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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W31
管理番号 1401970 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-22 
確定日 2023-08-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6577169号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6577169号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第6577169号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドッグフードは毒フード」の文字を標準文字で表してなり、令和4年1月30日に登録出願、第31類「ドッグフード,犬用飼料」を指定商品として、同年6月7日に登録査定され、同月23日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した
(1)商標法第4条第1項第7号該当性
ア 本件商標について
本件商標を構成する「毒」は、「健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりするもの」を意味する言葉であることから、本件商標は、その構成全体から、「ドッグフードは毒である」あるいは「ドッグフードは、健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりする毒の食品である」との観念を生じさせるものである。
当然のごとく、ペットが口にするような食品に毒物が含まれ、その食品を食した場合において、ペットの健康が害され、あるいは生命が危うくされたり奪ったりされるような事態はあってはならないことである。そのため、ドッグフードを含むペットフードについては、ペットフード安全法等の各種法令に基づき、商品に含まれる各成分の内容及び容量に関して、厳しい基準が設けられている。ペットフードを製造又は販売する各種事業者は、このような厳しい基準に従ってドッグフードを含むペットフードを製造又は販売しているのである。
ゆえに、「ドッグフードは毒である」あるいは「ドッグフードは、健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりするような毒の食品である」といった情報は、明らかに誤ったものである。このような需要者に不安を与える蓋然性の高い誤った情報を示す本件商標は、一般道徳観念に反した過激なキャッチフレーズであるといえ、その指定商品である「ドッグフード,犬用飼料」に使用された場合において、その誤った情報が流布されることによって一般需要者及び取引界に混乱をもたらし、ひいては公の秩序を乱すような事態に帰結しかねない。
さらに、安全なドッグフードの研究開発、製造に日々精進する健全な事業者の感情を害し、不快な印象を与える商標であるともいえる。
イ 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標について
商標法第4条第1項第7号では、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について登録が認められない旨が規定されており、特許庁が発行する商標審査基準においては、その類型として、以下のようなものが挙げられている。
(ア)商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。
なお、非道徳的若しくは差別的又は他人に不快な印象を与えるものであるか否かは、特に、構成する文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断する。
(イ)商標の構成自体が上記(ア)でなくても、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合。
上記の類型に該当するものとして、犯罪を想起させる商標について、公の秩序、善良の風俗を害するおそれがある、あるいは公の秩序を乱すおそれのあるいかがわしい標識である標章であると判断され、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして登録が認められていないものがある。
本件商標についても、上記のような商標と同様に、本件商標がその使用商品に使用された場合において、社会に悪影響をあたえる蓋然性が高いといわざるを得ず、同様に登録が認められるべきではない。
(ウ)小括
上述のとおり、本件商標は、その構成が、ペットフードを取り扱う各事業者、あるいは需要者に不快な印象を与えるものであるばかりでなく、本件商標が指定商品に使用された場合において、「ドッグフードは毒である」、あるいは「ドッグフードは、健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりする毒の食品である」といった誤った観念が流布されることによって、社会公共の利益を害するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものであるから、登録が認められるべきではない。
(2)商標法第4条第1項第16号該当性
上述のとおり、本件商標は、「ドッグフードは、健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりする毒の食品である」、あるいは「ドッグフードは健康を害し、生命を危うくしたり奪ったりする毒が含まれている食品である」といった誤った情報を示すものである。
そのため、本件商標がその指定商品である「ドッグフード,犬用飼料」に使用された場合において、需要者又は取引者において、その商品が毒である、あるいは毒が含まれているとの誤認を生じさせるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当するものであるから、登録が認められるべきではない。

3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、同法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきである旨の取消理由を令和5年4月10日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対し、商標権者は、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。

5 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の趣旨
本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号)。
(2)本件商標の指定商品に係る取引の実情
申立人の主張及び職権調査(インターネット情報など)によれば、本件商標の指定商品に係る取引の実情について、次のとおり認めることができる。
ア 本件商標の指定商品は、上記1のとおり「ドッグフード,犬用飼料」(以下「ドッグフード等」という。)である。
イ ドッグフード等は、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法 平成20年6月18日法律第83号)などの法令等に基づいて、その安全性の確保が図られ、定められた基準・規格に合わないドッグフード等の製造、販売は禁止されている。
ウ そうすると、ドッグフード等を製造・販売する事業者は、かかる基準・規格に従って、安全な商品を製造又は販売しているといえる。
エ また、製造者(又は販売者)の異なる多種多様なドッグフード等の商品が、他のペットフードと同一の店舗等の販売場所において販売されている。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、上記1のとおり「ドッグフードは毒フード」の文字を標準文字で表してなり、該文字は「ドッグフードは毒のあるフードである」というような意味を理解、認識させるものである。
そうすると、上記(2)の本件商標の指定商品に係る取引の実情のもと、本件商標がその指定商品に使用された場合、法令等に従って安全なドッグフード等を製造、販売する事業者は、自己が製造、販売する安全な商品について、「ドッグフードは毒のあるフードである」、すなわち当該商品が毒のある商品であるかのように誤解させる本件商標に対して、不快な印象を抱くことが少なくないものと判断するのが相当である。
また、上記(2)に示したような本件商標の指定商品に係る取引の実情に照らした場合、ドッグフード等の販売店等の販売場所において、本件商標に接した需要者は、法令等に従って製造、販売されている安全な商品について、それが毒のある商品であるかのように誤解、危惧し、商品の購入を躊躇することが少なくなく、その結果、ドッグフード等ペットフード全体の売上が減少し、ひいてはペットフード産業の発展を阻害するおそれがあるものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、上記(1)a)の「他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合」及び上記(1)b)の「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」に該当し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同項第16号該当性について判断するまでもなく、同法43条の3第2項の規定により、その登録は、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-06-26 
出願番号 2022010044 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W31)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 豊瀬 京太郎
特許庁審判官 小俣 克巳
石塚 利恵
登録日 2022-06-23 
登録番号 6577169 
権利者 株式会社エヴリワンズ
商標の称呼 ドッグフードワドクフード、ドクフード、ドク 
代理人 遠山 良樹 
代理人 青木 篤 
代理人 遠山 良樹 
代理人 青木 篤 
代理人 外川 奈美 
代理人 外川 奈美 
代理人 西川 幸慶 

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