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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W16
管理番号 1408138 
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-30 
確定日 2024-01-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6532407号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6532407号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6532407号商標(以下「本件商標」という。)は、「X−ACTO」の文字を標準文字で表してなり、令和3年7月16日に登録出願、第16類「鉛筆削り(電気式又は非電気式),紙用ステープラ,カッター用マット,事務用穴開け器,トイレットペーパー,衛生紙,文房具,クリップ,ノートブック,絵筆及び塗装用ブラシ,絵画用イーゼル,建築模型,カレンダー,製図・デッサン用定規,製図・デッサン用具セット,万年筆,ハンドブック,事務用品(家具を除く。),剥ぎ取り式ノート,教材(器具に当たるものを除く。)」を指定商品(以下「本件指定商品」という。)として、同4年3月4日に登録査定され、同月23日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、登録第1597048号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和54年2月22日登録出願、第13類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同58年6月30日に設定登録され、その後、平成15年12月17日に指定商品を第8類「手動利器,手動工具」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が、登録異議の申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、引用商標1並びに別掲2及び別掲3のとおりの構成よりなる商標(以下、別掲2商標を「引用商標2」と、別掲3商標を「引用商標3」という。)、「X−ACTO」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「引用商標4」という。)であって、申立人が「鉛筆削り、事務用裁断機、ペーパーナイフなど文房具、ナイフ替刃」(以下「申立人使用商品」という。)などについて使用し、需要者に広く認識されていると主張するものである。
以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。
なお、申立人が提出した証拠を表示する場合は、以下、「甲○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 「需要者の間に広く認識されている商標」について
商標「X−ACTO」の起源は、1900年代初頭に医療器具の会社を経営していたポーランド系米国人が開発したメスに遡り、1930年代には広告物の裁断用ナイフとして「X−ACTO」ブランド製品が流通し、ナイフの他に文房具にも「X−ACTO」ブランドが付されるようになり、X−ACTO社、その親会社「Elmer’s Products社」及び申立人といった複数の会社が買収・合併を経ながらも事業を継続し、90年の長きにわたって引用商標が鉛筆削り、事務用裁断機、ステープラー及び事務用穴あけパンチなどについて使用されてきた(甲3)。
X−ACTO社、Elmer’s Products社及び申立人は、いずれも現在は米国「ニューウェルブランズ社」(以下、申立人、X−ACTO社、Elmer’s Products社及びニューウェルブランズ社をまとめていうときは、「申立人ら」という。)の傘下に入っており(甲6、甲7)、引き続き「X−ACTO」ブランドとして需要者の間に浸透している。
「X−ACTO」ブランドに特化した公式ウェブサイト(甲8)には、引用商標2及び引用商標4が表示され、鉛筆削り、カッターナイフと替刃、事務用裁断機、カッターマット、クリップについて詳細な商品説明があり、最終ページに示された小売店のリンクに飛ぶことによりインターネット上で購入することができるようになっている。また医療用メスから発展して文房具に繋がるブランドの歴史が示されている(甲5)。
これらの「X−ACTO」ブランドの商品は、米国・カナダの他にも英国・ドイツ・フランスなど世界中で販売されており(甲9)、それゆえ申立人は、米国・カナダの他にも欧州連合、オーストリア、オーストラリアなど27の国と地域で、引用商標、引用商標3に青と黒の背景を付した商標、「X−ACTO」の文字のみに同様の背景を付した商標及び「x−acto」のロゴ商標など数種類の商標(以下、まとめて「X−ACTO関連商標」という。)について幅広く商標権を有している。
申立人のX−ACTO関連商標をまとめた社内資料も提出する(甲10、甲11)が、このうち最も古いものは1946年の出願に遡るスウェーデンの登録商標であり(甲12)、最も新しい登録は欧州連合の登録商標であり(甲13)、これらのすべての登録証等の証拠の提出が可能であるが、代表的なものとして本国である米国における登録証の写しを提出する(甲14〜甲19)。なお、これらの登録証は、上記Elmer’s Products社等が権利者として表示されているが、いずれも会社合併等により申立人に権利が移転されている。
以上により、引用商標などが少なくとも1946年から現在に至るまで世界の多くの国で継続して使用されていることが推認できる。
また、申立人の親会社ニューウェルブランズ社の社内資料によれば、「X−ACTO」ブランド商品の2021年の北米地域における売上額は、鉛筆削りだけで約2,600万ドルで市場シェアは30%以上、ナイフが約1,200万ドルで市場シェア40%以上であり、圧倒的な知名度を有する。
我が国でも、引用商標を付した文房具類などが主にインターネット上の小売店で販売されている事実が無数に確認されるところ(甲20、甲21)、これらは申立人名、その前身のメーカー名、又はX−ACTO社名で販売されていることが認められる。特に鉛筆削り及びカッターナイフについてはその品質の高さを賞賛する記事が多数見受けられ(甲22、甲23)、アートやクラフト、デザインの分野の需要者には高い知名度を誇ることが推認される。
なお、本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)は、複数の国と地域で申立人と係争中の中国企業であり、申立人らとは何らの関係もない。
以上より、「X−ACTO」ブランドの鉛筆削り、事務用裁断機、ペーパーナイフなど文房具及びナイフ替刃の類が、申立人らによって、我が国及び外国において長きにわたり販売され、引用商標が需要者に広く認識されている。
イ 商標の類似性について
本件商標は、「X」及び「ACTO」の欧文字を、「−(ハイフン)」記号で繋いで全体を標準文字にて書してなる。
引用商標は、若干フォントが異なったりするものの、「X」及び「ACTO」の欧文字を「−(ハイフン)」で繋いだ構成であり、称呼・外観ともに本件商標と極めて類似している。
引用商標3は、「X−ACTO」に比して著しく小さく「PRECISION INSTRUMENTS」(精密器具)なる文字が付加されているものの、ナイフや鉛筆削りなどの指定商品との関連では識別力がないか、あっても極めて低いため、やはり要部は「X−ACTO」の文字部分である。
本件商標からは、ローマ字の読みに倣って「エックスアクト」又は「エグザクト」の称呼を生じ、引用商標からは、その要部「X−ACTO」から、「エックスアクト」又は「エクザクト」の称呼を生じる。
観念については、本件商標と引用商標の要部「X−ACTO」とは、いずれも英語として特定の意味をなさない造語であるから、比較することができない。
以上より、本件商標と引用商標とは、外観・称呼のいずれにおいても実質的に同一であるといえる程度に相紛らわしく、商品・役務の出所について混同を生じるおそれのある類似の商標である。
ウ 商品の類似性について
本件指定商品のうち、特に「事務用品(家具を除く。),鉛筆削り(電気式又は非電気式),カッター用マット,事務用穴開け器,文房具,クリップ」は、長年にわたり米国のみならず我が国でも引用商標が付されて販売されてきた商品と同一である。本件指定商品のその他の指定商品も、概してアート・クラフト・デザインの分野で作図用・製図用に用いられる事務用品又はオフィスの備品であるという点において申立人の事務用品類と極めて関連が深く、また、精密な道具を希求する層を需要者とする点においても共通する。
引用商標が特に周知性を獲得している商品であるカッターやナイフをはじめパンチ(穴開け器)などの道具は、事務用かそうでないかの境界が曖昧であって、本件指定商品と同じく作図や製図の作業オフィスに常備される道具である。
そうすると、本件指定商品と引用商標が使用されている商品とはその性質・使用目的・流通経路・販売場所を共通にし、また完成品・部品の関連性も否定できないものがあり、需要者が共通する点においても極めて関連が深い関係であるといえる。
さらには上記アで述べたように、引用商標が周知著名であることに鑑みれば、本件商標がその指定商品について使用されれば、「同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある」といえる(最高裁判所 昭和33年(オ)第1104号 昭和36年6月7日第三小法廷判決)。
すなわち、商標権者の指定商品は申立人使用商品と互いに類似する商品である。
エ 小括
以上より、引用商標は、申立人らの業務にかかる商標として需要者の間に広く認識されており、これと本件商標が類似し、申立人使用商品と本件指定商品も類似の関係にあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類似性について
本件商標と引用商標1は、上記(1)のとおり、外観、称呼のいずれにおいても実質的に同一であるといえる程度に相紛らわしく、商品・役務の出所について混同を生じるおそれのある類似の商標である。
イ 商品・役務の類似性について
引用商標1は、第8類「手動利器,手動工具」について登録されているところ、手動利器の中でも、例えばカッターナイフ、パンチ(穴開け器)などの商品は事務用かそうでないかの境界が曖昧であり、文房具とも認識されて事務用品店でも販売されていることは既に指摘したとおりである。一方で、本件指定商品は総じてアート・クラフト・デザインの分野で作画・製図用に常備されるものであり事務用品又はいわゆるオフィス備品である点において、手動利器・手動工具とはその性質・使用目的・流通経路・販売場所を共通にし、デザイン・工芸関連業者等を需要者とする点においても極めて関係が深いといえる。
本件指定商品と引用商標1の指定商品とは異なる類似群コードが付与され、審査基準上においては原則として互いに類似しない商品であると推定されるとはいうものの、本来、商品の類否は商取引や経済に即応して具体的・個別的に判断されるべきものであり、商品に付与される類似群コードの異同により固定化されるべきものではない。さらに、指定商品が類似のものであるかどうかは「商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても類似の商品にあたると解するのが相当である。」ことは、先に引用した最高裁判決(昭和33年(オ)第1104号)のとおりである。
しかるに、上述のように本件指定商品と引用商標1の指定商品とは、現に申立人たる同一営業主により製造販売されており、生産部門、販売部門、原材料・品質、用途、需要者の範囲、流通経路等を共通にするものである。本件指定商品を取り扱う業界においては引用商標1の指定商品をも取り扱うというべきものであり、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、上記最高裁判例に示されるところの「同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある」といえる。
よって、これらの指定商品は互いに類似する商品である。
ウ 小括
以上より、本件商標と引用商標1とは商標が類似し指定商品も類似の関係にあるものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)イ及び(2)アに述べたとおり、本件商標は、引用商標と実質的に同一といってよい。
さらに、上記(1)ウ及び(2)イに述べたとおり、本件指定商品は、引用商標を使用する商品と極めて関連が深い。
その上、上記(1)アにより、引用商標が外国においても我が国においても申立人らの業務にかかる商標として周知であることが明らかである。
一方、商標権者は、中国深せん市に存する会社であってインターネット上でも情報が得られない企業であるところ、中国本国においては「当歌酒」なる商標を第33類の酒類について出願していることが確認できる(甲24)。
このような会社が鉛筆削りやカッターマットなどの文房具について本件商標を使用すれば、需要者は申立人の業務に係る商品であると誤認し、出所について混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている事実について
上記(1)アにおいて述べたとおり、引用商標は、申立人とその前身にあたるElmer’s Products社、その子会社X−ACTO社、現在の親会社であるニューウェルグループに至るまで実に90年の長きにわたり鉛筆削りや事務用カッター、事務用裁断機などの文房具の分野において使用が継続されており、北米地域において圧倒的シェアを誇る有名ブランドである。このことは日本の需要者にもよく知られており、現在も「X−ACTO」ブランドで商品が取引されている。
さらに申立人は、諸外国で長年にわたり多数のX−ACTO関連商標を登録・維持してきた(甲10、甲11)。欧州各国や米国・カナダにおいては商標の使用主義が貫かれていることからも、申立人が世界各地でX−ACTO関連商標とともに引用商標を数十年にわたって使用してきた結果、これらの商標が外国の需要者間に高い周知性を誇ることは明らかである。
イ 商標の類似性について
上記のとおり、本件商標と引用商標は実質的に同一といえるほどに類似した商標である。
ウ 商標権者の不正の目的について
商標権者は、中国企業であるところ、本国である中国では少なくとも本件異議申立ての時点において「X−ACTO」商標を出願していない。また、申立人の本国である米国においても「X−ACTO」商標を出願していない。一方で、英文社名「Shenzhen Dangge Wine Technology Co.,Ltd.」の名義において、我が国を含むカナダ、英国、欧州連合といった外国において第16類の指定商品について「X−ACTO」商標の出願を行っている。
そこで申立人は、カナダ、英国、欧州連合においてこれらの出願に対し商標登録異議の申立ての手続等を行い、争っている(甲25〜甲34)。
上記のように、商標権者は、文房具やナイフ類について事業を行っているようには見受けられず、自国では本件商標を出願していない一方で、カナダ、英国、欧州連合、日本といった複数の有力な市場となり得る国・地域において第16類の指定商品について「X−ACTO」商標の登録を企図していること、また複数の国・地域において申立人から異議申立や警告を受けているにもかかわらず応答しないことに鑑みれば、「X−ACTO」商標が外国においていまだ登録されていないことを奇貨として不正の目的で出願していることが容易に推察される。
我が国における本件商標の出願もこれら不正な行為の一環であり、引用商標の著名性にフリーライドしようとするものである。
エ 小括
以上の事情を考慮し、本件指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
1930年頃から商標「X−ACTO」がナイフ、替え刃、鉛筆削り、事務用裁断機などについて使用され、当該商品は米国、欧州などのウェブサイトで販売されていること(甲3〜甲9)、申立人らは「X−ACTO」の文字からなる又は該文字を構成中に含む商標(X−ACTO関連商標)について、カナダ、米国などで登録商標を保有していること(甲10〜甲19)及び我が国において、商標「X−ACTO」が使用された鉛筆削り、ナイフ、替え刃などを販売、紹介等するウェブサイトがあること(甲20〜甲23)などがうかがえる。
しかしながら、商標「X−ACTO」を使用した商品の我が国及び外国における売上高、販売数など販売実績を示す証左は見いだせず、また、商標「X−ACTO」を使用した商品と申立人らとの関係は確認できない。
イ 上記アのとおり、1930年頃から商標「X−ACTO」がナイフ、替え刃、鉛筆削りなどについて使用され、当該商品が米国、欧州及び我が国などで販売、紹介等されていることなどがうかがえるものの、商標「X−ACTO」を使用した商品の我が国及び外国における販売実績を示す証左は見いだせず、商標「X−ACTO」を使用した商品と申立人らとの関係は確認できないから、商標「X−ACTO」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、商標「X−ACTO」と同一の文字からなる又はそれと同一の文字を要部とする引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお、申立人は、「X−ACTO」ブランド商品の2021年の北米地域における売上額は、鉛筆削りが約2,600万ドルで市場シェアは30%以上、ナイフが約1,200万ドルで市場シェア40%以上である旨主張しているが、それを裏付ける証左は見いだせないから、かかる主張は採用できない。
また、申立人は、X−ACTO関連商標について全ての国と地域の登録証等の証拠の提出が可能である旨述べているが、商標登録の事情が需要者の認識に直接反映されるとはいい難く、かかる事情によっては上記判断を覆し得ないから、当該証拠の提出は求めないこととした。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記1のとおり「X−ACTO」の文字を標準文字で表してなり、引用商標は、上記2及び別掲1ないし3のとおり、「X−ACTO」の欧文字からなる又は同文字を要部とするものであるから、両商標が同一又は類似するものであることは明らかである。
イ 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
上記アのとおり本件商標と引用商標は同一又は類似するものであるが、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、本件指定商品と引用商標が使用される商品が類似するとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と引用商標1は、上記(2)アのとおり同一又は類似するものである。
イ 本件商標と引用商標1の指定商品の類否について
本件指定商品は、上記1のとおり第16類に属する「鉛筆削り(電気式又は非電気定式),紙用ステープラ,カッター用マット」などであり、引用商標1の指定商品は、上記2のとおり第8類「手動利器,手動工具」である。
そこで、両商標の指定商品の類否を検討すると、両指定商品の一般的、恒常的な取引の実情において、生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、並びに需要者の範囲を共通にするというべき事情はいずれも見いだせず、また、両者が完成品と部品との関係にないことも明らかである。
そうすると、両商標の指定商品は、両者に同一又は類似の商標を使用しても、それらの商品が同一営業主の製造、販売に係る商品と誤認混同するおそれのない非類似の商品といわざるを得ない。
ウ 小括
上記のとおり、本件商標と引用商標1は同一又は類似のものであるが、両商標の指定商品は非類似の商品であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(2)アのとおり、本件商標と引用商標は、同一又は類似するものであり、本件指定商品と引用商標が使用されている商品には、鉛筆削りやナイフなど関連性を有するものが含まれているものの、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、いずれも我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、商標権者がこれを本件指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人ら)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上記(2)アのとおり、本件商標と引用商標は同一又は類似するものであるが、上記(1)のとおり引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(4)のとおり本件商標は、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標の著名性にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、申立人提出の証拠及び同人の主張によっては、本件商標が不正の目的をもって使用するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標3)



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異議決定日 2023-09-28 
出願番号 2021089455 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W16)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2022-03-23 
登録番号 6532407 
権利者 深▲せん▼市当歌酒科技有限公司
商標の称呼 エックスアクト、アクト、エグザクト 
代理人 弁理士法人深見特許事務所 

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