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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W03 |
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管理番号 | 1409416 |
総通号数 | 28 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-04-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-12-23 |
確定日 | 2024-03-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6628777号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6628777号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6628777号商標(以下「本件商標」という。)は、「LASH AUTHENT ラッシュオーセント」の文字を横書きした構成からなり、令和4年2月25日に登録出願、第3類「まつ毛用化粧品」を指定商品として、同年6月29日に登録査定され、同年10月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第5144265号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:「オーセント」の片仮名及び「AUTHENT」の欧文字を二段に横書きしてなるもの 登録出願日:平成19年12月13日 設定登録日:平成20年6月20日 指定商品:第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」 2 登録第5207445号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:「AUTHENT」の文字を標準文字により表してなるもの 登録出願日:平成20年7月3日 設定登録日:平成21年2月20日 指定商品:第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」 上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号 本件商標は、引用商標に類似する商標であって、同商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものである。 (1)商品の類否 本件商標の指定商品「まつ毛用化粧品」(以下「申立商品」という場合がある。)と申立人が所有する引用商標(甲2、甲3)の指定商品とは、同一の類似群コード(04C01)が付与されるものであり、特許庁における商標登録審査上、類似の商品として取り扱われる。 また、申立商品は、その文言上、引用商標の指定商品「化粧品」に含まれることは明らかである。 よって、申立商品と引用商標の指定商品とは同一・類似である。 (2)商標の類否 ア 商標の要部 本件商標の構成中、「LASH」及び「ラッシュ」は、化粧品の分野においては「まつ毛」の意味合いにて通用する英単語である。この点、まつ毛に関連する化粧品について、「LASH」及び「ラッシュ」なる言葉が多用されており、同商品分野の需要者・取引者においては、「LASH」・「ラッシュ」といえば「まつ毛」と認識されている事は、特段の証拠を示すまでもなく顕著な事実である。また、「LASH」又は「ラッシュ」を構成に含み、標章全体として「化粧品」の品質等と理解できる説明的な意味合いを生じる商標に係る登録出願が、自他商品識別力の欠如を理由として枚挙に暇がなくその登録を拒絶されている事実がある(甲4)。 よって、このような事情と本件商標の指定商品が「まつ毛用化粧品」であることからしても、同商品について本件商標が使用されれば、その構成中「LASH」及び「ラッシュ」の文字は、「まつ毛」に用いるための化粧品であること、即ち、化粧品の用途や使用箇所等を示す単なる説明であり、自他商品の識別標識としては認識されないし機能し得ない。 また、本件商標と引用商標が共通して構成に有する「AUTHENT」及び「オーセント」の文字は、辞書等には掲載されない「造語」であり(甲5)、申立人が作り、化粧品の分野にて先行して継続使用する言葉である。そして、造語であり特段の意味合いを有しない「AUTHENT」及び「オーセント」の文字は、「化粧品」との関係において極めて強い自他商品識別力を有する。この点、後述する申立人による「化粧品」についての引用商標の使用実績・広告実績からも、少なくとも「化粧品」の分野において「AUTHENT」及び「オーセント」といえば、申立人の提供に係る商品の商標として理解し通用している事実がある。 このような本件商標と引用商標の構成文字のそれぞれが持つ自他商品の識別を図るための一要素としての独自性、すなわち、自他商品の識別力には、既成語である「LASH」及び「ラッシュ」と、造語である「AUTHENT」及び「オーセント」間にて顕著な差異が存在する。 以上より、本件商標と引用商標の自他商品識別力を発揮する商標の要部は、「AUTHENT」又は「オーセント」であることは明らかである。 イ 商標の類否 上記要部認定を前提として、本件商標と引用商標との類否を検討する。 まず、対比する本件商標と引用商標の要部は、「AUTHENT」及び「オーセント」で共通するから、同共通する要部より生じる称呼・観念及び外観は、特段の検討を行うまでもなく同一である。 したがって、商標の称呼・観念及び外観からの三点観察からすれば、本件商標と引用商標とは相互に類似の商標と評価すべきである。 さらに、上述のとおり、申立人は、化粧品について引用商標を実際に使用しており、引用商標は申立人の提供に係る商品の出所表示として理解されている取引の実情が存在する。 以上より、引用商標の指定商品「化粧品」に包含されることが明らかである本件商標の指定商品「まつ毛用化粧品」について本件商標を使用した場合には、需要者・取引者が本件商標と引用商標の出所を混同するおそれは不可避である。この点、隔離観察的手法より対比する商標が比較されることを想定すれば、需要者・取引者は、本件商標と引用商標が共通して持つ「AUTHENT」及び「オーセント」の語が持つ強い自他商品識別力より、両商標を混同することは明らかである。 よって、本件商標は、引用商標に類似する。 ウ 小括 以上より、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品又はこれに類似する商品について使用をするものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号 引用商標は、申立人の商標として、広く一般に認識されているから、本件商標は、引用商標を容易に連想させ、本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 (1)狭義の混同 引用商標は、申立人の提供にかかる商品、少なくとも「化粧品」を表示するものとして使用され、我が国における需要者の間に広く認識されている商標である。すなわち、引用商標のこれまでの使用の実績や本件商標及び引用商標が使用される商品の共通性並びに申立人の事業規模及びその周知性に鑑みれば、本件商標は、引用商標を容易に連想させ、本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 申立人は、昭和34年11月17日に設立され、創業から現在に至るまで、商標「メナード」及び「MENARD」の下、国内外にて一貫して化粧品その他商品の製造・販売を行う日本国内でも屈指の化粧品メーカーである(甲7)。そして、前記商標「メナード」及び「MENARD」並びに申立人の周知・著名性については、特許情報プラットフォームJ−PlatPatの日本国周知・著名商標検索にて、これらの商標を確認できることからも明白である(甲9)。 次に、引用商標が使用される申立人の提供に係る化粧品(以下「引用商品」という。)は、平成20(2008)年12月21日に販売が開始され(甲9)、現状は、引用商標に加え、「AUTHENT II」の表示とともに現在に至るまで継続して同商品について使用されている(甲9〜甲13)。 具体的には、引用商標及び「AUTHENT II」は、その使用当初より提供される「クリーム」や「ネックエッセンス」、「オーデパルファム」並びに「フェイスマスク」の提供に伴い継続して使用されている(甲8〜甲13)。 引用商品は、各証拠からも明らかなように、申立人の創立50周年を記念し、申立人が持つ理念やこれまでの研究開発実績を基に誕生した化粧品である。このような性格の申立人を象徴する商品であることから、その宣伝広告の規模は大きく、例えば、申立人の製造・販売に係る化粧品(以下「申立人商品」という。)の訪問販売を行うメナードレディや店舗等の関係者に毎月配布される申立人発行の月刊紙「白ゆり」でも特集が組まれたり、数ページの紙面を用いて大きく取り上げられたり、有名タレントが引用商品を使用している事実を紹介したりといった手法で周知されている(甲9〜甲11、甲14)。 なお、申立人事業の特徴の一つとして、「訪問販売」での商品提供、並びに、自社商品を用いた美容サロンの運営が挙げられるところ(甲15、甲16)、本件異議申立の時点にて、メナードレディと称される申立人商品の訪問販売を行う者は、約69,000人に上る。また、申立人商品の販売業務を行う代行店は、日本全国に約8,780店舗存在し、申立人独自の教育システムにより養成され、申立人商品を用いてエステサービスを提供するエステセラピストの数も、全国約11,000人に上る。その他にも、申立人商品を用いてエステサービスを提供するフェイシャルサロンは全国に約2,900店舗存在する(甲15)。 引用商品は、このような申立人商品の提供に関わる多くの者・店舗向けに周知されるとともに、これらの者や店舗を通じて、需要者・取引者に対しても提供されている。その他にも、本件商標を使用した申立人の提供に係る化粧品(決定注:引用商品と思慮。)は、有名タレントを起用したテレビCMにより日本全国に向けて宣伝・広告されている(甲17)。 また、引用商品の宣伝・広告のためのテレビCMについては、第三者提供の情報からも、継続して放送されていることが確認できる(甲18)。 なお、申立人の提供に係るテレビCMは、毎週月曜日21時のいわゆる月9と呼ばれる人気ドラマが放映される時間帯に多く放送されており、テレビの視聴率の高い時間帯・テレビドラマの合間に、日本全国の極めて多くの需要者・取引者の目に触れている。甲第17号証を含め、引用商品のテレビCMも前記時間帯にて継続的に放送されていた事実がある。 加えて、引用商品は、その商品包装について、世界中のパッケージデザインを対象としたコンペティションとして注目を集める「Pentawards 2009」のLuxury/Cosmeticsカテゴリ一部門にて金賞を獲得した実績を持つ(甲19)。 よって、このような本件商標の使用対象となる化粧品(決定注:引用商品と思慮。)の申立人における位置付けや重要性、同商品の宣伝広告実績、その他の露出が相当数に上ることに加え、周知・著名な申立人商標「メナード」及び「MENARD」とともに使用される引用商標は、需要者・取引者からして申立人の提供に係る化粧品の商標として強く印象付けられていることは明らかである。 したがって、このような状況下で、先行して製造・販売される化粧品に使用される引用商標の存在を知る需要者・取引者が、本件商標を冠し提供される化粧品に接した場合には、申立人の業務に係る化粧品であるとして「直接的に」混同するおそれ、すなわち、「狭義の混同」を生じせしめるおそれがある。 (2)広義の混同 加えて、仮に需要者・取引者が、本件商標が指標する商品は、申立人の提供にかかる商品であるとして「直接的に」混同するおそれはないとしても、上述のとおり、引用商標が少なくとも「化粧品」について需要者の間に広く認識されている商標であることに鑑みれば、本件商標のその指定商品への使用は、申立人の子会社若しくは関連会社の提供に係る商品であるとの緊密な営業上の関係、又は、同一の表示による展開事業を営むグループに属する関係にあると誤信されるおそれ、すなわち、「広義の混同」を生じるおそれがある。 (3)混同を生ずるおそれ ア 本件商標と引用商標との類似性の程度 上述のとおり、本件商標と引用商標とは、同一及び類似の関係にあることは明らかである。 また、本件商標の権利者ウェブサイトでは、「LASH AUTHENT」単独での使用、並びに、同ウェブサイトの内容からすると、「まつ毛」専用の化粧品(美容液)について使用される商標であることが確認できる(甲20)。 このような事実からしても、「LASH AUTHENT」の構成中、「LASH」は同化粧品の使用箇所の説明であり、需要者・取引者の観点からして、「LASH AUTHENT」の構成中「AUTHENT」を自他商品識別力を発揮する商標の要部と理解すると考えることが通常である。 よって、本件商標の権利者の実際の当該商標の使用事実を考慮しても、本件商標と引用商標とは類似する。 イ 引用商標の周知著名性及び表示の独創性の程度 引用商標は、前述のとおり、本件商標の登録出願日の時点における日本全国津々浦々におけるその使用の実績に鑑みれば、「化粧品」の商標として広く認識されており、本件商標を申立商品について使用する行為は、周知な引用商標の顧客吸引力、すなわち、グッドウィルを薄める(希釈する)行為(dilution)に他ならない。 また、上述のとおり、引用商標は、申立人が創出した造り言葉であり、辞書に掲載される既成語ではない。 さらに、申立人は、少なくとも化粧品の分野において、申立人以外の者が「AUTHENT」及び「オーセント」なる商標を使用する事実は不知である。 もっとも、化粧品についての「AUTHENT」及び「オーセント」と同一・類似の商標の使用は、引用商標に係る商標権の侵害行為となるため、申立人にてそのような使用事実を常時監視しているが、そのような例は本件商標の権利者以外に存在しない。 加えて、特許庁における「化粧品」についての商標の登録状況を見ても、本件商標以外に「AUTHENT」及び「オーセント」のみ又はこれらの語を構成に含む商標の登録例は皆無である(既成語を構成に含む商標を除く。)。 よって、引用商標は、極めて高い独創性を持った表示である。 ウ 本件商標の指定商品と申立人の提供に係る商品との関連性 エ 取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 申立商品「まつ毛用化粧品」と引用商標が使用される申立人提供の商品「クリーム」や「ネックエッセンス」、「オーデパルファム」とは、「化粧品」の範疇に含まれる商品である。 また、一般的に見ても、これらの商品の生産部門や販売部門、販売場所は共通する。 よって、申立商品と申立人の提供に係る商品には密接な関連性があり、これらの商品の需要者・取引者も共通する。 (4)小括 以上より、本件商標の申立商品への使用は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第15号が規定する混同(のおそれ)を招来するものと認定することには理由がある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 取消理由の通知 当審において、商標権者に対し、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきである旨の取消理由を令和5年11月14日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。 第5 商標権者の意見 上記第4の取消理由に対し、商標権者は、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)当審における「LASH」の文字の職権調査によれば、次のとおりである。 ア 「LASH(ラッシュ)」の文字は、「まつ毛」の意味を有する語(「ジーニアス英和辞典 第5版」株式会社大修館書店参照)である。 イ 「資生堂」のホームページには、商品「バイタルラッシュセラム」について、「素のまつげを強く美しくする、まつげ用美容液」との記載がある。 (https://www.shiseido.co.jp/sw/c/products/SWFG070410.seam?shohin_pl_c_cd=021801&online_shohin_ctlg_kbn=1) ウ 「MILKY SELECTION ミルキーセレクション」のホームページには、商品「ルジュ アイラッシュセラム<まつげ用美容液>」について、「加齢によりダメージを受けたまつ毛の生え際からケアすることでハリ・コシのあるまつ毛に整えます。」との記載がある。 (https://milky-selections.com/products/lejeu_02/) エ 「KOSE コーセー」のホームページには、商品「アイラッシュセラム」について、「ブレンドベリー チャーミング アイラッシュセラム うるおいに満ちたしなやかなまつ毛に導くまつ毛美容液。」との記載がある。 (https://maison.kose.co.jp/site/brendberry/g/gWLLF/) オ 「KANEBO カネボウ」のホームページには、商品「セパレートロングラッシュ」について、「アーティフィシャルな色とマットな質感。まつ毛が新たな存在感を放つカラーマスカラ誕生。」との記載がある。 (https://global.kanebo.com/ja/categories/colormake/mascara/p/25432177) カ 「通販カタログ・通信販売のベルメゾンネット」のホームページには、商品「ミネラルロングラッシュマスカラ」について、「魅力的な瞳を引き出し洗練されたフォルムへ。まつ毛本来の美しさを育てる上向きロング&セパレートマスカラ。」との記載がある。 (https://www.bellemaison.jp/shop/commodity/0000/1238977?SHNCRTTKKRO_KBN=&CLICKLOG=6) キ 以上によれば、本件商標の指定商品「まつ毛用化粧品」を取り扱う業界においては、「LASH(ラッシュ)」の文字は、「まつ毛」を意味するものと理解、認識させるものであって、「まつ毛用化粧品」の用途、品質等を表す文字であることから、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、又は、極めて弱いものと判断するのが相当である。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標と引用商標との類否について (ア)本件商標 本件商標は、「LASH AUTHENT ラッシュオーセント」の文字を横書きしてなるところ、その構成中、「LASH」及び「ラッシュ」の文字は、上記(1)キのとおり、商品の用途、品質等を表す文字であって、本件商標の指定商品「まつ毛用化粧品」との関係においては、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、又は、極めて弱いものである。 また、「AUTHENT(オーセント)」の文字は、一般の辞書等に載録のない造語と認められる。 そうすると、本件商標は、その指定商品「まつ毛用化粧品」との関係においては、本件商標の構成中、造語と認められる「AUTHENT」及び「オーセント」の文字部分が、自他商品の識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから、本件商標から「AUTHENT」及び「オーセント」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。 そして、本件商標の構成中「オーセント」の片仮名は、「AUTHENT」の欧文字を片仮名表記したものであると容易に認識できるものである。 そうすると、本件商標は、全体の構成文字に相応して生じる「ラッシュオーセント」の称呼のほかに、その要部である「AUTHENT」及び「オーセント」の文字部分(以下「本件要部」という。)に相応して、「オーセント」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (イ)引用商標 引用商標1は、「オーセント」の片仮名及び「AUTHENT」の欧文字を二段に横書きしてなるところ、「オーセント」の片仮名は、「AUTHENT」の欧文字を片仮名表記したものであると容易に認識できるものであるから、「オーセント」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 また、引用商標2は、「AUTHENT」の文字を標準文字により表してなるものであって、その構成文字に相応した「オーセント」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (ウ)本件商標と引用商標との類否について 本件要部と引用商標とを比較すると、両者の外観は、一列の横書きと二段書き又は片仮名の有無という構成上の差異を有する。 しかし、「オーセント」の片仮名部分は、「AUTHENT」の欧文字の読みを片仮名表記したものであると容易に認識できるものであり、欧文字にその読みを片仮名で付記することが一般に行われている取引の実情があることからすれば、これらの差異は、本件要部と引用商標が全く別異のものであることを認識させるほどの外観上の顕著な差異として、強い印象を与えるものではないというべきであり、当該外観の差異は、商標の類否全体に大きな影響を与えるものではない。 そして、本件要部と引用商標とは、そのつづりを共通にすることから、外観において相紛らわしく類似するものといえる。 また、称呼においては、本件要部と引用商標は、ともに「オーセント」の称呼を生じるから、両者の称呼は同一である。 さらに、観念においては、本件要部と引用商標とは、特定の観念を生じないものであるとしても、ともに同じつづりであるから、両者の観念において異なるところはない。 そうすると、本件要部と引用商標の比較においては、観念において異なるところはなく、外観上の差異も、上記のとおり商標の類否全体に大きな影響を与えるものとはいえず、そのつづり及び「オーセント」の称呼を共通にするものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 イ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について 本件商標の指定商品である「まつげ用化粧品」は、引用商標の指定商品中「化粧品」に包含されるものであるから、両者は同一又は類似の商品と認められる。 ウ まとめ 上記ア及びイのとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似する商品と認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について 商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されている。 本件商標は、上記1のとおり、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同項第15号の括弧書きの規定により、同号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものの、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものといわなければならないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-01-29 |
出願番号 | 2022027968 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Z
(W03)
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最終処分 | 06 取消 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
石塚 利恵 小俣 克巳 |
登録日 | 2022-10-18 |
登録番号 | 6628777 |
権利者 | 有限会社ベルボトム |
商標の称呼 | ラッシュオーセントラッシュオーセント、ラッシュオーセント、オーセント |
代理人 | 中村 知公 |
代理人 | 伊藤 孝太郎 |
代理人 | 朝倉 美知 |
代理人 | 本田 彩香 |
代理人 | 前田 大輔 |