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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W25
管理番号 1409275 
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-09-14 
確定日 2024-02-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5980893号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5980893号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成29年3月28日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同年8月10日に登録査定、同年9月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標及び標章
1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4488789号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2000年3月6日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成12年7月11日に登録出願、第25類「ティーシャツ,ズボン,ワイシャツ類,ジャケット,トレーニングシャツ,トレーニングパンツ,帽子,靴下,コート,サーフィン用トランクス,スキー用衣服,スノーボード用衣服,その他の被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),その他の履物,ラッシュガード,サーフィン用ウェットスーツ,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同13年7月6日に設定登録されたものである。
(2)登録第4519563号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、2000年2月29日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成12年7月18日に登録出願、第25類「ティーシャツ,ズボン,ワイシャツ類,ジャケット,トレーニングシャツ,トレーニングパンツ,帽子,靴下,コート,サーフィン用トランクス,スキー用衣服,スノーボード用衣服,その他の被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),その他の履物,ラッシュガード,サーフィン用ウェットスーツ,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同13年11月2日に設定登録されたものである。
(3)国際登録第1193761号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、2013年3月14日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、同年9月13日に国際商標登録出願、第9類、第14類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年1月9日に設定登録されたものであり、その後、2017年9月11日に国際登録簿に記録された基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了を原因とする当該商標権の登録の一部抹消があった結果、その指定商品については、第25類「Clothing and headwear, namely, T-shirts, shirts, sweatshirts, sweaters, fleece tops, and pullovers, jackets, hats, caps, beanies, neck gaiters, and belts.」並びに第9類、第14類及び第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品となり、その登録が平成30年7月5日にされているものである。
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。
2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するとして引用する標章は、引用商標1の構成中の図形、引用商標2及び引用商標3と同じ構成の標章(以下「請求人標章」という。)であり、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者に広く知られているものと主張するものである。
以下、引用商標及び請求人標章をまとめていう場合は、「請求人商標及び標章」という。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第25類「全指定商品」(以下「本件請求に係る指定商品」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、令和4年10月17日付け手続補正書(1)及び同5年1月11日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年6月27日付け弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、資料1及び甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
なお、以下、資料1を甲第1号証と、甲第1号証を甲第2号証と、甲第2号証を甲第3号証と、甲第3号証を甲第4号証と、甲第4号証を甲第5号証と読み替え、甲第1号証は「甲1」のように省略して表示する場合がある。
1 請求の趣旨
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。
2 審判請求書による主張の要旨
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるものである。
一方、引用商標の図形中、両側に存在する略円弧図形の内に配置されている黒色の図形(以下「稲妻図形」という。)は、ありふれて採用されることのない極めて特徴的な図形である。
よって、稲妻図形は、引用商標に接する取引者、需要者が、最も注意をひく、商標の要部であり、引用商標の指定商品の分野において、広く認識されている商標であるから、需要者、取引者が本件商標に接した場合は、引用商標と類似するとの判断に至るほど類似する商標である。
以上より、本件商標は、稲妻図形と実質的に同一若しくは類似する標章であることは明らかである。
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一又は類似する商品である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号の該当性について
本件商標は、我が国の需要者・取引者において、広く認識された請求人標章に類似し、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る商品と同一若しくは類似である。
ア Charlie Trading Co.,Ltd.(以下「Charlie社」という。)が同社のウェブサイトにおいて、請求人商標及び標章を付した商品(以下「請求人商品」という。)を販売している(甲2)。
イ 甲第3号証は、請求人が我が国の販売代理店Charlie社に対して発行した、引用商標3に関する商標使用料の請求書である。
ウ 「Charlie社」による請求人商品の販売実績は、2021年度に、総売上高347,873USドル(約4,522万円(130円/USドル))を記録した(甲4)。
エ 甲第5号証は、我が国における請求人商品に関する、請求明細書、納品書、仕入伝票等である。
甲第2号証ないし甲第5号証により、請求人商標及び標章は本件請求に係る指定商品に関し、我が国において周知であったことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、請求人商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
なお、請求人商標及び標章が外国におい広く認識されていた事実は、第25類の指定商品について、外国において商標登録を受けていることから明らかである(甲1)。
3 弁駁書による主張の要旨
被請求人は、本件商標の「THOM」の文字が極小さく配してなるものであるところ、その構成上、それぞれ独立して看取される場合があるといえると主張する。
しかしながら、当該「THOM」の文字は極めて小さく表示されているため、本件商標の指定商品である「被服」等については、需要者・取引者が通常の取引においてその構成の所在すら看過する程度の所在であるため、本件商標の要部とは到底なり得ない構成部分である。
仮に「THOM」の表示が需要者・取引者により認識されることがあるとしても、図形部分と形態的に融合しており、「THOM」の表示自体が独立して認識されることはない。
また、被請求人は、本件商標と引用商標を比較するに、本件商標の図形部分と、引用商標1の図形部分、引用商標2及び引用商標3とを比較すると、いずれも線を左右に4回折り曲げた構成において共通するものの、本件商標の図形部分が極太線を左上方向及び右下方向に鋭くとがらせるとともに、斜線の組み合わせよりなるのに対し、引用商標1の図形部分及び引用商標2は中央に黒色の極太線を下方に向かって漸次細くなる斜線と水平線の組み合わせよりなり、並びに、引用商標3は均一の太線で斜線と水平線の組合せからなる明らかな差異を有し、それぞれの図形を構成する線の太さや方向等の描き方の違いが看者に与える印象が小さくなく、しかも、引用商標1の図形部分及び引用商標2は黒色の括弧状の図形、引用商標3は円輪郭を有し、これらは本件商標にはない図形要素であることからしても、両者は、商標全体としての構成態様において明らかに相違するものであり、かつ、構成全体としてそれぞれから受ける印象が大きく異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして隔離的に観察した場合においても、外観上、十分に区別し得るものであり、互いに紛れるおそれはない旨を主張する。
しかしながら、本件商標の図形部分と共通する引用商標1の図形部分、引用商標2及び引用商標3とを比較すると、いずれも線を左右に4回折り曲げた構成(以下「四回屈曲構成」という)において共通する。
ここで、四回屈曲構成は請求人が有する引用商標の最も特徴的な自他商品・自他役務の識別力を発揮する引用商標の要部である。
また、四回屈曲構成を有する第三者商標は引用商標及び本件商標の指定商品・指定役務が属する第25類「被服」等について、請求人が所有する四回屈曲構成からなる登録商標以外に存在しないから、図形商標の要素としての四回屈曲構成は、請求人の有する図形商標の特徴的な図形要素である。
よって、本件商標の四回屈曲構成は、引用商標が有する四回屈曲構成と共通する。
一方、被請求人は四回屈曲構成の構成要素の相違について言及するが、四回屈曲構成が「辺」で開始し「点」で終了するのか、四回屈曲構成が「点」で開始し「点」で終了するかの仔細な形態における相違にすぎない。
むしろ、需要者・取引者が四回屈曲構成から「稲妻」、「雷鳴」等の観念を読み取ることが一般的であり、かかる四回屈曲構成の観念に引きずられ本件商標と引用商標との類否を考察することが一般的な消費者の観察行動である。
その結果、需要者・取引者は本件商標と引用商標の共通する要素「四回屈曲構成」及びその観念である「稲妻」、「雷鳴」に請求人の自他商品・自他役務の識別力を把握し商品選択に及ぶため、本件商標は、引用商標に類似すると判断することが可能である。
以上のとおり、商標法第4条第1項第11号に関する被請求人の答弁には理由がない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書によりその理由を要旨次のように述べた。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、ややまだらに黒く塗りつぶした極太線を左上方向及び右下方向に鋭くとがらせるとともに、斜線のみの組み合わせにより左右に4回折り曲げた図形(以下「本件商標図形部分」という。)とその左下の斜線に沿うように「THOM」の文字(以下「本件文字部分」という。)を極小さく配してなるものであるところ、その構成上、それぞれ独立して看取される場合があり、本件商標図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないというべきであり、また、本件文字部分は、辞書等に掲載の見受けられない語であることから、特定の意味を有しない造語と認識されるものであって、その構成文字に相応して「ソム」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標1は、中央に黒色の極太線を下方に向かって漸次細くなる斜線と水平線の組合せにより左右に4回折り曲げた図形、及びその左右に黒色の括弧状の極太線を下方に向かって漸次細くなる図形(以下「引用商標1図形部分」という。)と、その右側にやや図案化した「ELECTRIC」の文字を横書きした構成(以下「引用商標1文字部分」という。)よりなるところ、その構成上、それぞれ独立して看取される場合があり、引用商標1図形部分は、外観上、一体の図形として看取されるものであって、直ちに特定の称呼や観念は生じない。また、引用商標1文字部分は、「ELECTRIC」の文字が「電気の」の意味を有する英語であるから、その構成文字に相応して「エレクトリック」の称呼を生じ、「電気の」の観念が生じる。
引用商標2は、中央に黒色の極太線を下方に向かって漸次細くなる斜線と水平線の組合せにより左右に4回折り曲げた図形、及びその左右に黒色の括弧状の極太線を下方に向かって漸次細くなる図形を配した構成からなるものであるから、外観上、一体の商標として看取されるものであって、その構成態様から、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
引用商標3は、均一の太線で、円輪郭中に斜線と水平線の組合せにより左右に4回折り曲げた図形を配した構成よりなるから、外観上、一体の商標として看取され、その構成態様から、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較するに、本件商標図形部分と、引用商標1図形部分、引用商標2及び引用商標3とは、いずれも線を左右に4回折り曲げた構成において共通するものの、本件商標図形部分が極太線を左上方向及び右下方向に鋭くとがらせるとともに、斜線の組合せよりなるのに対し、引用商標1図形部分及び引用商標2は中央に黒色の極太線を下方に向かって漸次細くなる斜線と水平線の組合せよりなり、並びに、引用商標3は均一の太線で斜線と水平線の組合せからなる明らかな差異を有し、それぞれの図形を構成する線の太さや方向等の描き方の違いが看者に与える印象が小さくなく、しかも、引用商標1図形部分及び引用商標2は黒色の括弧状の図形、引用商標3は円輪郭を有し、これらは本件商標にはない図形要素であることからしても、両者は、商標全体としての構成態様において明らかに相違するものであり、かつ、それぞれから受ける印象が大きく異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、十分に区別し得るものであり、互いに紛れるおそれはない。
また、本件商標図形部分と、引用商標1図形部分、引用商標2及び引用商標3はいずれも特定の称呼及び観念を有しないから、比較することができない。
そうすると、本件商標図形部分と、引用商標1図形部分、引用商標2及び引用商標3とは、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において容易に区別できるものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
上記(1)のとおり、本件商標は、引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
また、請求人の提出に係る証拠によっては、我が国における事業規模や認知度の程度は明らかではないから、引用商標が、本件商標の登録出願時において、我が国における需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めることもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、上記(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできない。
さらに、請求人が提出した証拠からは、本件商標が不正の目的をもって使用をするものというべき事実も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求することにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 請求人商標及び標章の周知著名性について
請求人の提出した証拠及び同人の主張から、請求人商品について、請求人の我が国における販売代理店であるCharlie社のウェブサイトを通じて販売されたとする、2009年2月ないし2019年10月までの販売実績が、347,873.81USドル(1USドル130円で換算すると約4,522万円)(甲4)であることはうかがえるものの、これが請求人商品に関する販売実績であることやその実績を裏付ける具体的な証拠の提出はない。
また、請求人商品の販売数量、市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠についても提出されておらず、我が国における客観的な使用事実に基づいて、その使用状況を把握することができないことから、請求人商標及び標章の本件商標の登録出願時及び登録査定時における周知性の程度を推し量ることはできない。
さらに、請求人の外国における商標の登録例(甲1)は、請求人商標及び標章の周知著名性を直接的に裏付けるものではない。
そうすると、請求人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表すものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、内部をまだら状に黒く塗られた極太線を左上から右下に鋭くとがらせるとともに、斜線のみの組合せにより左右に4回折り曲げた図形(以下「本件商標図形」という。)と、本件商標図形の4回目の折り曲げ部分の直下に左上から右下にかけて斜めに「THOM」の欧文字を極めて小さく書してなるものである。
そして、本件商標の構成中の本件商標図形は、顕著に表されていることから看者に強い印象を与えるとともに、その注意を強くひくものであって、「THOM」の欧文字とは分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない。
また、本件商標図形は、その構成態様から、直ちに特定の事物又は文字、図形等を表示したものであることを、一見して理解、認識し得るものとはいえず、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「THOM」の欧文字を捨象し、独立して出所識別標識としての機能を有する本件商標図形を要部として抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成中の「THOM」の欧文字より、「ソム」の称呼が生じ得るとしても、本件商標図形を要部として抽出した場合は、特定の称呼及び特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、黒色の括弧状の極太線(以下「括弧図形」という。)を左右に配置し、括弧図形の間に右上から左下に鋭くとがらせるとともに、斜線のみの組合せにより左右に4回折り曲げた図形を配した図形(以下「引用商標1図形」という。)と引用商標1図形の右横に「ELECTRIC」の欧文字を横書きした結合商標であるところ、引用商標1図形と「ELECTRIC」の欧文字は、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そして、その構成中の引用商標1図形は、外観上、一体のものとして看取されるものであり、特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないから、その構成態様より、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
また、引用商標1の構成中の「ELECTRIC」の欧文字は、「電気の」の意味を有する英語(「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」大修館書店)であるから、その構成文字に応じて「エレクトリック」の称呼を生じ、「電気の」の観念が生じるものであり、当該文字が、引用商標1の指定商品との関係において、商品の品質等を表示するものとは認められないため、自他商品の識別標識としての機能を有するものと認められる。
以上よりすると、引用商標は、その構成中の引用商標1図形及び「ELECTRIC」の欧文字それぞれが、独立して出所識別機能を有する要部であるというべきであるから、引用商標1図形及び「ELECTRIC」の欧文字を要部として抽出し、本件商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきである。
したがって、引用商標1は、その構成全体又は「ELECTRIC」の欧文字を要部として判断した場合は、「ELECTRIC」の欧文字に相応した「エレクトリック」の称呼を生じ、「電気の」の観念が生じるものであり、引用商標1の構成中の引用商標1図形を要部として判断した場合は、特定の称呼及び特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は、別掲3のとおり、引用商標1図形と構成を同じくするものであるから、これは、外観上、一体のものとして看取されるものであり、特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないから、その構成態様より、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
したがって、引用商標2は、特定の称呼及び特定の観念は生じないものである。
ウ 引用商標3について
引用商標3は、別掲4のとおり、均一の太線の円輪郭線内に右上から左下に、斜線と水平線の組合せにより左右に4回折り曲げた図形を配した構成よりなるものであり、外観上、一体のものとして看取されるものであり、特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないから、その構成態様より、直ちに特定の称呼や観念が生じるものではない。
したがって、引用商標3は、特定の称呼及び特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、それぞれ、上記(1)及び上記(2)に示したとおりの構成よりなるところ、本件商標の要部である本件商標図形と、引用商標1の要部である引用商標1図形、引用商標2及び引用商標3とを比較すると、引用商標1図形部分及び引用商標2は括弧図形を、引用商標3は円輪郭線を有し、これらは本件商標にはない図形要素であることから、本件商標と引用商標とは構成態様が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標は、その構成中の「THOM」の欧文字より、「ソム」の称呼が生じ得るものであり、引用商標1は、その構成全体又は「ELECTRIC」の欧文字を要部として判断した場合は、「エレクトリック」の称呼を生じるとしても、これらは構成音が明らかに相違するものであり、引用商標2及び引用商標3は、特定の称呼が生じないため、称呼において相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標1は、その構成全体又は「ELECTRIC」の欧文字を要部として判断した場合、「電気の」の観念が生じることから、本件商標と引用商標1は、観念において相紛れるおそれはなく、引用商標2及び引用商標3は、特定の観念を生じないことから、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、観念において比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、容易に区別できるものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
そのほか、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標というべきであるから、その指定商品について比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性について
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、請求人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
また、請求人標章は、引用商標と構成を同じくするものであるから、上記2(4)に倣い、本件商標と請求人標章とは、非類似の商標及び標章というべきである。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標に該当しない。
したがって、本件請求に係る指定商品と請求人商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、請求人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
また、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標というべきであり、上記(1)のとおり、本件商標と請求人標章とは、非類似の商標及び標章というべきである。
さらに、請求人が提出した証拠からは、本件商標が不正の目的をもって使用をするものというべき事実も見いだせない。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
該当しない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、甲第2号証ないし甲第5号証により、請求人商標及び標章は本件請求に係る指定商品に関し、我が国において周知であったことは明らかである旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、請求人の主張及び同人が提出した全証拠によっては、請求人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表すものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないと判断するのが相当である。
(2)請求人は、本件商標は引用商標と類似する商標であり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一又は類似する商品であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標というべきであるから、本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品について比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないと判断するのが相当である。
(3)請求人は、本件商標は我が国の需要者・取引者において、広く認識された請求人標章に類似し、本件商標の指定商品は請求人商品と同一若しくは類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張する。
しかしながら、上記3(1)のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標に該当しないものであるから、本件請求に係る指定商品と請求人商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないと判断するのが相当である。
(4)請求人は、本件商標は、請求人商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから商標法4条1項19号に該当する旨主張する。
しかしながら、上記3(2)のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当しないものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当しないと判断するのが相当である。
(5)請求人の上記主張はいずれも採用できず、その他、請求人の主張も採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2)


別掲4(引用商標3)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審判長 豊田 純一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2023-09-12 
結審通知日 2023-09-21 
審決日 2023-10-12 
出願番号 2017041742 
審決分類 T 1 12・ 25- Y (W25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 杉本 克治
小田 昌子
登録日 2017-09-15 
登録番号 5980893 
商標の称呼 トム 
代理人 弁理士法人磯野国際特許商標事務所 
代理人 中村 知公 

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