ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W03 |
---|---|
管理番号 | 1410516 |
総通号数 | 29 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-05-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2023-04-07 |
確定日 | 2024-04-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6479805号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6479805号商標(以下「本件商標」という。)は、「Aujud」の欧文字を横書きした構成からなり、令和2年12月7日に登録出願、第3類「化粧品,口紅,ティッシュ又は不織布に浸み込ませた化粧水,化粧せっけん,ボディーローション,美容用及びボディ用化粧品,毛髪用及び頭皮用の化粧品,化粧品・せっけん類及び歯磨き,洗濯用剤,手用クレンザー,皮膚の手入れ用化粧品,植物由来の化粧品,ペット用化粧品,子供用化粧品,精油,パッド・ティッシュまたは布に染み込ませたクレンジング用化粧品,歯磨き,香料,薫料及び香水類,化粧落としを染み込ませたパッド状の化粧品,化粧用のパッド状コットン」を指定商品として、同3年11月26日に登録査定、同年12月2日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する登録第5211240号商標(以下「引用商標1」という。)は、「AUJUA」の欧文字及び「オージュア」の片仮名を上下2段に横書きした構成からなり、平成20年8月7日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」を指定商品として、同21年3月6日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「Aujua」の欧文字を横書きした構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、請求人が、2010年より、商品「シャンプー,トリートメント」等に使用して周知であると主張するものである。 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、引用商標という。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を審判請求書及び令和5年8月3日付け答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年11月6日付け弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第220号証を提出した。 1 請求の理由 (1)請求人の先行商標及びその周知著名性について ア 請求人について 請求人は、1960年に設立され、ヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤、パーマ剤、シャンプー、ヘアトリートメント、薬用発毛促進剤、スキンケア・メイクアップ化粧品の製造及び販売を主な事業内容としている(甲2)。 請求人は美容師が施術に使う業務用品と、美容室だけで販売するサロン専売品の分野で2割弱のシェアを持ち、2021年12月期の売上高は415億円で前期比16.4%増、営業利益率は18.8%に達している(甲3)。 イ 引用商標について 請求人は、引用商標1を保有しており、また、請求人は、引用商標2を、美容室専売ヘアケア商品のブランド名として、2010年よりシャンプーやトリートメント等の商品について使用している(以下「請求人商品」という。)。 請求人商品は、請求人が個々の髪にカスタマイズして使用できるよう開発した高品質シャンプー、トリートメントであり(甲5)、現在では5シリーズ、16ライン、99アイテムにも及び、請求人の主力商品となっている(甲6)。 また、請求人は、一定期間請求人商品に関する研修を受け、試験に合格した美容師を「Aujuaソムリエ」と認定し、Aujuaソムリエは、提携した美容室において、請求人商品を使用したヘアケア・美容に関するカウンセリングを提供している(甲7)。美容師がAujuaソムリエであることや、日本全国の美容室において、Aujuaソムリエがいるサロンであることは大々的に宣伝されている(甲8〜甲10)。 引用商標は、「独特の雰囲気/オーラがある」という意味を持つ英単語の「aura(オーラ)」と、「歓喜に満ちる」という意味を持つ英単語の「jubilant(ジュビラント)」を組み合わせた請求人による造語であり、創作性の高い語である(甲11)。 特許情報プラットフォームJ−PlatPatにおいて、最初の4文字が「AUJU」である商標を検索すると、請求人の登録商標35件と被請求人の登録商標4件のみが検出される。かかる事実は引用商標の創作性の高さの証左となる。 ウ 売上高、販売窓口軒数 請求人商品は発売開始後現在に至るまで、10年以上継続的に売り上げを伸ばし、2016年には売上高は50億円を超え、販売窓口軒数は2,500軒を超え、2021年12月期の販売高は97億円と前の期に比べ約22%も増加し、販売窓口軒数は約5,000軒であった(甲12)。 エ 宣伝広告活動 請求人は、日本で最も利用人数が多いスポットである東京都銀座駅周辺、銀座ソニービル前、東京駅八重洲改札付近、大阪市大阪梅田駅(審決注:阪急梅田駅は、駅名を2019年10月1日に「大阪梅田駅」に改称しているが、本審決では、改称前の「阪急梅田駅」も含めて「大阪梅田駅」という。)周辺、福岡市博多駅構内、名古屋市栄駅構内等において、請求人商品画像及び「Aujua」の文字が大きく表示された広告用大看板を設置し、請求人商品の大々的な宣伝広告活動を行ってきた。 (ア)銀座駅周辺での宣伝広告活動 銀座駅は2018年度一日乗降人数・通過人数の統計によれば、東京メトロ銀座線、丸の内線、日比谷線の利用者併せて486,505人とされており日本屈指の繁華街である(甲13)。2017年2月10日ないし同月16日の期間中に、地下鉄銀座駅銀座四丁目エリア及びソニービル前大看板に、請求人商品の屋外広告が設置された。 (イ)東京駅での交通広告 東京駅は2018年度一日乗降人数・通過人数の統計によれば、JR各線の合計934,330人、東京メトロ丸の内線、千代田線、半蔵門線の合計652,742人が利用しているとされている(甲14)。2018年2月12日ないし同月18日の期間中、東京駅構内の改札付近及びホーム階段において、「Aujua」の文字が大きく表示された請求人商品の広告ポスターが掲示された(甲15)。2019年2月11日ないし同月17日の期間中には、八重洲南口付近の駅構内の柱に大きく請求人商品の宣伝ポスターが掲出された(甲16)。また、2020年2月17日ないし同月23日の期間中に東京駅にAujua製品の宣伝ポスターが掲示された(甲17)。 (ウ)大阪梅田駅での交通広告 大阪梅田駅は、2020年統計では一日あたり平均356,742人が利用し、関西方面で最も利用人数の多いスポットであり(甲18)、2017年2月13日ないし同月19日の期間中には、大阪梅田駅エリアにおいて請求人商品の大看板が設置され、2018年2月19日ないし同月25日には、阪急梅田百貨店から駅直結の商店街である大阪三番街までの動く歩道において、請求人商品の大看板が掲示された(甲19)。また、2019年2月18日ないし同月24日の期間中には、大阪梅田駅構内の阪急百貨店及び阪急グランドビルの入り口付近に請求人商品の大看板が掲示され(甲20)、2020年2月17日ないし同月23日には、大阪梅田駅と阪急百貨店を結ぶ通路に請求人商品の広告ポスター設置された(甲21)。 (エ)福岡博多駅及び名古屋栄駅での交通広告 福岡博多駅には2019年2月4日ないし同月10日、名古屋栄駅には2019年2月25日ないし同年3月3日の期間、請求人商品の宣伝ポスターが掲示された(甲22、甲23)。これらの駅が、九州や名古屋地区で最も利用人数が多いスポットであることはいうまでもない(甲24、甲25)。 請求人は、このような利用者の多いスポットにおける屋外広告活動に多大な費用をかけており、2019年に東京駅、福岡博多駅、名古屋栄駅、大阪梅田駅で行った屋外広告キャンペーンにかかった宣伝広告費用は約1,600万円であった(甲26)。 (オ)インターネットや雑誌における請求人商品に関する記事 請求人商品の発売以来、数多くの雑誌及び書籍の記事で、美容師、スタイリスト、美容スペシャリスト、女優やモデルなどのお勧めヘアケア商品等として度々請求人商品は取り上げられ(甲27〜甲123、甲198〜甲203)、ウェブ記事(甲124〜甲159)やオンライン記事(甲160〜甲167)でも請求人商品は取り上げられている。 また、比較的年齢層の高い40代から60代向けの女性誌で、エイジングケアや白髪ケア用のヘアケア商品として度々請求人商品が取り上げられている(甲168〜甲179)。さらに、女性誌に限らず男性ファッション誌(甲180)、美しい髪を作るためのノウハウ本や、ヘアスタイルのカタログブック(甲181〜甲186)でも請求人商品は取り上げられている。請求人商品を取り上げたヘアカタログ本には、男性向けヘアカタログブックも含まれる(甲187〜甲189)。 美容関連の週刊情報誌である「WWDビューティ」にも、複数回請求人商品が紹介された(甲190〜甲192)。「WWDビューティ」は毎年、人気サロン50店の美容師が選ぶ、「ヘアサロン版ベストコスメアワード」を発表しており、請求人商品は、2017年及び2018年はシャンプー・インバストリートメント部門1位、2019年はシャンプー部門、頭皮・育毛ケア部門1位、2020年はシャンプー・インバストリートメント部門、頭皮・育毛ケア部門の第1位、2021年はシャンプー・インバストリートメント部門第1位、アウトバストリートメント部門第2位に選出された(甲193〜甲197)。 関西地方の読売テレビにおいて、毎週水・金・日曜日に放送されているテレビ番組「anna」において、2019年12月20日放送回「毎日のヘアケア、ちゃんとできてる?プロが教えるおすすめヘアアイテム」で請求人商品が紹介された(甲204)。 このような数多くの雑誌・ネット記事、書籍、メディアにおいて請求人商品が紹介される際には、必ず請求人商品の画像を伴う。請求人商品には、すべてにおいて、やわらかくしなやかな曲線の輪郭の中央部分に大きく「Aujua」の文字が描かれるという、非常にシンプルで洗練されたデザインが採用されている。請求人商品の紹介記事を目にした需要者には、「Aujua」の文字デザインが強い印象を残すと思われ、需要者はこの文字をもって請求人商品を識別すると思われる。 上記の請求人商品に関する、「Aujua」の文字を使用した請求人による大々的な宣伝広告活動や数多くの紹介記事に照らせば、「Aujua」のブランド名を表示した引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において取引者、需要者の間で人気の高い請求人商品の識別標識として周知著名となっていることは明らかである。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性 ア 本件商標について 本件商標は、欧文字「Aujud」からなる商標であり、特定の観念は生じず、本件商標からはその文字に相応して「オージュド」の称呼が生じる。 本件商標に係る指定商品のうち「化粧品,口紅,ティッシュ又は不織布に浸み込ませた化粧水,化粧せっけん,ボディーローション,美容用及びボディ用化粧品,毛髪用及び頭皮用の化粧品,化粧品・せっけん類及び歯磨き,洗濯用剤,手用クレンザー,皮膚の手入れ用化粧品,植物由来の化粧品,ペット用化粧品,子供用化粧品,精油,パッド・ティッシュまたは布に染み込ませたクレンジング用化粧品,香料,薫料及び香水類,化粧落としを染み込ませたパッド状の化粧品」は、引用商標1に係る指定商品と同一又は類似である。 イ 本件商標と引用商標との比較 引用商標1においては、片仮名「オージュア」部分は欧文字「AUJUA」の読みであると認識されるものであり、引用商標の要部は欧文字「AUJUA」部分となる。本件商標と引用商標1の「AUJUA」部分を外観上比較すると、いずれも普通に用いられる書体をもって表された文字のみからなり、最初の4文字のつづりが「Auju」と「AUJU」で共通し、語尾の「d」と「A」が相違するのみである。両者は外観において相当程度近似した印象を受け、相紛らわしいというべきである。 本件商標と引用商標1の要部のつづりは1文字だけしか相違せず、全体的に観察して外観的に類似することは明らかである。 本件商標と引用商標1の称呼について比較すると、最初の2音「オージュ」は共通しており、語尾の「ド」と「ア」のみが異なる。通常、語尾音は弱く発音され明瞭に聴取され難く、その差異が称呼全体に及ぼす影響は極めて小さいものである。また、両商標とも強く発音する箇所は語頭の「オ」の部分であることから、両商標は全体として一連に称呼すると、語調、語感が極めて近似し、互いに聞き誤るおそれがあるものというべきである。 さらに、両商標とも、共に特定の語義を有しない造語と解され、観念上明瞭な差異により区別されるとはいえない。 したがって、本件商標と引用商標1は外観及び称呼において、明らかに類似する商標である。 ウ 判例及び審決例 過去に構成文字がほぼ共通し語尾の1音のみが相違するにすぎない商標同士を、互いに相紛らわしく類似すると判断した審決(甲206、甲207)や判決(甲208)が存在する。 これらの審決や判決に鑑みれば、本件商標と引用商標1の「AUJUA」においては、2文字目以降が大文字と小文字の差異があるとしても、5文字と同じ文字数から構成され、文字の相違は最後の5文字目のみであるため、5文字目が「全体に埋没して、外観上、両商標を見誤ることも多いとみるのが相当である。」と判断されるべきである。 エ まとめ 以上より、本件商標の指定商品中「化粧品,口紅,ティッシュ又は不織布に浸み込ませた化粧水,化粧せっけん,ボディーローション,美容用及びボディ用化粧品,毛髪用及び頭皮用の化粧品,化粧品・せっけん類及び歯磨き,洗濯用剤,手用クレンザー,皮膚の手入れ用化粧品,植物由来の化粧品,ペット用化粧品,子供用化粧品,精油,パッド・ティッシュまたは布に染み込ませたクレンジング用化粧品,香料,薫料及び香水類,化粧落としを染み込ませたパッド状の化粧品」と引用商標1の指定商品は類似し、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛らわしい類似する商標であるといえるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 ア 引用商標の周知性について 上記(1)のとおり、引用商標は請求人が2010年に発売し、売上高が高いヘアケア商品のブランド名として周知著名性を獲得している商標である。特に、「Aujua」の文字(引用商標2)は請求人商品の包装の中央部分に目立つ態様で必ず表示され、請求人による宣伝広告活動において頻繁に使用されてきたため、周知度が極めて高い。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 引用商標2と本件商標を比較すると、「Auju」の部分までが同一であり、最後の文字が「a」と「d」で異なるのみである。アルファベットの小文字「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「a」と「d」は外観上極めて類似度が高い。「Aujud」を注意深く観察したときには、最後の文字を「d」と認識できるとしても、いずれの商標の需要者も一般消費者を含むものであって、特別高い注意力をもって常に商標に接するとはいえない点をも考慮すれば、やや離れた場所や瞬間的に目にしたときには「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが極めて高い。 引用商標1についても、要部の「AUJUA」と本件商標とは部分的に大文字と小文字の違いはあれども、最初の4文字が同じであり、使用されている文字及びそのつづりが近似しているといえる。特に、本件商標及び引用商標に係る需要者には注意力がそれほど高くない一般消費者が含まれることを前提に検討すると、アルファベットからなる商標については、大文字と小文字とを相互に変換して表記することが一般に行われている。アルファベットが大文字であるか小文字であるかの違いは、それほど強く印象付けられるものではないと考えられるため、引用商標1と本件商標の外観についても、互いに相紛らわしいものであるというべきである。 また、本件商標からは「オージュド」との称呼が生じ、引用商標からは「オージュア」の称呼が生ずるところ、これらはいずれも4音からなるものである上、印象に残りやすいといえる最初の3音が共通する。最後の音は通常はそれほど強く発音されないことからすれば、本件商標及び引用商標の称呼を明確に区別することが困難な場合もあるというべきである。 以上より、本件商標及び引用商標は外観及び称呼が互いに相紛らわしいものであり、本件商標及び引用商標に係る需要者には一般消費者が含まれるものであるところ、一般消費者が通常有する注意力を踏まえると,外観及び称呼が互いに相紛らわしい両商標を取り違えることは十分にあり得るといえることからすれば、両商標の類似性の程度は相当程度高いというべきである。 ウ 引用商標の独創性 上記(1)イで述べたとおり、「AUJUA/オージュア」は請求人が作った創作性の高い語であり、請求人以外の第三者により商標として採択される可能性の低い語である。特に、区分に関係なく、最初の4文字を「Auju」又は「AUJU」とする商標登録は、本件商標の権利者の商標登録は4件検知された一方で、請求人の商標登録は35件も検知されており、それ以外の者による商標登録はないという点に鑑みても、引用商標の独創性が極めて高いことは明らかである。 エ 本件商標の指定商品と引用商標に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに需要者の共通性について 本件商標の指定商品のうち「化粧品,口紅,ティッシュ又は不織布に浸み込ませた化粧水,化粧せっけん,ボディーローション,美容用及びボディ用化粧品,毛髪用及び頭皮用の化粧品,化粧品・せっけん類及び歯磨き,手用クレンザー,皮膚の手入れ用化粧品,植物由来の化粧品,ペット用化粧品,子供用化粧品,精油,パッド・ティッシュまたは布に染み込ませたクレンジング用化粧品,歯磨き,香料,薫料及び香水類,化粧落としを染み込ませたパッド状の化粧品」は、「せっけん類,化粧品,歯磨き,香料,薫料」の範疇の商品であるが、引用商標に係る商品(ヘアケア商品、化粧品)とは、共に容貌・容姿を美しくすることを目的とする商品、身だしなみを整える商品であって、商品の生産、販売部門、用途、流通経路、販売場所を共通にする関連性の程度が高いものが含まれる。そして、両商品の需要者は美容業界の関係者や一般消費者であり、需要者を共通にする。 また、本件商標の指定商品中「化粧用のパッド状コットン」についても、ヘアケア商品や化粧品とは、容貌・容姿を美しくすることを目的とする商品に関連するものである。特に、スキンケア用品を提供する会社が「化粧用のパッド状コットン」を提供している実情があることに鑑みても(甲209〜甲211)、引用商標にかかる商品との関連性は高いといえる。 さらに、本件商標の指定商品中「洗濯用剤」は、ヘアケア商品や化粧品と同じく一般消費者を対象としており、スーパーマーケットやドラッグストアなどではどちらの商品も、「日用消耗品」のコーナーで取り扱われている。また、同一事業者により化粧品・ヘアケア用品と洗濯用剤が扱われる取引の実情も見られる(甲212〜甲214)ため、これら商品の関連性は高いといえる。 オ 出所の混同のおそれ 本件商標の指定商品は「せっけん類,化粧品」等を含む第3類の指定商品であるところ、請求人はヘアケア関連商品のみならず、スキンケア用品といった本件商標の指定商品と同一又は類似する商品も多数展開している実情がある(甲215)。本件商標と、周知著名となっている引用商標の類似性の高さや、「AUJUA/オージュア」の独創性の高さ、本件商標の指定商品と引用商標にかかる商品との関連性の高さや需要者の共通性も考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときには、これに接する需要者は引用商標を連想・想起し、当該商品が請求人の取り扱う商品であると誤信するか、又は請求人との間に密接な関係を有する者の業務に係る商品であると誤信させ、混同を生じさせるおそれが極めて高いものである。 カ まとめ 上述のとおり、請求人は引用商標を、ヘアケア関連商品の分野で継続的に使用してきたのみならず、引用商標の認知度向上のため、多大な費用・労力をかけて宣伝広告活動を行ってきた結果、我が国において引用商標は周知著名なものになっている。本件商標の指定商品と請求人商品の関連性、需要者の共通性の程度はいずれも高く、また、請求人はヘアケア商品だけでなくスキンケア用品も展開しているという取引の実情がある。これらを踏まえ、本件商標の指定商品の需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者がこれをその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が引用商標2を想起、連想し、その商品が他人(請求人)あるいは同人と経済的もしくは組織的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 2 答弁に対する弁駁 (1)「商標法第4条第1項第11号に該当するものではない」に対する反論 ア 被請求人によれば、引用商標のうち「オージュア」の文字が商標の要部とのことである。日本で登録された商標には、引用商標のように、欧文字と片仮名とを上下2段に書してなる商標が多数あり、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したものと容易に理解されるものである、とする審決・決定は多数ある。 引用商標においては、下段の片仮名「オージュア」は、上段の「AUJUA」の読みであることは自然に読み取れるため、引用商標と他の商標との対比において、「AUJUA」部分を引用商標の要部とすることに何ら不自然なことはないと考えられる。一方で被請求人は、商標の要部の認定において、具体的に「片仮名の方が要部である」と判断された事例などを挙げてはいない。 イ 被請求人は「請求人は、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「d」と「a」は外観上極めて類似度が高い」と主張して、それらの文字を見誤るおそれが極めて高いと述べているが、このような評価内容は、我が国の英語教育や需要者の英語力を愚弄して過小評価する見解である。」と述べている。 請求人は、上記1(3)イ(商標法第4条第1項第15号該当性の章)において、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「d」と「a」は外観上極めて類似度が高い」ため、「やや離れた場所や瞬間的に目にしたときには「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが極めて高い。」と述べた。この主張は、請求の理由において、本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性の章で述べられていないため、被請求人は答弁する項目を誤っている。さらに、被請求人が述べるように、「それらの文字を見誤るおそれが極めて高い」とは述べていない。 被請求人は、文字の末尾が「a」と「d」の違いによって、意味内容が異なるものもあり、よく認知されていると述べ、例として「cold」と「cola」を挙げている。 しかし、「Aujud」と「Aujua」はいずれも既成語ではなく、特定の観念を生じない一方で、「cold」と「cola」は平易な英語であって被請求人が認めるとおり意味内容が異なることに鑑みれば、「cold」と「cola」を区別できることと、「Aujud」と「Aujua」が区別できるかは関連性がない。被請求人は「やや離れた場所や瞬間的に目にしたときには「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが極めて高い。」については何ら答弁していない。 ウ 被請求人は、商標の称呼が類似するケースとして、商標法第4条第1項第11号の特許庁審査基準(以下「審査基準」という。)で挙げられた例を引用し、「本件商標(オージュド)と引用商標(オージュア)では、上記のように称呼が類似するといったケースに該当しない。」と述べている。審査基準に挙げられた例はあくまで例示であり、これに該当しなくても、称呼上類似とされた決定・審決は数多く存在する。 請求人は請求の理由において、商標法第4条第1項第11号の審査基準で挙げられた、商標の称呼が類似するケースに完全には該当しないものの、称呼が類似するとされた審決例を挙げたが、これに対しては請求人は何ら反論していない。請求人の本件商標と引用商標が称呼上類似しないとの主張は十分な根拠が示されていない。 エ 被請求人は、本件商標について、「被請求人によればフランス語で今日を意味するaujourd’huiからインスピレーションを得て作った造語で、明るい朝の希望と新しい出発を意味するものである。」と述べている。しかし、「aujourd’hui」はフランス語で「今日、本日、昨今は」などという意味であって(甲217)、「明るい朝の希望と新しい出発」を意味しない。さらに、「aujourd」と「aujud」は「o」と「r」の有無の差異がある。「aujourd’hui」が日本人によく知られたフランス語ではないため、「o」と「r」がないことで、本件商標に接した取引者・需要者が「aujourd’hui」を想起することはない。被請求人は、「Aujud」は一定の観念を生じない造語であることを認めたことにほかならず、「Aujud」は、他の商標との対比において観念を比較することができないことが明らかになったまでと考えられる。 オ 被請求人は、本件商標と引用商標とが非類似であることの審査事例として、商標登録例を挙げているが、当該登録例は無効審判が現在係属中である。また、本件商標と、請求人の商標の併存例についても述べるが、商標の類似や混同のおそれは指定商品との関係から判断すべきものであるので、第21類の商品について本件商標と請求人の商標が並存して登録されていることを主張することは、本件無効審判での反論としては、適当ではない。さらに、本件商標と、請求人の「Aujua」と他の語の結合商標の併存登録例を挙げているが、このような併存登録例が、本件商標と引用商標とを非類似とすべき根拠となる理由は何ら述べられていない。 (2)「商標法第4条第1項第15号に該当するものではない」に対する反論 ア 被請求人は、「事実として、被請求人に対して取引関係者や顧客から、請求人との関係があるか否かといった問い合わせ・苦情は今日まで1件も無い状況である。(中略)実際は、そのような混同はこれまでに無く、今度もそのような混同を生ずることは無い。」と主張している。商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる「おそれ」がある商標に対して適用される規定であり、実際に混同を生じたかという事実は要件とされていない。被請求人に対して請求人と関係があるかという問い合わせがないことは、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するかの検討においては重要ではない。 イ 被請求人は、「美容院などの事業者は、単なる消費者とは異なり、商品検討や購入の行為自体も業務として行っているので、その情報収集やブランド認識もプロとして行っている。このような取引事情からも商標法第4条第1項第15号の規定にある混同を生ずる余地はない。」と述べている。引用商標の一部の需要者に限定して混同の有無を評価しているようであるが、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないことの反論として、需要者層の認定を誤っている。本件商標の需要者には「美容院などの事業者」は含まれるのかという点や、請求人の、「両商品の需要者は美容業界の関係者や一般消費者であり、需要者を共通にする」に対しては、何ら反論はされていない。一般消費者について論ずることなく、「美容院などの事業者」が、「その情報収集やブランド認識もプロとして行っている」ことのみ主張することは、本件商標が引用商標との間で混同を生ずるか否かの検討においては失当である。 ウ 被請求人は、「商標法第4条第1項第15号の規定の判断にあたっては、個別具体的な取引事情に基づいてなされるべきである。請求人が広告宣伝している商品は業務用のシャンプー・ヘアケア商品であり、被請求人の商品は痩身やダイエットに関するものである。」と述べているが、商標法第4条第1項第15号の審査基準に、「請求人(先行商標の権利者)と被請求人(出願人)の事業を具体的に考慮する」などと規定されていない。本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないとの主張において、「請求人が広告宣伝している商品は業務用のシャンプー・ヘアケア商品であり、被請求人の商品は痩身やダイエットに関するものである。」という点は、根拠として不十分である。 スキンケア商品やヘアケア商品を扱う会社が、痩身やダイエットに関する商品を扱うことは珍しくない(甲218、甲219)。請求人も美容サプリメントを販売している(甲220)。請求人が美容に関して体の内側からアプローチする商品を販売していることに鑑みても、本件商標と引用商標が使用される商品の需要者は共通するといえる。この点は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することの評価において重要な事項である。 エ 被請求人は、「(中略)シャンプー・ヘアケア商品とスキンケア化粧品・メイクアップ化粧品、香料、歯磨きなどが同じブランドでシリーズ化していることはない」と述べている。「同じブランドでのシリーズ化」はあまり見られないものの、請求人を始めとして「シャンプー・ヘアケア商品とスキンケア化粧品・メイクアップ化粧品、香料、歯磨き」などを「同じ事業者」が扱うことは珍しくない。そうであれば、本件商標が使用される商品に接する需要者層と、引用商標が使用される商品に接する需要者層は共通するため、引用商標の周知著名性や独創性に照らせば、本件商標がその指定商品に使用された場合、需要者は、当該商品が請求人の取り扱う商品であると誤信するか、又は請求人との間に密接な関係を有する者の業務に係る商品であると誤信し、混同を生ずるおそれが極めて高いものである。 オ 被請求人は、「Aujud」のブランドは、日本国内においても周知であると述べ、その証拠としては検索エンジンGoogleで、Aujudを検索すると、第1頁に表示される全ての情報が被請求人のものであることが提出されているが、商標の周知性を立証するための日本での売上高、販売店舗、宣伝広告費用、宣伝広告の情報などは一切示されていない。被請求人が提出した検索エンジンGoogleでのAujudの検索で上がってきた情報を見る限り、被請求人は、韓国では痩身クリニックを置いているようであるが、日本では店舗などはなく、日本語でウェブサイトやブログ、インスタグラムなどを提供しているのみのようである。本件商標が周知であることの根拠が不十分であることに鑑みても、「「Aujud」のブランドも一定の周知性を持って需要者に認識されていることからも、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない」との被請求人の主張は失当である。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)商標法第4条第1項第11号に該当するものではないこと 外観の観点では、引用商標「Aujua\オージュア」のうち、「オージュア」の文字が大きいものであり、また、国内消費者としては普段慣れ親しんでいる片仮名の文字に注意を惹くため、「オージュア」の文字が商標の要部といえる。 したがって、文字の種類も異なることから、すべて文字が異なるので、外観においては全く一致せず、非類似である。 仮に、「Aujua」の文字に着目したとしても、両者の外観は、5文字中1文字が異なるもので、後尾の文字が異なる。文字の先頭や後尾は、看者が注目する点でもあるので、後尾の文字が異なることは相当のインパクトがある。 また、請求人の「Aujua」は、真ん中の「j」の文字を中心に「u」の文字で囲まれて、さらにその「uju」の文字を中心として「a」の文字で囲んだ構成となっており、文字配列に法則性をもった幾何学的なデザインともいえるものとなっている。その点で、「Aujud」は、そのような法則性のないものとなっており、外観の印象が大きく異なる。 さらに、請求人は、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「a」と「d」は外観上極めて類似度が高い」と主張して、それらの文字を見誤るおそれが極めて高いと述べているが、このような評価内容は、我が国の英語教育や需要者の英語力を愚弄して過小評価する見解である。 アルファベットの小文字などは小学生(場合によっては未就学児童)も習得するものであり、「a」を先頭とする文字が「d」が付くことなどによって、意味が変わる単語(art(芸術)/dart(ダーツを投げる)、ash(灰)/dash(ダッシュ))も多く、多くの需要者も「a」と「d」の差異はよく知っている。また、文字の末尾が「a」と「d」の違いによって、意味内容が異なるものもあり、よく認知されている(cold(寒い)/cola(コカ・コーラの愛称))。 なお、請求人は、「特に、本件商標と引用商標においては、最初の文字だけが大文字であり、後の文字は小文字である点も共通していることを鑑みれば、さらに外観上の類似度は高まるといえる」と主張しているが、通常、英単語で先頭を大文字にするルールは、一般的に「大文字始まり(Title Case)」として知られているもので、何らの特徴的なものではない。 外観においては、先に述べた「オージュア」の文字を除外して判断することは適当ではないことも含めて、上述した各理由を総合的に考えても、類似するものではないことは明確である。 次に、称呼の非類似について述べるが、本件商標は「オージュド」、引用商標は「オージュア」と発音される。このように商標の文字数が少ないこともあり、明確に区別できる称呼となっている。 したがって、両商標は称呼においても類似しない。 さらに、観念について説明する。まず、引用商標の「Aujua/オージュア」は、請求人の説明によれば、同請求人のホームページにて、「独特の雰囲気/オーラがある」という意味を持つ英単語の「aura(オーラ)」と、「歓喜に満ちる」という意味を持つ英単語の「jubilant(ジュビラント)」を組み合わせた請求人による造語であり、創作性の高い語である」と述べている。ちなみに、そのような観念からも「Aujua」の語尾が「a」であることに強い意味があるともいえる。 他方で、本件商標「Aujud」は、被請求人によればフランス語で今日を意味するaujourd’huiからインスピレーションを得て作った造語で、明るい朝の希望と新しい出発を意味するものである。ちなみに、そのような観念からも「Aujud」の語尾が「d」であることに強い意味があるともいえる。 よって、両商標は、観念の観点からも、非類似といえる。 上述したように、両商標は、外親、称呼、観念の観点からもそれぞれ非類似であり、同時に総合的に考慮しても、非類似であることは明確である。 そして、AujudとAujuaの文字は相互に複数回にわたって審査された結果、数多くの登録商標が存在しており、両商標が非類似であることは、多くの審査事例からも裏付けられている。 したがって、商標法第4条第1項第11号違反を理由とする無効理由は存在しないものである。 (2)商標法第4条第1項第15号に該当するものではないこと 請求人は、自社の「Aujua」の商標を付したシャンプーやヘアケア用品について一定程度の広告宣伝等の活動をすることによって周知性を獲得していることから、被請求人の「Aujud」の使用を請求人の業務と混同のおそれがあると述べている。 しかし、まず、事実として、被請求人に対して取引関係者や顧客から、請求人との関係があるか否かといった問い合わせ・苦情は今日まで1件も無い状況である。請求人の主張でも、このような具体的な問い合わせ・苦情があったことの言及はないことから、実際は、そのような混同はこれまでに無く、今度もそのような混同を生じることは無い。 繰り返しになるが、引用商標「Aujua」と本件商標「Aujud」は非類似の関係にあり、請求人は、美容院など向けの業務用のシャンプーやヘアケア商品を専門に取り扱っている。美容院などの事業者は、単なる消費者とは異なり、商品検討や購入の行為自体も業務として行っているので、その情報収集やブランド認識もプロとして行っている。このような取引事情からも、商標法第4条第1項第15号の規定にある混同を生じる余地はない。 また、請求人は、いずれの指定商品も、美を目的としており、売り場なども同じであるので、混同を生じるおそれがある旨を主張している。 しかし、商標法第4条第1項第15号の規定の判断にあたっては、個別具体的な取引事情に基づいてなされるべきである。そうすると、請求人が広告宣伝している商品は業務用のシャンプー・ヘアケア商品であり、被請求人の商品は痩身やダイエットに関連するものである。 さらに、一般的に「シャンプー、リンス、コンディショナー」は、同じブランドで販売している事例は多いが、シャンプー・ヘアケア商品とスキンケア化粧品・メイクアップ化粧品、香料、歯磨きなどが同じプランドでシリーズ化していることは無い。このような具体的な取引事情などを鑑みると、本事案においては、商標法第4条第1項第15号に規定する混同を生じるものではないことが明白である。 加えて、被請求人の「Aujud」のブランドは、日本国内においても周知となっている事情がある。著名な検索エンジンであるグーグルにて、「Aujud」を検索すると、第1ページに表示される全て情報が被請求人のものとなっている(乙1)。顧客の美容・痩身等を目的として、施術、投薬、食事栄養指導、サプリメント提供、スキンケア美容、マッサージ、カウンセリングなどを提供している(乙2)。 被請求人の「Aujud」のブランドも一定の周知性を持って需要者に認識されていることからも、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない。 したがって、商標法第4条第1項第15号違反を理由とする無効理由は存在しないものである。 第5 当審の判断 1 利害関係について 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 2 商標法第4条第1項第11号該当性 (1)本件商標 本件商標は、前記第1のとおり、「Aujud」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、該文字から「オージュド」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 そうすると、本件商標は「オージュド」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標1 引用商標1は、前記第2の1のとおり、「AUJUA」の欧文字及び「オージュア」の片仮名を上下2段に横書きした構成からなるところ、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと無理なく理解できるものである。 また、「AUJUA」の欧文字及び「オージュア」の片仮名は、一般の辞書等に載録がないことから、特定の意味合いを生じることのない一種の造語を表したものとして認識されるというのが相当である。 そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して「オージュア」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標1との類否について 本件商標と引用商標1は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、両者の外観については、1段書きと2段書き、片仮名の有無及び欧文字の大文字と小文字からなるものと大文字のみからなるもので相違し、また、欧文字の語尾における「d」と「A」の文字の差異を有するものであるが、5文字という短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないから、両者は、外観上、判然と区別できものである。 次に、称呼については、本件商標から生じる「オージュド」の称呼と引用商標1から生じる「オージュア」の称呼とは、語頭から3音目までの「オージュ」の音を共通にし、語尾の「ド」と「ア」の音の差異において相違するところ、「ド」の音は濁音で強く発音される音であり、「ア」の音は明瞭に響く開放音であるから、全体で4音と短い音構成からなる両称呼においては、該相違音が称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するときは語調、語感が異なり、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念については、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、比較することはできないものである。 そうすると、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 したがって、本件商標の指定商品が、引用商標1の指定商品と同一又は類似する商品を含有するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 請求人は、1960年に設立され、ヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤、パーマ剤、シャンプー、ヘアトリートメント、薬用発毛促進剤、スキンケア・メイクアップ化粧品の製造および販売を主な事業内容としており(甲2)、美容師が施術に使う業務用品と、美容室で販売するサロン専売品の分野で2割弱のシェアを持ち、2021年12月期の売上高は415億円である(甲3)。 イ 請求人は、引用商標1の商標権者であり(甲4)、また、請求人は、引用商標2を、美容室専売ヘアケア商品のブランド名として、2010年よりシャンプーやトリートメント等の請求人商品について使用している。請求人商品は、現在では5シリーズ、16ライン、99アイテムが存在し、請求人の主力商品となっている(甲5、甲6、甲205、請求人の主張)。 ウ 請求人は、一定期間請求人商品に関する研修を受け、試験に合格した美容師を「Aujuaソムリエ」と認定しており、Aujuaソムリエは、提携した美容室において、請求人商品を使用したヘアケア・美容に関するカウンセリングを提供している(甲7〜甲10)。 しかし、「Aujuaソムリエ」の有資格者数、提携美容室の数及びその所在地等は不明である。 エ 売上高、販売窓口軒数 請求人商品は、2016年に販売高が50億円を超え、販売窓口軒数は2,500軒以上、2021年の販売高は約97億円であり、販売窓口軒数は約5,000軒であった(甲12)。 しかし、その販売高の多寡を評価し得る市場占有率等の証拠の提出はない。 オ 宣伝広告活動 請求人は、2018年ないし2020年の期間(主に2月)に、東京都銀座駅周辺、銀座ソニービル前、東京駅並びに大阪市大阪梅田駅、福岡市博多駅及び名古屋市栄駅等において、請求人商品の画像及び「Aujua」の文字を表示した広告看板を設置し、請求人商品の宣伝広告を行ったことがうかがえる。また、2019年2月(一部3月3日まで。)に東京駅、福岡市博多駅、名古屋市栄駅、大阪市大阪梅田駅で行われた「milbon企業告知」を広告内容とする宣伝広告の費用は、約1,600万円であった(甲15〜甲17、甲19〜甲23、甲26、請求人の主張)。 カ インターネットや雑誌等における請求人商品に関する記事 請求人商品は、2016年ないし2021年の期間に発行又は公開された美容雑誌、女性ファッション雑誌、情報誌等の雑誌(甲27〜甲123、甲168〜甲180、甲190)やそのウェブ記事等(甲124〜甲167、甲191、甲192)、ヘアカタログ等の書籍(甲181〜甲189)において、美容師、スタイリスト、美容スペシャリスト、女優やモデルなどのお勧めヘアケア商品として複数回紹介された。 しかし、上記請求人商品に関する記事は、他社の商品とともに掲載されているものが多く、請求人商品が格別目立つように記載されているものでもないことに加え、その紹介においては、例えば「サロン専売品」、「美容室専売品」などと記載されている。 キ 上記アないしカからすれば、引用商標2は、2010年以降、シャンプーやトリートメント等の請求人商品について使用されており、請求人商品の2021年の販売高は約97億円であること、2018年ないし2020年の期間に、主要都市駅で請求人商品に係る宣伝広告活動が行われたこと、また、美容雑誌、女性ファッション雑誌を中心とした雑誌やウェブ記事等において、2016年以降、請求人商品が継続的に紹介されていることからすれば、請求人商品に使用されている引用商標2は、美容業界や美容に関心の高い者の間で、ヘアケア商品の名称として一定程度認識されているとはいえる。 しかしながら、請求人の提出した証拠からは、我が国における請求人商品の具体的な市場占有率や宣伝広告の全体の量が不明であることに加え、請求人商品は美容室専売品であり、「シャンプー,トリートメント」等の主な需要者である一般消費者が接する機会の少ないものであることから、引用商標2が、本件商標の指定商品の需要者である一般消費者の間でも広く認識されているとまでいうことはできない。 また、引用商標1の使用は見当たらない。 その他、引用商標の周知・著名性を客観的に把握することができる証拠は見いだせない。 以上からすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られているものということはできない。 (2)本件商標と引用商標との類似性の程度について ア 本件商標と引用商標1の類否について 本件商標と引用商標1の類否については、上記2(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、類似性の程度は低いといえるものである。 イ 本件商標と引用商標2の類否について 引用商標2は、上記第2の2のとおり、「Aujua」の欧文字からなるところ、該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、該文字から「オージュア」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 そして、本件商標と引用商標2の類否について検討すると、両者の外観については、語頭の「Auju」の文字を共通にするとしても、語尾における「d」と「a」の文字の差異を有するものであり、5文字という短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないから、両者は、外観上、判然と区別できる。 次に、称呼については、上記2(3)と同様に、本件商標から生じる「オージュド」の称呼と引用商標2から生じる「オージュア」の称呼は、明瞭に聴別し得る。 さらに、観念については、本件商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるのから、両者は、観念上、比較することはできないものである。 そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、類似性の程度は低いといえるものである。 ウ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標というべきものであり、別異の商標であるから、その類似性の程度は低いものである。 (3)商品の関連性及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品は、第3類「化粧品,せっけん類」等を含むものであり、請求人商品は、「シャンプー,トリートメント」等の商品であるところ、両者は、生産・販売部門、用途、需要者を同じくする同一又は類似の商品であり、その関連性は高いといえるとともに、取引者及び需要者の範囲も共通する。 (4)出所の混同のおそれについて 上記(1)ないし(3)を総合的にみれば、本件商標に係る指定商品と請求人の業務に係る請求人商品との関連性が高く、その需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができないものであって、かつ、本件商標と引用商標とは、類似性の程度は低いものである。 してみれば、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者は、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 (5)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-01-30 |
結審通知日 | 2024-02-06 |
審決日 | 2024-03-05 |
出願番号 | 2020151117 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
Y
(W03)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
石塚 利恵 小俣 克巳 |
登録日 | 2021-12-02 |
登録番号 | 6479805 |
商標の称呼 | オージュド、アウジュド |
復代理人 | 桶川 美和 |
代理人 | 塚田 美佳子 |
代理人 | 山田 薫 |
代理人 | 新保 斉 |