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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W25
管理番号 1405886 
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-26 
確定日 2023-12-20 
事件の表示 商願2020−161044拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第25類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品(以下「出願時商品」という。)として、令和2年12月28日に登録出願されたものであり、出願時商品は、同3年9月24日付け手続補正書により、第25類「被服,洋服,ジャケット,スーツ,スカート,ズボン,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,キャミソール,タンクトップ,ティーシャツ,アイマスク,靴下,スカーフ,ショール,手袋,ネクタイ,マフラー,耳覆い,帽子,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,靴類,雨靴,革靴,サンダル靴,スニーカー,ブーツ,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」(以下「原審補正商品」という。)に補正されている。
なお 本願は、令和3年11月10日付け拒絶理由通知書(以下「拒絶理由通知」という。)により、本願の拒絶理由が通知され、同4年3月16日付け意見書(以下「意見書」という。)が提出されたが、同年4月25日付けで拒絶査定され、これに対し、同年7月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、本願商標は、「CHURCHILL」の欧文字をその構成中に有してなるところ、当該文字は、英国の元首相「Winston Churchill」の著名な略称であるから、本願商標を同人と何ら関係のない出願人が、その指定商品について私的独占使用の目的をもって登録することは、同人の名声、名誉を傷つけるおそれがあり、同人を敬愛する英国民の感情を害するばかりか、我が国の国際的な信頼をも損なうおそれがあり、ひいては国際信義に反し、公序良俗を害するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋
当審において、令和5年4月27日付け審尋により、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対し、拒絶理由通知の理由2で提示したとおり、本願商標は登録第5830099号商標(以下「引用商標」という。)と類似の商標であり、原審補正商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

第4 当審の審尋に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記審尋に対し、令和5年6月19日付け回答書を提出し、以下1及び2のとおりの意見を述べた。
1 引用商標の構成中、「CHURCHILL\OF LONDON」は、ゴシック体風の文字で統一感良く表されており、また英文法的にも「OF LONDON」は、「CHURCHILL」を修飾する修飾句であり、被修飾語である「CHURCHILL」と一体に認識されるものであるから、引用商標について、「CHURCHILL」の部分のみを抽出して要部観察を行うべきではない。
2 本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当すると判断する場合は、同法第55条の2第1項にて準用する同法第15条の2に規定する通知を請求人に対して行い、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えるべきである。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、構成中に「CHURCHILL」の欧文字を有してなるところ、当該欧文字は、英語の姓氏及びカナダの河川名又は都市名を表す語(ランダムハウス英和大辞典第2版(株式会社小学館発行):別掲2)であり、当該欧文字が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかである。
また、「CHURCHILL」の欧文字は、別掲2のとおり、姓氏を表す英語であり、これを姓氏とする者は多数存在することが容易に推測し得ることからすると、本願商標に接する原審補正商品の取引者、需要者が、これより、英国の元首相である「Winston Churchill」の略称を想起するとはいい難いものである。
そして、当審において職権により調査しても、「CHURCHILL」の欧文字を商標として採択、使用することが、英国の元首相である「Winston Churchill」の名声、名誉を傷つけるおそれがあり、同人を敬愛する英国民の感情を害するばかりか、我が国の国際的な信頼をも損なうおそれがあると認め得る具体的な事情は、発見できないため、請求人が、本願商標を採択し、登録出願すること及び登録を受けることが、国際信義に反するとはいい難いものである。
さらに、本願商標は、その登録出願の経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められないから、請求人が、本願商標を原審補正商品に使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものと認めることもできない。
加えて、本願商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではない。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものということはできないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、鹿の頭部とおぼしき赤色図形を描いた赤色エンブレム様の図形(以下「赤色エンブレム様図形」という。)の上部に「CHURCHILL」の欧文字を白抜きしてなるところ、構成中の「CHURCHILL」の欧文字は、赤色エンブレム様図形の上部に白抜きされていることから、看者の目を引く部分であり、当該欧文字は、原審補正商品との関係においては、商品の品質等を表すものとして判断すべき事情はなく、商品の出所識別標識としての機能を発揮するものである。
そして、鹿の頭部とおぼしき赤色図形と「CHURCHILL」の欧文字は、重なることなく配置されていることから、視覚上、分離して看取され得るものであり、これらの観念上のつながりも認められないことから、鹿の頭部とおぼしき赤色図形と「CHURCHILL」の欧文字とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められないものである。
さらに、本願商標の構成中の赤色エンブレム様図形及び鹿の頭部とおぼしき赤色図形は、我が国において特定の意味合いを有するものとして、認識され、親しまれているというべき事情はないため、これらよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
そうすると、本願商標は、引用商標との類否を判断するに当たって、本願商標の構成中の「CHURCHILL」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、本願商標は、その構成中の「CHURCHILL」の欧文字に相応して「チャーチル」の称呼が生じ、英語の姓氏及びカナダの河川名又は都市名の観念を生じるものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲3のとおり、紺色横長長方形内に灰色の輪郭線からなる横長長方形を描き、その内部に花のような図形を内包する円形図形(以下「円形図形」という。)を配し、その下に灰色で「CHURCHILL」、「OF LONDON」及び「Made in England」の欧文字を、書体及び文字の大きさを異にして、3段に書してなる構成よりなり、第25類「英国製の被服,英国製のガーター,英国製の靴下止め,英国製のズボンつり,英国製のバンド,英国製のベルト,英国製の履物,英国製の仮装用衣服,英国製の運動用特殊衣服,英国製の運動用特殊靴」を指定商品とし、平成27年8月19日に登録出願、同28年2月26日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、引用商標における紺色横長長方形内の円形図形と各欧文字は、重なることなく配されているため、視覚上、分離して看取され得るものであり、特に「CHURCHILL」の欧文字は、他の文字に比べてひときわ大きく表されていることから、看者の目を引く部分である。
また、引用商標の構成中の「CHURCHILL」の欧文字は、引用商標に係る指定商品との関係においては、商品の品質等を表すものとして判断すべき事情はなく、商品の出所識別標識としての機能を発揮するものであるのに対し、「OF LONDON」の欧文字は「ロンドンの」の意味を有し、「Made in England」の欧文字は「イングランド製の製品」の意味を有するものであるから、これらの欧文字は、引用商標に係る指定商品との関係においては、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するのが相当である。
さらに、引用商標の構成中の紺色横長長方形及び円形図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを理解させるものとして、認識され、親しまれているというべき事情はなく、これらよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
加えて、引用商標の構成中の紺色横長長方形、円形図形及び各欧文字は、観念上のつながりがあることは認められない。
そうすると、引用商標は、本願商標との類否を判断するに当たって、引用商標の構成中の「CHURCHILL」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用商標は、その構成中の「CHURCHILL」の欧文字に相応して「チャーチル」の称呼が生じ、英語の姓氏及びカナダの河川名又は都市名の観念を生じるものである。
(3)本願商標と引用商標との類否について
本願商標と引用商標を比較すると、両商標は、構成全体を見た場合、外観において相違するが、本願商標の要部である「CHURCHILL」の欧文字と引用商標の要部である「CHURCHILL」の欧文字は、文字の大きさ、色彩及び書体が相違するとしても、いずれも「CHURCHILL」の欧文字のつづりを共通にするものであり、外観上、類似するものである。
また、本願商標の要部である「CHURCHILL」の欧文字に相応して生じる「チャーチル」の称呼と、引用商標の要部である「CHURCHILL」の欧文字に相応して生じる「チャーチル」の称呼は同一である。
さらに、観念においては、いずれも英語の姓氏及びカナダの河川名又は都市名の観念を生じるものであるから、同一の観念を生じるものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念を同一にするから、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
(4)原審補正商品と引用商標に係る指定商品との類否
原審補正商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、原審補正商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、引用商標の構成中、「CHURCHILL\OF LONDON」は、ゴシック体風の文字で統一感良く表されており、また英文法的にも「OF LONDON」は、「CHURCHILL」を修飾する修飾句であり、被修飾語である「CHURCHILL」と一体に認識されるものであるから、引用商標について、「CHURCHILL」の部分のみを抽出して要部観察を行うべきではない旨主張する。
しかしながら、上記2(2)のとおり、引用商標の構成中の各欧文字は重なることなく配置されているため、視覚上、分離して看取され得るものであり、特に「CHURCHILL」の欧文字は、他の文字に比べてひときわ大きく表されていること、また、「OF LONDON」の欧文字は「ロンドンの」の意味を有し、引用商標に係る指定商品との関係においては、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するのが相当である。
そうすると、引用商標は、本願商標との類否を判断するに当たって、引用商標の構成中の「CHURCHILL」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
(2)請求人は、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当すると判断する場合は、商標法第55条の2第1項にて準用する同法第15条の2に規定する通知を請求人に対して行い、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えるべきである旨主張する。
しかしながら、原審においてした手続は、当審においてもその効力を有するものであるところ(商標法第56条1項にて準用する特許法第158条)、上記第3のとおり、当審において、原審で、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当する旨の暫定的見解を改めて提示した上で、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与え、上記第4のとおり、請求人は、同号に該当しない旨の理由を述べている。
また、請求人は、拒絶理由通知における本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するという原審の判断に対し、意見書において、本願商標と引用商標とは「CHURCHILL」を含む点で共通するが、これは、ありふれた氏であるため、その文字自体や「チャーチル」との称呼には、自他商品を識別する識別力が生じないため、本願商標は、識別カのある称呼を生じないか、少なくとも引用商標とは称呼が異なり、また、外観や観念についても大きく異なることは明らかであるため、両商標の間で出所の混同等が生じるとは考えられない旨反論している。
そうすると、請求人は、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するという認定、判断に対し、2度の反論を行っており、さらなる反論の機会を与える必要はない。
(3)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他の請求人の主張も採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号には該当しないものの、同項第11号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲1(本願商標:色彩は原本参照。)


別掲2(株式会社小学館発行の「ランダムハウス英和大辞典 第2版」における「Churchill」の項の記載)
【1】チャーチル:Charles,(1731−64):英国の詩人;論争的諷刺詩で有名.
【2】チャーチル:John,1st Duke of Marlborough(“Corporal John”),(1650−1722):英国の軍人;Anne 女王の時,英国・オランダ連合軍総司令官となった.
【3】チャーチル;Lord Randolph(Henry Spencer)(“Lord Randolph”),(1849−95):英国の政治家(保守党);蔵相;5の父.
【4】チャーチル:Winston,(1871−1947):米国の小説家;Richard Carvel(1899).
【5】チャーチル:Sir Winston(Leonard Spencer),(1874−1965):英国の政治家・著述家;首相(1940−45,51−55);The Second World War(1948−54);ノーベル文学賞(1953).
【6】(the Churchill)チャーチル川:カナダのSaskatchewan州東部から北東に流れ,Hudson湾に注ぐ;長さ約1,600km.
【7】(the Churchill)チャーチル川(Churchill River):カナダLabrador地方南西部から大西洋に注ぐ;長さ965km;旧称Hamilton River.
【8】チャーチル:カナダManitoba州北東部,Hudson湾に臨む,6の河口の港市.

別掲3(引用商標:色彩は原本参照。)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審判長 豊田 純一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2023-07-20 
結審通知日 2023-07-25 
審決日 2023-08-09 
出願番号 2020161044 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (W25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 岩谷 禎枝
杉本 克治
商標の称呼 チャーチル 
代理人 前田・鈴木国際特許弁理士法人 

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