、その作成日は2023年2月27日とされており、ユーザオプションがどのようなものであるかについて把握できない。
乙第16号証は、YPM1180の「納入仕様書」の写しとして提出されたものであるが、その作成日は2022年10月21日であり、作成者は日本人ではないと推認されるところ、作成者が日本語を理解しているかどうか不明である。また、具体的な仕様を示す書面は第27頁のみが抜粋された状態となっており、目次もなく、抜粋された第27頁が真正なものであるかどうかを確認することができない。また、乙第16号証が真正なものであれば、その性格上、乙第15号証に記載されるような、WBS番号や品名の記載があるべきところ、そのような記載は見当たらない。さらに、乙第16号証の「納入仕様書」の作成日と、実際の納入日(乙15)は、時間的なずれがあり、乙第16号証の信憑性に疑問がある。
乙第17号証は、「アプリケーションソフト出荷審査シート」の写しとして提出されたものであるが、WBS番号がA−046947−03−09についての出荷検査の日付は2022年12月22日となっているが、乙第15号証では、WBS番号がA−046947−03−09のユーザオプションの出荷日は2023年3月6日となっており、出荷検査から約2.5か月後の出荷は、時間がたちすぎていると感じられ、証拠としての信憑性に疑問がある。また、乙第16号証の捺印欄は省略されているのに、乙第17号証では捺印がなされており、一貫性がない。
乙第18号証ないし乙第20号証は、いずれも被請求人の管理システムに格納された電子データであると主張されるものであるが、その存在や、日付を客観的に立証することができないものであって、証拠としての信憑性が疑われるものである。
したがって、乙第11号証ないし乙第20号証から、「本件検査ユニット」が、要証期間に販売され、市場に流通された事実を立証することができていない。
(2)本件商標の使用の事実について
ア 乙第4号証ないし乙第7号証
乙第4号証及び乙第5号証は、それぞれ「TVIS Manual 基礎編」及び「TVIS Manual オペレーション」とあり、マニュアル(取扱説明書)であることがうかがえるが、作成者、照査、承認及び日付について記載がなく、全頁が含まれていないことからして完成されたものであるのか及び頒布されたものであるのか不明である。
また、乙第4号証は、「第1章システム概要」、「第2章各機能」についての説明を準備し、乙第5号証は、「第4章運転」、「第5章トラブル対応」についての説明を準備しているが、「第3章」が欠落しており、乙第4号証及び乙第5号証の一貫性及び連続性が疑われる。
一方、乙第6号証及び乙第7号証は、作成者の欄に日付とともに捺印と思われるものが存在するが、照査、承認の欄には捺印はない。
また、乙第4号証の目次と乙第6号証の目次とを比較すると、両者間で項目が一致しておらず、乙第6号証に対応する日本語版が存在するのか不明である。
また、「Chapter3」が欠落しており、乙第6号証及び乙第7号証間の一貫性及び連続性が疑われるし、全頁が含まれていないことからしても、乙第6号証及び乙第7号証に係るマニュアルが完成されたものであるのか、及び乙第6号証及び乙第7号証のマニュアルは英語版であるところ、日本国内において、頒布されたものであるのか疑われる。
イ 乙第9号証及び乙第10号証
乙第9号証及び乙第10号証は、「Smart Vision Systemの検討・導入」と題した講演を行ったことをうかがわせるものであり、本件検査ユニットについての講演を行ったことを証明するものではない。また、「TOWA標準検査システム」が実際に装置として完成され、販売されていることを証明するものではなく、末頁の「TVIS 導入例」についても、検査装置を構成する特徴的な要素であるカメラや照明装置を特定できないし、写真を見る限り、開発途中の実験装置的なものであると理解される。
ウ 乙第21号証
乙第21号証は、教育が実際に実行されたこと、及び実行された年月日を客観的に証明できておらず、また、カリキュラムは日本語で作成されており、外国人に対する教育の際に用いるものとしては不自然である。
エ 乙第22号証ないし乙第24号証
YMP1180のユーザオプションが、本件検査ユニットであることを示す証拠は存在していない。また、YMP1180のユーザオプションが、被請求人の製造・販売子会社があるマレーシアからフランスの企業に販売されたとしても、それは当該商品が外国で製造され、外国で販売されたことを示すものであって、本件商品が、日本国内で製造、販売され、流通された事実を示すものではない。
オ 乙第25号証ないし乙第28号証
乙第25号証からは教育の内容は不明である。乙第26号証は、その実施年月日を客観的に証明できていないし、カリキュラムは日本語で作成されており、外国人に対する教育の際に用いるものとしては不自然である。
乙第27号証は、乙第6号証及び乙第7号証に対応するものであるが、初版である2つのマニュアルが存在するのは十分に管理されていないとの疑念を抱かせるばかりではなく、実際に存在していた真正なものであるのかについても、疑念を抱かせる。
乙第28号証は、2022年5月24日のトレーニングの様子をビデオ撮影した画面であると説明されているが、乙第28号証の撮影日は、要証期間外の2023年5月24日となっており、齟齬を生じている。
カ 乙第29号証ないし乙第31号証
乙第29号証からは教育の内容が不明であり、実施日を確認することができない。
乙第30号証では、第2頁ないし第4頁が欠落しており、目次もないことから、一体的な説明資料であるか疑わしい。また、乙第30号証は、「CONFIDENTIAL」とされ、秘密保持が課されており、仮に、当該資料に基づく説明がなされていたとしても、それは、「TVIS」が単に技術説明に用いられただけである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第31号証を提出した。
なお、被請求人は、合議体が令和5年12月1日に通知した審尋に対して、回答しなかった。
1 本件商標の使用事実
(1)本件商品について
ア 商標権者は、本件商標を、製品の外観検査ユニット(モジュール)(以下「本件検査ユニット」という。)の商標として使用している。
本件検査ユニットは、半導体やプリント回路基板などの電子部品に欠陥が存在しないかどうかを主に外観から検査するための検査装置(以下「本件検査装置」という。)と、これを制御するためのプログラム(以下「本件プログラム」という。)から構成される。本件検査装置には、内部にMicrosoft社のオペレーティングシステムが搭載されており、これに本件プログラムをインストールすることで、本件検査ユニットを稼働させることができる(以下「本件検査ユニット」、「本件検査装置」及び「本件プログラム」を総称して「本件商品」という場合がある。)。
イ 本件商品は、半導体製造時に製造ラインにおいて、半導体製造装置と並置して使用される。商標権者が製造販売するモールディング装置(YPMシリーズ)やシンギュレーション装置(FMSシリーズ)は、それ自体で独立した機能を有して製品として販売可能な複数のモジュールが互いに連結して構成される点に特徴があり、顧客から要望のあったモジュールを製作及び連結して商標権者の製品を構成している(なお、「FMS」は、「Flexible Modular System」の頭文字から命名されている。)。
本件検査ユニットは、シンギュレーション装置であるFMSシリーズでは標準仕様のモジュールとして構成され、モールディング装置であるYPMシリーズではオプションのモジュールとして用意されており、顧客の要望に応じて、納入時より半導体製造装置と並置され又は納入後に追加で並置されるものである(乙1〜乙3)。商標権者は、1991年に画像処理の会社を買収して以来、製品の外観検査(画像検査)装置の開発及び販売を継続して行っている。製品等の写真は、撮影日が要証期間のものではないが、いずれも本件商品を説明するために商標権者本社内に設置されている同型のものを、商標権者の従業員が撮影したものである(乙8も同様。)。
(2)商標「TVIS」について
ア 「TVIS」は、本件商品の商標として、商標権者によって使用されている。
イ 本件商品のマニュアルには、商標「TVIS」が表示されている。当該マニュアルは日本語版のほか英語版、中国版などが用意されており、顧客に応じたマニュアルが提供される。例えば、本件商品を購入した企業が主に英語圏の工場において本件商品を使用する場合は英語版マニュアルを送付している。マニュアルの種類は多岐にわたりそれぞれのページ数も多いため一部を抜粋して提出する(乙4〜乙7)。乙第6号証及び乙第7号証は、2023年3月8日付け取引において、実際に送付されたマニュアルの写し(抜粋)である。
ウ 本件プログラムをインストールした本件検査装置を起動すると、本件検査装置の操作画面に、商標「TVIS」が付されたアイコンが表示される(乙8)。本件商品の使用者は、当該「TVIS」アイコンから検査のための制御プログラムを実行し、本件商品を使用する。
エ 商標権者は、本件商品を需要者に紹介するに際し、本件商標を使用しその周知を行っており、2021年11月25及び同月26日にオンラインで開催された「LINX DAYS 2021」(主催:株式会社リンクス)では、本件商品を標準検査システムと称して、商標「TVIS」を付してその機能とともに紹介している(乙9、乙10)。乙第9号証は、スピーカーである商標権者の従業員による陳述書及び当日の発表スライドの抜粋である。
いずれの商標「TVIS」も、本件商標と構成文字を同一にするものであり、書体のみに変更を加えたものであるから、本件商標とは社会通念上同一と認められる。
(3)本件商標の使用について
ア 商標権者は、本件商標を2012年より本件商品に継続して使用しており、要証期間に本件商標が本件商品に使用されたことを示す証拠として、2023年3月8日付け取引に係る取引書類を提出する。
商標権者は、取引先からの発注に基づき、オートモールディングシステムYPM1180を2023年3月8日付けで納品した。この取引に係る納品書及び請求書を提出する(乙11、乙12)。また、この取引は商標権者の管理システムでも管理されており、取引に係る管理システムの画面のハードコピーを整理したものを乙第13号証として提出する。乙第11号証及び乙第12号証の注文書番号(05833337)が乙第13号証の購買発注番号に対応し、乙第13号証のWBS(製造番号)A−046947−03−09「YPM1180ユーザオプション」が本件商品に該当する。乙第11号証や乙第12号証に押印がない理由や、乙第13号証が商標権者の社内管理システムのハードコピーであることは、陳述書(乙14)で述べられているとおりである。乙第15号証は、3月6日付けで発送された本件商品(製造番号A−046947−03−09)の受領書の写しである。
オートモールディングシステムYPM1180に本件商品が含まれている証拠として、納入仕様書の写し(抜粋)を提出する(乙16)。納入仕様書の第27頁に記載のとおり、オートモールディングシステムYPM1180にはパッケージ(電子部品のパッケージ)の外観を確認し欠陥を検出するためビジョン検査ユニットが含まれており、このビジョン検査ユニットが本件検査ユニットに当たるもので、商標「TVIS」も付されている。なお、納品書及び請求書(乙11、乙12)の宛先と納入仕様書(乙15)の宛先は異なるが、これは商社を介したメーカーとの取引であるため、発注者(商社)と納入場所(メーカーの工場)が異なっており、納品書の下部に記載の納入場所宛てに納入仕様書を送付したためである。また、上記納入仕様書等は、紙書類でのやり取りに対応できるよう検印欄や製造番号欄等が設けられているが、現在では電子データによるやり取りが主流となっていることから、これら押印欄・製造番号欄については、手続簡素化の観点から取引先からの特段の要望がない場合、押印・記載が省略されている。
オートモールディングシステムYPM1180は高額商品であるため、商標権者はアプリケーションソフトの漏れがないかなど、出荷前にチェックを行っている。乙第17号証及び乙第18号証は、そのチェックに用いられた出荷審査シート及び出荷物チェックシートの写しである。出荷物チェックシートの[VISON]が上記ビジョン検査ユニット(本件検査ユニット)に該当する。本件検査ユニットに係るデータ等については商標権者が保管しており、乙第19号証及び乙第20号証はその保管データフォルダ画面のハードコピーである。乙第19号証が[Reference]フォルダ、乙第20号証が[Software]フォルダ内の「TVIS」インストーラである。乙第19号証のTVIS3_Data_Setupの日付が乙第17号証の確認欄の押印の日付より後となっているのは、このexeファイルは、ソフトウェアに入っている機能を顧客の要望に応じて活生化させるために、確認印の押印の日付より後に、顧客から機能追加の要望に応じて追加したためである。商標権者の運用手順により、アプリケーション出荷審査は、作成者と確認者の押印によって完結することになっており、承認欄は使用されていない。
また、納入先に送付された本件商品の使用マニュアル(抜粋)を提出する(乙6、乙7)。先方の希望に基づいて英語版を送付した。
イ 要証期間である2021年11月25及び同月26日に、本件商品及びその技術内容について、商標「TVIS」を付して紹介(講演)を行っており、本件商標を広告的に使用している。
ウ 本件商品の操作方法は専門的なものとなるため、商標権者は、本件商品の譲渡(販売)や輸出を行った後に、本件商標を用いて本件商品の使用方法についてオンラインや商標権者本社にてトレーニングを行っている。また、学生向けインターンシップでも本件商標を用いて本件商品の使用方法等について説明や実施教育を行っている。
商標権者は、取引先のフランス企業の担当者に対して、2022年4月26日ないし同月28日にオンラインで基礎教育を行った後、同年5月24日ないし同月27日に商標権者本社内にある本件商品を使った実施訓練(実践教育)を行った。また、取引先のフィリピン企業に対しても、2022年5月18日ないし同月20日にかけてオンライントレーニングを行った(乙21)。
前記フランス企業からは、2020年7月21日付け注文書により、本件検査ユニットを含めたYPMシリーズの発注を受け、同年11月25日に商標権者の製造・販売子会社のあるマレーシアから本件商品を譲渡(販売)及び輸出した(乙22〜乙24)。その後、前記フランス企業からの要望を受け、本件商品のトレーニング日程について調整し(乙25)、上記日程にてオンライン及び来社トレーニングを行った。来社トレーニングは、実際に操作を行うことで本件商品を適切に使用できるようにするために、本件検査ユニット及び本件商品の操作マニュアルを用いて実施された(乙26)。なお、操作マニュアルは、本件商品の取引時に送付されたものと同一であり、実トレーニング時に使用されたマニュアルの抜粋の写しを提出する(乙27)。乙第28号証は、2022年5月24日のトレーニングの様子をビデオ撮影したものの画面キャプチャであり、乙第28号証の本件商品が、乙第3号証(5)の検査ユニットである。
2022年8月22日ないし同月25日、同年9月5日ないし同月7日及び同月12日ないし同月14日には、学生向けインターンシップにて、本件商品を用いた実施教育(体験)が行われた。乙第29号証のとおり、インターンシップは、主に商標権者の画像検査技術や画像検査装置について学ぶもので、初日に商標「TVIS」が付された資料(乙30)により、本件商品の説明が行われた後、実機の見学や演習などが行われた。当該インターンシップの参加者のアンケートを提出する(乙31)。商標権者が、本件商標を用いて本件商品の周知活動を行っていることが、当該アンケートの記載からも見て取れる。
2 本件審判の請求が棄却されるべき理由
上記事実から、本件商標は、要証期間に、日本国内において、商標権者により、請求に係る指定商品中、少なくとも「半導体・プリント回路基板又は電子部品の外観検査装置,半導体・プリント回路基板又は電子部品の検査装置,製品の欠陥を探すための製品検査機械器具,検査用機械器具,検出探知装置(測定機械器具),外観検査装置用電子計算機用プログラム」について使用されていることから、商標法第50条の規定により取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)モールディング装置YPMシリーズ、シンギュレーション装置FMSシリーズ及び本件検査ユニットについて(乙1〜乙3、乙16)
ア 商標権者のウェブサイトの出力物(乙1、乙2)、及びシンギュレーション装置FMSシリーズ、モールディング装置YPMシリーズ、本件検査ユニットの写真画像(乙3)
乙第1号証及び乙第2号証は、2023年5月18日に出力された商標権者のウェブサイトの出力物であり、乙第1号証には商標権者が製造及び販売するYPM1180を含むモールディング装置YPMシリーズの製品についての特徴の説明や外観の画像が掲載され、乙第2号証には商標権者が製造及び販売するシンギュレーション装置FMSシリーズの製品についての特徴の説明や外観の画像が掲載されている。
また、乙第3号証は、2023年4月28日に商標権者の従業員が撮影したシンギュレーション装置FMSシリーズ、モールディング装置YPMシリーズ及び本件検査ユニットの写真画像である。
乙第1号証ないし乙第3号証からは、シンギュレーション装置FMSシリーズの製品、モールディング装置YPMシリーズの製品及び本件検査ユニットのいずれにも、「TVIS」の文字が付されていることは確認できない。
イ モールディング装置YPM1180の納入仕様書(乙16)
乙第16号証は、被請求人が2022年10月21日に作成したとされるモールディング装置YPM1180の納入仕様書であり、その3葉目には、「8.21 ビジョン検査ユニット(アウト・モジュール)」のタイトル下に、「高性能のCMOSカメラを使用して、パッケージの外観を確認します。未充填、パッケージの欠け、表面の傷などを検出するためのビジョン検査が可能です。」との記載や、「・ビジョンシステム TVIS(Renewal)System(Towa)」の記載がある。
(2)操作画面の写真画像について(乙8)
乙第8号証は、2023年3月28日に商標権者の従業員が撮影したとされる操作画面の写真画像であるところ、画面の左下に「TVIS」の名称のアイコンが写っており、撮影者がシンギュレーション装置FMSシリーズ及び検査ユニット部分の操作画面(起動前)を撮影した画像である旨の説明が付されているが、操作画面部分のみが画像として写っており、操作画面が、シンギュレーション装置FMSシリーズ又は検査ユニットの操作画面であるのか確認できない。
(3)「TVIS」のマニュアルについて(乙4〜乙7、乙27)
「TVIS Manual 基礎編」(乙4)、「TVIS Manual オペレーション編」(乙5)、「TVIS○R Ver3.5 Manual(Basics)」(乙6。「○R」は「R」を丸囲みしたもの。以下同様。)、「TVIS○R Ver3.5 Manual(Operation)」(乙7)、「TVIS○R Manual(Basics)」(乙27:1〜4葉目)及び「TVIS○R Manual(Operation)」(乙27:5〜9葉目)と題するマニュアルには、それぞれの表紙に、「機種」又は「MODEL」として「TVIS」又は「TVIS○R」と記載され、「TVIS」についての説明が記載されている。また、乙第6号証、乙第7号証及び乙第27号証のそれぞれの表紙に、2022年3月2日、同月3日及び2020年7月10日の押印が確認できる。
(4)「LINX DAYS 2021」における講演について(乙9、乙10)
乙第9号証及び乙第10号証は、被請求人従業員による陳述書(発表スライド含む。)及び「LINX DAYS 2021」のウェブサイトの出力物であるところ、これらから、2021年11月25日及び同月26日に開催された「LINX DAYS 2021」なるイベントにおいて、被請求人の従業員が「Smart Vision Systemの検討・導入」と題した講演を行い、スライド(乙9:4〜5、7葉目)には、「画像処理システム」のタイトル下に「二つのシステムが存在し、用途に合わせて装置に搭載/・TOWA標準検査システム(TVIS○R)」の記載、「TVIS○Rシステム構成」についての図示、及び「TVIS○R導入例」とされる画像などが掲載されていることは確認できる。
他方、陳述書(乙9)には、「LINX DAYS 2021」の講演において「検査ユニット「TVIS」について、導入例を踏まえて説明を行った」旨の記載があるが、その講演で使用した発表スライドからは、当該講演が「Smart Vision Systemの検討・導入」に関するものであることがうかがえるものの、「検査システム(TVIS○R)」の宣伝広告を目的・内容とするものであったことは確認できない。
(5)その他の証拠について
アプリケーションソフト出荷審査シート、出荷物チェックシート及び保管データフォルダ(乙17〜乙20)、トレーニングカリキュラム(乙21、乙26)、インターンシップ用説明資料(乙30)、インターンシップ参加者アンケート(乙31)においても、「TVIS」の文字は確認できる。
また、モールディング装置YPM1180の取引に係る証拠(乙11〜乙15、乙22〜乙25)、トレーニングの様子を表す画像(乙28)及びインターンシップ教育カリキュラム(乙29)も提出されているが、これらには、「TVIS」の文字は確認できない。
2 判断
上記1(1)ないし(5)によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用行為について
ア 商標法第2条第3項第1号及び同項第2号に係る使用行為について
被請求人が提出した証拠(特に、乙1〜乙3、乙16)から、シンギュレーション装置FMSシリーズの製品及びモールディング装置YPMシリーズの製品に、本件検査ユニットが標準又はオプションで搭載されることは認められるとしても、本件検査ユニットの筐体や画面に「TVIS」の文字が付されていることは確認できない。また、本件検査ユニットを標準又はオプションで搭載するシンギュレーション装置FMSシリーズ及びモールディング装置YPMシリーズの筐体等に「TVIS」の文字が付されていることも確認できない。
さらに、シンギュレーション装置FMSシリーズ、モールディング装置YPMシリーズ及び本件検査ユニットの包装に「TVIS」の文字が付されていることを示す証拠は提出されていない。
加えて、乙第8号証に写っている操作画面に「TVIS」の名称のアイコンが写っているとしても、当該画面がシンギュレーション装置FMSシリーズ又は本件検査ユニットの操作画面であるのか確認できない上に、「TVIS」の名称のアイコンで起動されるプログラムが、要証期間に独立した商品として顧客に譲渡又は引渡し等をされたことは確認できないから、商標権者が、要証期間に、本件検査ユニットの画面に本件商標を付したことや、プログラムに本件商標を付して販売等したと認めることはできない。
以上から、商標権者が、本件商標(「TVIS」)について、要証期間に、商標法第2条第3項第1号に係る使用行為を行ったと認めることはできない。
さらに、モールディング装置YPM1180及びそれに搭載される本件検査ユニットが要証期間に譲渡又は引渡しされたことが認められる(乙11〜乙15、乙22〜25)としても、モールディング装置YPM1180及び本件検査ユニットの筐体や画面、及び包装並びにプログラムに本件商標が付されたことは確認できないから、商標権者が、本件商標について、要証期間に、商標法第2条第3項第2号に係る使用行為を行ったと認めることもできない。
イ 商標法第2条第3項第8号に係る使用行為について
(ア)「TVIS」のマニュアルについて
「TVIS」のマニュアル(乙4〜乙7、乙27)に、「TVIS」又は「TVIS○R」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されていることは確認できる。
しかしながら、マニュアルとは、商品の手引き又は取扱説明書のことであり、商品の広告、価格表又は取引書類のいずれにも該当しない。
したがって、被請求人が作成した「TVIS」のマニュアル(乙4〜乙7、乙27)に使用商標が付されていたとしても、被請求人が、本件商標について商標法第2条第3項第8号に係る使用行為を行ったと認めることはできない。
(イ)「LINX DAYS 2021」における講演について
被請求人の従業員が、要証期間に開催された「LINX DAYS 2021」における講演で使用した発表スライドに、使用商標(「TVIS」又は「TVIS○R」の文字)が表示されていたこと(乙9:4〜7葉目)は確認できる。
しかしながら、当該講演は技術発表と解され、具体的な商品(例えば、「TOWA標準検査システム(TVIS○R)」)の宣伝広告のためのものと認めることはできないため、当該発表スライドは、商品の広告、価格表又は取引書類のいずれにも該当しない。
したがって、被請求人の従業員が講演で使用した発表スライドに使用商標が付されていたとしても、被請求人が、本件商標について商標法第2条第3項第8号に係る使用行為を行ったと認めることはできない。
(ウ)納入仕様書(乙16)について
モールディング装置YPM1180の納入仕様書(乙16)の3葉目に、「・ビジョンシステム TVIS(Renewal)System(Towa)」の記載があり、「TVIS」の文字は確認できる。
しかしながら、上記納入仕様書(乙16)における「TVIS」の文字は、「8.21 ビジョン検査ユニット(アウト・モジュール)」なる項目中にシステム名として記載されているにすぎず、その表示態様からして、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されているものは認められないから、当該納入仕様書(乙16)に本件商標が使用されていると認めることはできない。
(エ)その他の証拠について
アプリケーションソフト出荷審査シート、出荷物チェックシート及び保管データフォルダ(乙17〜乙20)、トレーニングカリキュラム(乙21、乙26)、インターンシップ用説明資料(乙30)、インターンシップ参加者アンケート(乙31)においても、「TVIS」の文字は確認できるが、いずれもシンギュレーション装置FMSシリーズの製品及びモールディング装置YPMシリーズの製品の広告、価格表又は取引書類に該当するとはいえず、また、これらを展示し、頒布し又は電磁的方法により提供したということもできない。
したがって、これらの証拠からも、被請求人が、本件商標について商標法第2条第3項第8号に係る使用行為を行ったと認めることはできない。
ウ 小括
よって、被請求人である商標権者が、要証期間において、本件商標を、請求に係る指定商品について、商標法第2条第3項各号に該当する使用行為を行ったことを認めることはできないから、被請求人が本件商標の使用を証明したものと認めることはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、請求に係る指定商品(第9類「全指定商品」)について、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

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審理終結日 2024-03-11 
結審通知日 2024-03-13 
審決日 2024-03-28 
出願番号 2018112315 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W09)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 山田 啓之
大山 健
登録日 2019-07-19 
登録番号 6163733 
商標の称呼 テイビス、テイブイアイエス 
代理人 齊藤 整 
代理人 服部 京子 
代理人 村上 智司 
代理人 弁理士法人ととせ・ももとせ 
代理人 徳永 弥生 
代理人 清水 三沙 

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