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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1405090 
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-26 
確定日 2023-12-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6681746号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6681746号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6681746号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与」を指定役務として、令和4年6月10日に登録出願された商願2022−66947に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同年11月25日に登録出願、同5年3月13日に登録査定、同月16日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次のとおりである。
(1)登録第4081559号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 ELLE
指定役務 第42類「飲食物の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリ−ン印刷,石版印刷,凸版印刷,新聞記事情報の提供,雑誌記事情報の提供,テレビニュース情報の提供」
登録出願日 平成4年6月4日
設定登録日 平成9年11月14日
(2)登録第4081605号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 ELLE
指定役務 第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,医業,健康診断,調剤,栄養の指導,家畜の診療,きゅう,歯科医業,柔道整復,はり」
登録出願日 平成7年1月10日
設定登録日 平成9年11月14日
(3)「ELLE」の文字からなる商標(以下「ELLE商標」という。)
なお、引用商標1及び引用商標2に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。また、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは「引用商標」といい、引用商標及びELLE商標をまとめていうときは「引用商標等」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第140号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人及び商標「ELLE(エル)」の著名性について
ア 申立人は、フランスのメディア複合企業体ラガルデール(Lagardere)の傘下で、女性向けファッション雑誌「ELLE(エル)」(以下「ELLE誌」という。)を中心とする各種雑誌を発行し、ファッション関連商品、各種生活用品の製造販売や紹介等を行う企業であり、ELLE商標について世界中で商標権を保有している。
ELLE商標は、1945年にフランスで創刊され、現在では世界各国で45を超える版が発刊されている国際的な雑誌であり、世界におけるELLE誌の毎月の発刊部数は650万部以上に上る、ELLE誌の題号として使用されている(甲7、甲8、甲18)。
ELLE誌は、現代感覚にあふれた若い女性向きの雑誌として知られ、被服、身の回り品、化粧品といったファッション関連を中心に、ライフスタイル全般の幅広い記事を掲載している(甲9、甲10、甲18)。ELLE誌が生み出すファッションスタイルは、「ELLEファッション」と呼ばれ、世界中の女性たちに広く支持されてきた(甲11)。また、「ELLE GOURMET」等のファミリー誌も世界各国で展開している(甲12、甲13、甲31、甲34)。
申立人は、ELLEファッションの普及のため、ELLE誌が提案するシンプルで洗練されたスタイルをコンセプトに、ライセンシーを通じたELLEブランドの商品化活動を、長年世界中で推進してきた。ELLEブランドの下で展開される商品には、被服やアクセサリー、化粧品などのファッション関連商品をはじめ、食品や生活雑貨を含む、ライフスタイル全般に関する幅広い商品が含まれる(甲14〜甲16)。また、ELLEブランドは、カフェや美容サロン、ホテルといった、役務の提供の分野にも広がっている(甲59〜甲106ほか)。
イ 日本におけるELLE商標の使用について
1970年(昭和45年)3月に、日本の企業が、申立人の許諾の下で雑誌「アンアン(anan)」を日本版ELLE誌と位置付けて創刊し、1982年4月に、「エル・ジャポン(ELLE japon)」を創刊し、その後、申立人の関連会社に継承され、現在も継続して出版されている(甲17〜甲20)。
ELLE誌は、2022年4月から6月の月間平均発行部数が69,833部であるところ(甲21の1)、他の国際的なファッション雑誌の発行部数と比較すれば(甲21の2、3)、日本においても人気の高い雑誌である。
ELLE誌は、ファッション関連だけではなく、ライフスタイル全般の様々な記事を取り扱っており、社会問題に取り組むイベントの開催や記事の発信が行われている(甲17〜甲19、甲29、甲30、甲51の2)。加えて、申立人の許諾の下、ELLE誌のファミリー誌が出版されており、食、インテリア、デザイン、アート、建築、ブライダル等に関する記事が取り扱われ、イベントも開催されている(甲18、甲31〜甲40、甲51の3、4)。
以上のとおり、日本において、ELLE誌及びその関連媒体により、ファッション以外にも、女性のライフスタイル全般に関する様々な情報が、ELLE商標の下で長年大々的に発信されてきたことにより、ELLE商標は、幅広い日本の取引者・需要者に知られ、記憶されてきた。
ウ 商標「ELLE(エル)」を付して販売される商品
申立人は、1964年(昭和39年)から、帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対し、ELLE商標の独占的使用権を設定した。帝人は、自らELLEブランドの商品を製造販売する一方、他社に再使用権を許諾し、これらのサブライセンシーと共同してELLEブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に努めた(甲9、甲41)。1984年(昭和59年)に、申立人は、帝人とのライセンス関係を解消し、自ら会社を設立し、同会社を日本におけるELLEブランドのライセンス事業の総括として、現在まで、被服、履物、身の回り品といったファッション関連商品だけでなく、化粧品やせっけん類などのトイレタリー製品、生活雑貨、飲食料品、ウエディングドレスまで多岐にわたるELLEブランド商品の開発、製造、販売を行ってきた(甲10、甲42〜甲44、甲45〜甲50、甲51の5〜11)。
ELLEブランドの商品は需要者の人気が高く、他のライセンスブランドの中でも高いマーケットシェアを誇っており(甲42)、ライセンシーの売上げは年間55億円から75億円程度ある(甲45、甲47、甲49)。
また、プレスリリースや、ELLE誌においても、ELLEブランド商品が広く宣伝・普及されてきた(甲19、甲51の5〜14、甲57、甲58)。
以上のとおり、長年にわたってELLEブランドの下、ファッション関係商品、トイレタリー商品、生活雑貨、飲食料品等、ライフスタイルに関連する様々な分野で、ELLE商標を付した商品が大々的に製造・販売・宣伝広告されてきたことにより、ELLE商標は、幅広い商品分野で日本の取引者・需要者に広く知られるに至っている。
エ ELLEブランドで提供される役務について
2011年、申立人は、ライセンシーを通じて、福岡にELLEブランドで世界初となるカフェ「エル・カフェ(ELLE CAFE)」をオープンし、その後、2013年以降、東京の数か所において、「エル・カフェ」の店舗をオープンした(甲15の1、2、甲59〜甲79)。「エル・カフェ」は、女性誌やSNS等で多数取り上げられ、話題となった(甲80〜甲84)。2019年1月から12月までの売上げ(「エル・カフェ」ブランドの商品の販売を含む。)は、「エル・カフェ青山店」だけで、1億8千万円以上に上る(甲85)。
申立人らは、「エル・カフェ」について、ELLE誌における記事や広告、販促物、オンライン、イベント、他ブランドとのコラボレーション等において積極的な広告宣伝活動を行い、周知を図ってきた(甲15の3〜6、甲19、甲32の1、3〜5、甲37、甲51の17、甲62の4、甲86〜甲98ほか)。
また、2018年、申立人はライセンシーを通じて、大阪にELLEブランドで世界初となる美容サロン「エル・サロン(ELLE salon)」をオープンさせた(甲19の23、24、甲62の7、甲99〜甲101ほか)。
さらに、2022年5月、申立人は、「メゾン・エル(Maison ELLE)」、「エル・ホテル(ELLE Hotel)」の二つのホテルブランドでホテル事業を展開することを発表し、このことは日本でも記事等で紹介された(甲103〜甲105)。同年秋には第一号ホテル「メゾン・エルパリ」をフランスのパリに開業し(甲106)、2023年には「エル・ホテル」ブランドの第一号ホテルをメキシコに開業予定である。日本においても、ライセンス展開の提案を受ける等、ホテルの開業を検討している。
このような積極的な事業展開により、ELLEブランドは、飲食店や美容サロン、ホテルといったサービス分野でも需要者等に広く知られている。
オ 商標「ELLE(エル)」の著名性については、これを認定した審決、申立人の有する登録第1978527号を基本商標として、現在でも防護標章4件の登録及び特許庁電子図書館の「日本国周知・著名商標」リスト検索への掲載がある(甲108)。
カ 小括
以上述べた事実、審決における認定等から、申立人の商標「ELLE(エル)」が、本件商標の出願日以前から、既に、ファッション関連商品及び各種生活用品の分野において周知著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。
(2)ファッションブランドの本件商標の指定役務に関する事業展開について
本件商標の指定役務が属するホテル業界や飲食業界では、近年、ファッションブランドやライフスタイルブランドが、ホテルやカフェ、レストラン等を手がけることが盛んに行われている(甲109〜甲114)。飲食業界においては、ファッションブランドがカフェやレストランをプロデュースしたり、自社の店舗にこれらを併設することが盛んに行われていて、気軽にブランドの世界観を体験できるとして、需要者の人気を集めている(甲120〜甲125)。
前述のとおり、ELLEも、カフェやホテルをプロデュースして、ELLEブランドの世界観を発信してきた。
このような取引の実情からすれば、周知、著名なファッションブランドとホテルやレストラン等との関連性は高いといえる。すなわち、ファッション関連の商品の商標として広く知られた商標と同一又は類似する商標が、「宿泊施設の提供」や「飲食物の提供」といった役務に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、当該役務が当該ファッション関連商品の販売者等と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認する可能性が非常に高い。
(3)本件商標の採択の経緯について
本件商標の商標権者は、富山市内でホテルを営業している法人である。申立人は、2022年初頭に、商標権者が、申立人の周知著名なELLE商標を含む標章「ホテル・エル(HOTEL ELLE)」を使用したホテルを営業していることを発見し(甲126、甲127)、2022年2月10日に内容明郵便にて、標章「ホテル・エル(HOTEL ELLE)」の使用が、申立人のELLE商標にかかる商標権の侵害行為及び不正競争行為に該当するため、使用を中止するよう求める通知を行った(甲128、甲129)。その後、申立人は、商標権者の代理人弁護士から、商標の変更に応じる旨の連絡を受けたが、その後のやり取りを経て、2022年6月2日に、本件商標と同一の構成からなる標章(以下、「本件商標」という。)を使用する旨の連絡を受けた(甲131。FAXで受領したため白黒で表示)。本件商標は、「elle」の文字を含み、ELLE商標と出所の混同を生じるおそれがあることから、申立人は、2022年6月3日、本件商標への変更は受け入れられず、当該商標に変更した場合、訴訟提起も辞さないとの意思を伝えた(甲132)。しかしながら、商標権者はこれに応答せず、直後の同年6月9日に「elLle」の文字を標準文字で表した商標を出願し(出願2022−66190[登録第6601385]、甲134)、翌6月10日に本件商標について出願を行った(商願2022−066947[登録第6652662号]及びその分割出願である商願2022−135089[登録6681746号])(甲133及び本異議申立に係る登録商標)。また、申立人の知る限り、同年7月には、本件商標を使用して「ホテル・エル」の営業を開始し、現在も同ホテルを営業している(甲135〜甲139)。申立人は、2022年9月30日に、改めて本件商標の使用中止と出願の取り下げを求めたが(甲140)、商標権者からは応答がなかった。
商標権者は、自己の営業する「ホテル・エル」において本件商標を使用していて、本件商標の読み方を「エル」と表示していている(甲135〜甲139)。本件商標は、モザイク状に彩色した図形を中央に配した「elle」の文字を大きく表した構成からなり、一見して「elle」の文字部分が分離して観察されやすい(甲135〜甲139)。これらの使用態様からみても、商標権者が、本件商標中の「elle」の文字を分離観察させ、「エル」と称呼させることを意図して本件商標を採択したことは明らかである。
実際に、商標権者は、本件商標の出願手続き(商願2022−135089)で提出した意見書において、本件商標からは「エル」の称呼が生じることを主張している(甲130)。
つまり、本件商標は、商標権者が、ELLE商標と同じ「ELLE(elle)」の文字及び「エル」の称呼の使用を継続したいがために、「elle」に図形を追加して偽装した商標であって、不正の目的をもって出願されたものである。
本件商標の商標権者は、富山市内でホテルを営業している法人である。申立人は、2022年初頭に、商標権者が、申立人の周知著名なELLE商標を含む標章「ホテルエル(HOTEL ELLE)」を使用したホテルを営業していることを発見し(甲126、甲127)、2022年2月10日に内容証明郵便にて、標章「ホテルエル(HOTEL ELLE)」の使用が、申立人のELLE商標にかかる商標権の侵害行為及び不正競争行為に該当するため、使用を中止するよう求める通知を行った(甲128、甲129)。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、上段にモザイク状に彩色した図形を中央に配した「elle」の文字と、下段に中央線を付して小さく表した「HOTEL」の文字からなる結合商標である。
上段の「elle」は、中央にモザイク状に彩色した図形を配してなるが、当該図形は「elle」の文字より大きく表され、彩色もされ、まったく外観が異なることから、「elle」の文字と当該図形とは明らかに分離して認識される。
下段の「HOTEL」は、「ホテル・旅館」等を意味する平易な英単語であり、本件商標の指定役務については、役務の提供の場所を表すにすぎない記述的な語である上、一般的な書体で上段の文字よりもかなり小さく書されていて、中央に付された線も単純なものであり、外観上識別力を与えるものではない。そうすると、当該「HOTEL」の文字部分は、識別力が全くないか極めて弱い部分であり、出所識別標識としての称呼、観念が生じないといえる。
したがって、「elle」の文字部分は、中央に配した図形と一体性はなく、下段の「HOTEL」に比べてかなり大きく表されていることや、書体や中央線の有無等の外観が異なることから、視覚上明らかに他の要素から分離して看取される。
仮に、「elle」の中央に配した図形が「L」の文字を表したものと認識される場合があったとしても、当該「L」は「elle」とは書体、大きさ、彩色も全く異なる態様で表されていて、視覚上やはり分離して認識されることは明らかである。その上、「elle」と中央に配した図形を一体として称呼しようとしても、一般に親しまれた英語やローマ字に、「L(l)」を三つ重ねて表記する単語や表音がないことから、一連に称呼できない。 また、一般的に英語をはじめとする欧文字を使用する言語やローマ字表記では、単語等は全て大文字で表記するか、全て小文字で表記するか、最初の1文字目のみ大文字とするのが普通であり、ひとまとまりの語の中間の一文字のみを大文字で表すことはない。そのため、モザイク状の図形が「L」を想起させる場合あったとしても、当該「L」は見る者に極めて不自然な印象を与え、「elle」と当該「L」とは、それぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえない。
さらに、「elle」の文字は、周知著名なELLE商標と同一の文字構成であることから、需要者等にELLE商標を想起させ、強く支配的な印象を与える。
そうすると、本件商標中の「elle」の文字部分を要部として抽出し、他人の商標(引用商標)と比較して類否の判断をすることも許されるというべきである。よって、本件商標からは、全体から生じる称呼及び観念のほか、「elle」の部分から、「エル」の称呼が生じ、周知著名なELLE商標の観念が生じる。
商標権者自身、本件商標を「エル」と称呼しているように、需要者等が本件商標中の「elle」を分離観察して「エル」と称呼することを確信して、本件商標を採択したことは前述したとおりである。
一方、引用商標1及び2は、何れも「ELLE」の文字からなり、「エル」と称呼される。また、引用商標は、周知著名なELLE商標の観念を生じさせる。
したがって、本件商標と引用商標1及び2は、何れも「エル」の称呼及びELLE商標の観念を同一とする、類似の商標である。
また、指定役務については、本件商標の指定役務である第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」は、引用商標1の指定役務である第42類「飲食物の提供」及び、引用商標2の指定役務である第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」と同一である。
よって、本件商標は、引用商標1及び2と商標が類似し、同一の指定役務に使用されるものであるため、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
ELLE商標は周知、著名であり、本件商標が「エル」と称呼され、周知、著名なELLE商標の観念を生じさせることは前述したとおりであり、両者の類似性は高い。そして、ELLE商標が周知、著名となっている、ファッションやライフスタイル関連商品の分野と、本件商標の指定役務の属するホテルやカフェ、レストランの提供等の分野とは、前述のとおり、ファッションブランドやライフスタイルブランドがホテルやカフェ、レストラン等をプロデュースすることが一般的に行われていることからすれば、関連性の程度は高いといえる。加えて、前述のとおり、長年、ELLEブランドの多種多様な商品・役務がライセンシーを通じて、販売、提供されてきたこと、実際にELLE商標を用いたホテルやカフェを提供され、記事等で広く紹介されてきたこと等を鑑みれば、ELLE商標に類似する本件商標を指定役務に使用した場合、申立人がライセンシーを通じて提供している役務であると誤認する可能性が非常に高い。また、本件商標の指定役務の需要者は、一般消費者であるため、役務選択の際に払われる注意力は、さほど高いとはいえない。
したがって、本件商標がその指定役務に使用された場合、需要者・取引者は、当該役務が、申立人とライセンス関係にある等、組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると、出所の誤認を生じるおそれが非常に高い。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
前述のとおり、本件商標は、日本において、申立人の取り扱いに係る雑誌及び商品・役務の識別標識として、周知著名となっているELLE商標と類似する商標である。
また、前述のとおり、商標権者が不正の目的をもって本件商標を出願したことは明らかである。すなわち、本件商標は、ELLEブランドの周知性や顧客吸引力にただ乗りフリーライド)したり、ELLEブランドの名声や信用、顧客吸引力を棄損させたりする等の、不正の目的をもって出願されたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
前述のとおり、本件商標は、周知著名な申立人のELLE商標と類似する商標であることに加えて、商標権者が、不正の目的をもって本件商標を出願したことは明らかである。したがって、本件商標は、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当するものであるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の著名性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、ELLE誌等の各種雑誌を発行し、ファッション関連商品、各種生活用品の製造、販売等を行うフランスの企業である。ELLE誌は、1945年(昭和20年)に、革新的女性週刊誌として創刊され、その後、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア及びアフリカ等の多数の国において創刊されたものであり、該雑誌の表紙の上部には、題号として、「ELLE」の文字が表示され、ファッションを中心に、幅広い分野の記事が掲載された(甲8、甲10、甲18)。
(イ)ELLE誌は、我が国において、申立人の許諾の下、1970年(昭和45年)に平凡出版株式会社が日本版として雑誌「アンアン」を出版し、その表紙に「ELLE JAPON」の標章を付した(甲9)。1982年(昭和57年)4月には、日本語版として、「ELLE japon(エルジャポン)」の創刊号が発行され、以降、いくつかの出版元の変遷を経て、現在はハースト婦人画報社により、我が国において発行されている(甲9、甲17〜甲20)。同誌の発行部数については、2022年4月ないし6月の月間平均発行部数が69,833部である(甲21の1)。
(ウ)その他、申立人の許諾の下、「ELLE」の文字を冠した題号の雑誌がハースト婦人画報社により多数発行された(甲31、甲32、甲35、甲37ほか)。
(エ)ハースト婦人画報社は、申立人の許諾の下、「エル・ジャポン」のデジタル版ウェブサイトを1996年(平成8年)に開設し、オンライン上でも情報発信を行っている(甲17)。当該ウェブサイト上には、「ELLE」の文字が表示されており(甲22)、同社の集計によれば、当該ウェブサイトの2021年3月のユニークユーザー数は約600万人となっている(甲23)。
(オ)申立人は、日本において、複数のライセンシーを介して、被服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、せっけん、食器等の生活用品の販売活動を展開し、これらの商品には、「ELLE」の文字が大きく表示されている(甲10、甲42〜甲51)。そして、申立人のライセンシーの数は、2015年ないし2017年に30社前後で推移していること、同期間における、「ELLE」の文字を含む標章に係るライセンス商品の売上高の合計は、約55億円ないし約75億円の間で推移していることがうかがえる(甲45〜甲50)。
(カ)申立人は、ライセンシーを通じて、2011年に福岡において、2013年以降は東京都内の数か所(六本木、青山、銀座ほか)において、「エル・カフェ(ELLE CAFE)」の店舗(期間限定の出店を含む。)を開店した(甲59、甲62、甲68、甲73ほか)。当該「エル・カフェ」の店舗の看板や、店舗等で販売、提供される商品について、「ELLE」の文字を構成中の一部に使用した標章が使用されている(甲59、甲62の3、甲71ほか)。
また、「エル・カフェ」の店舗のうち、「エル・カフェ青山店」の2019年の売上げ(「エル・カフェ」ブランドの商品の販売を含む。)は、1億8千万円以上であったことがうかがえる(甲85)。
そして、「エル・カフェ」は、ELLE誌における記事や広告の掲載、販促物、オンライン、イベント、他ブランドとのコラボレーション等により広告がなされた(甲19の4、甲86〜甲98、甲62の4、6、甲51の17ほか)。
(キ)申立人は、ライセンシーを通じて、2018年に、大阪にELLEブランドの美容サロン「エル・サロン(ELLE salon)」を開店した(甲19の23、24、甲100ほか)。当該美容サロンの壁面や当該美容サロンで販売される商品に、「ELLE」の文字を構成中の一部に使用した標章が使用されていることがうかがえる(甲19の23、甲100ほか)。
(ク)申立人は、2022年5月に、ホテル事業を展開することを発表し、同年11月に、フランスのパリにおいてホテル「メゾン・エル(Maison ELLE)」を開業した(甲104〜甲106)。当該ホテルの窓とみられる部分に、「ELLE」の文字を構成中の一部に使用した標章が使用されていることがうかがえる(甲106)。
イ(ア)以上によれば、「ELLE」の文字は、「エル」と称呼され、申立人の発行に係るファッション雑誌の題号として、本件商標の登録出願時において、我が国の若い女性を中心とした需要者及び出版関連の分野の取引者の間に広く知られていたものであり、ELLE誌を介して様々な商品が紹介され、申立人のライセンシーを通じて、「ELLE」の文字を付した被服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、せっけん、食器といった生活用品等の商品が我が国において販売されたものである。
そうすると、「ELLE」の文字からなるELLE商標は、申立人の業務に係るこれら商品を表示する商標として、少なくとも我が国の需要者・取引者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その著名性は、これらの商品の分野の範囲において、本件商標の登録査定時を含め、現在も継続しているものといえる。
(イ)他方、申立人は、カフェや美容サロン、ホテル等の役務(以下「申立人の業務に係る役務」という。)について、「ELLE」の文字を使用し、需要者の間において広く知られている旨主張しているが、これらの役務について、「ELLE」の文字を構成の一部に含む標章が使用されていることは認められるものの、申立人がライセンシーを通じて日本国内において展開するカフェは、福岡及び東京の限られた地域に数店舗出店されているにすぎず、店舗の売上額にしても、一店舗における一年間限りの証拠が提出されているにとどまる上、その多寡を裏付ける証拠の提出はない。また、広告宣伝に関して、ELLE誌における広告ないし記事掲載については、多数にわたる頁の中の一頁に掲載されているにすぎないものであるし、販促物やオンラインにおける広告、イベントについても、頒布数や閲覧数が定かでなく、これらがどの程度の数の需要者の目に触れたのか不明である。
さらに、美容サロンについては大阪において一店舗を展開しているのみであり、ホテル事業については、パリにおいて開業されたことはうかがえるものの、我が国において未だ開業されておらず、これらの美容サロンやホテルについての広告宣伝の規模や売上実績も明らかでない。
そして、その他、「ELLE」の文字を使用したこれらの役務について、我が国又は外国における周知性の度合いを客観的に判断し得る証拠(例えば、役務の使用数量、市場占有率などの実績、広告宣伝費等)は確認できない。
そうすると、「ELLE」の文字は、申立人の業務に係る役務について、標章の一部として使用されていることはうかがえるものの、申立人の業務に係るこれらの役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間において広く知られるに至っているものと認めることはできない。
してみれば、「ELLE」の文字からなり、上記2のとおりの役務を指定役務とする引用商標は、申立人の業務に係る役務を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は、別掲のとおり、「el」の欧文字と「le」の欧文字の中間部分に、複数の色彩を施してデザイン化された「L」字状の文字を配してなるところ、当該文字は欧文字の「L」を表したものと容易に理解させるものであり、文字をデザイン化することは一般的に行われていることからすると、その文字構成も「el」、「L」、「le」からなり、バランスよく配置されているため、外観上まとまりよく一体的に看取され、全体として「elLle」の欧文字を表したものと認識するのが相当である。
また、「elLle」の欧文字の下段には、上段の欧文字と比較すると小さく表された「HOTEL」の欧文字を表してなり、「HOTEL」の各文字の中間部分を上段の欧文字の横幅と同じ長さの横線が一直線に配された構成よりなるものである。
そして、上段の「elLle」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないことから、特定の観念を有しない一種の造語として認識、把握されるとみるのが相当である。そして、特定の語義を有しない欧文字からなる商標を称呼するときは、我が国において広く親しまれている英語風又はローマ字の発音をもって称呼するのが一般的といえるところ、上段の「elLle」の文字部分からは、その構成文字に相応して「エルエルレ」の称呼が生ずるというのが相当である。
また、下段のややデザイン化された「HOTEL」の文字については、「ホテル」の称呼を生じ、我が国において広く一般に親しまれた「旅館、ホテル」の意味を有する英語である。さらに、本件指定役務との関係において、取引者、需要者に役務の質等を表すものとして認識されるとみるのが相当である。
そうすると、上段の「elLle」の文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分といえ、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるというべきである。
ところで、申立人は、本件商標中「elLle」の中央部分に配した「L」の文字部分は、書体、大きさ、彩色も全く異なる態様で表されていることから、視覚上、分離して認識されるため「elle」の文字部分が抽出される旨主張しているが、別掲のとおり「elLle」の文字部分は、全体としてまとまりよく一体的に認識、把握されるとみるのが自然であり、殊更に構成中中央の「L」の文字を分離して左右の「el」及び「le」の文字を抽出し、さらにこれらを結合して「elle」と把握しなければならない合理的な事情は見当たらない。
したがって、本件商標は、その構成全体より生じる「エルエルレホテル」の称呼に加えて、上段の「elLle」の文字より生じる「エルエルレ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり、いずれも「ELLE」の文字を表してなるところ、上記(1)イ(イ)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。また、申立人主張のように、「ELLE」の文字が「彼女」の意味を有するフランス語であるとしても、我が国において当該意味をもって親しまれた語とはいえず、該文字から当該観念を生じるものとはいえないから、引用商標は、特定の意味合いを認識させない造語を表したものと理解されるものというべきである。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「エル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標は、文字構成及び文字数が異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「エルエルレホテル」及び「エルエルレ」の称呼と、引用商標から生じる「エル」の称呼とは、その構成音及び構成音数に明らかな差異を有するものであるから、明瞭に聴別できる。
また、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念について比較できない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して判断すると、両者は相紛れるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両者の指定役務が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)イ(ア)のとおり、ELLE商標が、申立人の発行する雑誌及び申立人らがファッション関連商品等の商品について使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているとしても、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であり、別異の商標と認められるものであって、引用商標と同じ文字つづりからなるELLE商標とも類似しない別異の商標というのが相当であるから、本件商標と引用商標等とは、類似性の程度も低いものである。
そうすると、本件商標に係る指定役務の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標権者が、本件商標をその指定役務について使用をしても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標等を連想、想起することはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が引用商標等と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)イ(ア)のとおり、ELLE商標が、申立人の発行する雑誌及び申立人らがファッション関連商品等の商品について使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているとしても、上記(3)のとおり、本件商標は、引用商標等とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、引用商標等を連想又は想起させることのないものである。
なお、「商標権者は、遅くとも令和4年初頭には、富山県において、自らの営業するホテルについて「ホテルELLE(HOTEL ELLE)」の文字からなる標章を使用していたこと(甲126、甲127)、商標権者は、同年2月10日付けの申立人からの通知書(甲128、甲129)を受けて、当該標章を異なる態様(申立人が、上段に中央の大文字「L」が図案化された「elLle」の文字、下段に「HOTEL」の文字を配した態様と主張するもの)に変更したこと(甲130)がうかがえることから、商標権者は、本件商標の登録出願前から、申立人が引用商標等を商品等に付していたことを知っていた可能性がある」旨主張する。
しかしながら、本件商標の登録出願前において上記の経緯があるとしても、具体的に、商標権者が申立人の事業の遂行を妨害するなど、商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
そうすると、本件商標は、引用商標等の信用、名声等を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
上記(3)のとおり、本件商標は、引用商標等と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、引用商標等を連想又は想起させるものでもない。
また、上記(4)のとおり、本件商標は、不正の目的をもって使用するものと認めることはできないものである。
そして、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲(本件商標、色彩については原本参照)





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異議決定日 2023-11-29 
出願番号 2022135089 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W43)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大橋 良成
特許庁審判官 小林 裕子
大島 康浩
登録日 2023-03-16 
登録番号 6681746 
権利者 有限会社山口実業
商標の称呼 エルホテル、エルレホテル、エル、エルレ 
代理人 川本 真由美 
代理人 市川 久美子 
代理人 山尾 憲人 

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