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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W182528
管理番号 1403894 
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-09 
確定日 2023-10-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6622007号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6622007号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6622007号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和4年3月16日に登録出願、第18類「がま口口金,レザークロス,皮革,皮革製包装用容器,ペット用被服類,かばん類,袋物,バックパック,旅行かばん用タグ,旅行かばん,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」及び第28類「ペット用おもちゃ,おもちゃ,人形,運動用具,野球用具,野球用グローブ」を指定商品として、同年8月25日に登録査定され、同年9月30日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の(1)ないし(6)の商標であり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4062597号商標(以下「引用商標1」という)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成8年3月27日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同9年10月3日に設定登録され、その後、同19年10月9日及び同29年7月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(2)登録第4062598号商標(以下「引用商標2」という)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成8年3月27日に登録出願、第25類「被服(但し、和服を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年10月3日に設定登録され、その後、同19年10月9日及び同29年7月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(3)登録第5794582号商標(以下「引用商標3」という)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成27年4月8日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,皮革」、第24類「織物,メリヤス生地,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具」を指定商品として、同年9月18日に設定登録されたものである。
(4)登録第6166878号商標(以下「引用商標4」という)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成30年10月17日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,皮革,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,愛玩動物用被服類,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、令和元年7月26日に設定登録されたものである。
(5)登録第6180370号商標(以下「引用商標5」という)は、別掲5のとおりの構成よりなり、平成30年10月17日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,皮革,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,愛玩動物用被服類,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、令和元年9月13日に設定登録されたものである。
(6)登録第4735245号商標(以下「引用商標6」という)は、別掲6のとおりの構成よりなり、平成14年11月6日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同15年12月19日に設定登録され、その後、同25年7月2日及び令和5年8月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
以下、引用商標1ないし引用商標6をまとめていう場合は、「申立人商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記にあたっては、「甲○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 申立人について
申立人は、デンマーク所在の、スポーツウェアをはじめとするアパレル商品の製造・販売を行う法人であり、申立人が展開する「hummel」ブランドは、1923年にドイツ北部でサッカー・ハンドボール用品のブランドとして生まれ、その後100年近くにわたり、全世界においてその商品が販売されている。
また、申立人は、1979年にサッカーデンマーク代表とスポンサー契約を締結し、同代表チームの公式ユニフォームを手掛けたことを契機として、レアル・マドリード、ベンフィカ、ウディネーゼ、トッテナムといった海外の著名なプロサッカーチームの公式ユニフォームのデザインを手掛けてきたほか、日本においても、横浜FC(2001年〜2014年)、ガイナーレ鳥取(2003年〜2018年)、ブラウブリッツ秋田(2009年〜現在)、INAC神戸レオネッサ、福島ユナイテッドFC(2011年〜現在)、V・ファーレン長崎(2014年〜2019年)、ノルディーア北海道(2018〜現在)といったプロサッカーチームのオフィシャルユニフォームサプライヤーとなっている。
これらの「hummel」ブランドの商品は「シェブロンライン」と呼ばれる平仮名「く」の字状の図柄が連なった模様のラインが入っていることが特徴となっており、申立人は、申立人商標を登録することにより(甲8)、申立人による自他商品等識別標識として使用される「シェブロンライン」の保護を図っている。
2 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、斜体で記載した「Yabane」のアルファベット文字を下段に配し、上段に平仮名「く」の字状に中ほどで略90度の角度で屈曲する線を3本並行に設けて、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が下方向に向かうように配した構成態様の図形を配してなる結合商標である。
結合商標類否判断にあたっては、特許庁の審査基準においても「商標の各構成部分の結合の強弱の程度を考慮し、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない場合には、その一部だけから称呼、観念が生じ得る。」とされており、本件商標における上下2段に配した文字要素と図形要素は、上下2段に配置され、特段強く結合しているものとは言えない点を考慮すれば、取引者、需要者は、本件商標を、文字要素と図形要素に分離してそれぞれを記憶、印象することになる。
したがって、本件商標と他の商標とを対比する際は、文字要素、図形要素とを分離観察して類否判断が行われることが自然といえる。
(2)本件商標と申立人商標の類否について
申立人商標は、平仮名「く」の字状に中ほどで略90度の角度で屈曲する線を、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が下方向に向かうように配した構成態様からなる図形商標である。
ここで、本件商標の図形要素と申立人商標の外観を比較すると、構成する線の本数が相違するものの、その構成要素である「く」の字状の線が共通する。
本件商標と申立人商標を比較すると、構成する線の本数が相違するものの、上記の構成上の一致性を考慮し、両者を子細に観察すれば、細かい表現方法において差異は見られるものの、本件商標と申立人商標とは、看者に与える印象が近似したものになり、時と処を異にして両者に接するときは互いに紛れやすいというべきであり,本件商標と申立人商標とは,外観において類似する。
(3)観念上、称呼上の類否について
本件商標と申立人商標は上述のとおりの構成からなるから、両者からは共通の観念及び称呼が生じる。
(4)取引の実情について
本件商標及び申立人商標の指定商品において抵触する第18類、第25類及び第28類の指定商品については、商標がいわゆるワンポイントマークとして、商品に付されることが非常に多いといえ、実際に、申立人においても、申立人商標をワンポイントマークとして使用している(甲9)。
このように使用される場合、商標は比較的小さく表示され、細部における表現方法の差異は一層曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなる。
また、商標は、その商標が付された商品を観察する場合、横を向いてみた場合、下を向いてみた場合と、様々な位置から看取されるものであることは明らかであって、特に商標が被服等においてワンポイントマークとして使用される場合などは、天地の区別なくいずれの方向から商標が看取されるかについて特定されない場合があることは、取引の実情として自明である。
このような取引の実情を考慮すれば、本件商標と申立人商標とは、相紛らわしい類似商標である。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件商標と申立人商標とは、時と所とを異にして行う離隔観察を行った場合において区別することが容易でない相紛らわしい類似の商標であり、本件商標に係る指定商品と申立人商標に係る指定商品とは類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)申立人商標の周知性について
申立人による「hummel」ブランドは、1923年にドイツ北部で生まれた世界で最も古いサッカー・ハンドボールブランドの一つであり,その商品は、プロスポーツ選手をはじめとして、全世界の需要者・取引者に親しまれている。
「hummel」とは、ドイツ語で「マルハナバチ」を意味し、ヒュンメル社は、自社商品に対して蜂を象ったデザインの商標を使用するとともに、最初に開発されたサッカーシューズから、両側面に「くの字」のマークを施していた。なお、ヒュンメル社は、スポーツウェアに限らず、多様なアパレル商品(以下「申立人商品」という。)を製造・販売しており、現在では世界で約700の販売店で販売されているほか、「ZOZOTOWN」「SHOPLIST」といった大手オンラインアパレル通販サイトでも、その商品が取り扱われている(甲10)。
我が国では、昭和55年頃から、大松貿易株式会社が総代理店となってヒュンメル社のサッカーシューズ等を輸入し、モンブラン株式会社が販売していたが、平成3年12月からは、株式会社エスエスケイが代理店となって、申立人商品を我が国において輸入販売又は製造販売している(甲11)。
また、前述のとおり、申立人は、我が国において、横浜FC(2001年〜2014年)、ガイナーレ鳥取(2003年〜2018年)、ブラウブリッツ秋田(2009年〜2011年)、INAC神戸レオネッサ、福島ユナイテッドFC(2011年〜現在)、V・ファーレン長崎(2014年〜2019年)、ノルディーア北海道(2018〜現在)といった、日本各地のプロサッカーチームのオフィシャルユニフォームサプライヤーとなっている。また、静岡産業大学サッカ一部のオフィシャルユニフォームや、京都ハンナリーズ、群馬クレインサンダーズといったプロバスケットボールチームのユニフォームも手掛けている(甲12)。
これらの「hummel」ブランドの商品は「シェブロンライン」と呼ばれる平仮名「く」の字状の図柄が連なった模様のラインが入っていることが特徴となっている。
我が国におけるプロサッカーリーグであるJリーグを例に挙げれば、1試合あたりの平均観客数は2万人と言われており、いわゆる「シェブロンライン」と呼ばれる申立人商品に付された「くの字」のマークを目にする機会は、非常に多くなっているといえる。
(2)小括
以上のような事実を考慮すれば、申立人商標は、本件商標の登録出願日において、我が国の取引者・需要者の間で周知・著名となっていたといえ、それは本件商標の登録時においても変わらない。
ゆえに、仮に申立人商標と本件商標が類似しないと判断された場合であっても、申立人商標の我が国における周知性及び現実の取引の実情等を総合的に判断すれば、本件商標と申立人商標とが並存して登録した場合、需要者において品質混同の生じるおそれがある上、本件商標権者が経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるとして、申立人の業務と混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1) 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人に係る「hummel」ブランドは、1923年にドイツ北部で生まれたサッカー・ハンドボールブランドであり、我が国においては、昭和55年頃から、代理店を通じて申立人商品が販売されている(申立人の主張)。
イ 申立人商標と同一視し得る標章を付した申立人商品(パーカー、スニーカー等)が、我が国の複数のアパレル通販サイトにおいて販売されたことがうかがえ(甲9、甲10)、申立人商品の説明として、例えば「・・・袖についたシェブロンラインのラバープリント・・・」(甲9)など、申立人商標のデザインについての記載があるが、当該サイトは本件商標の登録査定後のものである。
ウ 2007年、2015年及び2018年から2020年にかけてのインターネット記事より、申立人商標と同一視し得る標章を付した申立人商品が、我が国の複数のプロサッカーチームやプロバスケットボールチームや、大学サッカーチームのユニフォームとして採用されたことがうかがえ(甲12)、当該インターネット記事には、例えば、「新ユニフォームは、全面に未来への広がりを意味するシェブロンライン(V字)をデザイン。」、「ボディのストライプは裾に向けて、ヒュンメルのモチーフであり、未来への広がりを意味するシェブロンラインに見えるようにデザイン。袖には4連のシェブロンライン」、「・・・両サイドには未来への広がりを表すシェブロンラインを配置。」など申立人商標のデザインについて言及されている記事も見受けられる。
(2)上記(1)からすれば、インターネット記事において、申立人商標のシェブロンラインと称するデザインについて言及されている記事が見受けられるとしても、申立人商品のアパレル通販サイトにおける販売については、当該通販サイトが本件商標の登録査定後のものであるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時の申立人商品の販売事実を裏付けるものではなく、他に申立人商品の販売開始時期を具体的に確認できる証拠はない。
また、2007年以降、2020年にかけて、申立人商標と同一視し得る標章を付した申立人商品が、我が国の複数のプロサッカーチームやプロバスケットボールチームのユニフォームとして採用されたことはうかがえるが、申立人商標を付した申立人商品の我が国における販売実績、広告宣伝の規模等については明らかにされていない。
そうすると、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標が申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者にどの程度認識されているのかを把握、評価することができない。
したがって、提出された証拠によっては、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に、上が幅広く、下に向かって徐々に幅が狭くなっている3本のV字状の図形(以下「図形部分」という。)をV字状の図形の太さより狭い間隔で配置し、下段に「矢に矧ぐ鳥の羽。」(「広辞苑 第7版」岩波書店発行)の意味を有する「矢羽根」を理解させる「Yabane」の文字(以下「文字部分」という。)を配置した構成よりなるものである。
そして、図形部分と文字部分とは、段を異にし、接することなく配置されているから、視覚上、分離して看取され得るものであるところ、図形部分は、特定の事物を想起させるものとはいえないから、特定の称呼及び観念を生じないものとみるのが相当であり、また、図形部分と文字部分との間に称呼及び観念上のつながりも認められない。
よって、図形部分と文字部分とは、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そうすると、本件商標に接する需要者は、図形部分と文字部分のそれぞれを出所識別標識としての機能を有する要部として認識、理解するのが相当であるから、図形部分を要部として抽出し、申立人商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
(2)申立人商標について
引用商標1及び引用商標2は、別掲2のとおり、幅及び大きさを共通にする2本のV字状図形(以下「V字状図形」という。)を上下に間隔を空けて配置した構成、引用商標3は、別掲3のとおり、黒い円内に白抜きで2本のV字状図形を配置した構成、引用商標4ないし引用商標6は、別掲4ないし別掲6のとおり、引用商標1及び引用商標2のV字状図形を上下に間隔を空けて複数配置した構成よりなるところ、これら各図形は、特定の事物を想起させるものとはいえないから、申立人商標は、特定の称呼及び観念を生じない。
(3)本件商標と申立人商標との類否について
ア 本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について
本件商標の図形部分と引用商標1及び引用商標2を比較すると、両者は、いずれもその構成中にV字状の図形を有する点を共通にするものの、V字状の図形の幅、大きさ及び数の差異を有することに加え、上が幅広く、下に向かって徐々に幅が狭くなっているV字状の図形を狭い間隔で配置した構成よりなる本件商標の図形部分は、視覚上、まとまりよく一体的に表されていると看取されるものであり、V字状の図形を上下に間隔を空けて配置した構成よりなる引用商標1及び引用商標2とは、全体から受ける印象が異なり、両者を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、相紛れることなく、明確に区別し得るものである。
そして、本件商標の図形部分と引用商標1及び引用商標2とは、いずれも特定の称呼及び観念が生じないから、称呼及び観念においては比較することができないものである。
そうすると、本件商標の図形部分と引用商標1及び引用商標2とは、称呼及び観念においては比較することができないとしても、外観においては、明確に区別し得るものであるから、これらを総合的に考察すれば、両者は、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
イ 本件商標と引用商標3ないし引用商標6との類否について
本件商標の図形部分と引用商標3ないし引用商標6を比較すると、本件商標の図形部分と引用商標3との比較においては、黒い円の有無の差異などにより、また、本件商標の図形部分と引用商標4ないし引用商標6との比較においては、V字状の図形を上下に間隔を空けて配置し、その数も異なる構成よりなる引用商標4ないし引用商標6とは、全体から受ける印象が全く異なるから、外観上、相紛れることなく、明確に区別し得るものである。
そして、本件商標の図形部分と引用商標3ないし引用商標6とは、いずれも特定の称呼及び観念が生じないから、称呼及び観念においては比較することができないものである。
そうすると、本件商標の図形部分と引用商標3ないし引用商標6とは、称呼及び観念においては比較することができないとしても、外観においては、明確に区別し得るものであるから、これらを総合的に考察すれば、両者は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標と申立人商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が、申立人商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとはいえないものであり、また、上記2のとおり、本件商標と申立人商標は、非類似の商標であるから、類似性の程度は高いものではない。
以上からすれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者が申立人商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、本件商標をその指定商品に使用しても、当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他、本件商標と申立人商標が、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1及び引用商標2)



別掲3(引用商標3)



別掲4(引用商標4)



別掲5(引用商標5)



別掲6(引用商標6)




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異議決定日 2023-10-12 
出願番号 2022030095 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W182528)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 冨澤 武志
特許庁審判官 小田 昌子
馬場 秀敏
登録日 2022-09-30 
登録番号 6622007 
権利者 レオニアン シンガポール プライベート リミテッド
商標の称呼 ヤバネ 
代理人 遠山 良樹 
代理人 三嶋 景治 
代理人 川崎 仁 
代理人 青木 篤 
代理人 中里 浩一 
代理人 外川 奈美 
代理人 中里 卓夫 

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