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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1406051 |
総通号数 | 25 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-05-17 |
確定日 | 2023-12-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6680828号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6680828号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6680828号商標(以下「本件商標」という。)は、「Alphacool」の欧文字を標準文字により表してなり、令和4年5月16日に登録出願、第9類「コンピュータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。),コンピュータ・グラフィックカード・マザーボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却用装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む),コンピュータ・グラフィックカード・マザーボード・マイクロプロセッサ・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却装置の部品としてのポンプ及びタンク(冷却用の水の冷却用のポンプ及びタンクを含む),電子応用機械器具用ヒートシンク,冷却装置をコンピュータ中央処理装置に取り付けるためクリップ,コンピュータ中央処理装置用冷却装置の部品として用いる熱伝導パイプ、ファンブレード,コンピュータ中央処理装置用冷却装置,電子応用機械器具の部品用の自動冷却装置,中央処理装置用の冷却器,PCハウジング用ファン,ランダムアクセスメモリー用冷却装置,ハードディスク装置用放熱板,コンピュータ用ハウジング,コンピュータ用電源,コンピュータ用冷却ファン,充電器,USB対応コンピュータ用ファン,コンピュータ用ケーブル,コンピュータ用構成部品,無線及び有線ヘッドセット」を指定商品として、令和5年2月13日に登録査定され、同年3月15日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標は、別掲1のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)、別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「ALPHACOOL」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「引用商標3」という。)であり、申立人が、本件商標の登録出願前より、「コンピュータ用電源,コンピュータ用冷却装置,コンピュータ周辺装置」などについて使用しているというものである(上記の引用商標1ないし引用商標3をまとめて、以下「引用商標」という場合がある)。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第55号証(以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。)を提出した。 1 具体的理由 申立人は、2003年にドイツで設立されたコンピュータ冷却分野専門メーカーであり、設立当初から現在に至るまで会社名及び商標として「ALPHACOOL」を使用しており(甲2)、我が国においては、2016年から商品の販売を開始している。 (1)商標法第4条第1項第10号 本件商標は、「Alphacool」の欧文字からなり、「アルファクール」の称呼を生じる。また、申立人は、本件商標の登録出願前より、商品「コンピュータ用冷却装置」、「コンピュータ周辺装置」等の自社製品に、「ALPHACOOL」の欧文字からなる商標(以下「申立人商標」という。)を付して使用しており(甲3、甲5、甲6、甲9、甲11、甲14、甲15、甲23、甲26、甲27)、当該商標からは「アルファクール」との称呼が生じる。 よって、外観、称呼、観念のうち、少なくとも外観及び称呼が同一又は類似であるから、両商標は同一又は類似である。 また、本件商標の指定商品は、申立人が使用する商品「コンピュータ用冷却装置」、「コンピュータ周辺装置」等と同一又は類似である。 さらに、商標「ALPHACOOL」は、申立人によって長年使用された結果、我が国において、取引者、需要者間に広く認識されるに至っている(甲4〜甲40)。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号 本件商標と申立人商標が外観及び称呼において同一又は類似する商標であって、同商標が我が国において周知となっており、本件商標の指定商品と、申立人が商標「ALPHACOOL」を付して製造販売している商品は同一又は類似であることから、本件商標を指定商品に使用したときには、これに接する取引者、需要者が、あたかも申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある。 以上のとおり、本件商標は、申立人の周知な商標「ALPHACOOL」との間で出所の混同を生じるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号 上記(1)のとおり、本件商標は、申立人商標と同一又は類似するものであり、本件商標の指定商品と申立人の製造販売する商品の需要者とは共通することが想定されることからすると、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)がこれを商標として採択するに当たり、偶然に申立人商標と酷似する結果となったというよりは、むしろ、申立人商標の周知性・著名性を利用して不正の利益を得る等の目的をもって使用をするものと推認される。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号 本件商標権者は、本件商標以外にもそれぞれ分野の異なる製品を扱う機械メーカー会社等が既に使用している商標について、複数の商標登録出願、複数の商標登録を保有しており(甲41)、全41件のうち、本件商標を含め、少なくとも12件が第三者の使用する商標と同一又は類似の商標であり(甲42〜甲52)、これらの商標を本件商標権者が全て偶然に採択したということは考えづらく、これらの分野の異なる製品全てについて、一個人である本件商標権者が自己の商標として使用する、又は使用する予定であるとは到底考えられない。 申立人は、我が国において2016年から現在に至るまで、商標「ALPHACOOL」を付した製品を販売しており、当該製品は、高い評価を受けている。仮に本件商標の登録出願前より商標「ALPHACOOL」が我が国において周知となっていなかったとしても、本件商標は悪意又は不正な目的をもってひょうせつ的に出願されたものであることは明らかである。 よって、本件商標の登録出願の経緯には社会的相当性を欠くものがあり、本件商標の登録は商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものであって、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認しえないと考えられる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知・著名性について 申立人は、商標「ALPHACOOL」は申立人によって2016年から現在まで我が国において継続的に使用されており、当該商標を付した製品は我が国の複数のウェブサイトにおいて購入することができ、さらにインターネット記事でも数多く紹介されていることから、我が国の取引者・需要者において周知となっていることは明らかである旨主張している。 しかしながら、申立人が、商標「ALPHACOOL」を長年使用してきたとして提出した2016年から2022年の間に我が国において販売された製品に関する「Invoice」(甲34〜甲40)は、外国語で作成されているにもかかわらず翻訳文の提出がないため、その詳細な内容が明らかではなく、また、申立人の業務に係る商品の我が国又は外国における売上高、販売量などの販売実績並びに広告宣伝の期間、規模、頻度等など、引用商標の周知・著名性を数量的に判断し得る具体的な証拠は何ら提出されていない。 したがって、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類似性について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「Alphacool」の欧文字を標準文字により表してなるところ、これよりは「アルファクール」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標1は、別掲1のとおりの構成からなるところ、図形又は文字を相当程度図案化されたものとみるのが相当であり、これよりは特定の称呼及び観念は生じないというのが相当である。 また、引用商標2は、別掲2のとおり、「alphaCOOL」の欧文字を横書きした構成(「COOL」の文字は青色で表されている。)からなり、引用商標3は、上記第2のとおり「ALPHACOOL」の欧文字を横書きした構成からなるところ、いずれも本件商標と同じつづりであるから、引用商標2及び引用商標3よりは「アルファクール」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成であるところ、本件商標と引用商標1は、称呼及び観念において比較することができず、外観において相違するものであり、類似する商標とはいえない。一方、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、いずれも同じつづりからなる欧文字を表記するものであるから、外観において近似した印象を与える上、称呼を共通にするものであり、観念においても異なるところはないことから、互いに相紛れるおそれのある類似の商標といえる。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であり、また、本件商標と引用商標2及び引用商標3は互いに類似の商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であり、また、本件商標と本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、互いに類似の商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。 してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第7号該当性について 上記1のとおり、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたと認めることはできないから、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるようなものでもなく、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情も見いだせない。 なお、申立人は、本件商標権者は、本件商標以外にもそれぞれ分野の異なる製品を扱う機械メーカー会社等が既に使用している商標について、複数の商標登録出願、複数の商標登録を保有しており(甲41)、これらの商標を一個人である権利者が自己の商標として使用する、又は使用する予定であるとは到底考えられないから、本件商標は悪意又は不正な目的をもってひょうせつ的に出願されたものである旨主張している。 しかしながら、商標権者が本件商標以外にもそれぞれ分野の異なる、複数の商標登録出願、複数の商標登録を保有しているとしても、そのことのみをもって直ちに本件商標が剽窃的な登録出願であり社会的相当性を欠くものと認めることは困難であり、また、本件商標が不正の利益を得る目的等をもって使用をするものと認めるに足りる事実は見いだせないものであるから、申立人の主張は採用することはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 しかし、本件商標と引用商標1は非類似の商標であり、また、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは互いに類似の商標であるとしても、引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであるから、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。 また、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 7 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標1(色彩は原本参照) 別掲2 引用商標2(色彩は原本参照) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2023-12-20 |
出願番号 | 2022060708 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W09)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山田 啓之 |
特許庁審判官 |
藤村 浩二 杉本 克治 |
登録日 | 2023-03-15 |
登録番号 | 6680828 |
権利者 | 張 天文 |
商標の称呼 | アルファクール、アルファ、クール |
代理人 | 大倉 桂子 |
代理人 | 山崎 和香子 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 前川 砂織 |
代理人 | 森田 拓 |
代理人 | 前川 純一 |
代理人 | 岡野 真未子 |
代理人 | 松永 章吾 |