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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
管理番号 1400675 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2022-07-29 
確定日 2023-07-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第6469892号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6469892号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6469892号商標(以下「本件商標」という。)は「ARMOUR」の文字を標準文字で表してなり、令和3年3月26日に登録出願、第12類「タイヤ,タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片」を指定商品として同年11月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において、商標に関する権利を有していることを証するために提示した商標(以下「引用商標」という。)は、以下のとおりである。
中国登録第10582458号商標(甲3)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品 :別掲2のとおり
登録期間 :2018年4月21日ないし2028年4月20日

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
1 取消事由について
本件商標は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。
2 取消原因について
本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の商標に類似する商標であって当該権利に係る商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで、当該商標登録出願の日前1年以内に代理人であった者によってされたものであるから、取消審判により取り消されるべきである。
3 本件取消審判の請求人について
請求人は、パリ条約の同盟国である中華人民共和国に所在する法人であり、中国国家知識産権局において、2018年4月21日に設定登録され、現在も有効に存続する引用商標に関する権利を有する者である(甲3)。
よって、請求人は、本件商標の登録出願時である2021年3月26日には、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有していたと認められる。
4 商標について
(1)本件商標について
本件商標は、外観、称呼、観念の各要素において以下のような特徴を有する。
ア 外観について
本件商標は、欧文字「ARMOUR」から構成される。
イ 称呼について
本件商標の構成文字「ARMOUR」から「アーマー」との称呼を生じる。
ウ 観念について
本件商標の構成文字「ARMOUR」は、「よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)、装甲」を示す英単語(甲4)であり、我が国において相当程度浸透している外来語であるため、本件商標は「よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)、装甲」の観念を生じさせる。
(2)引用商標について
引用商標は、外観、称呼、観念の各要素において以下のような特徴を有する。
ア 外観について
引用商標は、図形からなる上段部及び欧文字「ARMOUR」からなる下段部より構成される。
イ 称呼について
引用商標の下段部の構成文字「ARMOUR」から「アーマー」の称呼を生じる。
ウ 観念について
引用商標の構成文字「ARMOUR」は、「よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)、装甲」を示す英単語(甲4)であり、我が国において相当程度浸透している外来語であるため、本件商標(審決注:「引用商標」の誤記と認める。)は「よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)、装甲」の観念を生じさせる。
(3)商標の類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標とは、欧文字部分「ARMOUR」を共通とする。
ここで、引用商標のように図形と文字部分を組み合わせた結合商標類否判断について過去の判決例は以下のように示している。
「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである・・・。しかしてこの場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である。」(甲5)。
引用商標については、図形部分と文字部分が上下に分離して表されているという外観上の特徴、さらに、「ARMOUR」の文字のみがタイヤの名称として請求書等に記載されている(甲9〜甲16)という取引の実情からも図形部分と文字部分とを分離して観察することは取引上なんら不自然ではなく、該図形部分(審決注:「該文字部分」の誤記と認める。)は、引用商標の要部として商品の出所識別標識として機能する。
よって、本件商標と引用商標を比較した場合、欧文字部分「ARMOUR」を共通とし、両商標は外観上、相紛れるおそれがある。
イ 称呼について
本件商標と引用商標は、共に欧文字部分「ARMOUR」から「アーマー」の称呼が生じることから、両商標は称呼上、相紛れるおそれがある。
ウ 観念について
本件商標と引用商標は、共に欧文字部分「ARMOUR」から「よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)、装甲」の観念が生じるため、両商標は観念上、相紛れるおそれがある。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標である。これは、我が国における引用商標に係る商標登録出願(商願2022−019378)が、本件商標に類似する商標であり、かつ、類似する指定商品に使用することを理由として、拒絶理由を通知されていることからも明らかである。
5 指定商品について
本件商標及び引用商標は、共に第12類「タイヤ」(類似群コード:12A02、12A05、12A06)を指定商品とするものである。
よって、本件商標は、引用商標に係る指定商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものである。
6 請求人と本件商標に係る権利者との関係について
請求人は、中華人民共和国江蘇省徐州市に所在し、タイヤの製造販売を行う企業である(甲6)。請求人は、2020年のタイヤの売上額に基づく、2021年8月30日付けのタイヤ製造会社の世界ランキングにおいて55位にランク付けされている。同ランキング表に提示されている請求人の2020年のタイヤの売上額は3億7080万ドル(約510億4328万円)、2019年の売上額は4億2500万ドル(約585億550万円)であり、売上額が高額であることからも本件商標の出願日前からタイヤの製造販売を行い、世界各国に向けてタイヤの輸出を行ってきたタイヤ製造業者であることが分かる(甲7)。
そして、商標法第53条の2における「代理人」は、同法において明確な定義が示されていないところ、「商標所有者からなんらかの代理権を授与されたものを指す」との限定的な解釈もあるものの、過去の審決例においても「商標法第53条の2が、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の代理人若しくは代表者又は代理人若しくは代表者であった者がその権利者との間に存する信頼関係に違背して正当な理由がないのに同一又は類似の商標登録をした場合にその取消について審判を請求できる旨の規定であることに鑑みれば、同条項に規定する「代理人若しくは代表者」は、必ずしも他の同盟国等の商標権者と代理店契約を締結した者など契約上特別な関係、あるいは、法的関係にある者に限定されることなく、広く他の同盟国等の商標権者の商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者など、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていた関係にあった者をも指すと解される」と示されていることからも、より広く、「商標権者の商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者など継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていた関係にあった者」を「代理人」に含めるとする解釈が一般的である(甲8)。
被請求人は、請求人のタイヤ製品の日本における輸入販売業者であり、請求人と被請求人の継続的な取引に照らして、本件商標の出願日の約9年以上前から請求人の日本における主たる取引先であり販売業者であった(甲9〜甲17)。
請求人と被請求人の関係について検討すると、被請求人が所有する会社「エースタイヤ」のウェブサイトには「日本では、タイヤブランドのARMOUR(アーマー)とLANDE(ランデ)が当社の登録商標です。当社の専売商品となっております。他の業者が当該ブランドのタイヤの販売権を有いて(原文ママ)いません。(当社が如何なる他社にも販売の許可を与えていません。)他のネットショップで見られる同ブランドのタイヤは、全てが商標侵害か或いは粗悪な模造品です。是非、ご注意ください。」との記載があることから、請求人に係る「ARMOUR」ブランドのタイヤについて、被請求人は日本における輸入商品の販売等を独占的に行う輸入販売業者、すなわち、商標法第53条の2における「代理人」であることが分かる(甲18)。
なお、被請求人とエースタイヤの関係については、エースタイヤのホームページの会社概要欄に、「販売業者エースタイヤ(有限会社福元冷熱工業 通信販売事業部)」及び「運営統括責任者 福元」の記載があることからもエースタイヤは被請求人が所有する会社であることが分かる(甲19)。なお、2017年及び2018年に請求人が発行した売買契約書の宛先は、ACE CO.LTD(以下「ACE社」という。)であるが、ACE社の住所の記載が被請求人と同一であること、買主の署名欄に有限会社福元冷熱工業の化成品事業部の部長であるA氏(甲20)の氏名があることから、エースタイヤ又はACE社は被請求人の所有する会社であると考えられる。
請求人は、2012年9月より被請求人を通じて日本での同社のタイヤ製品の販売を開始した。より詳細には、請求人は2012年9月29日付けで730個のタイヤに係る請求書を被請求人宛に発行し、2012年9月30日付けで請求人から被請求人宛に730個のタイヤを出荷した(甲9、甲10)。
その後、請求人から被請求人及びACE社宛に卸売販売された同社のタイヤ製品に係る請求額(郵送費を除く)及び販売契約で提示された販売額は、以下のとおりである。なお、2012年ないし2014年発行の請求書に記載の「シューチョウ シュゴン タイヤズ カンパニー リミテッド」は、請求人の旧名称である。
2012年 98,133.92ドル(約1,354万5,298円)(甲9)
2013年 30,189.61ドル(約416万6,988円)(甲11)
2014年 28,856.78ドル(約398万2,994円)(甲12)
2017年 30,648.60ドル(約423万344円)(甲13)
2018年 29,034.94ドル(約400万7,701円)(甲14)
2019年 26,601.36ドル(約367万1,736円)(甲15)
2020年 27,623ドル(約381万1,145円)(甲16)
2021年 35,365.46ドル(約487万9,309円)(甲17)
上記販売額のうち、「ARMOUR」の文字を付したタイヤ製品に係る請求額及び販売契約で提示された販売額は、以下のとおりである。
2012年 91,707ドル(約1265万2,815円)(甲9)
2013年 30,189.61ドル(約416万5,177円)(甲11)
2014年 28,856.78ドル(約398万2,994円)(甲12)
2017年 4,480.80ドル(約61万8,105円)(甲13)
2018年 12,650.90ドル(約174万6,080円)(甲14)
2019年 3,146.36ドル(約43万4,242円)(甲15)
2020年 4,561.60ドル(約62万9,281円)(甲16)
請求人と被請求人の取引は、上記2012年9月に約1000万円以上にのぼる計730個のタイヤの売買から始まり、2021年12月まで年間数百万円単位で継続的に行われている。
したがって、本件商標の出願人である有限会社福元冷熱工業は、該出願日の約9年前から、継続的な取引関係のもとに請求人の商品を独占的に日本での輸入販売を行う者であって、商標法第53条の2にいう「代理人」にあたる。
7 本件商標が正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないでされたことについて
本件商標は、請求人の「承諾を得ないで」出願されたものである。請求人は、本件商標の出願人である有限会社福元冷熱工業より本件出願前に出願について承諾を求められることはなかった。
本件商標に係る出願公開後である2021年11月2日に請求人は、有限会社福元冷熱工業の化成品事業部の部長であるA氏(甲20)に対して、本件商標に係る商標登録出願を放棄し、本件商標の所有権を被請求人から請求人に移転することを依頼するメールを送付した(甲21)。
これに対して、被請求人は、何ら応答していない。
よって、請求人は本件商標の出願前に該出願やその予定について知らされておらず、同意もしていなかったことは明らかである。
ここで、商標法第53条の2にいう「正当な理由」について、「請求人が被請求人に対し、日本において請求人商標の権利を取得することを放棄した、又は取得する関心がないことを信じさせた場合」や、代理人等の側が当該商標に関して多大な費用と労力をかけてグッドウィル(顧客誘引力)を形成した場合に「正当な理由」が認められるとされている。
しかし、本件商標の出願後に請求人が送付した上記メールからも明らかなとおり、請求人は日本における自己の商標の登録に関心があり、本件商標の出願前に「取得することを放棄した、又は取得する関心がないことを信じさせた」ことはあり得ない。また、請求人は現在に至るまで、被請求人に対して商標「ARMOUR」を出願し、登録を行うことについて許諾したことはない。さらに、本件商標の出願時において、被請求人と同社の関連会社による販売、広告宣伝活動を通じて本件商標について既にグッドウィルが形成されていたということもない。
よって、本件出願に「正当な理由」はない。
8 結び
本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の商標に類似する商標であって当該権利に係る商品に類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで、当該商標登録出願の日前1年以内に代理人であった者によってされたものであるから、本件商標の登録は取消審判により取消されるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件取消審判に関する商標
(1)本件商標
本件商標は、「ARMOUR」の文字を標準文字で書してなり、第12類の商品「タイヤ(12A02、12A05、12A06),タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片(12A72)」を指定商品として、令和3年(2021年)3月26日に商標登録出願され、同年11月11日に登録されたものである(甲1、甲2)。
本件商標は、後述する登録第5057009号商標について一部取消審判を請求し、一部取り消して、設定登録が認められたものである。
(2)引用商標
引用商標は、上段部図形及び欧文字「ARMOUR」からなる下段部より構成されてなり、第12類の商品を指定商品として、2018年4月21日に商標登録されたものである(甲3)。
なお、商標登録出願された年月日については、甲第3号証及びその抄訳によっては明確ではない。
(3)登録第6109948号商標
登録第6109948号商標は、引用商標の上段部図形より構成されてなり、第12類「航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ」を指定商品として、平成30年(2018年)3月29日に商標登録出願され、同年12月28日に商標登録されたものである(乙1)。
ここで重要なのは、登録第6109948号商標は、引用商標の上段部図形であり、下段部の欧文字「ARMOUR」は、商標登録されていないことである(ただし、「ARMOUR」の文字は、被請求人が本件商標において商標登録している。)。
請求人は、平成30年(2018年)3月29日頃の時点で、商願2022−19378号商標(すなわち、引用商標と同じ商標)の出願をしようとしたが、登録第5057009号商標が先願登録商標として存在していたため、断念して、やむを得ず、登録第6109948号商標を商標出願し、登録を認められたものである。
(4)商願2022−19378号商標
商願2022−19378号商標は、図形からなる上段部及び欧文字「ARMOUR」からなる下段部より構成されてなり(引用商標と同じ構成からなり)、第12類「自動車用タイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用ソリッドタイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ,空気タイヤの外殻,空気タイヤ,タイヤ再生用トレッド,空気タイヤ用チューブ,タイヤ用スパイク,航空機用タイヤ」を指定商品として、令和4年(2022年)2月21日に商標登録出願され、現在審査係属中であり(乙2)、本件商標と抵触するとして商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由の通知がなされている(乙2の1)。
また、登録第6109948号商標と抵触するとして商標法第4条第1項第11号に該当する旨の刊行物等提出書の提出がなされている(乙2の2)。
(5)登録第5057009号商標
登録第5057009号商標は、「アルミュール/armour」の文字を二段書きしてなり、第12類の商品を指定商品としてなり、平成18年(2006年)9月6日に商標登録出願され、平成19年(2007年)6月22日に商標登録されたものである(乙3)。
そして、被請求人は、取消審判(取消2021−300251)を令和3年(2021年)4月1日に請求し(乙第3の1。最終的に、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」が、取り消された(請求成立の最終処分日(2021/09/21)。
登録第5057009号商標の一部取消しにより、本件商標が、令和3年(2021年)11月11日に登録されたものである。
2 取消しについて
「本件商標は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。」については争う。
3 取消しの原因について
(1)「本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の商標に類似する商標であって当該権利に係る商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであり、」については、前段は知らない。後段は争う。
(2)「かつ、その商標登録出頓が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで、当該商標登録出願の日前1年以内に代理人であった者によってされたものであるから、」については、否認若しくは争う。
以下、「本件商標の商標登録出願の日前1年以内」(令和2年(2020年)3月26日〜令和3年(2021年)3月26日)を「本件期間」という場合がある。
代表者であったものによってなされたことについては、請求人は具体的な主張がないので、反論の必要がない。
4 本件取消審判の請求人について
(1)「請求人は、パリ条約の同盟国である中華人民共和国に所在する法人であり、中国国家知識産権局において、2018年4月21日に設定登録され、現在も有効に存続する引用商標に関する権利を有する者である(甲3)」について、甲第3号証抄訳に記載があることは認める。
(2)「よって、請求人は、本件商標の登録出願時である2021年3月26日には、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有していたと認められる。」については、知らない。
5 商標について
前記第3の4(1)ないし(3)について、認める。
これは、商願2022−19378号商標(出願人は請求人)が出願中であり、本件商標と抵触するとの商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由の通知がなされている事実もあるからである。
6 指定商品について
(1)「本件商標及び引用商標は、共に第12類「タイヤ」(類似群コード:12A02、12A05、12A06)を指定するものである。」については、否認若しくは争う。
本件商標は、第12類「タイヤ(12A02、12A05、12A06),タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片(12A72)」を指定商品とするのに対して、引用商標は、第12類「自動車用タイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用ソリッドタイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ,空気タイヤの外殻,空気タイヤ,タイヤ再生用トレッド,空気タイヤ用チューブ,タイヤ用スパイク,航空機用タイヤ(12A02、12A05、12A06)」を指定商品とするものであるので、両者の指定商品は異なる。
(2)「よって、本件商標は、引用商標に係る指定商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものである。」については、否認若しくは争う。
引用商標(甲3)の指定商品の類似群コード、商願2022−19378号商標の指定商品の類似群コードは、「12A02、12A05、12A06」であり、本件商標の類似群コードは、「12A02、12A05、12A06、12A72」であり、引用商標と非類似の指定商品「タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片(12A72)」を含み、本件商標は、引用商標の指定商品と類似する商品の他に、類似しない商品をも含むから、本件商標と引用商標の指定商品は類似するとはいえない。
7 請求人と本件商標に係る権利者との関係について
(1)「請求人は、中華人民共和国江蘇省徐州市に所在し、タイヤの製造販売を行う企業である(甲6)。請求人は、・・・本件商標の出願日前からタイヤの製造販売を行い、世界各国に向けてタイヤの輸出を行ってきたタイヤ製造業者であることが分かる(甲7)。」については、知らない。
(2)「商標法第53条の2における「代理人」は、同法において明確な定義が示されていないところ、・・・商標権者の商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者など継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていた関係にあった者」を「代理人」に含めるとする解釈が一般的である(甲8)。」について、否認若しくは争う。
本件と甲第8号証の事件とは別案件であるからである。
本件期間においては、引用商標と登録第5057009号商標が商標権として有効に存在していた(すなわち、引用商標と登録第5057009号商標とは、抵触関係にあった。)。
引用商標の国際的保護を図ろうとしても、日本国内では登録第5057009号商標が存在していたため、請求人から輸入販売することは登録第5057009号商標を侵害することになり、差止請求され、損害賠償請求されるおそれがあった。
してみれば、請求人は、国際的商標権者であったとしても、日本国内に限れば、輸入販売する権原は有していないことになり、輸入販売する権原を代理人に与えることもできない。
したがって、本件期間において被請求人が請求人の代理人であったということはあり得ない。
(3)「被請求人は、請求人のタイヤ製品の日本における輸入販売業者であり、請求人と同社の継続的な取引に照らして、本件商標登録の出願日の約9年以上前から請求人の日本における主たる取引先であり販売業者であった(甲9〜甲17)。」については、輸入販売品が登録第5057009号商標の侵害品であることを認識して輸入していたのであり、侵害訴訟を起こされるリスクは大きく、取引額はかなり抑えていた。
請求人から輸入販売していたものは、被請求人以外にも数社いたのであって、被請求人が、請求人の日本における主たる取引先であり販売業者であったことにはあたらない。
請求人から、タイヤ「ARMOUR」を輸入販売する者が他にいることを必ず確認して請求人から輸入をしていた。
これは、複数人が侵害行為をすれば、被請求人のみが登録第5057009号商標侵害の訴えを提起されるリスクが低下するからである。
(4)「請求人と被請求人の関係について検討すると、被請求人が所有する会社「エースタイヤ」のウェブサイトには「日本では、タイヤブランドのARMOUR(アーマー)とLANDE(ランデ)が当社の登録商標です。当社の専売商品となっております。他の業者が当該ブランドのタイヤの販売権を有いて(原文ママ)いません。(当社が如何なる他社にも販売の許可を与えていません。)他のネットショップで見られる同ブランドのタイヤは、全てが商標侵害か或いは粗悪な模造品です。是非、ご注意ください。」との記載があることから、・・・「代理人」であることが分かる(甲18)。」については、「エースタイヤ」のウェブサイトで、「日本では、タイヤブランドのARMOUR(アーマー)とLANDE(ランデ)が当社(被請求人)の登録商標です。」旨を主張し、商標権に基づいた独占排他権の効力を説明したものであって、被請求人が日本における輸入商品の販売等を独占的に行う輸入販売業者、すなわち、商標法第53条の2における「代理人」であることは、一切記載されていない。
なお、「エースタイヤ」は、被請求人が所有する会社ではなく、被請求人の部署名である。
(5)「なお、被請求人とエースタイヤの関係については、・・・エースタイヤ又はACE社は被請求人の所有する会社であると考えられる。」については、「エースタイヤ」は、被請求人が所有する会社ではなく、被請求人の部署名である。
(6)「請求人は、2012年9月より被請求人を通じて日本での同社のタイヤ製品の販売を開始した。より詳細には、請求人は2012年9月29日付けで730個のタイヤに係る請求書を被請求人宛に発行し、2012年9月30日付けで請求人から被請求人宛に730個のタイヤを出荷した(甲9、甲10)。・・・」については、2012年9月から、引用商標の中国登録日(2018年4月21日)前までの取引額は除かれるべきである。引用商標が存在しなければ、商標法第53条の2の取消要件は発生しないからである。
(7)「2012年 98,133.92ドル(約1354万5,298円)(甲9)・・・
2021年 35,365.46ドル(約487万9,309円)(甲17)」については、取引額は、タイヤ「ARMOUR」とタイヤ「LANDE」を合算したものであるところ、タイヤ「ARMOUR」の取引額が意味を有する。
2021年において、取引額は、タイヤ「ARMOUR」が0円で、全てタイヤ「LANDE」の取引額である。
そして、引用商標の商標権が設定登録日(2018年4月21日)前の2012年ないし2017年の取引額のデータは、当該商標権が存在しなかったのであるから、証拠資料として意味がない。
(8)「上記販売額のうち、「ARMOUR」の文字を付したタイヤ製品に係る請求額及び販売契約で提示された販売額は、以下のとおりである。・・・」については、2021年のタイヤ「ARMOUR」の取引額は、取引額が全てタイヤ「LANDE」のみの取引額であることから、0円である。
本件期間の付近の取引額データは、2020年が4,561.60ドル(約62万9,281円)、2021年が0円であり、タイヤ「ARMOUR」の取引はほぼ終了しているといえる。
そして、引用商標の商標権が設定登録日(2018年4月21日)前の2012年ないし2017年の取引額のデータは、当該商標権が存在しなかったのであるから、証拠資料として意味がない。
(9)「請求人と被請求人の取引は、上記2012年9月に約1000万円以上にのぼる計730個のタイヤの売買から始まり、2021年12月まで年間数百万円単位で継続的に行われている。」については、本件期間には、タイヤ「ARMOUR」の取引はほぼ終了しているといえる程度の取引額である。
(10)「したがって、本件商標の出願人である有限会社福元冷熱工業は、該出願日の約9年前から、継続的な取引関係の下に請求人の商品を独占的に日本での輸入販売を行う者であって、商標法第53条の2にいう「代理人」に当たる。」については、本件期間においては、引用商標と登録第5057009号商標が商標権として有効に存在していた(引用商標と登録第5057009号商標とは、抵触関係にあった。)。
引用商標の国際的保護を図ろうとしても、日本国内では登録第5057009号商標が存在していたため、請求人から輸入販売することは登録第5057009号商標を侵害することになり、差止請求され、損害賠償請求されるおそれがあった。
してみれば、請求人は、国際的商標権者であったとしても、日本国内で、輸入販売する権限は有していないことになり、輸入販売する権限を代理人に与えることもできない。
したがって、本件期間に被請求人が請求人の代理人であったということはあり得ない。
輸入販売品が登録第5057009号商標の侵害品であることを認識して輸入していたのであり、侵害訴訟を起こされるリスクは大きく、取引額はかなり抑えていた。
請求人から輸入販売していたものは、被請求人以外にも数社いたのであって、被請求人が請求人の日本における主たる取引先であり販売業者であったことにはあたらない。
請求人から、タイヤ「ARMOUR」を輸入販売する者が他にいることを必ず確認して請求人から輸入をしていた(「赤信号。みんなで渡れば怖くない。」と同じ理屈である。)。
これは、複数人が侵害行為をすれば、被請求人のみが登録第5057009号商標侵害の訴えを提起されるリスクが低下するからである。
また、被請求人は、本件期間に、請求人の商品を独占的に日本での輸入販売を行う者に該当せず、商標法第53条の2にいう「代理人」にあたらない。なぜならば、本件期間には、タイヤ「ARMOUR」の取引はほぼ終了しているといえる程度の取引額であったからである。
8 本件商標出願が正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないでされたことについて
(1)「本件商標は、請求人の「承諾を得ないで」出願されたものである。・・・請求人は、本件商標の出願人である有限会社福元冷熟工業より本件出願前に出願について承諾を求められることはなかった。」については、被請求人は、本件期間において、請求人の代理人ではなかったのであるから、請求人の承諾を得なければならない義務をなんら負うものではない。
(2)「本件商標に係る出願公開後である2021年11月2日に請求人は、・・・本件商標に係る商標登録出願を放棄し、本件商標の所有権を被請求人から請求人に移転することを依頼するメールを送付した(甲21)。」について、請求人が、請求人の代理人でもない被請求人に対して、本件商標に係る商標登録出願を放棄し、本件商標の所有権を被請求人から請求人に移転することを依頼するメールを送付する行為は妥当ではない。
(3)「以下に、請求人からA氏に送付したメールの一部の抄訳を記載する。・・・」については、請求人が、請求人の代理人でもない被請求人に対して、本件商標に係る商標登録出願を放棄し、本件商標の所有権を被請求人から請求人に移転することを依頼するメールを送付する行為は妥当ではない。
(4)「これに対して、被請求人は、何ら応答していない。よって、請求人は本件出願の前に該出願やその予定について知らされておらず、同意もしていなかったことは明らかである。」については、本件期間において、被請求人は請求人の代理人でなかったのであり、請求人の同意を得る必要はない。
(5)「ここで、商標法第53条の2にいう「正当な理由」について、・・・本件出願に「正当な理由」はない。」について、登録第5057009号商標があるため本件商標を使用できない場合に、もし仮に、登録第5057009号商標の商標権者が一定期間当該商標を使用していないならば、保護法益がなく、一般人の商標選択の余地を狭めることになるので、公益の観点からも、何人も取消審判が請求できる。登録第5057009号商標の商標権者が一定期間当該商標を使用していないならば、被請求人が取消審判を請求することは、公益の観点からも、商標法第53条の2の他の要件を判断するまでもなく、「正当な理由」に該当するものと思料する。
9 むすび
本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の商標に類似する商標であって当該権利に係る商品に類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで、当該商標登録出願の日前1年以内に代理人であった者によってされたものに当たらないから、本件商標の登録は取消審判により取消されるべきではない。

第5 当審の判断
商標法第53条の2は、「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であつて当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつてされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し、パリ条約第6条の7の規定を実施するため、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化することを目的としたものであり、他の同盟国等における商標に関する権利を有する者の承認なしに、その代理人又は代表者等が我が国に当該商標と同一又は類似範囲にある商標について出願した場合であって、それが登録されたときは、商標に関する権利を有する者がその登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨を定めたものである。
そこで、本件商標の登録が、上記条項の要件を満たすものであるか否かについて、以下検討する。
1 本件商標が、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者について
請求人は、パリ条約の同盟国及び世界貿易機関の加盟国である中華人民共和国において、第12類「Automobile tires [tyres](自動車用タイヤ)」、「inner tubes for pneumatic tires [tyres](空気タイヤ用チューブ)」を含む第12類の商品を指定商品とする中国登録第10582458号商標(引用商標)の商標権に関する権利を有する者であって、当該商標権は2018年4月21日に登録され、現在も有効に存続しているものといえる(甲3)。
そうすると、請求人は、本件商標の登録出願時である2021年(令和3年)3月26日には、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有していたと認められる。
(2)商標及び指定商品についての同一又は類似について
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ARMOUR」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字に相応して「アーマー」の称呼を生じ、「よろいかぶと」の観念(甲4)を生じるものと判断するのが相当である。
イ 引用商標について
他方、引用商標は、別掲1のとおり、台形状に並べた横線の中央に、「甲」の文字を中心に配した二重円と歯車を描いた図形(以下「図形部分」という。)及びその下に「ARMOUR」の文字(以下「文字部分」という。)を配した構成からなる結合商標であるところ、上記アと同様に、「ARMOUR」の文字は、その構成文字に相応して「アーマー」の称呼を生じ、「よろいかぶと」の観念を生じるものである。
そして、引用商標の構成中、図形部分と文字部分とは、特に工夫もなく、両者が上下に配置されているだけであることからすると、分離観察を許さないほど全体が不可分一体の構成であるということはできず、また、文字部分は、太い書体をもって目立つ態様で表示されているといえることからすれば、引用商標から、その文字部分を、自他商品識別機能を発揮する部分(要部)として抽出し、商標そのものの類否を検討することも許されるというべきである。
ウ 商標の類否
本件商標と、引用商標の要部である「ARMOUR」の文字部分とは、その文字のつづりが同一であるから、外観上、類似するものであり、称呼及び観念については、両者はいずれも、各構成文字に相応して、「アーマー」の称呼を生じ、「よろいかぶと」の観念を生じるから、称呼及び観念を同一とするものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、全体の構成においては、図形部分の有無の差異を有するとしても、要部においては、外観上、類似するものであり、称呼及び観念を同一とするものであるから、これらを総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標と判断するのが相当である。
エ 商品の類否
本件商標の指定商品は第12類「タイヤ,タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片」であり、引用商標の指定商品は、別掲2のとおり「Automobile tires [tyres]」(自動車用タイヤ)等であるから、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品を包含すること明らかであり、両指定商品は同一又は類似の商品といえる。
(3)小括
以上によれば、本件商標は、商標法第53条の2にいう「パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするもの」に該当する。
2 本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるか否かについて
(1)両当事者が提出した証拠及び両者の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人について
請求人(XUZHOU ARMOUR RUBBER COMPANY LTD(シューチョウ アーマー ラバー カンパニー リミテッド))は、1951年に設立された中華人民共和国に所在するタイヤ製造業者である(甲6、甲7)。
また、請求人は、2012年ないし2014年発行の請求書(甲9〜甲12)に記載された「XUZHOU XUGONG TYRES CO.,LTD(シューチョウ シュゴン タイヤズ カンパニー リミテッド)」は請求人の旧名称であると主張するところ、請求人の住所と「XUZHOU XUGONG TYRES CO.,LTD(シューチョウ シュゴン タイヤズ カンパニー リミテッド)」の住所が同一であることからすれば(例えば、甲12と甲13の住所を参照。)、上記名称は請求人の旧名称であると認めて差し支えない。
イ 被請求人について
被請求人は、「エースタイヤ」と称する産業用タイヤ販売を専門とするオンラインショップを運営し、「ARMOUR」と「LANDE」を含む、新品タイヤを販売していたこと、また、A氏は、「エースタイヤ」のウェブサイトの運営統括責任者であることが、「エースタイヤ」のウェブサイト(甲18、甲19)及び被請求人の化成品事業部の部長A氏の名刺(甲20)から推認できる。
ウ 当事者間の取引等について
請求書、梱包明細書及び売買契約書(甲9〜甲17)によれば、被請求人(及びACE社)は、2012年9月から2021年12月までの期間に、請求人から、請求人の商品「タイヤ」(「ARMOUR」及び「LANDE」等)を、8回にわたり合計3784本(総額約4200万円)(そのうち「ARMOUR」については、2012年9月から2020年10月までに、7回、合計1632本(約2400万円))輸入していたことが認められる。
なお、被請求人とACE社との関係については、被請求人とACE社の住所が同じであること、売買契約書(甲13、甲14)に被請求人の化成品事業部の部長A氏(甲20)の署名があること、請求人の「ACE社は被請求人の所有する会社であると考えられる」という主張に被請求人は否認していないことを合わせみれば、被請求人とACE社は関連会社であると推認できる。
よって、請求人とACE社との売買契約書(甲13、甲14)も、実質的には請求人と被請求人との間の取引であるとみて差し支えない。
エ 請求人が送付したメール
請求人は、2021年11月2日に、被請求人の化成品事業部の部長であるA氏(甲20)に対し、請求人が所有するブランド「ARMOUR」を日本において商標権を得るよう働きかけたが、長年にわたりかなわなかったこと、被請求人が日本で「ARMOUR」に係る商標出願をしたことを知り、これを放棄し、請求人に所有権の移転を希望することなどを記載したメール(甲21)を送付した。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」について
被請求人は、請求人の商品「タイヤ」を、自社が運営するオンラインショップ「エースタイヤ」(甲18、甲19)を通じて、日本国内で販売するため、請求人から購入したものであり、上記(1)ウのとおり、その購入の内訳(合計3784本、約4200万円分)は決して少ないものとはいえないし、2012年から本件商標の登録出願時(2021年3月26日)以降の2021年12月まで継続していた。
そうすると、被請求人は、請求人の商品を継続的に購入し我が国において販売する者であり、請求人と被請求人との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成され、被請求人は、日本国内における請求人の商品の、日本国内における販売体系に組み込まれるような立場にあった者とみることができ、本件商標の登録出願の日(令和3年(2021年)3月26日)前1年以内を含む期間において、その関係が継続していたというのが相当である。
したがって、被請求人は、本件商標の登録出願時において、商標法第53条の2にいう「代理人若しくは代表者」であった者に該当するというべきである。
イ 「本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないで被請求人によってされたこと」について
商標法第53条の2に規定される「正当な理由」とは、商標に関する権利を有する者が、その代理店等に対しその国において商標を放棄した場合、またはその商標の権利を取得する関心がないことを信じさせた場合等が挙げられるものと解されるところ、被請求人の主張及び証拠によっても、被請求人による本件商標の登録出願が、請求人の承諾を得ないことにつき「正当な理由」があったことによるものとする事情は見いだせない。
ここで、被請求人は、請求人が平成30年(2018年)3月29日頃の時点で、引用商標と同じ商標を登録出願しようとしたと述べていることから、被請求人は、請求人が「ARMOUR」の商標権を日本で取得することに関心があったことを認識していたといえるし、請求人が被請求人の化成品事業部の部長であるA氏に送ったメール(甲21)によっても、請求人が「ARMOUR」の商標権を日本で取得しようとしていたこと、被請求人が日本国内において本件商標を登録出願することについて、請求人の承諾を得なかったことがうかがえる。
さらに、被請求人は、エースタイヤのウェブサイト(甲18)において、「日本では、タイヤブランドのARMOUR(アーマー)とLANDE(ランデ)が当社の登録商標です。当社の専売商品となっております。他の業者が当該ブランドのタイヤの販売権を有いていません。(当社が如何なる他社にも販売の許可を与えていません。)他のネットショップで見られる同ブランドのタイヤは、全てが商標侵害か或いは粗悪な模造品です。是非、ご注意ください。」と記載し、タイヤ「ARMOUR」についての注意喚起を行っていたことから、本件商標の登録出願をしたことにより、日本国内で、タイヤ「ARMOUR」の販売について、請求人も含めた他の業者による販売を排除し、取引上で優位な立場を確保しようとした意図をうかがうことができるものであり、これらの点からしても、その登録出願について、請求人の承諾を得ないことにつき「正当な理由」があったということはできない。
したがって、本件商標の登録出願は、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないで被請求人によってされたものであるといえる。
(3)小括
以上によれば、本件商標の登録出願は、商標法第53条の2にいう「正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者であった者によってされたもの」に該当する。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人製品を輸入販売することは登録第5057009号商標を侵害することになり、差止請求や損害賠償請求をされるおそれがあったのであるから、請求人が国際的商標権者であったとしても、日本国内で、請求人製品を輸入販売する権限は有していないということになり、それを輸入販売する権限を代理人に与えることもできないのであって、本件期間に被請求人が請求人の代理人であったということはあり得ない旨主張している。
しかしながら、請求人と被請求人との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成され、被請求人は、日本国内における請求人製品の販売体系に組み込まれるような立場にあった者とみることができ、少なくとも2021年12月頃までは、その関係が継続していたと推認できるから、被請求人は、商標法第53条の2に規定される「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当するというべきことは、上述のとおりであり、被請求人の主張及び証拠を総合しても、登録第5057009号商標の存在により、請求人と被請求人との間の継続的な取引が中断されたとか、日本国内において請求人製品の販売をしなくなったような事情は見いだせず、依然として、請求人と被請求人との間の継続的な取引は続いていたと推認できることから、本件商標の登録出願前1年以内の本件期間に被請求人が請求人の代理人であったということはあり得ない旨の被請求人の上記主張は採用できない。
(2)被請求人は、登録第5057009号商標の商標権者が一定期間当該商標を使用していないならば、被請求人が取消審判を請求することは、公益の観点からも、商標法第53条の2の他の要件を判断するまでもなく、「正当な理由」に該当する旨、主張している。
しかしながら、登録第5057009号商標について、実際に被請求人がその商標権の一部取消し審判を請求したこと(乙3の1)をもって、上記2(2)イにいう商標法第53条の2の「正当な理由」に該当すると認めることはできない。
(3)したがって、被請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、当該権利を有する者の承諾を得ないで、その代理人若しくは代表者であった者によってされたものと認められる。
5 むすび
したがって、本件商標は、商標法第53条の2に規定する要件をすべて満たしているものと認められるから、その登録は、同規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(別掲1:引用商標)


(別掲2:引用商標の指定商品の英訳)
第12類
「Automobile tires [tyres]; tyres, solid, for vehicle wheels; tyres for vehicle wheels; casings for pneumatic tires [tyres]; pneumatic tyres; treads for retreading tires [tyres]; inner tubes for pneumatic tires [tyres]; spikes for tyres; tyres for aircraft.」
(参考訳:自動車用タイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用ソリッドタイヤ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ,空気タイヤの外殻,空気タイヤ,タイヤ再生用トレッド,空気タイヤ用チューブ,タイヤ用スパイク,航空機用タイヤ)

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2023-05-26 
結審通知日 2023-05-31 
審決日 2023-06-13 
出願番号 2021036853 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (W12)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 大山 健
渡邉 あおい
登録日 2021-11-11 
登録番号 6469892 
商標の称呼 アーマー 
代理人 佐藤 富徳 
代理人 杉村 憲司 
代理人 門田 尚也 
代理人 長嶺 晴佳 
代理人 杉村 光嗣 

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