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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W2930 |
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管理番号 | 1400739 |
総通号数 | 20 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-08-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-01-26 |
確定日 | 2023-05-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5917935号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5917935号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5917935号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年3月3日に登録出願、第29類「麩を使用した即席味噌汁のもと,麩を使用した即席すまし汁のもと,麩を使用した即席豚汁,麩を使用した即席みそ汁,麩を使用した即席すまし汁,麩を使用したカレー・シチュー又はスープのもと,麩を使用した即席カレー,麩を使用した即席シチュー,麩を使用した即席スープ」及び第30類「麩を使用した菓子及びパン,麩を使用した即席菓子のもと,ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」を指定商品として、同年12月28日に登録査定、同29年1月27日に設定登録されたものである。 そして、その後、本件商標の指定商品中、第30類「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」についての無効審判が請求され、当該指定商品については無効とする審決が令和元年11月25日にされ、その確定登録が同2年1月31日にされているものである。 第2 引用商標 1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、次のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第1149884号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 別掲2のとおり 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,即席菓子のもと,甘酒,みつ豆,ゆであずき」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和33年5月16日 設定登録日 昭和50年9月1日 書換登録日 平成19年7月18日 (2)登録第2312832号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 宝 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和58年3月3日 設定登録日 平成3年6月28日 書換登録日 平成16年5月26日 (3)登録第2312833号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様 タカラ 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和58年3月3日 設定登録日 平成3年6月28日 書換登録日 平成16年5月26日 (4)登録第2312834号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様 TAKARA 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和58年3月3日 設定登録日 平成3年6月28日 書換登録日 平成16年5月26日 (5)登録第2430759号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様 TAKARA 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和50年2月17日 設定登録日 平成4年6月30日 書換登録日 平成18年9月20日 (6)登録第2430761号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様 宝 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和50年2月17日 設定登録日 平成4年6月30日 書換登録日 平成18年9月6日 (7)登録第2491034号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の態様 タカラ 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第29類ないし第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 昭和57年4月22日 設定登録日 平成4年12月25日 書換登録日 平成17年2月2日 (8)登録第4066233号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の態様 TaKaRa 指定商品:第30類「サンドイッチ,ピザ,ミートパイ,菓子及びパン,即席菓子のもと」のほか、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 平成5年6月29日 設定登録日 平成9年10月9日 (9)登録第4109402号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の態様 TaKaRa 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」のほか、第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 平成5年6月29日 設定登録日 平成10年2月6日 (10)登録第5790570号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の態様 宝 指定商品:第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」のほか、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 平成27年5月14日 設定登録日 平成27年9月4日 (11)登録第5896398号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の態様 別掲3のとおり 指定商品:第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」のほか、第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 平成27年12月17日 設定登録日 平成28年11月11日 (12)登録第5896399号商標(以下「引用商標12」という。) 商標の態様 別掲3のとおり 指定商品:第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」のほか、第30に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日 平成27年12月17日 設定登録日 平成28年11月11日 2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標(以下、引用商標13ないし20をまとめていうときは「「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標」という場合がある。)は、次のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第57800号商標(以下「引用商標13」という。) 商標の態様 別掲4のとおり 指定商品:第5類「薬用酒」、第32類「ビール」、第33類「日本酒(「清酒、合成清酒及びみりん」を除く。),洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 登録出願日 大正元年12月30日 設定登録日 大正2年3月5日 書換登録日 平成16年7月21日 (2)登録第85292号商標(以下「引用商標14」という。) 商標の態様 別掲5のとおり 指定商品:第33類「みりん」 登録出願日 大正6年2月25日 設定登録日 大正6年4月27日 書換登録日 平成20年9月24日 (3)登録第462127号商標(以下「引用商標15」という。) 商標の態様 タカラ(縦書き) 指定商品:第33類「洋酒,果実酒,中国酒,虎骨酒,にんじんきなてつぶどう酒」 登録出願日 昭和28年9月15日 設定登録日 昭和30年3月10日 書換登録日 平成18年8月30日 (4)登録第980690号商標(以下「引用商標16」という。) 商標の態様 タカラ 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 登録出願日 昭和38年9月4日 設定登録日 昭和47年9月18日 書換登録日 平成16年6月2日 (5)登録第1610421号商標(以下「引用商標17」という。) 商標の態様 宝 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 登録出願日 昭和50年12月3日 設定登録日 昭和58年8月30日 書換登録日 平成15年12月17日 (6)登録第3129606号商標(以下「引用商標18」という。) 商標の態様 TaKaRa 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 登録出願日 平成5年6月29日 設定登録日 平成8年3月29日 (7)登録第4348726号商標(以下「引用商標19」という。) 商標の態様 タカラ 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 登録出願日 平成10年11月18日 設定登録日 平成12年1月7日 (8)登録第5896400号商標(以下「引用商標20」という。) 商標の態様 別掲3のとおり 指定商品:第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,にごり酒,濁酒,柳陰,発泡性清酒,発泡性焼酎,発泡性濁酒,マッコリ,ソジュ,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」 登録出願日 平成27年12月17日 設定登録日 平成28年11月11日 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第60号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標の比較 ア 本件商標は、「宝」、「の」、「麩」の三語よりなる結合商標であって、その下に小さく表された「TAKARA」と「FU」の文字は、「宝」と「麩」の文字の読みをそれぞれ英文字で表記したものと解されるところ、当該文字は、全体として既成語ではないから、その結合の程度は強いとはいえず、構成全体を常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の事情も存しない。 当該構成中、「麩」の文字は、「小麦粉から取り出したグルテン(麩素)を主材料とする食品。生魅と焼魅とがある。」(広辞苑第七版)の意味で日常良く親しまれており、「FU」の文字は、「麩」の文字の読みの英文字表記と解されるものであるから、これらの文字は、本件商標の指定商品との関係においては、商品が「麩」を使用したものであること、すなわち商品の原材料・品質の表示にすぎないことは明らかである。 そして、「の」の文字は、所有や所属、作者・行為者を表す格助詞であって、それ自体、独立して自他商品識別標識たり得るものではない。 そうとすれば、「の麩(FU)」の文字部分は、商品の原材料・品質を表したものにすぎず、この部分からは、出所識別標識としての称呼・観念は生じないといえる。 これに対し、「宝」の文字及び、その読みの英文字表記の「TAKARA」の文字は、商品の品質とは全く関係のない語であって、それ自体、強い識別力を有することに加え、後述のとおり、「宝」「TAKARA」商標は、請求人及び請求人のグループ会社のハウスマーク・商標として周知・著名なものである。 してみれば、本件商標は、強い識別力を有する「宝」「TAKARA」の文字に、識別力を有しない「の麩」「FU」の文字を結合してなるものであって、当該構成においては、記憶に残りやすい語頭部に位置する「宝」「TAKARA」の文字部分が、商品の出所識別標識として圧倒的に強く支配的な印象を与えるといえ、それ以外の部分は当該指定商品との関係においては商品の原材料・品質を表したにすぎず、この部分からは出所識別標識としての称呼・観念は生じないから、判決(最高裁平成19年(行ヒ)第223号)及び特許庁審査基準による結合商標の類否判断の考え方に照らしてみても、本件商標は、「宝」「TAKARA」の部分を要部抽出した分離観察も妥当といえる。 イ 引用商標1ないし12は、それぞれ「寶」「宝」「タカラ」「TAKARA」「TaKaRa」の構成文字に相応して、「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じることは明らかである。 なお、引用商標1、引用商標11、引用商標12を構成する「寶」の文字は「宝」の旧字体であって同じ文字として広く通用している「寶」を篆書体で表したものである。 ウ してみれば、本件商標は、引用商標1ないし12と、「タカラ(宝)」の称呼及び観念と「宝」「TAKARA」の構成文字を共通にする、出所混同のおそれのある類似の商標であり、かつ、その指定商品も抵触する。 (2)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標の周知・著名性について ア 請求人は、大正14年(1925年)9月に「寶酒造株式会社」として設立され、以来、我が国屈指の酒類及び調味料・飲料・食料品、並びに醗酵・醸造技術に裏付けられたバイオ関連製品の総合メーカーとして成長を遂げ、平成14年(2002年)4月1日付で、持株会社「宝ホールディングス株式会社」へと移行したものであって、「宝グループ」として、子会社として新たに設立された国内の酒類・調味料事業を担う「宝酒造株式会社」や、海外で日本食材卸事業や酒類事業を展開する「宝酒造インターナショナル株式会社」、バイオ事業を担う「タカラバイオ株式会社」などを傘下に置き、宝グループ全体の経営を統括するものである。 イ これらの宝グループの製品にはいずれも、引用商標13ないし20に代表される、「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」の文字からなる商標、あるいはこれらを要部とする商標が、ハウスマーク及びその業務に係る商品の商標として永年にわたって使用されており、これらの商標は、本件商標の登録出願前には既に、取引者・需要者において広く認識されるに至っていたものである(甲39〜甲42)。 ウ 判決(甲39〜甲42)においては、焼酎・みりんについて、請求人の「寶(宝)」の文字からなる商標の著名性が認められているとともに、食料品及び加味品は、酒類とともに酒類食料品店において販売されていることが多いという顕著な事実があるとして、加工食品や生鮮食料品、乾物類、すし、弁当等の所属する、旧々(大正10年法)第45類「他類に属せざる食料品及加味品」(又は「他類に属しない食料品及び加味品」)に使用する場合は、商品の出所について、誤認・混同を生ずるおそれがある旨、認定されている。 エ また、片仮名の「タカラ」の文字からなる商標も、前記「寶(宝)」の文字からなる商標と並んで、みりん、焼酎、料理用清酒、チューハイ等のソフトアルコール飲料等について永年使用され、著名な商標となっている。 オ 英文字の「TaKaRa」からなる商標は、チューハイ等のソフトアルコール飲料や、タカラバイオ株式会社の業務に係る大多数の商品について、また、八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した図形とともに、宝酒造インターナショナル株式会社、タカラバイオ株式会社等のハウスマークとして、また宝ホールディングス株式会社のハウスマークとしても使用されてきており、日本国内外に広く知られている。 カ 八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した構成よりなる商標は、宝ホールディングス株式会社及び宝グループ各社のハウスマークとして、また、みりんや焼酎・チューハイ等の商品について、大々的に使用されている。 キ 上記の「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、「日本国周知・著名商標検索」データ(甲37、甲38)や、AIPPI・JAPAN発行「日本有名商標集」(甲43)にも収録されており、これらの商標が周知・著名なものであることは、顕著な事実として確立している。 ク 以上のとおり、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、請求人及びその子会社の宝酒造株式会社をはじめとする宝グループ会社のハウスマークとして、また、その業務に係る商品の商標として永年使用されてきており、殊に、酒類、みりん、料理用清酒等の酒類調味料等の分野において、本件商標の登録出願前には既に、全国的に周知・著名なものとなっていたものである。 (2)本件商標と「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標の混同のおそれについて ア 類似性の程度 本件商標は、強い識別力を有する「宝」「TAKARA」の文字に、識別力を有しない「の麩」「FU」の文字を結合してなるものであって、「宝」「TAKARA」の部分を要部抽出した分離観察が妥当であるから、本件商標と「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標とは、類似性の高いものである。 イ 周知度 前記のとおり、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、殊に、酒類やみりん・料理用清酒等の酒類調味料等の分野において、本件商標の登録出願前には、全国的に周知・著名なものとなっていたものといえる。 そして、請求人は、加工業務用調味料やアルコールの事業分野も展開しており、商品は種々の食品分野において幅広く採用されており、酒類以外の飲食料品全般の取引業界の取引者・需要者においてもその知名度は高いといえる。 さらに、「寶」の文字からなる商標は、「異議決定/審決/判決に基づく」周知・著名商標、「タカラ」の文字からなる商標は、「防護標章として登録されている」周知・著名商標として、それぞれ「特許情報プラットフォーム」における「日本国周知・著名商標検索」データに収録されており(甲37、甲38)、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、AIPPI・JAPAN発行「日本有名商標集」に掲載されている(甲43)ものであって、これらの商標が周知・著名なものとして取り扱われるべきであることは明らかである。 ウ ハウスマークであるか 前記のとおり、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、請求人及びその子会社などの宝酒造株式会社を始めとする宝グループ会社のハウスマークであって、その業務に係るほとんどの商品について使用されるものである。 また、請求人グループを称する際には、「宝グループ」と称し、請求人を表記する際には「宝HD」「宝HLD」等と表されることも多く、これらの表記からは、請求人及び請求人グループの出所表示として、「宝」の文字が独立して把握されることも少なくないといえる。 エ 多角経営の可能性 殊に食品分野においては、企業の経営多角化により同一事業者によって多岐にわたる食品分野に広く及んで業務を行ってきた実績があり、現在でも加工・業務用商品や海外日本食卸事業に事業領域を拡大して地域的にも世界にネットワークを有し、食に関わる事業を広く展開している(甲22〜甲37)。 オ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 本件商標の指定商品は、酒類や酒類調味料と、食品分野の商品である点において共通し、需要者も共通する。 また、近年のスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の多品目を扱う小売業の発達により、みりんや酒類と、「即席みそ汁のもと」を始めとする各種加工食品や「菓子,パン」等は、同一店舗・同一取引業者において取り扱われることが多く、また、売り場において近接する陳列棚で販売されることも多くあることは周知の事実である(甲39)。 してみれば、本件商標の指定商品は、酒類や酒類調味料と、販売部門・生産部門や用途、需要者・取引者の範囲が一致し、互いに密接な関連性を有するものといえる。 カ 以上の点を総合して考察すると、本件商標が、その指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、当該商品が請求人及び請求人グループの業務に係る商品であるかの如く認識して取引に当たる蓋然性が高く、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 利害関係 請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、「宝の麩」の文字並びに「宝」及び「麩」の漢字の下部に、それぞれ小さく「TAKARA」及び「FU」の欧文字を書してなるところ、欧文字部分は漢字部分の読みを特定するものであることを無理なく理解できるものである。 また、「宝」は、「貴重な品物。大切な財物。」を意味する語であり、本件商標の指定商品との関係では、商品の品質を表すものではなく、十分に自他商品識別標識としての機能を果たすものであるのに対し、「麩」は、「小麦粉から取り出したグルテン(麩素)を主材料とする食品。」の意味を有し、麩を使用した本件商標の指定商品との関係においては、商品の原材料を表すものであるから、両語が所有を意味する格助詞「の」を介して「宝の麩」と表されていても、該構成中の「宝」及び「TAKARA」の文字部分が独立して取引に資される場合があるものとみるのが相当であり、これらを要部として抽出することも許されるものであるから、本件商標は、その要部である「宝」及び「TAKARA」の文字部分から、「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるものというべきである。 (2)引用商標1ないし12 引用商標1、11及び12は、その構成中に「宝」の旧字体「寳」の異体字を顕著に含むものであり、引用商標2、6及び10は、「宝」の漢字からなり、引用商標3及び7は、「タカラ」の片仮名からなり、引用商標4及び5は、「TAKARA」の欧文字からなり、引用商標8及び9は、「TaKaRa」の欧文字からなるものであるから、それぞれ「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標1ないし12との類否について 本件商標の要部である「宝」と引用商標2、6及び10との類否について検討すると、両者は、「宝」の漢字において外観を共通にし、本件商標の要部である「宝」と引用商標1、11及び12とは、「宝」とその旧字体「寳」の異体字の違いであって近似するものであり、本件商標の要部である「TAKARA」と引用商標4、5、8及び9は、その欧文字において一部に大文字と小文字の差があるものの、そのつづりを同じくすることから、外観を共通にするか近似するものである。 そうすると、本件商標と引用商標1、2、4ないし6、8ないし12とは、外観が共通又は近似し、称呼及び観念を共通にする類似する商標というべきである。 また、本件商標の要部である「宝」及び「TAKARA」と引用商標3及び7との類否について検討すると、引用商標3及び7は「タカラ」の片仮名からなるところ、これらと本件商標の要部である「宝」及び「TAKARA」とは文字種が異なるものの、特徴のない書体であることに加え、我が国の商取引においては、漢字からなる商標をその読みに対応した片仮名や欧文字で代替的に表記したり又はその逆にしたりするなど、また、商標の構成文字を片仮名及び欧文字の相互に変更することが、一般に行われていることからすると、両者の外観における差異は、取引者、需要者に対して特段印象付けられるものではない。 そうすると、本件商標と引用商標3及び7とは、「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を共通にし、外観においても格別の差異を強く与えるとまではいえないことから、これらは相紛らわしい類似の商標というべきである。 (4)本件商標の指定商品と引用商標1ないし12の指定商品との類否について ア 本件商標の指定商品は、引用商標1の第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,即席菓子のもと,甘酒,みつ豆,ゆであずき」、引用商標2ないし7の第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」と同一又は類似の商品である。 イ 本件商標の指定商品中、第30類「麩を使用した菓子及びパン,麩を使用した即席菓子のもと」は、引用商標8の第30類「サンドイッチ,ピザ,ミートパイ,菓子及びパン,即席菓子のもと」、また、引用商標12の第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドック,ミートパイ,即席菓子のもと」と同一又は類似の商品である。 ウ 本件商標の指定商品中、第29類「麩を使用した即席味噌汁のもと,麩を使用した即席すまし汁のもと,麩を使用した即席豚汁,麩を使用した即席みそ汁,麩を使用した即席すまし汁,麩を使用したカレー・シチュー又はスープのもと,麩を使用した即席カレー,麩を使用した即席シチュー,麩を使用した即席スープ」は、引用商標9及び11の第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」と同一又は類似の商品である。 エ 本件商標の指定商品中、第30類「麩を使用した菓子及びパン」は、引用商標10の第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドック,ミートパイ」と同一又は類似の商品である。 オ 以上のとおり、引用商標1ないし12の指定商品中には、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品が包含されている。 (5)小括 以上からすると、本件商標と引用商標1ないし12とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は、引用商標1ないし12の指定商品と同一又は類似の商品である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されている。 そして、本件商標は、上記2のとおり、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同項第15号の括弧書きの規定により、同項第15号に該当するとはいえない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標11、12及び20) 別掲4(引用商標13) 別掲5(引用商標14) (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2023-03-06 |
結審通知日 | 2023-03-08 |
審決日 | 2023-03-28 |
出願番号 | 2016023063 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
Z
(W2930)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
佐藤 淳 小俣 克巳 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 5917935 |
商標の称呼 | タカラノフ、タカラフ、タカラ |
代理人 | 弁理士法人みのり特許事務所 |
代理人 | 木森 有平 |