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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1408154 
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-04-06 
確定日 2024-03-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6668176号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6668176号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6668176号商標(以下「本件商標」という。)は、「TRANSIT TRADE」の文字を標準文字で表してなり、令和4年8月1日に登録出願、第25類「被服,履物,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服,帽子,靴類」を指定商品として、同年12月28日に登録査定され、同5年2月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び引用標章
商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する商標及び標章は、同人の主張より当合議体は次のとおりと判断する。
1 引用商標
(1)登録第1829200号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和58年10月31日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年12月25日に設定登録され、その後、平成18年3月22日に指定商品を第24類「布製身の回り品,布団,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がされ、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
(2)国際登録第842318号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2004年9月7日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2005年(平成17年)1月18日に国際商標登録出願、第25類「Clothing, footwear (except boots for sports), headgear.」を指定商品として、平成18年7月7日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
(3)国際登録第1031795号商標(以下「引用商標3」という。)は、「TRANSIT PAR−SUCH」の欧文字を横書きしてなり、2016年(平成28年)1月19日に国際商標登録出願(事後指定)、第25類「Clothing, footwear, headgear.」を指定商品として、平成29年2月24日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
(4)国際登録第1068350号商標(以下「引用商標4」という。)は、「TRANSIT」の欧文字を書してなり、2010年12月20日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2010年(平成22年)12月23日に国際商標登録出願、第35類「Advertising; business management; business administration; office functions.」を指定役務として、平成23年11月4日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
(5)国際登録第1236128号商標(以下「引用商標5」という。)は、「TRANSIT」の欧文字を書してなり、2014年10月14日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2014年(平成26年)10月28日に国際商標登録出願、第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品(別掲3)を指定商品として、平成27年10月9日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
(6)国際登録第1534516号商標(以下「引用商標6」という。)は、「TRANSIT」の欧文字を書してなり、2020年2月21日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2020年(令和2年)3月6日に国際商標登録出願、第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務(別掲4)を指定役務として、令和4年3月4日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
なお、引用商標1ないし引用商標6をまとめて、以下「引用商標」という場合がある。
2 引用標章
申立人が、我が国において、1980年代から、被服や履物等に関する商品及び役務について使用した結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者、取引者間において、申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く知られていると主張する標章は、「TRANSIT」の欧文字よりなる又は「TRANSIT」の欧文字を要部とする別掲1、別掲2及び「TRANSIT PAR−SUCH」の文字よりなる標章である。
以下、これらをまとめて「引用標章」という。
また、引用商標と引用標章をまとめて、「引用商標及び標章」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する。
1 申立人及び「TRANSIT」ブランド
「TRANSIT」は、世界28か国で展開されているイタリアのハイカジュアルファッションブランドであり、選び抜いた上質な素材を使用し、こだわり抜いた染色加工を何度も繰り返すことにより作られた「TRANSIT」ブランドの被服の風合いと着心地の良さは、リラックスして時を過ごす世界中のセレブリティから休日のワードローブとして愛されている(甲8)。
なお、「TRANSIT」が運営されているTam&CompanyS.p.A.と申立人はほぼ同一の主体により所有され運営されている関連会社である(甲9)。
我が国においても、衣料品や雑貨等の輸出入を取り扱う商社である株式会社ストックマン(東京都渋谷区。以下「ストックマン社」という。)が、1984年から「TRANSIT」ブランドの被服の輸入取引を開始し、「TRANSIT」ブランドの被服は現在まで100以上の店舗で販売されてきた。現在、我が国には「TRANSIT」ブランドの直営店が、東京・銀座、東京・青山、東京・新宿、兵庫・西宮及び京都・烏丸通というファッション感度の高い場所に5店舗存在する(甲10)。
我が国における「TRANSIT」ブランドの被服の2015年8月から2022年7月の売上高は、各年おおむね4ないし5億円に上る。
また、「TRANSIT」ブランドの被服は、我が国で2010年ないし2023年に発行された、「クロワッサン」(マガジンハウス社発行、2009年3月25日号)、「STORY」(光文社発行、2010年6月号)、「eclat(エクラ)」(決定注:「e」の文字にはアクサン記号が付されている。)(集英社発行、2014年2月号)、「LaVivant(ラヴィヴァン)」(WEB&通販マガジン、2017年秋号)、「大人のおしゃれ手帖」(宝島社発行、2017年6月号、2018年6月号、同年7月号)など周知著名なファッション雑誌に数多く取り上げられてきた(甲11)。
そして、申立人は、我が国において、1980年代から、被服や履物等に関する商品・役務について「TRANSIT」の欧文字よりなる又は「TRANSIT」の欧文字を要部とする商標登録を保有しており、現在、我が国における「TRANSIT」に関する商標登録は合計6件に上る(甲2〜甲7)。
さらに、申立人は、商標「TRANSIT」について、本国イタリアや我が国のみならず、世界各国において商標登録を取得することにより、「TRANSIT」ブランドの世界的な保護を図っている(甲12)。
以上の事実を考慮すると、申立人の商標「TRANSIT」は、被服・履物等のファッション分野の商品との関連において、1980年代から現在に至るまで、少なくとも本件商標の登録出願日の2022年8月1日以前から現在に至るまで、我が国の関連する取引者・需要者の間において周知著名であったと考えるのが極めて妥当である。
2 本件商標の商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び/又は同項第15号該当性について
本件商標は、「TRANSIT TRADE」の標準文字により構成され、その構成中の後半部「TRADE」は「産業、顧客、商業、取引、交換」等を意味する既存の英単語であり(甲13)、本件商標の指定商品である第25類「被服,履物」等の品質・内容・用途等に関する記述的・説明的度合いの高い部分と考えるのが妥当である。
よって、本件商標の後半部「TRADE」は、本件商標の指定商品について自他商品識別力に欠けるか又は自他商品識別力が極めて弱いため、本件商標については、前半部の「TRANSIT」の欧文字も商標の要部として独立して認識され得ると考えるのがごく自然である。
そうすると、本件商標及び引用商標及び標章において共通する被服・履物等のファッション分野の商品並びにそれら商品の小売等役務との関連においては、「TRANSIT」の欧文字は、そもそもの語義である「通過、通行、トランジット」といった意味合いとともに(甲14)、1980年代から現在に至るまで継続して周知著名な申立人の「TRANSIT」ブランドを想起させ得るものとして、我が国の関連する取引者・需要者により広く知られていると考えるのが相当である。
すなわち、本件商標と引用商標及び標章は、「TRANSIT」の欧文字より生ずる自然な称呼「トランジット」並びに「通過、通行、トランジット」及び「TRANSIT」ブランドという観念を共通とする、相互に類似する商標として把握・認識するのが極めて妥当である。
また、上記事実を考慮すれば、仮に本件商標と引用商標及び標章が類似関係にあるとはいえない場合でも、被服や履物等をはじめとするファッション分野の商品との関連において、「TRANSIT」の欧文字を要部とする本件商標に接する我が国の取引者・需要者は、本件商標に係る商品があたかも1980年代から現在に至るまで継続して周知著名な申立人の「TRANSIT」ブランドの商品であるかのごとく商品の出所について混同するおそれがあるか、あるいは、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認した結果、商品の出所について混同するおそれがあるといわざるを得ない。
そして、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある本件商標の登録を認めることが、商標の使用をする者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護することを目的とする商標法の趣旨に反することはいうまでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び/又は同項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標及び標章は、本件商標の登録出願時である2022年8月当時に、少なくとも本国イタリア及び我が国において周知著名なファッションブランドとなっていたことは明らかであり、また、本件商標と引用商標は相互に類似する商標として把握・認識するのが相当である。
そうとすると、被服や履物等をはじめとするファッション分野の商品との関連において、引用商標「TRANSIT」を要部とする商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難いため、本件商標は不正の目的をもって使用されるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記1のとおり、引用商標及び標章が、少なくとも本国イタリア及び我が国において周知著名なファッションブランドであることに鑑みれば、同じくファッション分野の商品を指定商品とする本件商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難いといわざるを得ない。
そうとすると、世界的な周知著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値を有する引用商標「TRANSIT」を要部とする本件商標を自己の商標として採択使用することは、商道徳に反するといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標及び標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、ストックマン社は、1984年から申立人の業務に係る「TRANSIT」ブランドの商品(被服など。以下「申立人商品」という。)の輸入取引を開始し、申立人商品は、令和5年7月頃において、東京の銀座・青山・新宿、西宮市及び京都市に計5店舗存在する「TRANSIT PAR−SUCH」という店舗で販売されていること(甲10)が認められ、「TRANSIT PAR−SUCH」及び「TRANSIT UOMO」のブランドの申立人商品(被服)は、2009年3月頃ないし2023年5月頃に発行された雑誌で相当数紹介等されていること(甲11)及び申立人は、我が国において引用商標を保有するほか、引用商標2ないし引用商標5と同一の構成よりなる商標について、イタリア、欧州、オーストラリア、中国、米国などにおいて商標登録を保有していること(甲12)がうかがえる。
しかしながら、引用商標及び標章を使用した申立人商品の我が国における売上高、市場シェアなどの販売実績を示す証左は見いだせず、また、引用商標及び標章又はそれと同一の構成よりなる商標を使用した申立人商品のイタリアなど外国における販売実績を示す主張はなく、それを示す証左は見いだせない。
(2)上記(1)からすれば、引用商標及び標章を使用した申立人商品は、我が国において1984年頃から販売され、複数のファッション雑誌等で紹介等され、令和5年7月頃において、東京、西宮市及び京都市の店舗で販売されていることが認められるとしても、引用商標及び標章を使用した商品の我が国及びイタリアなど外国における販売実績を示す証左は見いだせないから、引用商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(3)なお、申立人は 我が国における「TRANSIT」ブランドの被服の2015年8月から2022年7月の売上高は、各年おおよそ4億円ないし5億円に上る旨主張しているが、当該金額を裏付ける証左の提出はない上、仮に、当該金額が事実であるとしても、我が国のファッション業界の状況からすれば大きな額とはいえないことから、上記判断を覆し得ない。
2 本件商標と引用商標及び標章の類否について
(1)本件商標
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「TRANSIT TRADE」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、同書同大にまとまりよく一体的に表されている。
また、「TRANSIT TRADE」の欧文字は、辞書等に載録がないから、特定の意味合いを理解させるものではない。
そして、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「トランジットトレード」の称呼を生じるものであり、かつ、当該称呼は、無理なく一連に称呼し得るものである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「トランジットトレード」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ なお、申立人は、本件商標の構成中後半部の「TRADE」の文字は「産業、顧客、商業、取引、交換」等を意味する英単語(甲13)であり、本件商標の指定商品「被服,履物」等について、品質・内容・用途等に関する記述的・説明的度合いの高い部分と考えるのが妥当であり、本件商標の指定商品について自他商品識別力が欠けるか又は自他商品識別力が極めて弱いため、本件商標の前半部の「TRANSIT」の欧文字が商標の要部として独立して認識され得ると考えるのが自然である旨主張している。
しかしながら、上記アのとおり、本件商標を構成する「TRANSIT TRADE」の文字は、標準文字で同書同大にまとまりよく一体的に表され、これより生じる「トランジットトレード」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、たとえ、その構成中「TRADE」の文字が「産業、顧客、商業、取引」等(甲13)の意味を有する英単語であるとしても、かかる構成及び称呼においては、当該文字部分が指定商品の品質等を表示したものとして直ちに認識されることはなく、むしろ、「TRANSIT TRADE」の構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。
さらに、上記1のとおり、引用商標4ないし引用商標6は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、他に、本件商標の構成中「TRANSIT」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
(2)引用商標及び標章
ア 引用商標1は、別掲1のとおり、「TRANSIT」の欧文字を横書きし、これと同じ幅となるよう小さく横書きした「PAR―SUCH」の欧文字とを2段に表してなるところ、「TRANSIT」の欧文字と「PAR−SUCH」の欧文字とは文字の大きさを異にするものの、これらが、殊更に離れて配置されているとはいえず、近接して表されていることからすると、引用商標1は、外観上、まとまりよく一体的に表されたものと、取引者、需要者に看取されるものであると判断するのが相当である。
また、引用商標1の構成全体より生じる「トランジットパーサッチ」の称呼は、格別冗長であるとはいえず、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、引用商標1の構成中、「TRANSIT」が「通過。通行。」などの意味を、「PAR」が「標準。基準。」などの意味を、「SUCH」が「その[この]ような。」などの意味を、それぞれ有する英語(いずれも「プログレッシブ英和中辞典 第5版」株式会社小学館)であるが、「PAR−SUCH」は、一般に使用されている辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いは有しないものであるから、引用商標1は、構成全体よりは特定の観念を生じない。
したがって、引用商標1は、その構成文字全体に相応して「トランジットパーサッチ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
そして、引用商標1は、その構成態様よりは上段に大きく表された「TRANSIT」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合もあるといえ、その場合には、当該文字に相応して「トランジット」の称呼も生じ、「通過、通行」の観念を生じるものといえる。
イ 引用商標2は、別掲2のとおり、「TRANSIT」の欧文字を横書きし、これより小さく横書きした「UOMO」の欧文字と2段に表してなるところ、「TRANSIT」の欧文字と「UOMO」の欧文字とは文字の大きさを異にするものの、これらが、殊更に離れて配置されているとはいえず、近接して表されていることからすると、引用商標2は、外観上、まとまりよく一体的に表されたものと、取引者、需要者に看取されるものであると判断するのが相当である。
また、引用商標2の構成全体より生じる「トランジットウオモ」の称呼は、格別冗長であるとはいえず、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、引用商標2の構成中、「TRANSIT」が「通過。通行。」などの意味を有する英語(前掲書)であるとしても、「UOMO」は、一般に使用されている辞書等に載録された語ではなく、特定の意味合いは有しないものであるから、引用商標2は、構成全体よりは特定の観念は生じない。
したがって、引用商標2は、その構成文字全体に相応して「トランジットウオモ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
そして、引用商標2は、その構成態様よりは上段に大きく表された「TRANSIT」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合もあるといえ、その場合には、当該文字に相応して「トランジット」の称呼も生じ、「通過、通行」の観念を生じるものといえる。
ウ 引用商標3は、上記第2の1(3)のとおり、「TRANSIT PAR−SUCH」の欧文字を横書きしてなり、当該文字に相応して「トランジットパーサッチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
エ 引用商標4ないし引用商標6は、上記第2の1(4)ないし(6)のとおり、「TRANSIT」の欧文字を横書きしてなり、いずれも当該文字に相応して「トランジット」の称呼を生じ、「通過、通行」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
オ 引用標章は、上記第2の2のとおり、「TRANSIT」の欧文字よりなる又は「TRANSIT」の欧文字を要部とする別掲1、別掲2及び「TRANSIT PAR−SUCH」の文字よりなる標章であり、「TRANSIT」の欧文字よりなる標章は、当該文字に相応して「トランジット」の称呼を生じ、「通過、通行」の観念を生じるものと判断するのが相当であり、また、別掲1、別掲2及び「TRANSIT PAR−SUCH」の文字よりなる標章は、その構成文字全体である「TRANSIT PAR―SUCH」及び「TRANSIT UOMO」の欧文字より生じる「トランジットパーサッチ」及び「トランジットウオモ」の称呼が、格別冗長であるとはいえず、無理なく一連に称呼し得るものであるから、「トランジットパーサッチ」及び「トランジットウオモ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標及び標章の類否
本件商標と引用商標及び標章の類否を検討すると、両者の外観は、「TRADE」などの文字の有無の差異など構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標より生じる「トランジットトレード」の称呼と引用商標及び標章より生じる「トランジットパーサッチ」、「トランジットウオモ」又は「トランジット」の称呼は、「トレード」の音と「パーサッチ」若しくは「ウオモ」の音の差異、又は「トレード」の音の有無という差異を有し、それらの差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないのに対し、引用商標及び標章は「通過、通行」の観念を生じるか、特定の観念を生じないから、両者は相紛れるおそれがないか、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標及び標章は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において相紛れるおそれがないか、比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標及び標章というべきものである。
その他、本件商標と引用商標及び標章が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標及び標章は、相紛れるおそれのない非類似の商標及び標章であって、別異の商標及び標章というべきものである。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記2のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標及び標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記2のとおり、本件商標は、引用商標及び標章と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、本件商標の商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標及び標章を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について
上記1のとおり、引用商標及び標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標及び標章は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、さらに、上記4のとおり、本件商標は、引用商標及び標章を連想又は想起させるものでもない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標及び標章の周知性へのフリーライドの意図を有し、引用商標及び標章が我が国において登録されていないことを奇貨として、その参入を阻害する等、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれにも該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標5の指定商品)
第25類「Clothing; waterproof clothing; clothing of imitations of leather; clothing of leather; dresses; suits; jumper dresses; bath robes; bandanas (neckerchiefs); bibs, not of paper; caps (headwear); berets; underwear; boas (necklets); braces for clothing (suspenders); stockings; socks; breeches for wear; bathing trunks; shirts; coats; hoods (clothing); belts (clothing); tights; layettes (clothing); bathing suits; beach clothes; neckties; headbands (clothing); pocket squares; scarfs; jackets (clothing); skirts; overalls; gloves (clothing); ready-made clothing; paper clothing; knitwear (clothing); jerseys (clothing); leggings (leg warmers); hosiery; sports jerseys; sweaters; muffs (clothing); pelerines; mantillas; vests; trousers; parkas; pelisses; furs (clothing); pajamas; collar protectors; shawls; sashes for wear; overcoats; outerclothing; petticoats; shirt fronts; fur stoles; pockets for clothing; tee-shirts; turbans; combinations (clothing); uniforms; veils (clothing); dressing gowns; motorists' clothing; cyclists' clothing; sports singlets; fishing vests; clothing for gymnastics; headwear; headgear for wear; hats; visors (headwear); cap peaks; footwear; boots for sports; boot uppers; slippers; sandals; bath sandals; shoes; esparto shoes or sandals; bath slippers; gymnastic shoes; beach shoes; football shoes; sports shoes; ski boots; inner soles; half-boots; lace boots; boots; soles for footwear; heels, heelpieces for footwear; footwear uppers.」

別掲4(引用商標6の指定役務)
第35類「Shop window dressing; commercial administration of the licensing of the goods and services of others; business administration; business management assistance; commercial or industrial management assistance; dissemination of advertising matter; demonstration of goods; direct mail advertising; provision of an online marketplace for buyers and sellers of goods and services; business management; providing business information via a web site; providing commercial information and advice for consumers in the choice of products and services; office functions; marketing; organization of exhibitions for commercial or advertising purposes; organization of fashion shows for promotional purposes; presentation of goods on communication media, for retail purposes; sales promotion for others; advertising; sponsorship search; market studies; business advisory services relating to the establishment and operation of franchises; business advice relating to franchising; business management advisory services relating to franchising; business organization consultancy; business management services relating to franchising; modelling for advertising or sales promotion; commercial intermediation services; retail or wholesale services for manicure and pedicure set; retail or wholesale services for clothing, belts, foulard, footwear, headgear and their accessories; retail or wholesale services for woven fabrics and bedding; on-line retail store services for manicure and pedicure set, clothing, belts, foulard, footwear, headgear and their accessories, woven fabrics and bedding; administration of consumer loyalty programs; procurement services for others [purchasing goods and services for others businesses]; arranging and conducting marketing promotional events for others.」


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異議決定日 2024-02-28 
出願番号 2022094255 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 杉本 克治
小田 昌子
登録日 2023-02-02 
登録番号 6668176 
権利者 張 柏松
商標の称呼 トランシットトレード、トランジットトレード 
代理人 大橋 啓輔 
代理人 外川 奈美 
代理人 青木 篤 

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