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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W09
管理番号 1411405 
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-11-22 
確定日 2024-05-08 
事件の表示 商願2021−100334拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は、令和3年8月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年11月8日付け:上申書の提出
令和4年3月10日付け:拒絶理由通知書
令和4年3月30日付け:意見書の提出
令和4年8月16日付け:拒絶査定
令和4年11月22日付け:審判請求書の提出

2 本願商標
本願商標は、「YOHJI YAMAMOTO」の欧文字を横書きしてなり、第9類「記録済みのダウンロード可能な記録媒体、コンピュータソフトウェア、未記録のデジタル式又はアナログ式の記録用及び保存用媒体,ダウンロード可能なコンピュータプログラム,電子応用機械器具及びその部品,眼鏡,電気通信機械器具,携帯情報端末,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,ダウンロード可能な映像,電子出版物」を指定商品として登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「YOHJI YAMAMOTO」の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、名刺や、クレジットカード等、氏名の順序を逆にしてローマ字表記することが一般に行われており、また、「オオ」音や「オウ」音等の長音を含む氏名をローマ字表記する際には、「O」の文字の後ろに「H」の文字を挿入することもしばしば行われているから「YOHJI YAMAMOTO」の文字よりなる本願商標からは、「ヤマモトヨウジ(ヤマモトヨージ)」の読みからなる氏名を、氏名の順序を逆にしてローマ字表記したものと容易に認識されるものである。出願人は、令和3年11月8日付け上申書及び令和3年11月8日付け手続補足書により、ファッションデザイナーの「山本耀司」氏の承諾書の原本及び写しを提出しているが、同氏以外にも、「ヤマモトヨウジ(ヤマモトヨージ)」の読みからなる氏名の者が現存することが認められるから、本願商標は、他人の氏名を含む商標であって、かつ、その他人の承諾を得ているものとも認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨について
ア 商標法第4条第1項第8号の趣旨は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあると解される。したがって、同号本文に該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよう、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきものである(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決)。
イ 商標法第4条第1項第8号は、「他人の氏名・・・を含む商標」と規定するものであり、当該「氏名」の表記方法に特段限定を付すものではない。また、同号の趣旨は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあると解されるところ、自己の「氏名」であれば、それがローマ字表記されたものであるとしても、本人を指し示すものとして受け入れられている以上、その「氏名」を承諾なしに商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることになると考えられる。したがって、同号の「氏名」には、ローマ字表記された氏名も含まれると解される(知財高裁平成31年(行ケ)10037号令和元年8月7日判決)。
そして、商標法第4条第1項第8号は、その規定上、雅号、芸名、筆名、略称については、「著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」として、著名なものを含む商標のみを不登録とする一方で、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」については、著名又は周知なものであることを要するとはしていない。また、同号は、人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として規定するものでもない。したがって、同号の趣旨やその規定ぶりからすると、同号の「他人の氏名」が、著名性・希少性を有するものに限られるとは解し難く、また、「他人の氏名」を含む商標である以上、当該商標がブランドとして一定の周知性を有するといったことは、考慮する必要がないというべきである(同上)。
(2)本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
本願商標は、上記2のとおり、「YOHJI YAMAMOTO」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「YOHJI」の文字部分は、「OH」が「オー」又は「オウ」の音、特に人名の「オー」又は「オウ」の音をローマ字表記する際にしばしば使用されるものである(別掲1)から、当該文字部分は、「ヨウジ」と読めるものである。また、本願商標の構成中、「YAMAMOTO」の文字部分は、ありふれた氏である「山本」のローマ字表記を認識させるものである。
さらに、名刺やパスポート、クレジットカード、ウェブサイト等での氏名のローマ字表記において、氏名を「名」、「氏(姓)」の順で表記することは一般にあること、上記のとおり「YOHJI」の「OH」が特に人名の「オー」「オウ」の音を表す際にしばしば使用されるものであること、「山本(YAMAMOTO)」と組み合わせた際に「ヨウジ」が名を表すものとして自然に看取し得るものであって、かつ、実際にそのような名を有する者が別掲2のとおり存在するものであることを総合すると、「YOHJI YAMAMOTO」の文字は、「ヤマモトヨウジ」を読みとする人名を客観的に想起させるといえ、「YOHJI YAMAMOTO」の文字よりなる本願商標は、人の「氏名」をローマ字表記したものとみるのが相当である。
そして、原審において説示のとおり、実際に「ヤマモトヨウジ」と読まれる「山本洋二」や「山本洋司」といった者が存在し、その存在は本件審決の時点でも、少なくとも別掲2のとおり確認することができる。
加えて、別掲2に掲げる人名は、いずれも、令和3年11月8日付け上申書で提出された承諾書に記載された者とは別の他人であると認められ、かつ、それら他人の承諾を得ているとは認められないものである。
そうすると、本願商標は、商標法第4条第1項第8号所定の、他人の氏名を含む商標であって、かつ、その他人の承諾を得ていないものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標が、長年にわたる使用により一定の著名性を有し、ファッションデザイナーの氏名のブランドであると一般に認識されていることから、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない旨主張する。
しかしながら、上記(1)イのとおり、同号に規定する「他人の氏名」については、著名又は周知なものであることを要するものではなく、「他人の氏名」を含む商標である以上、本願商標がブランドとして一定の周知性を有することは、同号の判断をするにあたって考慮する必要はないというべきである。そして、本願商標が同号に該当する商標であることは上記(2)のとおりである。
イ 請求人は、本願商標と同一の文字を含む多数の商標が登録され、長年にわたる使用がされていても他人から人格権侵害を主張されたことがないことを考慮すれば、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当すべきではない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号の条文に照らせば、上記(1)アのとおり、同号本文に該当する商標について、同号の適用を免れるためには他人の承諾を得ることが要件とされており、かつ、上記(1)イのとおり、同号は、人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として規定するものではないことからすれば、過去の商標登録について、人格権の侵害の主張がなされていないことによって、上記(2)の判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

別掲1 「OH」が「オー」又は「オウ」の音、特に人名の「オー」「オウ」の音を表す際にしばしば使用されるものであることを示す事実
(1)「静岡県」のウェブサイトにおいて、「ヘボン式ローマ字」の見出しの下、「長音(−)の綴り/のばす発音の「O」、「U」は記入しない。但し、O音をのばす場合は、「OH」の長音表記の選択が可能です。(略)OHで表記する例:おおた OHTA、かとう KATOH、ようこ YOHKO」の記載がある(http://www.pref.shizuoka.jp/kenmin/km-170/passport/c12hepburnromanization.html#C12-4)。
(2)「愛知県」のウェブサイトにおいて、「ヘボン式ローマ字と異なる場合」の見出しの下、「「オウ」音等の長音を含む場合/初めてパスポートを取得される方で、「オウ」音等長音を含む場合、今後表記を変更しないという条件で、非ヘボン式ローマ字氏名表記として、「H」等を挿入することができます。例えば、大野さんはヘボン式では「ONO」と表記され、小野さんと同一表記となりますが、本人が特に希望する場合は非ヘボン式で「OHNO・OONO」として表記することができます。」の記載がある(https://www.pref.aichi.jp/site/passport/hihebon.html)。
(3)「在ボストン日本国総領事館」のウェブサイトにおいて、「氏名のOHによる長音(オウまたはオオ音)表記」の見出しの下、「氏名に「オウ」または「オオ」の長音が含まれる場合のローマ字表記は、・・・平成12年4月1日から、氏名にこのような「オ」の長音が含まれる場合、・・・ヘボン式ローマ字表記またはOHによる長音表記のいずれかの表記方法を選択することができるようになりました。」の記載がある(https://www.boston.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/passport7.html)。

別掲2 「ヤマモトヨウジ」の読みからなる氏名の者が現存することについて








(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
審理終結日 2024-02-29 
結審通知日 2024-03-04 
審決日 2024-03-21 
出願番号 2021100334 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (W09)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 茂木 祐輔
渡邉 あおい
商標の称呼 ヨージヤマモト、ヤマモトヨージ 
代理人 中村 知公 
代理人 前田 大輔 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 小西 富雅 

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