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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1408163 |
総通号数 | 27 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-06-16 |
確定日 | 2024-02-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6688971号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6688971号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6688971号商標(以下「本件商標」という。)は、「ATmega328P」の文字を標準文字で表してなり、令和4年12月3日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年3月15日に登録査定され、同年4月12日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「ATMEGA328P」の文字からなり、同人が「マイクロコントローラ」について使用し、「マイクロコントローラ」等の分野において、需要者の間に広く認識されているとするものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第7号に該当し、同法第3条第1項柱書の要件を具備しないものであるから、その登録は同法第43条の3の規定により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。 (1)引用商標の使用状況 申立人は、1989年に設立した世界有数の半導体製造会社である。申立人は、商標「ATMEGA328P」を付したマイクロコントローラを、少なくとも、2013年から製造・販売している(甲2)。また、請求書(甲3〜甲8)から、「ATMEGA328P」を付した製品が我が国で販売されていることは明らかである。我が国への出荷・販売数量(我が国への輸出数量)は、次のとおりである(甲9)。 ・2013年 47,238個 ・2014年 11,040個 ・2015年 57,692個 ・2016年 31,090個 ・2017年 93,746個 ・2018年 100,628個 ・2019年 130,391個 ・2020年 103,366個 ・2021年 83,385個 ・2022年 123,445個 ・2023年 38,505個 (2)ひょう窃(冒認)出願の該当性 本件商標の登録出願日には、申立人は引用商標「ATMEGA328P」を使用してから、数年たつ。本件商標の登録出願時点で、引用商標は、申立人の製品を表示するものとして、国内に広く知れ渡っていた。しかし、申立人は、主に品番として「ATMEGA328P」を使用していたので、引用商標を商標登録出願せずに使用していた。このことに気が付いた本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)が本件商標を登録出願した。なお、商標権者は、申立人と全く関係のない第三者である。 ちなみに、商標権者は、約40件の商標を登録出願しているが、出願商標を確認すると、「SK本舗」、「Roborock」、「SUPAREE」、「HiLetgo」、「Vela.Yue」、「Noctua」や「Alphacool」など、他人のブランド・商品名やサービス名がほとんどである。このような事実から、商標権者が、いわゆる商標ブローカーなのは明白である。現に、商標権者は、申立人に対して、メールを送信して、自己の商標権の侵害を主張している(甲10)。 よって、商標権者には、本件商標を使用する意思はなく、申立人から損害賠償やライセンス料を請求するつもりで、本件商標を出願している。つまり、本件商標に係る出願は、ひょう窃(冒認)出願に該当する。 (3)商標法第4条第1項第10号 ア 商標の類否判断 申立人の使用する引用商標「ATMEGA328P」と本件商標「ATmega328P」を比較すると、「MEGA」部分の大文字と小文字の違いしかなく、つづりは同一である。よって、引用商標は、本件商標と極めて似通っている。 イ 商品の類否判断 申立人の使用する商品「マイクロコントローラ」(類似群11C01)は、本件商標に係る指定商品のうち、「集積回路モジュール」、「ICチップ」、「半導体」や「電気通信機械器具の部品及び付属品」などと類似する。 ウ 需要者の間に広く認識されていることについて 上述したとおり、申立人は、10年以上、引用商標を付した商品を我が国で販売している。また、毎年の我が国への輸出数量も極めて多い。さらに、大手のインターネット検索エンジンで「ATMEGA328P」と検索すると、上位に表示されるのは、全て、申立人の製品に関するウェブサイトである(甲11、甲12)。申立人は主に品番として使用しているが、長年使用した結果、商標「ATMEGA328P」に接した需要者・取引者は、申立人が製造・販売する製品を想起するようになった。 よって、申立人の引用商標は、「マイクロコントローラ」等の分野において、需要者の間に広く認識されている。 エ 小括 本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する。また、本件商標に係る一部の指定商品は、申立人の使用する商品「マイクロコントローラ」に類似するので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号 申立人の商標「ATMEGA328P」が使用された製品は、我が国やアメリカだけでなく、世界各国で販売されていて、商標「ATMEGA328P」は、申立人の製品の出所表示として、世界中に知れ渡っている。一方、商標権者は、我が国において、商標「ATMEGA328P」が登録されていないことに目を付けた中国人(個人)で、本件の商標出願はひょう窃(冒認)出願である。このような状況で、本件商標の登録を認めると、国際問題に発展する危険性があり、国際信義に反するおそれがあることは明らかである。 よって、本件商標は、公序良俗を害するおそれがあるので、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (5)商標法第3条第1項柱書 インターネットで調べたところ、商標権者が本件商標を使用している形跡は見つからなかった。また、上述のとおり、本件商標の出願はひょう窃(冒認)出願で、商標権者は、本件商標を使用する意思が全くない。よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。 なお、付言すれば、知財高裁平成24年(行ケ)第10019号の裁判において、被告は、他者の使用する商標ないし商号を出願し、登録された商標を収集しているにすぎないとして、商標法第3条第1項柱書に違反すると判断している。このような裁判例からも、本件のような状況で、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないことが明白である。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、申立人(関連会社を含む。以下同じ。)は、2017年頃から2021年頃まで、我が国の企業に対して「マイクロコントローラ」に引用商標を付して販売していた(甲2〜甲8)ことがうかがえるものの、引用商標を付して販売していた「マイクロコントローラ」の我が国における売上高、販売数量など販売実績を裏付ける証拠は見いだせない。 なお、申立人は我が国への出荷・販売数量(我が国への輸出数量)は2013年ないし2023年において毎年11,040個ないし130,391個である旨主張し、その証拠として申立人の社員(プロジェクト・マネージャー)による宣誓書(甲9)を提出しているが、それに記載された数量がいかなる根拠に基づくものなのか確認できないから、かかる数量を採用することはできない。 また、仮にかかる数量が事実であるとしても、「マイクロコントローラ」の市場規模など当該数量の多寡を客観的に比較するものはなく、引用商標の周知性を推し量ることはできない。 さらに、申立人の「車載向け製品セレクタガイド」(甲2)に引用商標が記載されていることは認められるものの、これ以外に、引用商標を付した「マイクロコントローラ」に関する広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等を示す証拠は見いだせない。 イ 上記アのとおり、申立人は2017年頃から2021年頃まで、我が国の企業に対して「マイクロコントローラ」に引用商標を付して販売していたことがうかがえるもの、当該商品の我が国における販売実績を裏付ける証拠は見いだせず、また、「車載向け製品セレクタガイド」以外に当該商品の広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等を示す証拠も見いだせないから、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号について 本件商標は上記1のとおり「ATmega328P」の文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標は上記2のとおり「ATMEGA328P」の文字からなるものであり、両者の構成文字は中間部における大文字と小文字の差異があるものの、つづりを共通にするものであるから、両商標が同一又は類似するものであることは明らかである。 しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とが同一又は類似するとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第7号について 申立人は、引用商標は申立人の製品を表示するものとして国内に広く知れ渡っていること、商標権者は約40件の商標を登録出願しているが、それらの商標は他人のブランド・商品名やサービス名がほとんどであること、商標権者は申立人に対して商標権の侵害を主張していることなどとして、本件商標に係る登録出願はひょう窃(冒認)出願であり、本件商標の登録を認めると国際信義に反するおそれがあるから、本件商標は、公序良俗を害するおそれがあり、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張している。 しかしながら、引用商標は、上記(1)のとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、商標権者の登録出願した商標のほとんどが他人のブランド・商品名などであることを示す証拠の提出はなく、さらに、自己の商標登録出願に基づき警告することは不当な行為とはいえず、他に、本件商標が、国際信義に反する、出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (4)商標法第3条第1項柱書について 商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁平成24年(行ケ)第10019号同年5月31日判決)。 しかしながら、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標は、その登録査定時において、商標権者がその指定商品について使用をしているか又は使用する意思があるかについて合理的疑義があったものとは認められず、他にこれを認めるに足りる事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当せず、かつ、同法第3条第1項柱書の要件を具備しないとはいえないから、その登録は同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。 他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2024-01-26 |
出願番号 | 2022138254 |
審決分類 |
T
1
651・
18-
Y
(W09)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
山田 啓之 杉本 克治 |
登録日 | 2023-04-12 |
登録番号 | 6688971 |
権利者 | 張 天文 |
商標の称呼 | アットメガサンビャクニジューハチピイ、エイテイメガサンビャクニジューハチピイ、アットメガサンニハチピイ、エイテイメガサンニハチピイ、アットメガサンビャクニジューハチ、エイテイメガサンビャクニジューハチ、アットメガサンニハチ、エイテイメガサンニハチ、アットメガ、エイテイメガ、メガ |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 相良 由里子 |
代理人 | 角谷 健郎 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 田中 伸一郎 |