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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1408172 |
総通号数 | 27 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-07-06 |
確定日 | 2024-03-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6693627号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6693627号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6693627号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和4年10月26日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同5年4月10日に登録査定され、同月26日に設定登録されたものである。 2 引用商標 商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する登録第5209786号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成20年7月11日に登録出願、第25類「手袋,帽子,その他の被服(和服を除く。),ベルト,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,靴類」及び第3類、第9類並びに第18類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同21年2月27日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。 (1)本件商標について 本件商標(甲1)は、腹ばい状の「トカゲ」が四肢を拡げている姿態を真上からふかんした状態を黒塗りのシルエット風に描いた図形であるところ、胴体部分上部に星形図形を白抜きで描き、尻尾は左下から時計周りに付け根から渦巻き状に先端に向かうにつれて徐々に細く描き、前足は肘部分を折り曲げた状態で左右ほぼ同じ高さに置き、後ろ足は、左足は膝部分を胴体側に引き寄せるように折り曲げ、右足は斜め下に下げて膝部分を折り曲げた状態で描き、腹ばいで前進している途中のような状態を描いたものである。 本件商標は、上記のとおりの態様からなるところ、その図形はは虫類に属するトカゲの特徴的な姿態をシルエット風に描いたものと容易に認識できるものであるから、その指定商品の需要者が「トカゲ」と観念して取引に当たるとみるべきであり、該観念から「トカゲ」の称呼が生じる。 (2)引用商標について 引用商標(甲2)も、腹ばい状の「トカゲ」が四肢を拡げている姿態を真上からふかんした状態を黒塗りのシルエット風に描いた図形であるところ、頭部から尻尾の付け根辺りにわたって、体の表面の縞模様を極細い不規則な白線で描き、尻尾は略S字状で付け根から先端に向かうにつれて徐々に細く描き、前足は肘部分を折り曲げた状態で左右ほぼ同じ高さに置き、後ろ足は、左足は膝部分を胴体側に引き寄せるように折り曲げ、右足は斜め下に下げて膝部分を折り曲げた状態で描き、腹ばいで前進している途中のような状態を描いたものである。 引用商標は、上記のとおりの態様からなるところ、その図形もは虫類に属するトカゲの特徴的な姿態をシルエット風に描いたものと容易に認識できるものであるから、その指定商品の需要者が「トカゲ」と観念して取引に当たるとみるべきであり、該観念から「トカゲ」の称呼が生じる。 (3)本件商標と引用商標の類否 ア 外観について 本件商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)に記載のとおりの構成よりなるところ、これらを子細に対比し、観察すれば、(ア)本件商標のトカゲの足の指は5本あるのに対し、引用商標のトカゲの足の指は4本である点、(イ)本件商標のトカゲの尻尾は渦巻き状であるのに対し、引用商標の尻尾はS字状である点、(ウ)本件商標のトカゲの胴体上部には、白色の星形図形が表され、それ以外の部分はすべて黒塗りで描かれているのに対し、引用商標にはそのような図形はない一方、頭部から尻尾の付け根にわたって極細い不規則な白線で体の表面の縞模様が描かれている点、(エ)本件商標は、折り曲げられた右後ろ足を後方に伸ばしているのに対し、引用商標の右後ろ足は、足の指部分が膝部分の下にまで折り畳まれている点、(オ)本件商標のトカゲは全体的に比較的細身であるのに対し、引用商標のトカゲは胴体や足、尻尾の付け根部分が太く、全体的に太めな点などにおいて差異を有する。 しかしながら、本件商標と引用商標は、いずれも、は虫類に属する「トカゲ」の頭部から尻尾までの全身を描き、その形状は腹ばい状で四肢を拡げ、腹ばいで前進している途中のような状態が表されており、全体として「トカゲ」の特徴的な姿態をシルエット風に表現してなる点において、構成の軸を一にするものである。 してみると、本件商標と引用商標に接する取引者、需要者は、上記した両商標の構成全体の基本的特徴であり、共通点である、「腹ばい状で四肢を広げている姿態を真上からふかんした状態をシルエット風に描いたトカゲ」において強く印象付けられ、これを記億し、それぞれを時と所を異にして離隔的に観察した場合は、その特徴を想起し、本件商標と引用商標とを互いに見誤るおそれがあり、本件商標と引用商標は、外観上相紛らわしいというべきである。 東京高裁平成13年10月24日判決(東京高裁平成13年(行ケ)第174号)(甲3)では、細部の描き方には種々の差異点がある犬のシルエット図形からなる2つの商標について、そのような差異点はあるとしても、ともに大型犬の立位の図形をシルエット状に黒塗りで表してなり、どちらの犬も左向きで、静的な状態であるという看者の目を引き強く印象付けられる両商標の構成上の基本的な要素が共通しているという事実に基づき、簡易迅速を重んじる取引の実際においては、両商標に離隔的に接した場合には明瞭に把握できない程度の微差が明瞭に意識されるものとは認めがたいとして、商標の外観が類似すると認定されている。 そこで、本件商標と引用商標を比較すると、本件商標と引用商標も、上述した細部における種々の相違点はあるものの、ともにトカゲの図形をシルエット状に黒塗りで表してなり、どちらのトカゲも腹ばい状で頭部を上に尻尾を下にして、四肢を拡げて前進している途中のような状態を描いたものである点において共通しており、これらの共通点は、時と所を異にして離隔的に各商標に接した場合に一見して看者の目を引く両商標の構成上の基本的な要素にかかるものであって、それぞれ看者に強く印象付けられるものである。 したがって、この点の共通性ゆえに、本件商標と引用商標とは、その外観全体から直ちに受ける視覚的印象が著しく似通ったものとなり、外観上互いに類似するというべきである。 その上、上述のとおり、本件商標及び引用商標が使用される商品である被服や履物の取引分野においては、商標をいわゆるワンポイントマークとして商品に縫いつけたり、刺繍するなどして使用されることが多く、その場合においては、商標は比較的小さく表示され、細部における構成上の差異は一層曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなる。 したがって、引用商標を一見した需要者等が、時と所を異にして本件商標を見たとき、その図形の細部まで正確に観察し、記憶し、想起し、本件商標とは異なる商標であると認識するのは極めて困難である。 よって、本件商標と引用商標は、外観が極めて近似し、互いに相紛らわしい商標というべきである。 同種の動物を描いた図形商標の外観類似を認めた審決(甲4〜甲14)では、同種の動物を描いてなる図形商標が、各動物の身体の各部の形態や描き方、姿勢、手足の位置や太さ、尻尾の位置や形状等の細部において差異を有していても、そのような子細における相違点は、簡易、迅速を重んじる取引の実際においては、需要者が正確に、観察し、想起することは難しく、図形の基本的な構成や図形のモチーフを共通にしている場合には、商標全体から受ける印象が類似するため、時と所を異にして離隔的に観察した場合には、互いに相紛れるおそれがあることを理由に、外観上類似すると判断している。 特に、甲第4号証の審決では、対比する二つの商標の図形部分が、いずれも本件商標と引用商標と同じく、腹ばい状のトカゲが四肢を拡げている姿態を真上からふかんした状態をシルエット風に描いた商標であるところ、当該図形部分は、頭部の先端の形状、前後の足の位置、尻尾の形が異なるにもかかわらず、全体としてトカゲの特徴的姿態をシルエット風に表現してなる点において、その態様を共通にする近似した図形であると認定されている。当該事件の出願商標の頭部は、シルクハット状のものを被っているような特徴的な形状であり、通常のトカゲの頭の形状をした引用商標のトカゲとは容易に認識可能な差異点があるという点において、商標の類似度は、本件商標と引用商標よりも低いか、少なくとも同程度であるにもかかわらず、外観上彼此相紛らわしいと判断されている。 上記の事件のトカゲの図形商標が外観上相互に類似すると判断されるのであれば、いずれも腹ばい状のトカゲが四肢を拡げている姿態を真上からふかんした状態をシルエット風に描いた商標である本件商標と引用商標も、全体としてトカゲの特徴的姿態をシルエット風に表現して成る点において、その態様を共通にする近似した図形といえ、外観上類似すると判断されるべきである。 本件商標と引用商標も、腹ばい状のトカゲが四肢を拡げている姿態を描いたという図形の着想、また、そのようなトカゲの姿態を真上からふかんした状態を黒塗りでシルエット風に描いているという図形の構図において、その構成の軸を一にするものであり、時と所を異にして、離隔的に対比観察した場合には彼此相紛らわしい商標である。 イ 称呼及び観念について 本件商標と引用商標は、いずれもトカゲの特徴的な姿態をシルエット風に描いたものと容易に認識できるものであるから、「トカゲ」の観念及び称呼が生じ、称呼及び観念においても類似する。 (4)まとめ 以上のとおり、本件商標と引用商標は、詳細に観察すれば異なる点があるものの、いずれも腹ばい状のトカゲが四肢を拡げている姿態を真上からふかんした状態を黒塗りでシルエット風に描いたものである点において、その構成の軸を一にするため、外観が類似し、称呼及び観念も共通することから、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛らわしく、本件商標は出所の混同を生ずるおそれのある商標であるから、本件商標と引用商標は類似の商標である。 また、本件商標の指定商品のうち「被服(和服を除く。),ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する。 さらに、出願の先後関係についても、引用商標は、本件商標よりも先に出願され登録されたものであるから、本件商標は、引用商標の後願に係るものであることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 当審の判断 (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、上を向き四肢を拡げているトカゲ又はヤモリと思われる生物を黒塗りのシルエット風に描いてなるものであって、その胴体上部には星形図形が白抜きで表され、四肢の全ての指先は丸く、尻尾は左側に渦巻き状に描かれているもの(以下「本件図形」という。)である。 そして、本件図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを有するものとして認識され、親しまれているというべき事情はないため、これよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。 したがって、本件商標は、特定の称呼及び観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、上を向き四肢を拡げているトカゲと思われる生物を黒塗りのシルエット風に描いてなるものであって、その頭部から尻尾の付け根辺りにわたって極細い不規則な線が白抜きで表され、四肢の全ての指先はとがったように、尻尾は下方に略S字状に描かれているもの(以下「引用図形」という。)である。 そして、引用図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを有するものとして認識され、親しまれているというべき事情はないため、これよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。 したがって、引用商標は、特定の称呼及び観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標(本件図形)と引用商標(引用図形)の類否を検討すると、両者の外観は、上を向いた生物を黒塗りのシルエット風に描いてなる点においては共通するといい得るものの、描かれた生物がトカゲ又はヤモリと思われる生物かトカゲと思われる生物かという差異及び尻尾の形状が渦巻き状か略S字状かという差異を有し、また、本件図形は体が細く身軽な印象を与えるものであるのに対し、引用図形は体が太くどっしりとした印象を与えるものである。 そうすると、本件商標(本件図形)と引用商標(引用図形)は、描かれた生物及び尻尾の形状に差異があり、外観全体から受ける視覚的印象が異なるものであるから、これらを離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標と引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念について比較できないとしても、外観において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標が類似するとすべき理由は見出せない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、その登録は、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-02-22 |
出願番号 | 2022122649 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
豊田 純一 |
特許庁審判官 |
馬場 秀敏 小田 昌子 |
登録日 | 2023-04-26 |
登録番号 | 6693627 |
権利者 | 栗原 利樹 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 太田 雅苗子 |
代理人 | 稲葉 良幸 |