• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効  審決却下 W34
管理番号 1400745 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-06-13 
確定日 2023-06-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第6385707号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6385707号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年10月26日に登録出願、第34類「たばこ」を指定商品として、同3年3月12日に登録査定、同年5月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は以下の1ないし4のとおりである。
1 インド商標登録第594144号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、1993年4月7日に登録出願、第34類「CHEWING TOBACCO,ZARDA,ZARDA GUTKA AND KHAINI ALL INCLUDED IN CLASS 34.」を指定商品とするものであり、引用商標1の権利者は「KUBER KHAINI PVT,LTD.」である。
2 インド商標登録第630531号商標(以下「引用商標2」という。)は、「KUBER」の欧文字を横書きしてなり、1994年6月9日に登録出願、第34類「CHEWING TOBACCO,GUTKA AND KHAINI INCLUDED IN CLASS 34.」を指定商品とするものであり、引用商標2の権利者は「KUBER TOBACCO PRODUCTS PVT,LTD.」である。
3 インド商標登録第968311号商標(以下「引用商標3」という。)は、「KUBER」の欧文字を横書きしてなり、2000年11月6日に登録出願、第34類「GUTKHA,KHAINI,ZARDA,ZARADA MIXED PAN MASALA,CHEWING TOBACCO,TOBACCO(RAW & OR MANUFACTURED) IN CLASS 34 GUTKHA IS NOT FOR SALE.」を指定商品とするものであり、引用商標3の権利者は「KUBER KHAINI PVT,LTD.」である。
4 インド商標登録第1102012号商標(以下「引用商標4」という。)は、「KUBER」の欧文字を横書きしてなり、2002年5月3日に登録出願、第34類「GUTKHA,KHAINI,ZARDA,CHEWING TOBACCO,AND GOODS INCLUDED IN CLASS 34.」を指定商品とするものであり、引用商標4の権利者は「KUBER KHAINI PVT,LTD.」である。
なお、以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は「引用商標」という。
また、引用商標1、引用商標3及び引用商標4の権利者と引用商標2の権利者をまとめて、以下、「引用商標権者」という。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を、審判請求書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように、簡略して表記する場合がある。
1 無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 具体的理由
(1)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似することについて
本件商標は甲第1号証に示すとおりのものであり、引用商標1(甲2)とは図形内の人物が外観上類似し、また、この図形の表す人物であるKUBERはヒンドゥー文化における富の神であり、観念上は同一で、全体として類似するものである。
本件商標と引用商標2ないし引用商標4(甲3〜甲5)とは、文字列が外観上類似し、また、KUBERはヒンドゥー文化における富の神であり、観念上は同一で、全体として類似するものである。
(2)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であることについて
甲第2号証ないし甲第5号証には、引用商標が本件商標の登録出願前にインドで使用されていることが記載されており、使用により周知となっているものと考えられる。
そして、「KUBER KHAINI PVT,LTD.」のホームページ(甲6)には、1990年から、KUBERが販売されている旨が記載されている。
さらに、甲第7号証に示すように、第三者である報道機関により、過去29年間営業を行っており、現在、会社は活発に運営されている旨が記載されている。
(3)不正の目的について
引用商標権者が本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)に商標権の取得を許諾し、独占販売を認める特段の事情は見当たらないので、我が国に本件商標を登録出願した行為は、引用商標権者の許可を得ていないものと推認される。
その上で、甲第8号証に示すように、被請求人(審決注:「合同会社DELHI MAHAL GROUP」の誤記と認める。)は、本件商標に係る商品の販売中止、商品回収などを要求している。
そして、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、被請求人(審決注:合同会社DELHI MAHAL GROUP」の誤記と認める。)ではないが、被請求人は甲第8号証において、自社(審決注:「合同会社DELHI MAHAL GROUP」の誤記と認める。)が、本件商標権者と偽って上記の要求を行っている。
これは、従来、本件商標に係る商品の販売を行ってきた請求人に成り代わって不当な利益を得る目的の行為であり、また、請求人に損害を与える目的の行為である。
(4)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするものに該当する。
(5)国際信義違反について
販売中止等の要求の対象となっている商品は「噛みタバコ」である。
現在の我が国のタバコの需要者にとっては、なじみの薄いタバコであるが、愛好者は多くの国に存在しており、日本国内の需要もほとんどは国内在住の外国人によるものである。
そのような商品の流通を、引用商標権者が我が国において商標権を取得していないことを奇貨として、本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を取得し、従来の流通ルートを妨害して不正の利益を得る目的の行為を行うことは、国際信義に反し我が国全体のイメージを損なう可能性があり、著しく公序良俗に反するものである。
(6)商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。
(7)利害関係について
請求人は、通知書(甲8)における被通知者の経営者であり、本件商標に係る商品の販売中止等を要求されているので、利害関係人である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、令和4年8月23日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)及び同5年2月2日付け審尋(以下「審尋」という。)に対する同年3月8日付け意見書(以下「意見書」という。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 答弁書による主張
(1)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標及び引用商標と被請求人との関係について
引用商標1、引用商標3及び引用商標4の権利者である「KUBER KHAINI PVT,LTD.」、引用商標2の権利者である「KUBER TOBACCO PRODUCTS PVT,LTD.」は、KUBERブランドの噛みタバコを国際的な市場において販売するライセンスを「Vijaysheree Food Products Pvt Ltd」(以下「Vijaysheree社」という。)に与えている。
そして、被請求人は、「Vijaysheree社」から日本国内においてKuberブランド及びそのロゴを商標登録する権利を付与されている(乙4)。
被請求人は、かかる契約に基づき日本国内において本件商標について登録出願を行い、商標権を獲得した。
不正の目的について
請求人は、「引用商標権者が被請求人に商標権の取得を許諾し、独占販売を認める特段の事情は見当たらないので、我が国に本件商標を登録出願した行為は、引用商標権者の許可を得ていないものと推認される」と主張している。
しかしながら、被請求人は引用商標権者からライセンスを得ている「Vijaysheree社」から、本件商標を含むKUBERブランドの商標権を日本国内で取得することを認める契約を結んでおり、それに基づき権利取得を行ったものであるから、不正の目的に該当しないものであることは明らかである。
ウ 引用商標の周知性及び類否について
請求人は、引用商標について使用主義を採用しているインドにおいて登録されているから周知であると推測されると主張している。
しかしながら、登録出願時に使用をしていることが周知であるとの根拠とはなり得ず、周知性を立証していない。
なお、引用商標は、被請求人が商標権取得を許可されているKUBERブランドの商標であるため、ある程度近似してはいるものの、我が国商標法における類否基準においては、非類似であると考える。
エ まとめ
被請求人は、引用商標を含むKUBERブランドのロゴ等について、日本国内で商標権を取得することを許可されている。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第19号に規定される「不正の目的」の要件を満たすものではないことから、同項第19号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
被請求人は、引用商標を含むKUBERブランドのロゴ等について、日本国内で商標権を取得することを許可されている。
したがって、国際信義に反するものではないことから、公序良俗に反しないことは明らかである。
(3)利害関係人
請求人は、通知書(甲8)における被通知者の経営者であり、本件商標に係る商品の販売中止等を要求されているので、利害関係人である旨主張している。
しかしながら、当該通告書の送付先(相手先)が記載された頁が添付されておらず、文面にも「貴社」としか記載されていない。
このため、請求人が当該通告書の送付先であるかどうか不明である。
以上より、請求人は、利害関係人とは認められない。
2 意見書による主張
被請求人と「合同会社DELHI MAHAL GROUP」との関係において、住民票(乙5)と履歴事項全部証明書(乙6)を提出する。
住民票(乙5)及び履歴事項全部証明書(乙6)により、被請求人が、「合同会社DELHI MAHAL GROUP」の代表社員の妻であることが明らかである。

第5 当審の判断
1 本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、以下、検討する。
(1)請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについて
ア 請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについては、請求人が、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について、使用していた又は使用している者と認めることができるか否か、当該商品について、製造、販売する権利を有しているか否か、当該商品を製造、販売することについての計画を有しているか否か、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるか否か、本件商標と同一又は類似である商標を当該に将来使用する可能性を有する者であるか否か、本件商標の専用使用権者、通常使用権者であるか否か及び本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者若しくは警告を受けた者であるか否かについて判断し、これらのうち1つでも該当する場合は、請求人は本件審判事件の利害関係人と判断すべきである。
イ 請求人は、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて、何ら証明していない。
そうすると、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認められない。
ウ 請求人は、合同会社DELHI MAHAL GROUP」が「HIRA HALAL FOODS社」に送付した通告書(甲8)を提出し、請求人は「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であるから利害関係人である旨主張しているが、請求人が「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であると判断し得る証拠は提出していないことから、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められない。
エ 請求人は、同者と引用商標1、引用商標3及び引用商標4の権利者である「KUBER KHAINI PVT,LTD.」及び引用商標2の権利者である「KUBER TOBACCO PRODUCTS PVT,LTD.」との関係性についても何ら証明していない。
オ 本件商標の商標登録原簿を確認しても、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められない。
また、請求人は、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。
カ 上記イのとおり、請求人は、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて何ら証明していないことから、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認めらない。
また、上記ウのとおり、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められず、上記エのとおり、請求人と引用商標権者との関係も明確ではない。
さらに、上記オのとおり、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められず、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。
そうすると、請求人は、本件審判事件における利害関係人とは認められないと判断するのが相当である。
(2)当審においてした審尋
審判長は、審尋において、請求人が提出した全証拠を確認するも、通知書(甲8)を受領した者が請求人であること及び引用商標権者と請求人との関係は明らかではないことから、請求人が利害関係人であることに疑義がある旨通知したが、請求人は、これに対し何ら回答していない。
(3)まとめ
以上からすると、請求人は、本件商標の登録を無効とすることにつき、何らかの利益を有する者であるとは認められない以上、請求人が本件審判を請求する法律上正当な利益を有する者と認めることはできない。
2 結論
以上のとおり、本件審判の請求は、審判請求の利益を有しない者の請求に係る不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項の規定により準用される特許法第135条の規定によって、却下されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(本件商標:色彩は原本を参照されたい。)


別掲2(引用商標1)






(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2023-03-27 
結審通知日 2023-04-05 
審決日 2023-05-08 
出願番号 2020137655 
審決分類 T 1 11・ 02- X (W34)
最終処分 11   審決却下
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 豊田 純一
杉本 克治
登録日 2021-05-07 
登録番号 6385707 
商標の称呼 クベール、クバー 
代理人 大澤 豊 
代理人 大沼 加寿子 
代理人 砂川 惠一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ