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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W08
管理番号 1401906 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-07-28 
確定日 2023-08-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第6317667号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6317667号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6317667号商標(以下「本件商標」という。)は、「Jeeper」の文字を標準文字で表してなり、令和2年1月27日に登録出願、第8類「チャコ削り器,パレットナイフ,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),護身棒,鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」を指定商品として,同年11月9日に登録査定され,同月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において,引用する登録商標は、以下8件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第1286579号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和48年11月12日
設定登録日:昭和52年7月25日
指定商品 :第7類「繊維機械器具,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械」、第8類「組みひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。)」を含む第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成20年11月5日書換登録)
2 登録第2027802号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和59年5月29日
設定登録日:昭和63年2月22日
指定商品 :第7類「繊維機械器具,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械」、第8類「組みひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。)」を含む第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成21年2月25日書換登録)
3 登録第2281689号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和62年11月12日
設定登録日:平成2年11月30日
指定商品 :第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」、第14類「貴金属製コンパクト」、第18類「携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」、第26類「つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」を含む第6類、第8類、第14類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成15年3月5日書換登録)
4 登録第2362272号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和62年3月27日
設定登録日:平成3年12月25日
指定商品 :第7類「家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー」、第11類「家庭用電熱用品類」を含む第7類ないし第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成16年6月2日書換登録)
5 登録第2362279号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:昭和63年2月27日
設定登録日:平成3年12月25日
指定商品 :第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック」を含む第1類、第4類、第9類及び第10類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成15年2月5日書換登録)
6 登録第2362281号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:昭和63年2月27日
設定登録日:平成3年12月25日
指定商品 :第14類「貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱」、第20類「ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠」、第21類「アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),アイロン台,霧吹き,こて台,へら台」、第24類「織物製テーブルナプキン」を含む第4類、第6類、第11類、第14類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成15年3月5日書換登録)
7 登録第2416681号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:昭和63年2月27日
設定登録日:平成4年5月29日
指定商品 :第8類「手動利器(「刀剣」を除く。),刀剣,手動工具(「すみつぼ類・皮砥・鋼砥・砥石」を除く。),すみつぼ類,皮砥,鋼砥,砥石」を含む第8類、第14類、第18類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成15年7月2日書換登録)
8 登録第2434659号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
登録出願日:昭和49年6月7日
設定登録日:平成4年7月31日
指定商品 :第12類「全輪駆動小型自動車」(平成18年1月11日書換登録)

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第80号証(枝番号を含む。以下、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
(ア)本件商標の外観及び構成
本件商標は計6文字の欧文字からなり、標準文字によって一連の文字商標としての外観を形成する一方、その構成はあくまで「Jeep」の文字に、接尾辞の「er」の2文字を付加したものにすぎず、視覚的にも「Jeep」の4文字が、商標全体の中で強く支配的な印象を与える。
(イ)本件商標の観念
本件商標の構成中、「Jeep」の部分は、「四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」と「広辞苑」にも掲載されているとおり(甲12)、世界的にも知られる「四輪駆動小型自動車」を意味する。一方、語尾の「er」の部分は接尾辞の一種であり、名詞などの語尾に付されることにより、「〜に関係する人、〜を愛好する人」等を表す言葉に変えるものである。
すなわち、本件商標の「Jeeper」は、「Jeep」又は「JEEP」に由来する造語であり、全体として、「四輪駆動小型自動車」の「Jeep」又は「JEEP」に関係する人や愛好者といった意味を想起させる。
なお、有名な商品名(商標)や有名人の名前の後に「er」を付す事例は枚挙にいとまがなく、例えば、シャネラー(CHANELのファン)、キティラー(ハローキティのファン)、アムラー(安室奈美恵のファン)、マヨラー(何にでもマヨネーズをかける人)などは1990年代には既に浸透しており(甲13)、最近では、ユーチューバー(YouTubeのユーザー)やティックトッカー(TikTokのユーザー)などが良く知られている。このように、有名な商品名(商標)や有名人の名前の後に「er」を結合することは頻繁に行われることであり、後述の「(2)エ 具体的な出所混同のおそれについて」でも言及しているとおり、本件商標に係る「Jeeper」という言葉も、実際に請求人に係る商品の取引者や需要者の間で、「JEEP」のユーザーやファンの通称として用いられているものである。
(ウ)本件商標の称呼
本件商標は、欧文字の「Jeep」に「er」を付加した「Jeeper」からなるところ、「Jeep」の部分からは「ジープ」の称呼が生じ、「er」の部分からは、それ自体「アー」に近い称呼が生じる。
ここで、英語の発音上、「er」の部分は語幹となる文字との組合せによって音が変化するため、全体的に「ジーパー」の称呼が生じるものの、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与えている「Jeep」の部分からは、上述のとおり「ジープ」の称呼が生じる。
イ 引用商標1ないし引用商標7(以下、まとめて「引用各商標」という。)について
(ア)引用各商標の外観及び構成
引用各商標は、それぞれ欧文字4文字からなる「Jeep」又は「JEEP」である。
(イ)引用各商標の観念
引用各商標は、上述のとおり、世界的にも知られる「四輪駆動小型自動車」を意味する。
(ウ)引用各商標の称呼
引用各商標からは、いずれも「ジープ」の称呼が生じる。
ウ 本件商標の要部と引用各商標との類否について
本件商標は、その構成上、「Jeeper」の計6文字からなるため、引用各商標の「Jeep」又は「JEEP」の計4文字からなる商標とは、全体的にその文字数が相違する。
また、称呼上も、本件商標は英語読みで「ジーパー」と発音されるため、「ジープ」の称呼が生じる引用各商標とは、語尾の部分に「パー」と「プ」の違いが生じ、全体の音節数も4音と3音とで相違する。
なお、観念上は、全体として「四輪駆動小型自動車」の「Jeep」の愛好者等を想起させる「Jeeper」と、「四輪駆動小型自動車」そのものを意味する「Jeep」又は「JEEP」とは同一とはいえないものの、「Jeeper」は、「四輪駆動小型自動車」である「Jeep」の愛好者向けの商品であるとの観念も想起させる。したがって、観念上、相互に関連性があることについては否定されない。
ここで、本件商標は、「Jeep」又は「JEEP」に由来する造語として、「Jeep」の後に単に「er」を付加したものにすぎず、しかも、接尾辞としての「er」は、商品の出所識別標識としての機能に及ぼす影響は少なく、むしろ、需要者等に対して強く支配的な印象を与えているのは「Jeep」の4文字である。
また、「JEEP」には著名性が認められることから、本件商標のように、その一部に著名な商標を含む場合、この部分を要部として分離観察することには妥当性がある。そして、この要部である「Jeep」の部分が、商品の出所識別標識としての機能を独立して発揮することは、取引社会の通念及び経験則に照らしても明らかである。
換言すると、本件商標に接した取引者や需要者は、常に「Jeeper」全体を一連一体のものとして捉えるのではなく、著名商標である「Jeep」の部分に着目し、商品選択を行う可能性があることから、「Jeep」の部分を要部と認定し、当該部分を分離して観察したとしても、取引上不自然であるとはいえない。
したがって、本件商標の要部と引用各商標とを比較した場合、称呼が「ジ一プ」で共通し、観念も「四輪駆動小型自動車」で共通するため、相互に類似する商標である。
仮に、本件商標「Jeeper」を分離観察ではなく、全体として観察した場合であっても、外観上「Jeep」の部分が目立つことは否定できず、加えて観念上も、上述のように「四輪駆動小型自動車」である「Jeep」のユーザーや愛好者向けという「Jeep」に関連する意味も生じ得ることから、全体観察においても類似性がある。
エ 指定商品の類否について
本件商標に係る第8類の指定商品と、引用各商標に係る第7類ないし第11類、第14類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第26類の指定商品は、引用商標一覧表(甲9)でも明示しているとおり、同一又は類似の関係にある商品である。
オ 小括
本件商標及び引用各商標は、相互に類似するものであり、かつ、指定商品も同一又は類似であることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標の類似性
上述のとおり、本件商標の構成中、「Jeep」の部分を要部として分離観察した場合、さらに、本件商標「Jeeper」を全体観察した場合のいずれにおいても、本件商標と引用商標8の「JEEP」(甲10)とは、相互に類似する商標である。
混同を生ずるおそれがある商標
一方、商標の類似性が首肯されない場合でも、本件商標には、その一部に著名な商標である「Jeep」の文字が含まれており、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)」に該当するものと考える。
すなわち、「商標審査基準」十三、第4条第1項第15号2.「他人の著名な商標を一部に有する商標について」の(1)によれば、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。」とあり、本号に該当する具体例として、出願商標「arenoma/アレノマ」と著名な商標「renoma」「レノマ」などの例が挙げられている。
したがって、請求人の著名な商標と他の文字とが結合した本件商標も、たとえ一連の文字商標としての外観を呈しているとしても、商品の出所に混同を生じるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号の適用が肯定されるべきである。
ウ 引用商標の著名性
引用商標8に代表される請求人の商標「JEEP」は、請求人に係る主要ブランドとして80年以上もの歴史を有し、「四輪駆動小型自動車」の出所識別標識として、世界各国において使用され、かつ、我が国においても「日本国周知・著名商標」に認定され、現在に至っている。
すなわち、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の商標「JEEP」は、その著名性が厳然と維持されている。
(ア)引用商標の由来と歴史
「JEEP」は、第2次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用した「四輪駆動小型自動車」に付けられた愛称であり、その由来として、多目的車を意味する「general purpose car」の頭文字GPを、漫画映画のポパイに出てくる犬のような動物の「Jeeeeep」という鳴き声にひっかけてできたという説がある(甲14〜甲16)。
一方、商標としての「JEEP」は、終戦間際の1943年に、当時の製造メーカーにより米国で出願され、1950年に登録されている(甲17)。また、現在では、世界170か国以上において、同様に「JEEP」の文字が商標登録されている(甲18)。
さらに、我が国でも、1973年に出願されて以降、「Jeep」、「JEEP」、「ジープ」又は「JEEP」の文字を含む結合商標(他の文字や図形と結合した商標)が複数出願されており、現在までに、計30件もの商標が登録されている(甲19)。
なお、商標「JEEP」は、1972年の時点で、既に商標研究会発行の「新版日本有名商標録」で紹介されており(甲20)、その後、特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標」に登録商標として掲載され、現在に至っている(甲11)。さらに、「広辞苑」においても「四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」と記載されている(甲12)。
(イ)販売台数及び新規登録台数
本件商標の出願日及び登録日の属する2020年を基準として、過去10年間における日本国内における「JEEP」の販売台数は、2011年は3,184台、2012年は5,055台、2013年は5,097台、2014年は6,843台、2015年は7,130台、2016年は9,382台、2017年は9,884台、2018年は11,415台、2019年は13,360台、2020年は13,588台であり、10年前と比較すると、その販売台数は4倍以上も増加し、かつ、2020年には過去最高を記録していることが確認でき、我が国において、「JEEP」の知名度が急速に高まった(甲21〜甲23)。
また、新規登録台数を他社と比較した場合、2011年度から2020年度までの「JEEP」の新規登録台数は、2011年度は3,721台で60車中12位、2012年度は4,956台で64車中12位、2013年度は5,596台で65車中12位、2014年度は6,802台で64車中9位、2015年度は7,279台で62車中9位、2016年度は9,745台で59車中9位、2017年度は10,446台で59車中9位、2018年度は11,098台で61車中10位、2019年度は14,186台で62車中8位、2020年度は14,255台で62車中9位である(甲24)。
近年、若者の車離れが進み、他メーカーが若年層の開拓に腐心する一方、「JEEP」の顧客は若年層が増えているとされ、その理由として、「JEEP」には高級車というイメージが薄く、また、「SNSにも車の写真を投稿しやすい」といったことが指摘されている(甲25)。実際、Instagramでは、「#ジープ」というハッシュタグを付けた写真の投稿が111,695件にも上っており(2019年12月12日時点)(甲26)、「インスタ映えする車ベスト30」では、「JEEP」の車種が第5位にランクインしている(2019年4月4日時点)(甲27)。
(ウ)各種メディアにおける情報発信
従前より、新聞、雑誌、カタログ等を通じて、「JEEP」の宣伝・広告が継続的に行われているところ(甲28〜甲56)、特に影響力の大きいテレビCMについては、本件商標の出願日及び登録日の属する2020年も含めて多数公開されており、インターネット上でも動画配信されている。
一例として、Jeep テレビCM 「Window of a Jeep」(甲57)、Jeep テレビCM 「Jeep RENEGADE」(甲58)、Jeep テレビCM 「New Jeep Compass」(甲59)、Jeep テレビCM キャンプ編(正規輸入車ディーラーのALCモータースグループによるオリジナルテレビCM)(甲60)、Jeep テレビCM スケボー編(同上)(甲61)、Jeep テレビCM サーフィン編(同上)(甲62)の映像の一部を画面イメージとして提出する。
一方、「YouTube」、「Twitter」、「Instagram」及び「facebook」等のSNSでも、公式サイトや公式アカウントを通じて、恒常的に情報発信が行われている(甲63〜甲66)。このうち、「YouTube」の利用者による「Jeep Japan」の公式サイトの登録者数(月単位)について、本件商標の出願日及び登録日の属する2020年当時の状況を確認すると、2,000件台から3,000件台へと堅調に推移している(甲67)。また、「Twitter」の「Jeep Japan」公式アカウントのフォロワー数(月単位)については2万件台から3万件弱へ、さらに、ツィート数(月単位)については3千件台から4千件弱へと推移しており(甲68)、当時の需要者層による「JEEP」への関心度がうかがえる。
エ 具体的な出所混同のおそれについて
引用商標8に代表される請求人の商標「JEEP」は、「全輪駆動小型自動車」の商標として著名である一方、請求人のオフィシャルストアを通じて、「JEEP」の標章が付された関連グッズ、例えば、雑貨、小物、家庭用品、繊維類、スポーツ用品など、多様な商品販売が行われている(甲69)。とりわけ、「JEEP」愛好者の中にはアウトドアを志向する人が少なくなく、そのような嗜好に合わせた商品展開として、キャンプグッズなどのアウトドア用品の販売も行われている。さらに、スポーツ・アウトドア用品の専門店(全国に90店舗を有するヒマラヤスポーツ)においても、「JEEP」のオフィシャルアイテムが販売されており、オンラインの通販サイトでも購入が可能である(甲70)。
ここで、本件商標の「Jeeper」が付された商品の一例として、その指定商品のうち、アウトドア用品の(キャンプグッズの一種である薪割り用の)「手斧」(第8類)や、DIY(日曜大工)用品としての「手動工具」(第8類)などがインターネット上で確認できる(甲71〜甲73)。このような使用態様は、需要者等が請求人の業務に係る商品と誤認し、その出所について混同するおそれがあるだけでなく、請求人の関連会社(例えば、商品化事業を営むグループ会社など)や、請求人から許諾を受けた者の業務に係る商品であると誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがある。
こうした混同のおそれは、アウトドア用品としてのキャンプグッズやDIY用品に限ったことではなく、請求人の標章が付された商品として、雑貨、小物、家庭用品等の多種多様なグッズが販売されている状況下では、本件商標に係る他の指定商品(甲1)との関係においても、その出所について混同を生ずることが懸念される。
そもそも、本件商標に係る「Jeeper」という言葉は、請求人に係る商品の取引者や需要者の間で、「JEEP」のユーザーやファンの通称として用いられているものであり、ブログや動画配信サイト等でも、その使用例が確認できる(甲74〜甲76)。このように、商品のブランド名である商標に、単に接尾辞を付加したにすぎない派生語的な造語は、観念上も引用商標との間に関連性が認められ、需要者等に対して必然的に派生元のブランド名である「JEEP」を想起させる効果を有する。同様の事例として、同じ自動車産業に属する他社のうち、株式会社SUBARUの商標「SUBARU」に、「〜する人、〜主義者」等の意味を有する「IST」を付加した「SUBARIST\スバリスト」(第4602413号)の例が挙げられる(甲77)。
すなわち、全くの第三者がこうした標章を用いて商品販売を行った場合、たとえ非類似の商品であっても、その商品に接した需要者等が、あたかもブランド元の商品か、あるいは関連会社等の業務に係る商品であると誤認し、出所の混同が生じることは容易に想定されるのであり、業務上の信用のみならず、需要者の利益をも保護することを目的とする商標法の立法趣旨に照らしても、出所混同のおそれのある登録商標の存在は、到底、看過することはできない。
なお、上述の登録商標「SUBARIST\スバリスト」(株式会社SUBARUによる先願先登録商標)については、当該商標と構成態様が一致する商標を後発的に取得した他社の商標権(第5391802号)(甲78)の無効審判に係る審決取消請求事件において、株式会社SUBARUの著名商標「SUBARU」との関係で、商品の出所につき、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがあるとして、当初、商標法第4条第1項第15号には該当しないとした審決(平成23年12月9日付審決)を取り消すべき旨の判決が下されている(平成24年6月6日判決言渡、差戻し後、平成24年10月9日無効審決確定)(甲79〜甲80)。上記判決は、まさに出所混同のおそれについて賢察の上、適切に判示された結果に他ならない。
以上のような実情を考慮しても、本件商標については、たとえ指定商品が非類似の関係にあっても、請求人との間で商品の出所混同が生じるおそれが十分あるものである。
オ 小括
本件商標は、全輪駆動小型自動車の商標として著名な引用商標をその一部に含んでいることから、本件商標をその指定商品に使用した場合、需要者等が、請求人の業務に係る商品と誤認し、その出所について混同するおそれがあるだけでなく、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標と認められることから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとして、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものであり、仮に、同法第4条第1項第11号に該当しない場合であっても、同項第15号に違反して登録されたものであるため、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
1 引用商標8を含む「Jeep」、「JEEP」の文字からなる商標の周知著名性について
(1)請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 「Jeep」の語は、岩波書店発行「広辞苑第5版」、平凡社発行「世界大百科事典12」及び小学館発行「日本大百科全書11」に掲載されており、これらにおいて、第2次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用した四輪駆動小型自動車に付けられた愛称又は商標名であり、戦後は各国において軍関係だけでなく、民間でもレジャー用を含めあらゆる分野で広く使用されており、この種の四輪駆動車の代名詞となっている旨説明されている(甲12、甲14、甲15)。
イ 特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」における「日本国周知・著名商標検索」において、商品「全輪駆動小型自動車」について、請求人が所有する「JEEP」の欧文字からなる商標(引用商標8)が掲載されている(甲10、甲11)。
ウ 2011年(平成23年)から2020年(令和2年度)における車名別輸入車新規登録台数において、「Jeep」の名称の四輪駆動小型自動車(以下「請求人商品」という。)の台数、シェア及び他社商品との比較は、2011年度(平成23年度)は3,721台、1.26%、58車中12位、2012年度(平成24年度)は4,956台、1.54%、60車中12位、2013年度(平成25年度)は5,596台、1.55%、59車中12位、2014年度(平成26年度)は6,802台、2.10%、59車中9位、2015年度(平成27年度)は7,279台、2.23%、57車中9位、2016年度(平成28年度)は9,745台、2.81%、56車中9位、2017年度(平成29年度)は10,446台、2.97%、56車中9位、2018年度(平成30年度)は11,098台、3.05%、57車中10位、2019年度(令和元年度)は14,186台、4.18%、58車中8位、2020年度(令和2年度)は14,255台、4.24%、59車中9位である(甲24)。
エ 平成27年(2015年)7月から平成28年(2016年)6月までに発行された各種の雑誌(甲28〜甲33)、平成19年(2007年)1月ないし平成31年(2019年)4月に発行されたとされる請求人提出のカタログ(甲34〜甲42)において、請求人商品が「Jeep」又は「JEEP」の文字からなる商標(以下、これらの「Jeep」又は「JEEP」の文字からなる商標と引用商標8を合わせて「請求人商標」という。)とともに紹介されている。
オ 平成27年3月7日から平成28年5月13日までに発行された各種の新聞において、請求人商品が請求人商標とともに広告されている(甲43〜甲51)。
カ 2020年に公開されているテレビCM、インターネット上の動画において、請求人商品が請求人商標とともに広告されている(甲57〜甲62)。
キ 「Jeepオフィシャルストア」のウェブサイト(印刷日:2022年7月8日)において、「Jeepコレクション」として、請求人商標が付された「Tシャツ」「バックパック」「バッグ」「カラビナ」「キーホルダー」「マグカップ」「弁当箱」「スプレーボトル」等の商品が販売されている(甲69)。
ク 「RealStyle by Jeep」のウェブサイトにおいて、「Jeep×HIMALAYAの「キャンプと車を遊び心でつなぐ」コラボ!」と題する記事(2021年5月25日)中に、「ヒマラヤスポーツで、Jeepオフィシャル・アイテムの取り扱いがスタート!ハードコンテナ、クーラーボックス、キャリーカートなど、キャンプに使えるおすすめギアがラインナップ。」の記載とともに、請求人商標が付された「ハードコンテナ」「クーラーボックス」「キャリーカート」等のキャンプ用の商品が紹介されている(甲70)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、請求人商標は、請求人が所有する商標として特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」における「日本国周知・著名商標検索」において掲載されるとともに、各種の辞典において四輪駆動小型自動車に付けられた愛称又は商標名として載録されており、また、遅くとも、平成27年7月から継続して各種の雑誌及び新聞において請求人商品が請求人商標とともに紹介又は広告されており、さらに、平成23年度から令和2年度における車名別輸入車新規登録台数において、請求人商品の台数及びシェアは、常に全体の上位を保っていること等が認められる。
そうすると、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
また、請求人商標は、長年にわたる四輪駆動小型自動車についての使用状況に照らして、周知著名性の程度が極めて高いといえるところ、請求人商標は、遅くとも2021年5月には、店舗やウェブサイトにおいて販売される、「Tシャツ」「バックパック」「バッグ」「マグカップ」「弁当箱」「カラビナ」「キーホルダー」「スプレーボトル」「ハードコンテナ」「クーラーボックス」等、繊維、食器、運動具、収納容器といった幅広い分野の商品に付されて使用されており、これらの取引の実情を踏まえれば、その周知著名性は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、自動車以外の商品の取引者、需要者の範囲についても及んでいたものというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「Jeeper」の文字を標準文字で表してなるところ、「Jeep」の欧文字に、接尾辞の一種であり、名詞などの語尾に付されることにより、「〜に関係する人、〜を愛好する人」等を表す「er」の文字(甲13)を付加してなるものである。
そして、「Jeep」の文字は、上記1のとおり、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「Jeep」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
してみると、本件商標は、その構成中「Jeep」の文字部分を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
そして、本件商標は、その構成中「Jeep」の文字部分から「ジープ」の称呼を生じるものであり、また、「Jeep」の文字は請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものである。
(2)引用各商標
引用各商標は、別掲1ないし4のとおり、「Jeep」の欧文字又は「JEEP」の欧文字を一般的な書体で横書きしてなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、「ジープ」の称呼を生じるものである。
また、上記1のとおり、「Jeep」の欧文字又は「JEEP」の欧文字は、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、引用各商標からは、「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用各商標との類否
本件商標と引用各商標との類否を検討するに、外観については、本件商標の要部である「Jeep」の文字部分と、引用各商標の「Jeep」又は「JEEP」の文字とは、いずれも一般的な書体で表され、大文字と小文字の差異はあるものの、つづりを全て共通にするものであるから、両商標は外観において近似した印象を与えるものである。
また、称呼及び観念においては、両商標は、いずれも「ジープ」の称呼及び「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものであるから、称呼及び観念を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用各商標は、外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、語尾の「er」の有無において相違するとしても、本件商標の要部である「Jeep」が、引用各商標と外観において近似した印象を与え、称呼及び観念も共通にすることから、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標というべきである。
(4)本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品との類否
ア 本件商標の指定商品中、「レーキ(手持工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),鋤,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),くわ,」は、引用商標1の指定商品及び引用商標2の指定商品中、第7類「繊維機械器具,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械」及び第8類「組みひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。)」と同一又は類似する商品である。
イ 本件商標の指定商品中、「ペディキュアセット,マニキュアセット,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器」は、引用商標3の指定商品中、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」、第14類「貴金属製コンパクト」、第18類「携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」及び第26類「つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」と同一又は類似する商品である。
ウ 本件商標の指定商品中、「電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン」は、引用商標4の指定商品中、第7類「家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー」及び第11類「家庭用電熱用品類」と同一又は類似する商品である。
エ 本件商標の指定商品中、「ピンセット」は、引用商標5の指定商品中、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック」と類似する商品である。
オ 本件商標の指定商品中、「チャコ削り器,ピザカッター(電気式のものを除く。),フォーク,缶切,かつお節削り器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」は、引用商標6の指定商品中、第14類「貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱」、第20類「ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠」、第21類「アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),アイロン台,霧吹き,こて台,へら台」及び第24類「織物製テーブルナプキン」と類似する商品である。
カ 本件商標の指定商品中、「手斧,刃研磨用具,革砥,大がま用砥石,鋼砥,手動工具,手動利器,砥石ホルダー,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,回転砥石(手持工具),金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,手動式スキーエッジ用研ぎ具」は、引用商標7の指定商品中、第8類「手動利器(「刀剣」を除く。),刀剣,手動工具(「すみつぼ類・皮砥・鋼砥・砥石」を除く。),すみつぼ類,皮砥,鋼砥,砥石」と同一又は類似する商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、引用各商標と類似する商標であって、かつ、その指定商品中「チャコ削り器,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」は、引用各商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、上記指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と請求人商標との類似性の程度
上記2のとおり、本件商標と引用各商標とは類似するものであるから、同様に、本件商標と請求人商標とは類似するものというべきである。
したがって、本件商標と請求人商標との類似性の程度は高いといえる。
(2)請求人商標の周知著名性及び独創性の程度
上記1のとおり、請求人商標は、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
したがって、請求人商標の周知著名性の程度は高いといえる。
また、請求人商標を構成する「JEEP」又は「Jeep」の文字(語)は、上記1(1)アのとおり、第2次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用した四輪駆動小型自動車に付けられた愛称又は商標名であって、他に意味を有する又は認識させる語とは認められないから、独創性の程度は高いといえる。
(3)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性
ア 本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、第8類「チャコ削り器,パレットナイフ,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),護身棒,鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」であるから、請求人商品「四輪駆動小型自動車」とは、関連性の程度は低く、取引者及び需要者は異にするといえる。
イ しかしながら、請求人商標の周知著名性は、上記1(2)のとおり、自動車以外の商品の取引者、需要者の範囲についても及んでいたものというのが相当であって、請求人商標が使用されている請求人の業務に係るキャンプ用の商品には、本件商標の指定商品中の「手斧」(第8類)や、DIY(日曜大工)用品としての「手動工具」(第8類)などが含まれ得る(甲71〜甲73)ことからすれば、請求人の業務に係るこれらの商品と本件商標の指定商品とは、関連性があり、取引者及び需要者を共通にする場合があるといえる。
(4)混同を生ずるおそれ
上記(1)ないし(3)によれば、本件商標と請求人商標との類似性の程度は高く、請求人商標の周知著名性及び独創性の程度は高いといえ、また、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」との関連性の程度は低く、取引者及び需要者を異にするものの、請求人の業務に係るキャンプ用の商品との比較では、関連性があり、取引者及び需要者を共通にする場合があるといえる。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用をした場合、これに接する取引者、需要者が、請求人商標を連想、想起し、当該商品が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「チャコ削り器,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」について、商標法第4条第1項第11号に該当し、仮に同号に該当しないとしても、同項第15号に該当する。
また、本件商標は、上記以外の指定商品について、商標法第4条第1項第15号に該当する。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 引用商標1


別掲2 引用商標2及び引用商標4


別掲3 引用商標3


別掲4 引用商標5、引用商標6及び引用商標7


別掲5 引用商標8


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

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審理終結日 2023-06-12 
結審通知日 2023-06-16 
審決日 2023-07-05 
出願番号 2020008907 
審決分類 T 1 11・ 261- Z (W08)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2020-11-17 
登録番号 6317667 
商標の称呼 ジーパー 
代理人 岸野 幸子 
代理人 江藤 聡明 

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