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審決分類 |
審判 全部無効 審決却下 W34 |
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管理番号 | 1400743 |
総通号数 | 20 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-08-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-05-13 |
確定日 | 2023-06-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6387054号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6387054号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年10月26日に登録出願、第34類「たばこ」を指定商品として、同3年3月12日に登録査定、同年5月11日に設定登録されたものである。 第2 請求人が引用する商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するとして引用するインド商標登録出願第2531416号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2013年5月15日に登録出願、第34類「TOBACCO AND CHEWING TOBACCO INCLUDED IN CLASS 34」を指定商品とするものであり、引用商標の権利者(以下「引用商標権者」という。)は、「DILIP KUMAR AGARWAL」である。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を、審判請求書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように、簡略して表記する場合がある。 1 無効理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 具体的理由 (1)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似することについて 本件商標は、引用商標と同一である。 (2)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であることについて 甲第2号証には、引用商標が本件商標の登録出願前にインドで登録されていることが記載されており、本件商標の登録出願前に使用されていた旨も記載されており、使用により周知となっている。 (3)不正の目的について 引用商標権者が本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)に商標権の取得を許諾し、独占販売を認める特段の事情は見当たらないので、我が国に本件商標を登録出願した行為は、引用商標権者の許可を得ていないものと推認される。 その上で、甲第3号証に示すように、本件商標権者は、本件商標に係る商品の販売中止、商品回収などを回収などを「HIRA HALAL FOODS」(以下「HIRA HALAL FOODS社」という。)に対して要求している。 これは、従来、本件商標に係る商品の販売を行ってきた請求人に成り代わって不当な利益を得る目的の行為であり、また、請求人に損害を与える目的の行為である。 (4)商標法第4条第1項第19号の該当性について 本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするものに該当する。 (5)国際信義違反について 販売中止等の要求の対象となっている商品は「噛みタバコ」である。 現在の我が国のタバコの需要者にとっては、なじみの薄いタバコであるが、愛好者は多くの国に存在しており、日本国内の需要もほとんどは国内在住の外国人によるものである。 そのような商品の流通を、引用商標権者が我が国において商標権を取得していないことを奇貨として、本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を取得し、従来の流通ルートを妨害して不正の利益を得る目的の行為を行うことは、国際信義に反し我が国全体のイメージを損なう可能性があり、著しく公序良俗に反するものである。 (6)商標法第4条第1項第7号の該当性について 本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。 (7)利害関係について 請求人は、通知書(甲3)における被通知者である「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であり、本件商標に係る商品の販売中止等を要求されているので、請求人は、本件審判事件の利害関係人である。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、令和4年8月3日付け審判事件答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第19号について (1)引用商標の周知性について 請求人は、インドで登録されている引用商標が、商標法第4条第1項第19号に規定の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」であると主張している。 ところで、引用商標が商標法第4条第1項第19号に規定の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するためには、我が国又は外国においていわゆる周知になっていることが要件とされる。 請求人はこの点について、「引用商標が本件商標の登録出願前にインドで登録されていることが記載されており、本件商標の登録出願前に使用されていた旨も記載されており、使用により周知となっている。」と主張している。 しかしながら、甲第2号証によって証明される事実は、引用商標は2013年1月17日にインド国内において使用が開始され、引用商標の登録出願は同年5月15日にされ、現在登録されていることのみである。 そもそも、インド商標法では先願主義と使用主義が並存しているため、使用している場合は、願書に使用開始日を記載する。 しかし、その使用がどの程度の使用であるかということまでは登録要件として要求されていない。 したがって、甲第2号証からは、2013年1月17日から使用が開始されていたという事実のみがわかるのであって、現在、引用商標がインド国内で周知であるということを証明することにはならない。 加えて、当該証拠からは、インド国内でどの程度使用をされているのかについては一切不明であり、引用商標がインド国内において周知な商標であることは、一切証明されておらず、インド国内において引用商標が使用されているか否かも不明である。 これより、引用商標は、インド国内において周知であるとはいえない。 したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれの時点においても、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」には該当していない。 (2)不正目的について 本件商標権者は、ネパールでタバコ及び噛みタバコ等を製造販売している「Shreeram Tobacco Udyog Pvt.Ltd.」(以下「Shreeram社」という。)から、日本国内におけるZITブランドの公式な総代理店とすること(以下「ア」という。)、ZITブランド及びそのロゴについて我が国で商標登録を受けること(以下「イ」という。)及び日本国内における違法商品についての法的措置を単独で行うこと(以下「ウ」という。)の許諾を受けている(乙2)。 この契約書は、2020年10月20日締結のものであり、現在も有効である。 本件商標権者は、この許諾契約の「イ」に基づいて国内で本件商標権を取得し、当該許諾契約の「ウ」に基づいて本件商標を侵害する者に対し通告を行ったのである。 また、この許諾契約は現在も継続中であり、「ア」に基づいて本件商標権者は本件商標をパッケージに付した噛みたばこ(乙3)を輸入・販売している。 つまり、本件商標と同じ商標を付した噛みタバコが、インド及びネパールでそれぞれ別の会社が製造販売しているという事実があり、本件商標権者はネパールの会社から商品を購入し、日本国内で販売をしてきたのである。 このため、本件商標権者は、ネパールの会社と契約を結んだ上で、本件商標権を取得したという経緯があり、請求人が主張する引用商標とは何ら関係なく、本件商標権者は本件商標権を取得したのである。 そして、かかる許諾契約の「ウ」に基づき本件商標権を取得した上で、HIRA HARAL FOODS社に対し、本件商標を付した「タバコ」の販売を中止するように求めている。 以上より、本件商標権者は本件商標の登録出願日以前のShreeram社との許諾契約に基づいて、本件商標権を取得し、商標権侵害の通告を行ったのであるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、不正の目的は存在しない。 (3)まとめ 引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、商標法第4条第1項第19号に規定される「外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当せず、また、被請求人が本件商標権を取得するにあたっては不正の目的も存在しない。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号について (1)請求人は、引用商標権者が我が国において商標権を取得していないことを奇貨として、本件商標の商標権を取得した旨主張しているが、本件商標権者は、引用商標の登録出願日である2013年5月15日よりも約1年前、そして引用商標の使用開始日である同年1月17日よりも約8か月前の2012年5月5日にインドのニューデリーのデザイン会社との間で本件商標のロゴについての契約をしており(乙4)、同年5月12日には、当該デザイン会社からそのロゴを納品されている(乙5)のであり、公序良俗に反するものでないことは明らかであり、乙第4号証の契約書にはサインがないが、契約文に2012年5月5日に本契約が発効し、その場合、同年5月12日は本件商標権者に本契約に基づくサービスが提供されるとの記載があり、実際に、同年5月12日に本件商標権者にロゴが納品されている(乙5)。 (2)請求人は、本件商標権者による本件商標を付した商品の販売中止等の要求の対象となっている商品は「噛みタバコ」であり、現在の我が国のタバコの需要者にとってはなじみの薄いタバコではあるが、愛好者は多くの国に存在しており、日本国内の需要もほとんどは国内在住の外国人によるものである旨主張している。 しかしながら、かかる主張を裏付ける証拠は一切提出されておらず、何ら根拠のない主張である。 (3)請求人は、「従来の流通ルートを妨害して」と主張するが、日本国内のタバコ愛好者にとっては入手可能であるか否かが問題であって、流通ルートが異なることは関係はなく、「従来の流通ルート」が変更となって困るのは、当該流通ルートに関わっていた輸入業者、販売業者のみである。 そして、本件商標に関連する「ZIT」ブランドを付した「噛みタバコ」を製造・販売する会社は、インド及びネパールの両方に存在しており、市場には両会社の「噛みタバコ」が競合して存在しており、本件商標権者は、ネパールの会社であるShreeram社から許諾を受けて、我が国の市場においてZITブランドを販売しているのであって(乙2)、公序良俗に反するものではない。 そもそも、かかる状況は、市場における競争の問題であって、国際信義の問題ではないことから、公序良俗とは一切関係がない。 (4)以上より、本件商標は、その登録査定時において、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 利害関係人 請求人は、本件商標権者が「HIRA HALAL FOODS社」に送付した通告書(甲3)を提出し、請求人が同社の経営者であるから利害関係人である旨主張している。 しかしながら、当該通告書においては経営者の名前は記載されておらず、請求人が「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であることを証明する書面も提出されていない。 また、請求人と引用商標権者との関係も不明である。 以上より、請求人は、本件審判事件における利害関係人とは認められない。 第5 当審の判断 1 本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、以下、検討する。 (1)請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについて ア 請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについては、請求人が、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について、使用していた又は使用している者と認めることができるか否か、当該商品について、製造、販売する権利を有しているか否か、当該商品を製造、販売することについての計画を有しているか否か、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるか否か、本件商標と同一又は類似である商標を当該に将来使用する可能性を有する者であるか否か、本件商標の専用使用権者、通常使用権者であるか否か及び本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者若しくは警告を受けた者であるか否かについて判断し、これらのうち1つでも該当する場合は、請求人は本件審判事件の利害関係人と判断すべきである。 イ 請求人は、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて、何ら証明していない。 そうすると、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認められない。 ウ 請求人は、本件商標権者が「HIRA HALAL FOODS社」に送付した通告書(甲3)を提出し、請求人は同社の経営者であるから利害関係人である旨主張しているが、請求人が同社の経営者であると判断し得る証拠は提出していないことから、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められない。 エ 請求人は、同者と引用商標権者である「DILIP KUMAR AGARWAL」との関係性についても何ら証明していない。 オ 本件商標の商標登録原簿を確認しても、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められない。 また、請求人は、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。 カ 上記イのとおり、請求人は、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて何ら証明していないことから、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認めらない。 また、上記ウのとおり、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められず、上記エのとおり、請求人と引用商標権者との関係も明確ではない。 さらに、上記オのとおり、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められず、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。 そうすると、請求人は、本件審判事件における利害関係人とは認められないと判断するのが相当である。 (2)当審においてした審尋 審判長は、令和5年1月27日付け審尋において、請求人が提出した全証拠を確認するも、請求人が「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であることが確認することができないこと及び引用商標権者と請求人との関係は明らかではないことから、請求人が本件審判事件の利害関係人であることに疑義がある旨通知したが、請求人は、これに対し何ら回答していない。 (3)まとめ 以上からすると、請求人は、本件商標の登録を無効とすることにつき、何らかの利益を有する者であるとは認められない以上、請求人が本件審判を請求する法律上正当な利益を有する者と認めることはできない。 2 結論 以上のとおり、本件審判の請求は、審判請求の利益を有しない者の請求に係る不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項の規定により準用される特許法第135条の規定によって、却下されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標:色彩は原本を参照されたい。) 別掲2(引用商標:色彩は原本を参照されたい。) (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2023-03-23 |
結審通知日 | 2023-03-28 |
審決日 | 2023-05-08 |
出願番号 | 2020137662 |
審決分類 |
T
1
11・
02-
X
(W34)
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最終処分 | 11 審決却下 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
豊田 純一 杉本 克治 |
登録日 | 2021-05-11 |
登録番号 | 6387054 |
商標の称呼 | ジット、ゼットアイテイ、ジットカイニ、カイニ |
代理人 | 砂川 惠一 |
代理人 | 大沼 加寿子 |
代理人 | 大澤 豊 |