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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y07
管理番号 1404954 
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2022-04-21 
確定日 2023-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2533218号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2533218号商標の指定商品中、第7類「土木機械器具,荷役機械器具,包装用機械器具」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2533218号商標(以下「本件商標」という。)は、「QUICKTORON」の欧文字及び「クイックトロン」の片仮名を二段に併記してなり、平成2年11月21日に登録出願、商標登録原簿に記載の第9類に属する商品を指定商品として、同5年4月28日に設定登録がされ、同16年8月25日に商標登録原簿に記載の第7類、第9類及び第11類に属する商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされた。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年5月18日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年5月18日ないし同4年5月17日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁において要旨次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第7類「土木機械器具,荷役機械器具,包装用機械器具」(以下「本件審判の請求に係る商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)弁駁の理由の要約
被請求人は、本件商標の通常使用許諾者とともに、日本国内において要証期間に本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標(以下「本件使用商標」という場合がある。)を指定商品中、「土木機械器具」ないし「土木機械器具の部品」(以下「本件商品」という場合がある。)に使用してきた旨主張している。
しかしながら、本件使用商標の使用を主張している商品(気泡除去装置)が、必ずしも土木機械器具に装着する濾過装置であって「土木機械器具の部品」とする根拠が見当たらない。
また、本件商品の商取引上の利便性から「QUICKTRON」(審決注:「QUICKTORON」の誤記と認める。)及び「クイックトロン」のいずれかのみを使用し、その使用が「社会通念上同一の商標」の使用と認められる旨主張しているが、提出証拠の使用から判断する限り、対象商品・役務が明確でなく、商標の使用として妥当でない。
以上のとおり、被請求人により証明された商標は、本件商標とは社会通念上同一と認められる商標を指定商品に使用していることを証明していない。つまり、被請求人の主張する使用は、商標法第50条が規定する登録商標の使用に該当しないため、取り消すべきものである。
(2)理由の詳細
ア 本件商標の採択及び土木機械器具等への使用について
被請求人は、本件使用商標を、土木機械器具等の油圧装置内の油中の気泡を除去すべく独自に開発した気泡除去装置に対して採択し、平成5年から今日に至るまで継続的に本件商標の使用許諾先であるトリプルアール株式会社(以下「トリプルアール社という。」)らとともに、油圧ショベルやホイールローダー等の土木機械器具及びその部品等に使用している旨述べ、その証拠として乙第1号証を提出している。
しかしながら、上述の主張の裏付けとして提出された乙第1号証には、当該気泡除去装置を「エレメントの持つ濾過性能を保持します」と大きな文字で記載し、紹介している。つまり、当該気泡除去装置は、機械器具及び内燃機関等の液体フィルターエレメントとともに用いられるものであり、その付属品として用いられていることが明らかである。
それを裏付ける事実として現に当該気泡除去装置について、乙第1号証の仕様表の下に赤字で目立つように「ポンプ吐出量、9L/min以上の鉱物油用クリーナーに標準装着」と記載されている。
仮にこのクリーナーが土木機械器具に使用されることがあっても、あくまでも当該クリーナーは、土木機械器具そのものには該当せず、必ずしもその部品ともいえないことは明白であり、同様にそのクリーナー専用品である当該気泡除去装置が土木機械器具又はその部品でないことも明白である。
イ 要証期間における本件使用商標の使用
本件商標の使用許諾先であるトリプルアール社は、土木機械器具等の油圧機器に用いるオイル濾過装置に50年以上にわたり特化してきた、この業界のリーディングカンパニーである旨、被請求人は主張している。
被請求人自らが言及しているように油圧機器に用いるオイル濾過装置は、土木機械器具など(等)に用いられるものであり、必ずしも土木機械器具専用ではないから、土木機械器具に使用されているのかどうか定かではない。
仮にトリプルアール社が本件使用商標の使用許諾権を有していたとしても、同社が取り扱う商品であることをもって、当該気泡除去装置を土木機械器具とするにはその根拠性が薄く、その主張には論理の欠落がある。
また、被請求人は、トリプルアール社によって、本件使用商標が本件商品について自他商品識別力を発揮する態様で間断なく、日本国内において使用されていることは、明白な事実であると述べている。
しかし、被請求人が提出した乙第2号証の1では、1葉目及び3葉目に記載の「QR Translator」には登録商標表示が付されているにもかかわらず、わざわざ使用許諾まで受けている商標について登録商標表示を付していない。また、「クイックトロンシリーズ」は、「サイクロンシリーズ」及び「マグネットセパレーターシリーズ」などの商品の一般名称と同様にシリーズを付して並記されていることからも、特段、「クイックトロン」を商品の出所表示として使用している意図は見受けられない。また、他の一般名称商品と並記されているのは、乙第2号証の2、乙第4号証の1、乙第4号証の2でも同様である。なお、乙第2号証の3は、具体的に何を示しているのが明確でない。
また、被請求人は、乙第3号証をもっては、建設機械関連業界において、「コンタミネント」(除去すべき対象物)「エア」(空気)という役割を果たす(TR対象機)の名称として「クイックトロン」が独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されている旨主張している。
しかし、この表では「各種テスト油」の中から「エア」を除去する「クイックトロン」が記載されているにすぎず、何について「クイックトロン」が自他識別力を発揮しているかが定かではない。
以上のように、被請求人は、使用許諾者のホームページ及び商品カタログを用いて商標の使用を主張しているが、いずれも商標法の趣旨である信用を蓄積するに足る使用をしたとはいえず、また、要証期間における商品の使用を裏付ける証拠になるとはいえない。
(3)まとめ
上述のとおり、被請求人が提出した証拠から「クイックトロン」及び「QUICKTORON」の記載は確認できるが、いずれもその使用状況からその商品又は役務を特定することができない又は商標として使用されていない。
また、被請求人が本件使用商標を付していると主張する商品は土木機械器具ではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した(なお、被請求人が提出した答弁書及び証拠方法における「甲第○号証」(「○」の部分は数字。)の記載又は表示について、いずれも「甲」を「乙」と読み替えた)。
1 答弁の理由
(1)本件審判の請求が成り立たない理由
商標権者である被請求人は、本件商標の正式な使用許諾者とともに、日本国内において要証期間に、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標(本件使用商標)を指定商品中の「土木機械器具」ないし「土木機械器具の部品」(本件商品)に付し、本件商品に本件商標を付したものを譲渡し、さらに本件商品に関する広告、取引書類等に本件商標を付して展示、頒布等し、これらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供してきた事実がある。
これらは商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号に該当する行為であるから、商標の使用に該当する。
以下、詳細に述べる。
ア 本件商標の採択及び土木機械器具等への使用について
被請求人は、本件商標を、土木機械器具等の油圧装置内の油中の気泡を除去すべく独自に開発した気泡除去装置(濾過装置)に対して採択し、平成5年から今日に至るまで継続的に本件商標の使用許諾先であるトリプルアール社らとともに、油圧ショベルやホイールローダー等の土木機械器具及びその部品等に使用してきている。
本件使用商標を付した本件商品は土木機械器具の油圧回路及びタンク内のオイルのフラッシング作業に必要なものである。フラッシング作業やアクチュエータ(油圧シリンダ)動作確認時は、気泡が混入しやすいため、油圧回路内への気泡混入を防ぐと同時に濾過効率の安定が必要であるところ、本件商品が土木機械器具の部品として重要な役割を果たしている。すなわち、土木機械器具であるパワーショベルや油圧式ショベル等に本件商品を組み込み、油を濾過する際、油中の気泡を瞬時に連続して除去することで、気泡混入による諸問題を解決し、土木機械器具の動力伝達効率及び油圧効果の向上並びに作業効率向上を図るものである。
したがって、「気泡除去装置」は土木機械器具に装着する濾過装置であって、「土木機械器具の部品」である(乙1)。
イ 要証期間による本件使用商標の使用
被請求人は、2007年頃に本件商品に関する事業をトリプルアール社等に移管し、本件商標についても使用許諾契約を締結してきている。
本件商標の使用許諾先、すなわちライセンシーであるトリプルアール社は、土木機械器具等の油圧機器に用いるオイル濾過装置に50年以上にわたり特化してきた、この業界のリーディングカンパニーである(乙2の1)。
要証期間に、トリプルアール社によって本件商標が本件商品について自他商品識別力を発揮する態様で間断なく、日本国内において使用されていたことは、明白な事実である。
以下に詳述する。
(ア)本件商標と本件使用商標との関係について
本件商標は、ローマ字で「QUICKTORON」及び片仮名で「クイックトロン」と二段に横書きしてなるものであるところ、本件商品の商取引上の利便性から「QUICKTORON」及び「クイックトロン」のいずれかのみを使用する場合もあった(乙1)。
しかしながら、商標法第50条における「登録商標」は「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」と規定しており、審判便覧53−01において「その他社会通念上同一と認められる商標」として「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」を認めている。
そうとすれば、本件商標が「QUICKTORON」と「クイックトロン」とが二段に横書きしてなるものであったとしても、上段及び下段の各部が観念を同一にすることは明らかであるから、その一方の使用である「クイックトロン」及び「QUICKTORON」のいずれかのみの使用であっても本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められることは明白である。
したがって、「クイックトロン」及び「QUICKTORON」のいずれかのみの使用であっても本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められるために十分であるが、要証期間に、トリプルアール社が「QUICKTORON」と「クイックトロン」を併用している例も、現実に多々存在する(以下(イ)及び(ウ)参照。)。
(イ)ウェブサイトにおける使用について
例えば、トリプルアール社は、本件商品に関する同社のウェブサイトにおいて、「クイックトロンシリーズ」として本件商標を本件商品に付して使用している(乙2の2)。
このうち「シリーズ」というのは、対象商品が、品目コード「TR10390」と「TR010400」の2種類、すなわち複数(シリーズ)あることを示す記述的な用語であることから、商標として識別力が発揮されるのは「クイックトロン」の部分のみとなり、本件商標中の片仮名部分が、独立して商標的に使用されていることは明らかである。
また同ウェブサイト中の動画による紹介部分では、「Quicktoron」と、本件商標中のローマ字部分が、独立して自他商品識別力を発揮する態様で「気泡除去装置」について使用されている(乙2の3)。
さらに同ウェブサイト中、「業界別ソリューション」とのカテゴリーの中で「建設機械関連」としてショベルカーの写真の下に「コンタミナント」(除去すべき対象物)「エア」(空気)という役割を果たす商品(TR対象機)の名称として「クイックトロン」が独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されている(乙3)。
これらウェブサイトはトリプルアール社によって2021年に開設されたものであるが、インターネットアーカイブマシーンであるWaybackマシーンによると、少なくとも同年6月14日(乙4の1)及び同年9月26日(乙4の2)に不特定多数の一般需要者、取引者に向けて開設されていたウェブサイトにおいて、本件商標と社会通念上同一にかかる「Quicktoron」が「気泡除去装置」について使用されてことが明白である。そして、このような広告を内容とするウェブサイトが、2021年5月6日ないし9月26日まで少なくとも「5times」(5回)、「save」(保存)されていたことが示されている(乙4の3)ので、この間、広く一般の需要者、取引者に向けて当該ウェブサイトが公開され、彼らによってアクセスされていたことは客観的に明らかである。
したがって、トリプルアール社が、要証期間に、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を本件商品に付して使用し(商標法第2条第3項第1号)、本件商品に関するウェブサイトにおいて本件商品の広告等を内容とする情報に本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供したことで使用してきた(商標法第2条第3項第8号)事実は明らかである。
(ウ)取扱説明書における使用について
トリプルアール社は、商取引の慣行上、常に、取扱説明書に納入仕様図面等を添付して顧客に渡している。
ここで、乙第5号証の末尾から2葉目の右段に「クイックトロン/Quicktoron」と本件商標そのものが、本件商品に関連付けられて、独立かつ明確に出所標識として使用されている。この納入仕様図面の下段に、この図面が作成され、顧客である土木機械器具メーカーに提示された日付が「2019年10月25日」と示されているところ、本件商標が、本件商品の出所標識として独立した態様で要証期間に使用されていることは明らかである。
(エ)カタログにおける使用について
トリプルアール社は、同社作成にかかる製品カタログ(乙6の1)内で、同社製品の用途別紹介をしているところ、「○4建設機械」(審決注:「○4」は「4」を丸囲みしたもの。以下同様。)とあり、「建設機械」とは、土木、建築作業に用いられる機械の総称であるところ、土木機械器具と同視し得るものである(乙7)。
カタログ(乙6の1)の15ページに、「クイックトロン series」が気泡除去装置、すなわち土木機械器具の濾過装置に付して使用されている。さらに同18ページには、建設機械(油圧ショベル、ダンプ等)の下に「各種テスターライン用オイル清浄装置」の紹介があり、本件商標「クイックトロン」が付された本件商品の写真が掲載されている。このカタログは、最終ページの右下の記載から明らかなように、2022年5月に発行され、3000部印刷されたものであり、トリプルアール社の7つの営業所を通じて、コベルコ建機日本株式会社等の顧客に配布をしてきている。
そして、これと同一内容のカタログ(乙6の2)が、その前年である2021年10月にも2000部印刷されていることに鑑みると、2021年10月から2022年5月の間に「2000部」近くが配布されたことは明らかであって、幅広く、日本国内でカタログが頒布されたことが容易に推認できる。
このように、トリプルアール社が、本件商品に本件商標を付し、本件商品に関する広告、取引書類等に本件商標を付して展示、頒布等してきた事実があり、これは商標法第2条第3項第1号及び第8号の使用に該当する。
(オ)本件商標を付した本件商品の譲渡について
要証期間である2020年1月27日から2022年1月18日の間に、本件商標を付した本件商品が、少なくとも4回土木機械器具の部品として重機メーカーであるコベルコ建機等に販売されている(乙8)。
また「オスカ注文台帳」(土木機械器具メーカーの代理店である富士高圧フレキシブルホース株式会社がトリプルアール社に注文する用紙)には、それぞれ上部に「2019年12月12日」、「2020年2月28日」、「2020年3月11日」の日付とともに、「型式」として「CS−AL100−6RCQ」が記載されている(乙9)。このうち末尾の「Q」の文字部分は本件商標「QUICKTORON/クイックトロン」の略であり、これが付された本件商品を含むという意味である。そして、下段の「送り先」に土木機械器具メーカーの名称「株式会社 中央重機」や「コベルコ建機日本株式会社」が表示されている。
また、上記以外に、2021年11月19日付けでトリプルアール社から、「件名 コベルコ建機殿向け御見積書」として、当該土木機械器具メーカーの直接の取引先でありトリプルアール社の販売代理店である富士高圧フレキシブルホース株式会社向けの料金見積もりが出されており、そこには本件商品を示す型番の傍らに近接して「クイックトロン」商標が使用されている(乙10)。
これらは、トリプルアール社が、本件商標を付した本件商品を日本国内で、複数回譲渡してきた事実を客観的に示すものであり、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が、業として本件商品について要証期間に使用されてきたことを示すものである。
(カ)本件商標を付した本件商品の譲渡の一例について
本件商品は、高度に専門的かつ特殊な商品であるところ、主にBtoB取引によって売買されるものである。
とりわけ土木機械器具等を取り扱う重機メーカーからすれば、濾過装置を含む膨大な数の部品や附属品を自社のみで調達するのは至難の業であるところ、信頼のおける専門業者に部品調達を委ね、当該専門業者が提案した部品等を購入し、自社の土木機械器具に組み込むのが自然な商流となっている。
以下、詳述する。
土木機械器具メーカーの直接の取引先でありトリプルアール社の販売代理店であり専門業者である富士高圧フレキシブルホースからトリプルアール社に2021年5月18日付けで建機用部品の注文が入ったことを示す「オスカ注文台帳」の中段の【主仕様】に「クイックトロン付き」の記載がある(乙11の1)。
当該注文書に添付された、納品仕様図右段に「クイックトロン」と表示され、納品仕様図中、「○19」(審決注:「○19」は「19」を丸囲みしたもの。以下同様。)で、本件商品との対応関係が示されている(乙11の2)。なお現実の商取引慣行上、この納品仕様図が実質的に受発注確認書等も兼ねており、取引書類の中心として重要な役割を果たしている。
トリプルアール社が、富士高圧フレキシブルホース社に本件商品を納品後、支払を受け、2021年7月20日付けで領収書を発行している(乙11の3)。
被請求人の本件商標の使用許諾先であるトリプルアール社が、このように本件商標と社会通念上同一の商標を付した本件商品を、土木機械器具メーカーに、要証期間に販売(譲渡)したことは上記の証拠から明らかである。
(2)結論
以上より、被請求人が、本件商標の使用許諾先であるトリプルアール社とともに、要証期間に日本国内において本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標について、請求対象商品中、「土木機械器具」ないし「土木機械器具の部品」等について、独立して、自他商品識別力を発揮する態様で、商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号に規定されている使用をしていることは明白である。
被請求人及び本件商標の商標使用許諾先であるトリプルアール社は、本件商標の本件商品に関する使用について、さらなる証拠を提出できる用意がある。

第4 当審における審尋及び被請求人による審尋への回答
1 審尋の要旨
当審において、令和5年4月13日付けで、被請求人に対し、被請求人の主張及び提出された証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する証明をしたものと認めることはできない旨の合議体による暫定的見解を示したうえで、請求人提出の審判事件弁駁書の主張及び上記暫定的見解に対し、意見があれば証拠とともに提出されたい旨の審尋を送付し、相当の期間を指定して、被請求人に対し意見を求めた。
2 審尋に対する回答
被請求人は、上記審尋に対して何ら応答していない。

第5 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)気泡除去装置(クイックトロンシリーズ)について(乙1の1〜乙4の3、乙6の1、乙6の2)
ア 気泡除去装置(クイックトロンシリーズ)のカタログ(乙1の1、乙1の2)
乙第1号証の1は、トリプルアール社が発行した、気泡除去装置(クイックトロンシリーズ)のカタログであるところ、その一葉目には、「カタログ017」、「気泡除去装置/クイックトロンSERIES」、「液体中の気泡を除去する装置です」、「エレメントの持つ濾過性能を保持します」、などの記載とともに、上記装置の画像が掲載されている。また、1葉目の上部には、「自動車関連」「製造・工作機械」「各種専用機械」「製鉄・鉄鋼関連」「製紙関連」「建設機械関連」等のタブが表示され、下部には「適応分野」として、「●自動車●建設機械・農業機械●工作機械/●その他」の記載がある。
また、その2葉目には、「トリプルアール株式会社」、「2012.10.3000」の記載があるところ、「クイックトロンシリーズ仕様表」と題する「商品番号」「流量範囲」「全長」「最大径」「質量(ドライ)」の項目からなる表が掲載され、当該表には、「型式」が「TRQT−50」及び「TRQT−100」についての仕様が記載されている。また、その表の下には「ポンプ吐出量、9L/min以上の鉱物油用クリーナーに標準装着」の記載がある。
さらに、同じくトリプルアール社が発行した気泡除去装置(クイックトロンシリーズ)のカタログである乙第1号証の2にも、大略、乙第1号証の1と同様の記載があるところ、その2葉目の下部には、「2016.06.2000」の記載がある。
イ トリプルアール社の製品カタログ(乙6の1、乙6の2)
乙第6号証の1は、トリプルアール社の製品カタログであるところ、その1葉目には、「Triple R」、「PRODUCTS CATALOG」の記載があり、その6葉目には「クイックトロン series」の項において「TRQT−50」の画像が表示され、「写真型式主仕様」と題する「商品型式」「外観寸法」「質量」「材質」の項目からなる表に型式が「TRQT−50」及び「TRQT−100」についての仕様が記載されている。また、その7葉目には、「各種テスターライン用オイル清浄装置(例:ATF−CVT等のテスターライン用)」のタイトルの下、工場内の装置を撮影したと思しき画像内の一部品が「クイックトロン」であることが示されている。さらに、その8葉目は、上記製品カタログの裏表紙であり、「トリプルアール株式会社」、「2022.05.3000」の記載がある。加えて、乙第6号証の2は、その記載から乙第6号証の1の8葉目と同様にトリプルアール社の製品カタログの裏表紙であり、「トリプルアール株式会社」、「2021.10.2000」の記載がある。
ウ トリプルアール社のウェブサイト(乙2の1〜乙4の3)
乙第2号証及び乙第3号証は、被請求人の主張によれば、トリプルアール社のウェブサイトの出力物であるところ、乙第2号証の1は、その1葉目に、「Triple R」、「当社は、50年以上にわたりオイルクリーナに特化してきたリーディングカンパニーです。」などの記載があり、その5葉目から6葉目にかけて「クイックトロン シリーズ」のタイトの下、「TRQT−50/100」と表示がある装置の画像とともに「油圧設備に悪影響を及ぼす気泡を除去。/OSCAに装着して気泡除去することによって、エレメントの濾過能力が十分に発揮されます。」の記載があり、乙第2号証の2にも、「クイックトロン シリーズ」の装置の画像及び型式「TRQT−50」及び「TRQT−100」についての仕様の記載がある。
さらに、乙第3号証は、その1葉目に、「Triple R」の記載及び「業界別ソリューション」のタイトルの下、「自動車」「製鉄・鉄鋼」「製紙」「建設機械」等の記載があり、その2葉目から3葉目における「建設機械」の項には「固形夾雑物・水分の除去」として、「業界」「対象液・油」「コンタミナント」「TR対象機」を項目とする表に、「クイックトロン」に関して、「業界 建設機械関連」「対象液・油 各種テスト油」「コンタミナント エア」「TR対象機 クイックトロン」の記載がある。
なお、乙第2号証及び乙第3号証には、それらの出力日や、ウェブサイトの掲載日についての記載は見当たらない。
また、乙第4号証は、インターネットアーカイブに保存され、「Wayback Machine」を用いて取得した情報を出力した書面であるところ、乙第4号証の1は2021年6月14日、乙第4号証の2は同年9月26日の情報であって、いずれも「Triple R」や「Quicktron series」といった記載があるものの、その内容は全て英語で記載されている。
(2)油清浄機(「CS−AL100シリーズ」)について(乙5、乙8〜乙10)
ア 取扱説明書(乙5)
乙第5号証は、油清浄機の取扱説明書であるところ、その1葉目には、「取説No. R13207T−01−01」、「作成 2019.10」、「改定 2022.01」、「油清浄機・取扱説明書」、「MODEL:CS−AL100 SERIES」、「トリプルアール株式会社」などの記載がある。また、その2葉目の「目次」には、「●クイックトロン付き濾過装置の取り扱い、クイックトロン付き濾過装置の効果 9(頁)」の記載があり、「添付資料」として、「*付属部品表」、「*油清浄機・外形図」、「*営業部一覧」の記載がある。
また、その4葉目は、「宛先名 コベルコ建機日本株式会社」「APPROVED BY 2019/10/25」「CHECKED BY 2019/10/25」「DRAWN BY 2019/10/25」「型式 CS−AL100−6RCQ」「名称 オイルクリーナ」「図面番号 R13207A−01−00」等の記載がある「製品仕様図」であって、当該製品仕様図には、「部番」「部品名」「数量」「備考」を項目とする「部品明細」の表内に、「部番 16」「部品名 クイックトロン/Quicktoron」「数量 1」「備考 50型」の記載がある。さらに、当該製品仕様図には、車輪を有する台車型の装置の図面が掲載され、当該図面上の装置の一部分を指して「部番 16」と表示している。
イ 油清浄機の販売、出荷(乙8〜乙10)
(ア)注文番号「03−6156」「09−9444」「04−0653」の取引(乙8、乙9)
乙第8号証は、「出荷番号」「出荷日」「受注番号」「出荷先略称」「注文番号」「伝票金額」「販売事業部名称」「納品先略称」「品名」「数量」を項目とする一覧表であり、「注文番号」が「03−6156」「09−9444」「04−0653」の商品は、「CS−AL100−6RCQ」であり、トリプルアール社がそれぞれ株式会社中央重機、コベルコ建機日本株式会社へ2020年1月27日、同年3月30日に出荷した。
また、乙第9号証は、トリプルアール株式会社が顧客宛に送付した上記商取引に対応する注文台帳であるところ、当該注文台帳には、宛先や日付等の記載のほか、型式の欄に「CS−AL100−6RCQ」、製品仕様の図面番号欄に「R13207T−01−01」の記載があり、これは乙第5号証の油清浄機の「型式」及び「図面番号」と一致する。
(イ)見積書について(乙10)
乙第10号証は、2021年11月19日に作成された、トリプルアール社を差出人として、冨士高圧フレキシブルホース株式会社を宛先とする見積書であり、「製品名及び型式 CS−AL100−6RC(AC100V、クイックトロン付)」の記載がある。
(3)上記(1)及び(2)から以下の事実が認められる。
ア 被請求人は、トリプルアール社について、2007年頃から本件商標について使用許諾契約を締結していると主張するところ、請求人はその点について争ってはおらず、また被請求人の主張を否定する理由は見当たらない。
イ トリプルアール社は、型式が「TRQT−50」及び「TRQT−100」である商品「気泡除去装置」(以下「使用商品」という。)を製造しており、同社は、使用商品に関して、2012年10月頃及び2016年10月頃に、「クイックトロン シリーズ」の名称でカタログ(乙1の1、乙1の2、乙6の1、乙6の2)を作成したこと、及び2021年6月ないし9月頃に、同社のウェブサイト(乙2の1〜乙4の2)に「クイックトロン シリーズ」や「Quicktoron」の表示(以下「使用商標」という。)を付して掲載した。
ウ 気泡除去装置(クイックトロンシリーズ)のカタログ(乙1の1)に記載されている内容から、使用商品は、自動車、建設機械、農業機械、工作機械などの様々な機器に搭載することができる汎用性のある装置と推認できる。
エ トリプルアール社は、商品「油清浄機(CS−AL100シリーズ)」を製造しており、取扱説明書の製品仕様図から、使用商品(「クイックトロン(気泡除去装置)」)は、上記商品(「油清浄機(CS−AL100シリーズ)」)の一部品として搭載されていることが認められ(乙5)、これを2020年1月、同年3月頃に顧客に販売したといえる(乙8〜乙10)。
2 上記1からすれば、次のとおり判断できる。
(1)使用商品について
被請求人は、使用商品(気泡除去装置)は土木機械器具に装着する濾過装置であって、「土木機械器具の部品」である旨主張しているので、以下、この点について検討する。
乙第1号証によれば、使用商品は、鉱物油用クリーナーに標準装着して使用する液体(オイル)中の気泡を除去するための装置であり、また、鉱物油用クリーナーを要する自動車、建設機械、農業機械、工作機械などの様々な機器に搭載することができる旨の記載がある。
そうすると、使用商品は、土木機械器具に特化した商品というより、多様な機械器具に対応する汎用性のある商品というべきであって、被請求人が主張する「土木機械器具の部品」ということはできないものであり、その他の証拠を総合してみても、使用商品が「土木機械器具の部品」であることを証明したものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、使用商品は、本件審判の請求に係る商品(「土木機械器具,荷役機械器具,包装用機械器具」)に含まれる商品又はその専用部品であるということはできない。
また、被請求人は、使用商品は主にBtoB取引によって売買される特殊な商品であり、とりわけ土木機械器具等を取り扱う重機メーカーは専門業者に部品調達を委ね、当該専門業者が提案した部品等を購入し、自社の土木機械器具に組み込むのが自然な商流であるところ、本件商標の使用者であるトリプルアール社は使用商品を実際に専門業者に販売したと主張する。
しかしながら、トリプルアール社が土木機械器具等を取り扱う重機メーカーである顧客と、使用商品(「気泡除去装置」)を搭載する商品「油清浄機」(乙5)について要証期間に取引したとしても、土木機械器具等を取り扱う重機メーカーに当該商品を販売したことをもって、使用商品が土木機械器具に組み込む専用品であることを証明したとはいえず、さらに、上記「油清浄機」が本件審判の請求に係る商品(「土木機械器具,荷役機械器具,包装用機械器具」)に含まれる商品であることは証拠上明らかとはいえないものである。
そうすると、使用商品が「油清浄機」の部品として搭載されているとしても、「油清浄機」が本件審判の請求に係る商品の範ちゅうに属する商品であるとは認められないから、使用商品は、本件審判の請求に係る商品の範ちゅうに属する商品と認めることはできない。
したがって、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標の使用者であるトリプルアール社が、使用商標を、本件審判の請求に係る商品について、商標法第2条第3項各号にいう使用をした事実は見いだせない。
(2)小括
以上のとおり、被請求人が提出した証拠における使用商標は、本件審判の請求に係る指定商品について使用されたものとは認められない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していた事実を証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

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審理終結日 2023-08-25 
結審通知日 2023-08-30 
審決日 2023-09-20 
出願番号 1990129647 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y07)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 渡邉 あおい
大山 健
登録日 1993-04-28 
登録番号 2533218 
商標の称呼 クイックトロン 
代理人 村井 康司 
代理人 魯 佳瑛 
代理人 外川 奈美 
代理人 青木 篤 

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