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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1400830 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-14 
確定日 2023-07-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6611377号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6611377号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6611377号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年7月16日に登録出願、同4年8月26日に登録査定され、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、同年9月7日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、英国を代表するバイクのブランドとして親しまれ、英国の需要者において広く認識されていると主張する、別掲2に掲げる8件の申立人標章(以下、これらの商標をまとめて「申立人標章」という。)である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第8号証(以下「甲○」と表記する。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、1898年に設立された、主にオートバイの製造を行う会社であり、我が国を含む世界各国において、120年以上の長きにわたり、自社の製造・販売する商品について「Norton」の標章を使用している。
現在も使用されている申立人標章の原型が使用され始めたのは1913年からであり、その後、デザインの変更が重ねられて、現在に至っている(甲2)。
また、本件商標の登録出願日よりも前に、申立人標章は世界各国において登録又は出願されている(甲3)。
申立人は、1898年に英国のバーミンガムにて設立され、1902年からオートバイの製造を行っている。1907年に第1回マン島レースを制したことで名をあげ、その後数々のレースにおいて輝かしい成績を残している。このようなレースにおける華々しい活躍も相まって、申立人標章を付したバイクは、ハーレー・ダビッドソンやトライアンプなどのブランドと並び称される歴史あるバイクブランドとして、世界中の需要者に親しまれている。特に申立人が所在する本国イギリスにおいては、国民的なバイクブランドとして親しまれている。申立人標章については、その特集をした刊行物も多い(甲4)。インターネット通販サイトAmazon.co.ukで「norton motorcycle」と検索をすれば、実に2万件以上の商品が検出されるが、その結果から、その歴史や製品詳細を紹介した数多くのムックブック、ファンブックや映像作品、写真集等の数多くの著作物、商品が発行、発売されていることがわかる(甲5)。
また、動画配信サイト「Amazon prime video」で配信される映像作品でも、申立人標章を付したバイクについての特集を組んだ番組が複数配信されているほか(甲6)、「The Motorcycle Diaries」、「My Private Idaho」、「Moonfall」といった数多くの映画作品において、申立人標章を付したバイクが大々的に使用されているなどから(甲7)、申立人標章が、バイク愛好家に限らず幅広い層の需要者に親しまれていることがわかる。
これらの証拠資料に示されるとおり、申立人標章は、特に英国において、遅くとも本件商標の登録出願日において、取引者、需要者の間に広く知られているものとなっており、それは本件商標の設定登録時においても変わらない。
(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について
申立人標章は、英国を代表するバイクのブランドとして120年以上の長きにわたり親しまれており、特に英国の需要者において広く認識されている。
他方、本件商標は、申立人標章のうち、特に肉太のフォントに変更された申立人標章と極めて酷似した外観的な特徴を有する。
本件商標は、少なくともイギリスの需要者において広く認識されている申立人標章と極めて酷似した外観からなる商標であるところ、不正の目的をもって採択されたと認定されるべきものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号の該当性について
申立人標章は120年以上の長きにわたり使用されているものであって、本件商標の登録査定時には、特に英国の需要者において広く認識されており、我が国のバイク愛好家においても親しまれているものであった。また、申立人に関しては、2020年にインドのTVSモーターに買収された旨、及びその後申立人標章が付されたバイクが再生産される旨が、各種メディアに報じられた(甲8)。
本件商標と申立人標章とはその外観が極めて酷似したものであり、両者が偶然に一致したとはいえない。そうとすれば、本件商標権者は、申立人標章の存在を知り、日本における事業が展開されることを知った上で、我が国において申立人標章についての商標登録がないことを奇貨とし、不正な目的をもって剽窃的に出願したものと優に推認できる。
このような行為に係る本件商標は、商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人標章の著名性について
申立人の提出証拠及び主張によれば、「ノートン」は、1898年に設立された、英国の老舗二輪車ブランド(甲8)で、申立人標章を歴代のロゴとして使用(甲2)しており、その活動を紹介する英語の書籍や映像作品(甲4、甲6)があるとしても、英国及び我が国における当該ブランドに係る商品の販売実績や広告宣伝実績の程度や規模は明らかではない。
他方、同ブランドは、2020年頃にインド企業に事業買収されてはいるものの、その前に破産申請したとの情報が報道されていることを鑑みると、近年の事業展開は必ずしも順調ではなかったことがうかがい知れる(甲8)
そうすると、申立人標章は、本件商標の登録出願時(令和3年(2021年)7月16日)において、外国(英国)又は我が国の需要者の間において、広く認識されるに至っていたと認めることはできない。
イ 本件商標と申立人標章の比較
本件商標は、別掲1のとおり、「Norton」の文字を、一部を図案化(「N」の文字の、左上端部の先に突起を、右上端部から語尾にかけて包み込むような曲線を配置する。)してなる。
他方、申立人標章は、別掲2のとおり、いずれも「Norton」の文字を一部図案化(「N」の文字の、左上端部の先に突起を、右上端部から語尾にかけて包み込むような曲線を配置する。)した態様で表してなるものである。
そうすると、本件商標は、申立人標章とは構成文字及びおおむねの構成態様を共通にし、特に申立人標章4から申立人標章7とは、構成態様の細部を含めて構成全体がおおむね一致するから、同一又は類似する商標であると認められる。
不正の目的について
申立人は、本件商標は、英国の需要者において広く認識されている申立人標章と極めて酷似した外観からなる商標であるから、不正の目的をもって採択したと認定されるべきである旨を主張する。
しかしながら、本件商標と申立人標章の一部(申立人標章4から申立人標章7)は、上記イのとおり、構成文字に加えて、構成態様の細部を含めて構成全体がおおむね一致するから、本件商標が申立人標章とは全く無縁に偶然採択されたとは考えにくいとしても、申立人提出の証拠からは、本件商標権者が、本件商標の商標権を持ち出して申立人との交渉を優位に進めようとしたり、金銭的な対価を得ようとしたなど、具体的な行為の存在は確認できない。
そうすると、本件商標の登録出願の目的及び経緯は必ずしも明らかではないから、本件商標の登録出願及び登録が、不正の利益を得る目的又は他人に損害を与える目的など不正の目的をもってなされたとまでは認められない。
エ 以上のとおり、本件商標と申立人標章が同一又は類似する商標であるとしても、申立人標章は、外国(英国)又は我が国の需要者の間において、広く認識されている商標とはいえず、本件商標は不正の目的をもって使用するものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項19号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、本件商標と申立人標章(特に申立人標章4)とはその外観が極めて酷似したものであり、両者が偶然に一致したとはいえないから、本件商標権者は、申立人標章の存在を知り、日本において事業が展開されることを知った上で、我が国において申立人標章の商標登録がないことを奇貨として、不正な目的をもって剽窃的に出願したものである旨を主張する。
しかしながら、上記(1)ウのとおり、本件商標と申立人標章の一部(申立人標章4から申立人標章7)は、構成文字に加えて、構成態様の細部を含めて構成全体がおおむね一致するから、本件商標が申立人標章とは全く無縁に偶然採択されたとは考えにくいとしても、申立人提出の証拠からは、本件商標権者が、本件商標の商標権を持ち出して申立人との交渉を優位に進めようとしたり、金銭的な対価を得ようとしたなど、具体的な行為の存在は確認できない。
そうすると、本件商標の登録出願の目的及び経緯は必ずしも明らかではないから、本件商標の登録出願及び登録が、不正の利益を得る目的又は他人に損害を与える目的など不正の目的をもってなされたとは認められない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲
別掲1(本件商標)



別掲2(申立人標章)



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異議決定日 2023-06-27 
出願番号 2021089671 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
阿曾 裕樹
登録日 2022-09-07 
登録番号 6611377 
権利者 有限会社ブルーリボン
商標の称呼 ノートン 
代理人 外川 奈美 
代理人 保田 元希 
代理人 遠山 良樹 
代理人 青木 篤 

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