ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W44 |
---|---|
管理番号 | 1408134 |
総通号数 | 27 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-03-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2023-04-07 |
確定日 | 2024-02-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6461105号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6461105号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「Aujud」の文字を横書きしてなり、令和2年12月10日に登録出願、同3年10月11日に登録査定され、第44類「健康診断,美容,肥満予防・解消のための栄養の指導,理容及び美容,マッサージ,スキンケア美容,医療に関する情報の提供,鍼・灸」を指定役務として、同月25日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件審判の請求の理由において引用する登録第6158915号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり、「Aujua」及び「オージュア」の文字を二段に横書きしてなり、平成30年8月23日に登録出願、第44類「美容,理容」を指定役務として、令和元年7月5日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第4条第1項第11号及び同項第15号)を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第232号証(以下、「甲○」と表記する。)を提出した。 2 請求の理由(要旨) (1)請求人の商標及びその周知著名性について ア 請求人について 請求人は、1960年に設立され、ヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤、パーマ剤、シャンプー、ヘアトリートメント、薬用発毛促進剤、スキンケア・メイクアップ化粧品の製造及び販売を主な事業内容としている(甲2)。請求人は美容師が施術に使う業務用品と、美容室だけで販売するサロン専売品の分野で2割弱のシェアを持ち、大手競合会社の日本ロレアル株式会社などをしのぐ。そして、2021年12月期の売上高は415億円で前期比16.4%増、営業利益率は18.8%に達している(甲3)。 イ 請求人商標について 「Aujua」の欧文字と「オージュア」の片仮名を2段に書してなる引用商標を保有している(甲4)。 請求人は、引用商標を美容室専売ヘアケア商品のブランド名として、2010年よりシャンプーやトリートメント等の商品(以下、「請求人商品」という。)について使用している。請求人商品は、請求人が日本女性の髪をミクロレベルで50年以上も研究し、個々の髪にカスタマイズして使用できるよう開発した高品質シャンプー、トリートメントである(甲5)。現在では5シリーズ、16ライン、99アイテムにも及ぶ。請求人商品は請求人の主力商品となっている(甲6)。 また、請求人は、一定期間請求人商品に関する研修を受け、試験に合格した美容師を「Aujuaソムリエ」と認定している。Aujuaソムリエは提携した美容室において、請求人商品を使用したヘアケア、美容に関するカウンセリングを提供している(甲7)。Aujuaソムリエは、オージュア全商品の知識はもちろん、地肌や毛髪のメカニズムの基礎、そしてコミュニケーションの技術まで徹底的に学んだ美容師に与えられる専門的な資格である。美容師がAujuaソムリエであることや、日本全国の美容室において、Aujuaソムリエがいるサロンであることは大々的に宣伝されている(甲8〜甲10)。 引用商標の「Aujua」の欧文字と「オージュア」は、「独特の雰囲気/オーラがある」という意味を持つ英単語の「aura(オーラ)」と、「歓喜に満ちる」という意味を持つ英単語の「jubilant(ジュビラント)」を組み合わせた請求人による造語であり、創作性の高い語である(甲11)。 特許情報プラットフォームJ−PlatPatにおいて、最初の4文字が「AUJU」である商標を検索するために、検索商標を「AUJU?」として検索すると、請求人の登録商標35件と被請求人の登録商標4件のみが検出される。かかる事実は引用商標の創作性の高さの証左となる。検出結果からわかるとおり、引用商標を登録して以来、請求人は「AUJUA」を含む商標を34件登録している。 ウ 売上高、販売窓口軒数 これまでの出願人による営業努力により、請求人商品は発売開始後現在に至るまで、10年以上継続的に売り上げを伸ばし、2016年には売上高は50億円を超え、販売窓口軒数は2,500軒を超えた。2021年12月期の販売高は97億円と前の期に比べ約22%も増加し、販売窓口軒数は約5,000軒であった(甲12)。 エ 宣伝広告活動 出願人は2010年の発売以来、請求人商品の宣伝広告活動に力を入れてきた。請求人は、日本で最も利用人数が多いスポットである東京都銀座駅周辺、東京都銀座ソニービル前、東京駅八重洲改札付近、大阪府大阪梅田駅周辺、福岡市博多駅構内、名古屋市栄駅構内等において、請求人商品画像及び「Aujua」の文字が大きく表示された広告用大看板を設置し、請求人商品の大々的な宣伝広告活動を行ってきた(甲13〜甲25)。 請求人は、このような利用者の多いスポットにおける屋外広告活動に多大な費用をかけている。一例として、2019年に東京駅、福岡博多駅、名古屋栄駅、阪急梅田駅で行った屋外広告キャンペーンにかかった宣伝広告費用は約1,600万円であった(甲26)。大看板や宣伝広告ポスターのいずれにおいても、「Aujua」の文字が大きく目立つように表示されている。このような宣伝広告活動により、「Aujua」のブランド名を表示した引用商標及び請求人商品の知名度が格段に高まった。 オ インターネットや雑誌における請求人商品に関する記事 請求人商品の発売以来、数多くの雑誌記事で取り上げられている。20代から40代向けの女性誌JJ、mina、VERY、Precious、美的、GLOW、美ST、GINZA、ar、ELLE、CLASSY、MAQUIA、SPRiNG、美的GRAND、STORY、otonaMUSE、MORE、CanCam、HOT PEPPERBeauty、VoCE、anan、Marisol、Harper’s BAZAAR、美人百花、日経ヘルス、etRouge、日経WOMAN、andGIRL、LEE、SPUR、25ans、&ROSY、up PLUSなどで、美容師、スタイリスト、美容スペシャリスト、女優やモデルなどのお勧めヘアケア商品として度々請求人商品は取り上げられた(甲27〜甲123)。印刷版だけではなく、Oggi、VoCE、up PLUS、Marisol、CLASSY、GINZA、VERY、non−no、Precious、MAQUIA、SPUR、美的、VOGUE等においては、ウェブ記事でも請求人商品に関する記事が多数取り上げられている(甲124〜甲159)。 オンライン記事にも請求人商品は取り上げられている。株式会社サイバーエージェントが提供するファッション・美容情報サイトの「by.S」、女性向け情報を発信するウェブサイト「つやプラ」、「Yoga journal online」、「BELCY」、「FASHION BOX」、美容師が提供するウェブサイト「YUYA WORLD TRIP」でも請求人商品がお勧めのヘアケア商品として紹介されている(甲160〜甲167)。 比較的年齢層の高い40代から60代向けの女性誌である、家庭画報、大人のおしゃれ手帳、マイエイジ、ゆうゆう、クロワッサン、50歳からのBEST COSMEにおいて、エイジングケアや白髪ケア用のヘアケア商品として度々請求人商品が取り上げられている(甲168〜甲179)。また、女性誌に限らず男性ファッション誌においても、請求人商品は紹介されている(甲180)。 美しい髪を作るためのノウハウ本や、ヘアスタイルのカタログブックでも請求人商品は取り上げられている(甲181〜甲186)。請求人商品を取り上げたヘアカタログ本には、男性向けヘアカタログブックも含まれる(甲187〜甲189)。 美容関連の週刊情報誌である「WWDビューティ」にも、複数回請求人商品が紹介された(甲190〜甲192)。「WWDビューティ」は毎年、人気サロン50店の美容師が選ぶ、「ヘアサロン版ベストコスメアワード」を発表している。請求人商品は2017年はシャンプー・インバストリートメント部門1位、2018年はシャンプー・インバストリートメント部門1位、2019年はシャンプー部門、頭皮・育毛ケア部門1位、2020年はシャンプー部・インバストリートメント部門、頭皮・育毛ケア部門の第1位、2021年はシャンプー・インバストリートメント第1位、アウトバストリートメント第2位に選出された(甲193〜甲197)。 人気女優や女性モデルのライフスタイルなどを特集した多くの書籍においても、彼女たちのお気に入りのヘアケア商品として請求人商品が上げられている(甲198〜甲200)。また、結婚式情報を掲載した専門誌「ホテルウェディング」においても、結婚式準備のためのヘアケア商品として請求人商品が紹介されている(甲201、甲202)。さらにゴルフを楽しむ女性向け雑誌「Regina」においても、プロゴルファーのお勧めヘアケア商品として請求人商品が紹介された(甲203)。 関西地方において読売テレビにおいて毎週水・金・日曜日に放送されているテレビ番組「anna」において、2019年12月20日放送回「毎日のヘアケア、ちゃんとできてる?プロが教えるおすすめヘアアイテム」で請求人商品が紹介された(甲204)。最近の新聞記事では、請求人商品は、比較的高額圏の商品ではあるものの効果が実感できる商品として、キャリア女性から特に支持を得ていると取り上げられている(甲205)。 上記は雑誌・ネット記事、書籍、メディアでの請求人商品紹介の一例にすぎないが、上記だけでも、幅広い年齢層の女性に限らず、男性もターゲットとして請求人商品が宣伝広告され、販売されていることが分かる。また、結婚式を控えた女性やゴルフを楽しむ女性など、様々なシチュエーションで請求人商品の紹介記事を目にするようなマーケティングが行われている。このような数多くの雑誌・ネット記事、書籍、メディアにおいて請求人商品が紹介される際には、必ず請求人商品の画像を伴う。請求人商品には多数のラインが存在しており、請求人商品のデザインは、ラインによって色分けがされているが、すべてにおいて一貫して、やわらかくしなやかな曲線の輪郭の中央部分に大きく「Aujua」の文字が描かれるという、非常にシンプルで洗練されたデザインが採用されている。請求人商品の紹介記事を目にした需要者には、「Aujua」の文字デザインが強い印象を残す。需要者はこの文字をもって請求人商品を識別する。 上記の請求人商品に関する、「Aujua」の文字を使用した請求人による大々的な宣伝広告活動や数多くの紹介記事に照らせば、「Aujua」のブランド名を表示した請求人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において取引者、需要者の間で人気の高い請求人商品の識別標識として周知著名となっている。 カ 「Aujuaソムリエ」の周知性 Aujuaソムリエの資格を有することは美容師が毛髪に関する深い知識やヘアケアの高い技術を持つことの証として認知されており、美容師がAujuaソムリエであることや、日本全国の美容室において、Aujuaソムリエがいるサロンであることは大々的に宣伝されている(甲8〜甲10)。また、美容師や美容関係者が「Aujuaソムリエ」を説明するネット記事は多数みられる(甲206、甲207)。請求人のホームページ上での「Aujuaソムリエ」検索によれば、Aujuaソムリエを置く美容室は、東京都だけでも1,008店舗、大阪府は821店舗であり、全国で多数に上る(甲208、甲209)。また、全国の美容院、美容室、ヘアサロン検索、予約に関する情報を提供するホットペッパービューティーのサイトで、「Aujua」の文字をキーワードとして検索すると、4,403件もの検索結果が挙がってくる(甲210)。「Aujua」の文字は、「美容」の役務に関連しても周知著名となっている。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性 ア 本件商標について 本件商標は、欧文字「Aujud」からなる商標であり、特定の観念は生じず、その文字に相応して「オージュド」の称呼が生じる。本件商標に係る指定役務のうち「美容,理容及び美容,スキンケア美容」は、引用商標に係る指定役務と同一又は類似である。 イ 本件商標と引用商標との比較 引用商標は、片仮名「オージュア」部分は欧文字「Aujua」の読みであると認識されるものであり、引用商標の要部は欧文字「Aujua」部分となる。本件商標と引用商標の「Aujua」部分を外観上比較すると、いずれも普通に用いられる書体をもって表された文字のみからなり、「Auju」の部分までが同一であり、最後の文字が「a」と「d」で異なるのみである。アルファベットの小文字「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「a」と「d」は外観上極めて類似度が高い。「Aujud」を注意深く観察したときには、最後の文字を「d」と認識できるとしても、いずれの商標の需要者も一般消費者を含むものであって、特別高い注意力をもって常に商標に接するとはいえない点をも考慮すれば、やや離れた場所や瞬間的に目にしたときには「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが極めて高い。 本件商標と引用商標の称呼について比較すると、最初の2音「オージュ」は共通しており、語尾の「ド」と「ア」のみが異なる。通常、語尾音は弱く発音され明瞭に聴取され難く、その差異が称呼全体に及ぼす影響は極めて小さいものである。また、両商標とも強く発音する箇所は語頭の「オ」の部分であり、最後の音は通常はそれほど強く発音されないことからすれば、本件商標及び引用商標の称呼を明確に区別することが困難な場合もあるというべきである。両商標は全体として一連に称呼すると、語調、語感が極めて近似し、互いに聞き誤るおそれがある。また、両商標とも、ともに特定の語義を有しない造語と解され、観念上明瞭な差異により区別されるとはいえない。したがって、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において類似する商標である。 ウ 審決例 過去の商標出願に関する拒絶査定不服審判において、構成文字がほぼ共通し語尾の一音のみが相違するにすぎない商標同士を、互いに相紛らわしく類似すると判断した審決が存在する(甲211〜甲212)。 これら審決例と同様に、本件商標と引用商標も特定の観念は生じないため、観念においては比較することはできないとしても、その欧文字は5文字という比較的文字数の少ない構成において、語頭の4文字「Auju」までを共通にし、その差異は語尾の「d」と「a」のみであるから、全体構成が相紛らわしく、また、語尾音における差異が聴取され難いことから、外観及び称呼において明らかに互いに類似する商標である。 さらに、判決(甲213)に鑑みれば、本件商標と引用商標においては、5文字と同じ文字数から構成され、文字の相違は最後の5文字目のみであり、5文字目が「全体に埋没して、外観上、両商標を見誤ることも多いとみるのが相当である。」と判断されるべきである。特に、本件商標と引用商標は、最初の文字だけが大文字であり、後の文字は小文字である点も共通していることに鑑みれば、さらに外観上の類似度は高まる。 エ まとめ 以上より、本件商標の指定役務中「美容,理容及び美容,スキンケア美容」と引用商標の指定役務は類似し、本件商標と引用商標は外観、称呼において相紛らわしい類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 ア 引用商標の周知性について 引用商標は請求人が2010年に発売し、売上高が高いヘアケア商品のブランド名として周知著名性を獲得している商標である。また、「Aujuaソムリエ」によるヘアケア・美容カウンセリングも美容業界の関係者や一般消費者に広く知られるに至っている。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標及び引用商標は、外観及び称呼が互いに相紛らわしい。本件商標及び引用商標に係る需要者には一般消費者が含まれるところ、一般消費者が通常有する注意力を踏まえると、外観及び称呼が互いに相紛らわしい両商標を取り違えることは十分にあり得るといえることからすれば、両商標の類似性の程度は相当程度高い。 ウ 引用商標の独創性 「Aujua/オージュア」は請求人が作った創作性の高い語であり、請求人以外の第三者により商標として採択される可能性の低い語である。特に、区分に関係なく、最初の4文字を「Auju」又は「AUJU」とする商標登録は、本件商標の権利者の商標登録は4件検知された一方で、請求人の商標登録は35件も検知されており、それ以外の者による商標登録はないという点に鑑みても、引用商標の独創性が極めて高い。 エ 本件商標の指定役務と、引用商標に係る商品及び役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに需要者の共通性について 「美容,理容及び美容,スキンケア美容」をはじめとする本件商標の指定役務と、引用商標に係る商品(ヘアケア商品)及び役務(ヘアケア・美容カウンセリング)とは、共に容貌・容姿を美しくすることや、身だしなみを整えることを目的とし、いずれも美容の向上や回復を目的とする役務や商品であり、美容に関するものとして密接な関連性を有する。本件商標の上記以外の指定役務についても、「健康診断,医療に関する情報の提供」は主に医師が行ったり、医療機関で提供される役務であるところ、近年では「メディカルエステ」などで医療と美容を同時に提供するエステは少なくない(甲214、甲215)。また、指定役務中「肥満予防・解消のための栄養の指導」については、美容アドバイスに一般的に含まれる項目である(甲216)。指定役務中「マッサージ,鍼.灸」は、美容目的で行われる場合も多い(甲217、甲218)。これら役務も、美容を目的として、また美容に関連して提供されている実情があり、引用商標に係る商品、役務と用途、提供場所などを共通にし関連性の程度は高い。そして、本件商標と引用商標の需要者は美容業界の関係者や一般消費者を含むものであり、需要者を共通にする。 オ 出所の混同のおそれ 上述のとおり、本件商標の指定役務中「美容,理容及び美容,スキンケア美容」と引用商標に係る商品や引用商標を用いて提供される役務は、ともに容貌、容姿を美しくすることや、身だしなみを整えることを目的とし、いずれも美容の向上や回復を目的とする役務や商品であり、美容に関するものとして密接な関連性を有するものである。また、上記以外の本件商標の指定役務もヘアケア商品や化粧品、美容サービスとの関連性が高い。 本件商標と、周知著名となっている引用商標の類似性の高さや、「Aujua/オージュア」の独創性の高さ、本件商標の指定役務と引用商標に係る商品・役務との関連性の高さや需要者の共通性も考慮すれば、本件商標を「健康診断,美容,肥満予防・解消のための栄養の指導,理容及び美容,マッサージ,スキンケア美容,医療に関する情報の提供,鍼・灸」に使用するときには、これに接する需要者は引用商標を連想、想起し、請求人との間に密接な関係を有する者が提供する役務であると誤信させ、混同を生じさせるおそれが極めて高い。 過去の判決(甲219)と本件は、本件商標及び引用商標(本件の引用商標においては要部のみ)がいずれも欧文字で表され、中間又は最後の文字が1文字異なるのみであること、称呼も1音のみ異なること、引用商標の独創性は高く、周知度が高いこと、本件商標及び引用商標に係る需要者には注意力がそれほど高いとはいえない一般消費者が含まれ、取り扱う商品と役務も密接に関連することなどが共通している。当該判決にならって、本件商標についても、これが付された商品に接した場合には、当該商品が請求人の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきであるとの結論を導くことに、何ら不自然な点はない。 カ まとめ 上述のとおり、請求人は引用商標を、ヘアケア関連商品及びヘアケア・美容カウンセリングの分野で継続的に使用してきたのみならず、引用商標の認知度向上のため、多大な費用・労力をかけて宣伝広告活動を行ってきた結果、我が国において引用商標は周知著名なものになっている。本件商標の指定役務と請求人商品・役務の関連性、需要者の共通性の程度はいずれも高い。これらを踏まえ、本件商標の指定役務の需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者がこれをその指定役務に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起、連想し、その商品が他人(請求人)あるいは同人と経済的もしくは組織的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 答弁に対する弁駁 (1)「「他人の先行登録商標に類似する商標ではないこと違反して登録された商標としての無効理由(商標法第4条第1項第11号)」に該当するものではない。」に対する反論 ア 被請求人によれば、引用商標のうち「オージュア」の文字が商標の要部とのことである。日本で登録された商標には、引用商標のように、欧文字と片仮名とを上下二段に書してなる商標が多数あり、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したものと容易に理解されるものである、とする審決・決定は多数ある。引用商標においては、下段の片仮名「オージュア」は、上段の「AUJUA」の読みであることは自然に読み取れるため、引用商標と他の商標との対比において、「AUJUA」部分を引用商標の要部とすることに何ら不自然なことはないと考えられる。一方で被請求人は、商標の要部の認定において、具体的に「片仮名の方が要部である」と判断された事例などを挙げてはいない。 イ 被請求人は「請求人は、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「d」と「a」は外観上極めて類似度が高い」と主張して、それらの文字を見誤るおそれが極めて高いと述べているが、このような評価内容は、我が国の英語教育や需要者の英語力を愚弄して過小評価する見解であると思料する。」と述べている。請求人は、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「d」と「a」は外観上極めて類似度が高い」ため、「やや離れた場所や瞬間的に目をしたときには「Aujua」を「Aujud」と見誤るおそれが極めて高い。」と述べた。被請求人が述べるように、「それらの文字を見誤るおそれが極めて高い」とは述べていない。 被請求人は、文字の末尾が「a」と「d」の違いによって、意味内容が異なるものもあり、よく認知されていると述べ、例として「cold」と「cola」を挙げている。しかし、「Aujud」と「Aujua」はいずれも既成語ではなく、特定の観念を生じない一方で、「cold」と「cola」は平易な英語であって被請求人が認めるとおり意味内容が異なることに鑑みれば、「cold」と「cola」を区別できることと、「Aujud」と「Aujua」が区別できるかは関連性がない。被請求人は「やや離れた場所や瞬間的に目をしたときには「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが極めて高い。」については何ら答弁していない。 ウ 被請求人は、商標の称呼が類似するケースとして、商標法第4条第1項第11号の審査基準で挙げられた例を引用し、「本件商標(オージュド)と引用商標(オージュア)では、上記のように称呼が類似するといったケースに該当しないものと思料する。」と述べている。審査基準に挙げられた例はあくまで例示であり、これに該当しなくても、称呼上類似とされた決定・審決は数多く存在する。請求人は審判請求書において、商標法第4条第1項第11号の審査基準で挙げられた、商標の称呼が類似するケースに完全には該当しないものの、称呼が類似するとされた審決例を挙げたが、これに対しては請求人は何ら反論していない。請求人の本件商標と引用商標が称呼上類似しないとの主張は十分な根拠が示されていない。 エ 被請求人は、本件商標「Aujud」について、「被請求人によればフランス語で今日を意味するaujourd’ huiからインスピレーションを得て作った造語で、明るい朝の希望と新しい出発を意味するものである。」と述べている。しかし、「aujourd’ hui」はフランス語で「今日、本日、昨今は」などという意味であって(甲220)、「明るい朝の希望と新しい出発」を意味しない。さらに「aujourd」と「aujud」は「o」と「r」の有無の差異がある。「aujourd’ hui」が日本人によく知られたフランス語ではないため、「o」と「r」がないことで、本件商標に接した取引者・需要者が「aujourd’ hui」を想起することはない。被請求人は、「Aujud」は一定の観念を生じない造語であることを認めたことにほかならず、「Aujud」は、他の商標との対比において観念を比較することができないことが明らかになったまでと考えられる。 オ 被請求人は、本件商標と引用商標とが非類似であることの審査事例として、商標登録例を挙げているが、無効審判が現在係属中である。さらに、併存登録例についても述べるが、商標の類似や混同のおそれは指定商品との関係から判断すべきものであるので、第21類の商品について本件商標と請求人の商標が並存して登録されていることを主張することは、本件無効審判での反論としては、適当ではない。また、その他の併存登録例を挙げているが、このような併存登録例が、本件商標と引用商標とを非類似とすべき根拠となる理由は何ら述べられていない。 (2)「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないこと違反して登録された商標としての無効理由(商標法第4条第1項第15号)に該当するものではない。」に対する反論 ア 被請求人は、「事実として、被請求人に対して取引関係者や顧客から、請求人との関係があるか否かといった問い合わせ・苦情は今日まで1件も無い状況である。(中略)実際は、そのような混同はこれまでに無く、今度もそのような混同を生ずることは無いと思料する。」と主張している。商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる「おそれ」がある商標に対して適用される規定であり、実際に混同を生じたかという事実は要件とされていない。被請求人に対して請求人と関係があるかという問い合わせがないことは、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するかの検討においては重要ではない。 イ 被請求人は、「「肥満予防・解消のための栄養の指導,マッサージ,スキンケア美容、医療に関する情報の提供,鍼・灸においても、「シャンプー、ヘアケア商品」との比較で、その内容、その目的、サービスを受ける対象者、当該サービスに従事する者などが異なり」と述べている。しかし、具体的な説明や証拠は示されていない。請求人が審判請求書で述べたとおり、「健康診断,医療に関する情報の提供」、「肥満予防・解消のための栄養の指導」、「マッサージ,鍼・灸」は、近年では美容が提供される同じ場所で提供されたり、美容目的で行われることが多く見られる(甲214〜甲218)。引用商標が周知性を獲得した「シャンプー、ヘアケア商品」及び「美容」とこれら役務を比較すると、目的、提供場所などが重複する場合は多い。その需要者は、美容業界の関係者や一般消費者を含むものであり共通する。さらに被請求人は、「健康診断会場に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置していることも想定できず」、「鍼・灸などの施術場所に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置していることも想定できず」と述べている。しかし、請求人が述べる上記の実情に鑑みれば、このように断言できない。健康診断や人間ドッグを受ける施設で、リラクゼーションサービスとして浴場が設置されたり、マッサージを受けられる所は多い(甲221〜甲223)。さらに、美容鍼と頭皮ケアを同時に行う施設も存在し、シャンプーを行われる所も見られる(甲224)。「健康診断会場に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置」されていることや、「鍼・灸などの施術場所に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置していること」は十分に想定できる。 また、「スキンケア美容」については、美容を目的として、また美容に関連して提供されるものであり、引用商標に係る商品・役務との関連性の程度は高く、需要者を共通にする。 ウ 被請求人は、「実際の取引事情を鑑みると、シャンプー、ヘアケア商品のメーカーなどが、それを設置している美容院等と組織的な繋がりがあるとして、混同を生じることは現実的には想定できないものである。そもそも、請求人による「Aujua」ブランドを使用した美容院・理容店が存在しないだけではなく、請求人による美容院・理容店自体を営業していない状況を鑑みると、請求人が多角化経営しているとの需要者の認知もなく、混同を生ずるおそれはないものである。」と述べている。 シャンプー、ヘアケア商品のメーカーが提携した美容室にて、「ヘアトリートメント美容」のサービスを行う実情は多く見られる(甲225〜甲228)ため、請求人の「実際の取引事情を鑑みると、シャンプー、ヘアケア商品のメーカーなどが、それを設置している美容院等と組織的な繋がりがあるとして、混同を生じることは現実的には想定できないものである。」との主張は根拠を欠く。 また、「請求人による「Aujua」ブランドを使用した美容院・理容店が存在しない」は事実ではない。請求人のホームページから「オージュア(Aujua)取扱店」を検索することができ、2021年1月7日の情報によれば、東京都だけでも711件が挙がってくる(甲229)。さらに、多くの美容室において、「Aujuaトリートメント」と称して、「Aujua/オージュア」商品を使った集中ヘアトリートメント美容が行われている(甲230、甲231)。これらの事情に鑑みれば、シャンプー、ヘアケア商品及び美容の役務について周知である「Aujua」と類似の商標が、「美容、理容」の役務に使用された場合、これら役務の提供者は請求人と組織的な繋がりがあると誤信し、出所の混同を生ずるおそれが高い。 エ 被請求人は、「一般的にも、「シャンプー、ヘアケア商品」のブランド名称(登録商標)を使用した美容院なども数多く存在して、特段、混同を生じていない取引事情を鑑みても」と述べ、その例として、クラシエホームプロダクツ株式会社が提供する「ひまわり」ブランドのシャンプーがある一方で、「「ひまわり」の文字をブランドとする美容院・理容院」が数多くあることや、ユニリーバ・ジャパン株式会社が提供する「LUX」ブランドのシャンプーやヘアケア商品がある一方で、「「LUX」の文字をブランドとする美容院」が数多くあることを挙げている。しかし、「ひまわり」は既成語である。さらに、「LUX」の文字は、シャンプー、ヘアケア商品以外の商品についてはユニリーバ・ジャパン株式会社以外の会社が多数商標登録している状況である(甲232)。一方で、「Aujua」の語の独創性は高く、辞書に記載された語でもなく、請求人以外の者が、いかなる分類においても登録している商標ではない。したがって、被請求人があげる「ひまわり」や「LUX」の事例は、本件とは事案を異にするものであり、この2件の事例をもって、「シャンプー類とブランド名称と美容院等のブランド名称が同一であっても、通常は、需要者をして、そのメーカーと美容院等が何等かの資本関係や組織的な関係があると誤認しているとは普通は考えられない」として、本件商標と請求人商標との間で混同を生ずるおそれはないと結論付けることは失当である。 現在は、医療と美容を融合させたサービスや、医療と美容の提供者がコラボレーションを行うことは珍しくなく、医療や鍼・灸・マッサージが提供される場において「シャンプー、ヘアケア商品」が設置されることは十分に想定できる。さらに、シャンプー、ヘアケア商品のメーカーと、美容院等とが関係している事実がある。このような実情と、「Aujua」の独創性の高さや、「Aujud」と「Aujua」の類似の程度に鑑みれば、本件商標がその役務について使用された場合、これに接する需要者は引用商標を連想・想起し、かかる役務は請求人との間に密接な関係を有する者が提供する役務であると誤信し、混同を生ずるおそれが高い。 オ 被請求人は、「Aujud」のブランドは、日本国内においても周知であると述べ、その証拠としては検索エンジンGoogleで、Aujudを検索すると、第1頁に表示される全ての情報が被請求人のものであることが提出されている。商標法第4条第1項第15号の判断時は、登録出願時及び査定時である(商標法第4条第3項)ため、この検索結果と同様の検索結果が、本件商標の登録出願時及び査定時にも得られたことを証明する必要がある。かかる証拠(乙29)には検索日は記載されていないため、証拠として採用できるものではない。 また、本件商標の周知性を立証するための日本での売上高、販売店舗、宣伝広告費用、宣伝広告の情報などは一切示されていない。被請求人が提出した検索エンジンGoogleでのAujudの検索で上がってきた情報を見る限り、被請求人は、韓国では痩身クリニックを置いているようであるが、日本では店舗などはなく、日本語でウェブサイトやプログ、インスタグラムなどを提供しているのみのようである。本件商標が周知であることの根拠が不十分であることに鑑みても、「「Aujud」のブランドも一定の周知性を持って需要者に認識されていることからも、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない」との被請求人の主張は失当である。 第4 被請求人の答弁 1 答弁の趣旨 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第31号証(以下、「乙○」と表記する。)を提出した。 2 答弁の理由 (1)商標法第4条第1項第11号に該当しないこと ア 外観の観点では、引用商標「Aujua\オージュア」のうち、「オージュア」の文字が大きく、また、国内消費者としては普段慣れ親しんでいる片仮名に注意を惹くため、「オージュア」の文字が商標の要部といえる。したがって、本件商標と引用商標は、文字の種類も異なることから、すべて文字が異なるので、外観においては全く一致せず、非類似である。 仮に、「Aujua」の文字に着目したとしても、やはり両者は非類似である。両者の外観は、5文字中1文字が異なるもので、後尾の文字が異なる。文字の先頭や後尾は、看者が注目する点でもあるので、後尾の文字が異なることは相当のインパクトがある。 また、引用商標「Aujua」は、真ん中の「j」の文字を中心に「u」の文字で囲まれて、さらにその「uju」の文字を中心として「a」の文字で囲んだ構成となっており、文字配列に法則性をもった幾何学的なデザインともいえる。その点で、「Aujud」は、そのような法則性はなく、外観の印象が大きく異なる。 さらに、請求人は、「アルファベットの小文字の「d」は、「a」の上に縦線を付け足しただけの外観であり、「a」と「d」は外観上極めて類似度が高い」と主張して、それらの文字を見誤るおそれが極めて高いと述べているが、このような評価内容は、我が国の英語教育や需要者の英語力を愚弄して過小評価する見解である。アルファベットの小文字などは小学生(場合によっては未就学児童)も習得するものであり、「a」を先頭とする文字が「d」が付くことなどによって、意味が変わる単語(art(芸術)/dart(ダーツを投げる)、ash(灰)/dash(ダッシュ))も多く、多くの需要者も「a」と「d」の差異はよく知っている。また、文字の末尾が「a」と「d」の違いによって、意味内容が異なるものもあり、よく認知されている(cold(寒い)/cola(コカ・コーラの愛称)。 なお、請求人は、「特に、本件商標と引用商標においては、最初の文字だけが大文字であり、後の文字は小文字である点も共通していることを鑑みれば、さらに外観上の類似度は高まるといえる」と主張しているが、通常、英単語で先頭を大文字にするルールは、一般的に「大文字始まり(Title Case)」として知られているもので、何ら特徴的なものではない。 外観においては、先に述べた「オージュア」の文字を除外して判断することは適当ではないことも含めて、上述した各理由を総合的に考えても、類似するものではない。 イ 次に、称呼の非類似について述べる。本件商標は「オージュド」と、引用商標は「オージュア」と発音される。このように商標の文字数が少ないこともあり、両者は明確に区別できる称呼となっている。 ちなみに、称呼が類似するケースとしては、相違する音が長音、促音あるいは弱音などの場合は、相違点としての影響が小さくなり、称呼が類似と判断されやすくなる。 相違する1音が清音、濁音、半濁音の差にすぎない場合にも、称呼が類似すると判断される。比較する商標の「音数が同じ」で「称呼の違いはそのうちの一音のみ」そして「違う音の差が清音や濁音によるものである」という、三つの要件を満たしている場合原則として両者の称呼は類似すると判断される。 また、比較する商標が「相違する1音がともに弱音であるか、又は弱音の有無の差にすぎない」ときも、称呼が類似すると判断される。 さらに、比較する商標の「相違する1音が長音の有無、促音の有無又は長音と促音、長音と弱音の差にすぎない」ときは、称呼が類似すると判断される。 本件商標「オージュド」と引用商標「オージュア」では、上記のように称呼が類似するといったケースに該当しない。したがって、両商標は称呼においても類似しない。 ウ 次に、観念について説明する。まず、引用商標の「Aujua/オージュア」は、請求人の説明によれば、請求人のホームページにて、「独特の雰囲気/オーラがある」という意味を持つ英単語の「aura(オーラ)」と、「歓喜に満ちる」という意味を持つ英単語の「jubilant(ジュビラント)」を組み合わせた請求人による造語であり、創作性の高い語である」と述べている。ちなみに、そのような観念からも「Aujua」の語尾が「a」であることに強い意味があるともいえる。 他方、本件商標「Aujud」は、被請求人によればフランス語で今日を意味するaujourd’huiからインスピレーションを得て作った造語で、明るい朝の希望と新しい出発を意味するものである。ちなみに、そのような観念からも「Aujud」の語尾が「d」であることに強い意味があるともいえる。 よって、両商標は、観念の観点からも、非類似といえる。上述したように、両商標は、外観、称呼、観念の観点からもそれぞれ非類似であり、同時に総合的に考慮しても、非類似である。 そして、両商標が非類似であることは、多くの審査事例からも裏付けられる。つまり、AujudとAujuaの文字は相互に複数回にわたって審査された結果、数多くの登録商標が存在しており、両商標が非類似であることは、多くの審査事例からも裏付けられている。 したがって、商標法第4条第1項第11号違反を理由とする無効理由は存在しない。 (2)商標法第4条第1項第15号に該当しないこと ア 請求人は、自社の「Aujua」の商標を付したシャンプーやヘアケア用品について一定程度の広告宣伝等の活動をすることによって周知性を獲得していることから、本件商標の指定役務である「健康診断,美容,肥満予防・解消のための栄養の指導,理容及び美容,マッサージ,スキンケア美容,医療に関する情報の提供,鍼.灸」について、被請求人の「Aujud」の使用を請求人の業務と混同のおそれがあると述べている。 しかし、まず、事実として、被請求人に対して取引関係者や顧客から、請求人との関係があるか否かといった問い合わせ、苦情は今日まで1件もない状況である。請求人の主張でも、このような具体的な問い合わせ、苦情があったことの言及はないことから、実際は、そのような混同はこれまでになく、今度もそのような混同を生じることはない。 イ 次に、両商標は非類似であり、請求人が広告宣伝等で周知となったと称しているものは「シャンプー、ヘアケア商品」であり、本件商標の指定役務とは非類似の関係にある。 「健康診断」と「シャンプー、ヘアケア商品」では、その内容、目的、健康診断を受ける対象者、健康診断に従事する者などが異なり、また、健康診断会場に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置していることも想定できず、商品・役務の出所の混同を生ずるおそれがない。同様に、「肥満予防・解消のための栄養の指導,マッサージ,スキンケア美容、医療に関する情報の提供,鍼・灸」においても、「シャンプー、ヘアケア商品」との比較で、その内容、目的、サービスを受ける対象者、当該サービスに従事する者などが異なり、また、鍼・灸などの施術場所に「シャンプー、ヘアケア商品」が設置していることも想定できず、商品・役務の出所の混同を生ずるおそれがない。 「美容,理容及び美容」と「シャンプー、ヘアケア商品」では、美容、理容及び美容を提供する際にそれらの商品を使用することはある。しかし、実際の取引事情を鑑みると、シャンプー、ヘアケア商品のメーカーなどが、それを設置している美容院や理髪店と組織的な繋がりがあるとして、混同を生じることは現実的には想定できない。 そもそも、請求人による「Aujua」のブランドを使用した美容院・理容店が存在しないだけではなく、請求人による美容院、理容店自体を営業していない状況を鑑みると、請求人が多角化経営しているとの需要者の認知もなく、混同を生じるおそれはない。 また、一般的にも、「シャンプー、ヘアケア商品」のブランド名称(登録商標)を使用した美容院なども数多く存在して、特段、混同を生じていない取引事情を鑑みても、美容,理容及び美容を提供する際に「シャンプー、ヘアケア商品」を使用するからといって、混同を生じさせるものではない。 したがって、具体的な取引事情(乙2〜乙28)を鑑みると、シャンプー類とブランド名称と美容院等のブランド名称が同一であっても、通常は、需要者をして、そのメーカーと美容院等が何らかの資本関係や組織的な関係があると誤認しているとは普通は考えられない。 さらに、本事案の場合には、ブランド名称(登録商標)が同一ではなく、非類似にあっては、混同を生じるおそれはない。 ウ 加えて、被請求人の「Aujud」のブランドは、日本国内においても周知となっている事情がある。著名な検索エンジンであるグーグルにて、Aujudを検索すると、第1ページに表示される全ての情報が被請求人のものとなっている(乙29)。顧客の美容・痩身等を目的として、施術、投薬、食事栄養指導、サプリメント提供、スキンケア美容、マッサージ、カウンセリングなどを提供している(乙30)。 本件商標「Aujud」のブランドも一定の周知性を持って需要者に認識されていることからも、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない。 エ 請求人は、「Aujuaソムリエ」について言及しているが、「Aujua」と「Aujud」の両商標が非類似であることに加えて、「ソムリエ」の文字が付加されているので、外観、称呼の観点から、さらに非類似である要素が強くなっている。また、観念でも、美容などの分野で「ソムリエ」の文字は、異分野(ワイン分野)で使用されているものであり、ユニークなものである。また、「ソムリエ」の文字からは複数の商品などから顧客にあった商品を選択提案してくれる人物の印象があるが、「Aujud」の文字からはそのような観念は生じない。 次に、「Aujuaソムリエ」は、交通広告や屋外広告などもなく、特段に周知性を獲得したといった根拠はない。 そして、「Aujuaソムリエ」は、請求人のHPによれば「オージュアソムリエは、オージュア全商品の知識はもちろん、地肌や毛髪のメカニズムの基礎、そしてコミュニケーションの技術まで徹底的に学び、お客さまの髪を預かるパートナーとしてふさわしい存在であると認定された美容師に与えられる専門的な資格」と紹介されている(乙31)。顧客に美容などの役務を提供するのは、各美容院などであるので、各美容院の屋号などのブランド名称が、その役務について使用されているものである。他方で、「Aujuaソムリエ」は民間資格の名称であるので、請求人はもとより、いずれの者であってもその役務(美容など)について使用されているものではない。 したがって、請求人が「Aujuaソムリエ」の文字を民間資格の名称として自社のHPで表示していたとしても、商標法第4条第1項第15号の規定の判断に関係するものではない。 第5 当審の判断 1 利害関係について 請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。 2 引用商標の周知著名性について (1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 ア 請求人は、ヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤、パーマ剤、シャンプー、ヘアトリートメント、薬用発毛促進剤、スキンケア・メイクアップ化粧品の製造及び販売を事業内容としており、美容師が施術に使う業務用品と、美容室だけで販売するサロン専売品の分野で2割弱のシェアを占めている(甲2、甲3)。 イ 請求人は、「Aujua」(オージュア)と称するヘアケアブランドの下で、シャンプーやトリートメントなどのヘアケア商品(以下「請求人使用商品」という。)を、2010年から、美容室専売品として製造、販売している(甲6、甲99、甲205)。 ウ 請求人使用商品の売上高は、発売以降毎年増加しており、2020年は約80億円、2021年は約97億円である(甲12)。 エ 請求人は、請求人使用商品の広告看板を電車の駅構内に設置した(甲15、甲21)。 オ 請求人使用商品は、2019年から2022年の間に発行された女性誌を中心とした雑誌(美的、SPUR、LEE、anan、andGIRL、美ST、日経ヘルス、日経WOMAN、etROUGE、美的GRAND、VERY、美人百花、Harper’s BAZZAR、CLASSY、GLOW、Marisol、THE NIKKEI MAGAZINE STYLE Ai、Voce、HOT PEPPER BEAUTY、&ROSY、MORE、ar、onotaMUSE、STORY、upPLUS、タウン情報松山、Mart、SHE THREE、SPRiNG、MAQUIA、kiitos、ELLE、GINZA、JJ、Precious、mina、25ans、LARME 049、ViVi、otonaMUSEなど)や書籍、インターネット記事情報、テレビ番組などにおいて、請求人使用商品が紹介又は掲載されている(甲27〜甲58、甲60〜甲108、甲110〜甲198、甲200〜甲205)。 それら記事情報の中には、請求人使用商品について、「知る人ぞ知るミルボンのヘアケアブランド「オージュア」のダメージケアライン「リペアリティ」をご紹介。」(甲155)、「最近人気となっているようなイメージを持っている人も多いとは思いますが、オージュアは10年以上も長く続くロングセラー商品なんです。」(甲162)、「WWD2017年上半期 美容師さんが選ぶNo.1ヘアサロン専売品で、シャンプー・インバストリートメント両部門1位に、Aujua(オージュア)が選ばれています」(甲193)、「ミルボンのヘアケアブランド「オージュア」がキャリア女性らから支持を得ている。」(甲205)と言及するものがある。 (2)上記認定事実によれば、「Aujua」(オージュア)のブランド名の下で販売されている請求人使用商品は、2010年の発売以降、販売数量は毎年増加し、2021年には約97億円の販売実績をあげ、2019年から2022年の間に発行された女性誌を中心とする雑誌等を通じた商品紹介記事が継続的に掲載されているもので、キャリア女性を中心に支持されているロングセラー商品とも評されているから、請求人使用商品の名称に相当する引用商標は、美容に関心の高い一部女性の間においては、「ヘアケア商品」に係るブランド名として一定程度認知されているとは考えられる。 他方、請求人使用商品は美容室専売品であり、一般的なヘアケア商品と比較して流通経路が限定的であること、請求人使用商品のメディアでの商品紹介記事は女性誌に偏重しており、請求人使用商品を一般消費者に向けて広く周知する積極的な広告宣伝実績は確認できないことを踏まえると、引用商標は、我が国の一般需要者の間において高い周知、著名性を獲得しているものとは認められない。 (3)請求人は、Aujuaソムリエの資格を有する美容師の存在や、その宣伝広告実績、Aujuaソムリエを置く美容室が全国で多数にのぼることなどを指摘して、引用商標は「美容」の役務に関連して周知著名となっている旨を主張する。 しかしながら、請求人使用商品を取り扱う美容室や美容院が存在し(甲208、甲209)、また、「Aujuaソムリエ」の資格名を称する美容師が存在する(甲8〜甲10)としても、請求人の提出証拠からは、当該資格名自体の一般需要者の間における認知度の程度も明らかではなく、また、「Aujua」の名称(店舗名)で「美容」の役務が提供されているような実情は確認できないから、引用商標は「美容」に係るブランド名として我が国の需要者の間において周知、著名性を獲得していると認めることはできない。 3 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標の類否 ア 本件商標について 本件商標は、「Aujud」の文字を横書きしてなるところ、当該文字は一般的な辞書等に掲載されていない造語である。 また、当該文字は、発音方法の特定が難しいものの、英語風に「オージュド」のように発音できる。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「オージュド」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。 イ 引用商標について 引用商標は、「Aujua」の欧文字及び「オージュア」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、その片仮名部分は欧文字部分の表音を表してなると看取できる。 そして、「Aujua」(オージュア)の文字は、一般的な辞書等に掲載されていない造語である。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「オージュア」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 ウ 本件商標と引用商標の比較 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、片仮名部分の有無のほか、欧文字部分にしても、語頭の「Auju」の文字を共通にするとしても、語尾の「d」と「a」の文字の差異により、構成文字全体としては異なる語を表してなるから、判別は容易である。また、称呼においては、語頭の「オージュ」の音を共通にするとしても、語尾の「ア」と「ド」の音の明瞭な差異により、全体の語調、語間は異なるものとなり、聴別は容易である。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。 そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であるから、これらを総合して考察すれば、記憶される印象において異なる別異の商標であり、同一又は類似の商品又は役務について使用するときであっても、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。 エ 請求人の主張について 請求人は、「a」と「d」は外観上極めて類似性が高く、一般消費者は特別高い注意力をもって常に商標に接するとはいえない点をも考慮すれば、両商標をやや離れた場所や瞬間的に目にしたときは、「Aujud」を「Aujua」と見誤るおそれが高い旨を主張する。 しかしながら、本件商標と引用商標の構成文字の差異である語尾の「d」と「a」の文字は、右側の線の態様の差異(直線と曲線、長さ)により判別は容易であり、また、両者はともに5文字からなる比較的短い文字構成であるから、両商標は構成文字全体としては異なる語を表してなると容易に理解できる。 そうすると、両商標は、上記ウのとおり、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、記憶される印象は異なるものとなるから、時と所を異にして離隔的に観察しても、出所の誤認を生じるおそれのない非類似の商標といえる。 (2)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは同一又は類似する商標ではないから、それら指定役務を比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標と引用商標は、上記3(1)ウのとおり、外観、称呼及び観念を総合して考察すれば、記憶される印象において異なる別異の商標である。 (2)本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る商品の関連性の程度 ア 本件商標の指定役務中「美容,理容及び美容,スキンケア美容」は、理髪店や美容室、ビューティサロン、エステティックサロンなどによる理容や美容サービスを提供する役務である。 他方、引用商標の使用に係る「ヘアケア商品」(シャンプーやコンディショナーなど)は、頭髪用化粧品製造業者により製造され、ドラッグストアや化粧品小売業者などにより販売される商品である。 上記商品及び役務は、いずれも美容に関連する点を共通にするものの、一般的には製造業者、販売業者及び提供事業者を異にするもので、同一事業者の製造、販売又は提供するようなものではないから、関連性の程度は低い。 イ 本件商標の指定役務中「健康診断,肥満予防・解消のための栄養の指導,マッサージ,医療に関する情報の提供,鍼・灸」は、病院や診療所、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などによる施術や療術を提供する役務である。 他方、引用商標の使用に係る「ヘアケア商品」は、上記アのとおり、頭髪用化粧品製造業者により製造され、ドラッグストアや化粧品小売業者などにより販売される商品であるから、本件商標の上記指定役務とは、事業分野が明らかに異なるもので、製造業者、販売業者及び提供事業者を異にし、同一事業者の製造、販売又は提供するものではないから、関連性の程度は乏しい。 (3)引用商標の周知性 引用商標は、上記2(2)のとおり、美容に関心の高い一部女性の間においては、「ヘアケア商品」に係るブランド名として一定程度認知されているとしても、我が国の一般需要者の間において高い周知、著名性を獲得しているものではない。 (4)検討 以上のとおり、引用商標は、我が国の一般需要者の間において高い周知、著名性を獲得しているものではないことに加えて、本件商標と引用商標は、記憶される印象において異なる別異の商標であり、また、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る商品は関連性の程度が低いことを踏まえると、本件商標の指定役務に係る取引者及び需要者(一般消費者)において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標をその指定役務に使用したときに、引用商標又は請求人の業務に係る商品との関連性を想起させることは考えにくく、他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2023-12-07 |
結審通知日 | 2023-12-12 |
審決日 | 2023-12-27 |
出願番号 | 2020152790 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
Y
(W44)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大橋 良成 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 阿曾 裕樹 |
登録日 | 2021-10-25 |
登録番号 | 6461105 |
商標の称呼 | オージュド |
復代理人 | 桶川 美和 |
代理人 | 山田 薫 |
代理人 | 新保 斉 |
代理人 | 塚田 美佳子 |