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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W20 |
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管理番号 | 1400551 |
総通号数 | 20 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-05 |
確定日 | 2023-06-29 |
事件の表示 | 商願2020−55195拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標及び手続の経緯 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第20類「ソファー」を指定商品として、令和2年5月7日に登録出願されたものである。 本願は、令和2年10月6日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月21日付け意見書(以下「意見書1」という。)が提出されたが、同3年3月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要旨 原査定は、本願商標はその指定商品「ソファー」の採択し得る一形態を表した立体形状というのが相当であり、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の形状として需要者は一般に認識するにすぎないから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠を参照するも同条第2項の要件を具備するものとはいえない旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審における職権による証拠調べ 当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対して、令和4年3月24日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知書」という。)によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。 第4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点) 請求人は、上記第3の証拠調べ通知書に対し、令和4年5月6日付け意見書(以下「意見書2」という。)を提出し、要旨以下のとおりの意見を述べている。 1 証拠調べ通知書に記載された使用例は、いずれも本願商標に意図的に似せて製造された後発品と思われるものか、あるいは本願商標とは外観的特徴において著しく異なるものであって、本願商標に関する自他商品識別力の判断に影響を与えるようなものではない。本来保護されるべき立体商標について登録が認められず、このような模倣品が出回るような事態を看過せざるを得ないことになれば、ひいては立体商標制度の秩序を乱すことになり、制度上からも到底許されるべきものではない。 2 本願商標が、仮に商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標の使用開始時期や使用地域等を考慮すれば、同条第2項に規定する要件を満たし、登録されるべきものである。 第5 当審の判断 1 立体商標における商品の形状について 商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。 しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。 ア 商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。 そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。 イ また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。 ウ さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。 以上、知財高裁平成18年(行ケ)第10555号同19年6月27日判決、平成19年(行ケ)第10215号同20年5月29日判決及び平成22年(行ケ)第10253号同23年6月29日判決参照のこと。 2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は、別掲1のとおり、3人掛け用背もたれ、3人掛け用座面、両サイドに肘掛け及びこれらを支える脚が4本という特徴を有する立体的形状よりなるところ、本願商標は、「背もたれがあり、クッションの利いた長椅子。」(出典:広辞苑第7版(発行者:株式会社岩波書店))を意味する指定商品「ソファー」が取引される際の形状を表したものと認められる。 そして、証拠調べ通知書にて提示した別掲2のとおり、本願商標の立体的形状あるいはこれに類似する立体的形状が、請求人以外の者の取り扱いに係るソファーの立体的形状として、普通に使用されている事実があることが認められ、また、ソファーを取り扱う業界においては、ソファーの機能性及び美感の向上の観点から、背もたれ、座面、肘掛け及びこれらを支える脚等に多少のデザインを施すことは一般的に行われているものである。 そうすると、本願商標の立体的形状は、3人掛けソファーについて、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、3人掛けソファーの形状として、取引者、需要者において、機能の向上又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを超えて、上記形状の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。 以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、3人掛けソファーの立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 本願商標の使用による自他商品の識別性について 請求人は、意見書1、審判請求書(以下「請求書」という。)及び意見書2にて、「本願商標は、遅くとも本願商標の登録出願の時点において、本願商標の指定商品における需要者又は取引者の間において、特定の者の出所表示として全国的に認識されており、現時点においてもその周知性は衰えていない。したがって、仮に本願商標が法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認識されるに至っている。よって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を充足しており、本願商標の登録は認められるべきである。」旨主張しているが、その前提として、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであることは、上記2のとおりである。 そこで、請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲8号証を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。 なお、本審決において、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」のように省略して表示する。 (1)商標法第3条第2項について 商標法第3条第2項が、同条1項3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占的排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される(平成19年4月10日判決言渡、平成18年(行ケ)10450号 知的財産高等裁判所第4部判決参照)(下線は、合議体が付与)。 そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、前記判決に照らし、以下、判断する。 (2)意見書1、審判請求書及び意見書2による請求人の主張について ア 商品の形状 本願商標は、ハイバックソファーの部類に属するものであるところ、座ったときに背中やでん部などの形状に合致しやすいように適宜の膨らみを持たせる等、本願商標を構成する背面の背もたれ部等には、いずれも創意工夫が凝らされており、本願商標は、これら全体が相まって組み合わされた他に類を見ない特殊な形状を有する立体商標であり、単に商品自体の機能又は美感の観点から選択したという意味を超えて、自他商品識別機能を果たし得る。 イ 使用開始時期・使用期間及び使用地域 本願商標を用いた商品(以下「本件商品」という。)は、2010年10月に販売が開始されており、以降10年以上の長期間に渡って継続的に販売されており、請求人による直営店は北海道から沖縄まで日本全国に所在し、2021年6月28日現在、その店舗数は671店であり、本件商品は、長期間に渡って、かつ、日本全国で広く使用された実績がある。 さらに、請求人は、EC事業について、国内では3つの販売チャネルで積極的に行っており、例えばインターネット上の自社ECサイトにおいても、本件商品を商品画像付きで扱っており、このECサイトは、家具等の業界内においては、ユーザー数が断トツであるとの評価も貰っている。 ウ 商品の販売数量及び売上高 本件商品は、2010年10月から2020年11月の間に累計で228,935台販売し、その売上高は、968,660万円である。 この販売数量及び売上高は、「ソファー」を取り扱う業界において他に類を見ない極めて驚異的な販売実績である。 このことは、例えば、経済産業省の工業統計調査において、本願の指定商品のソファーよりもかなり広い範ちゅうである「木製机・テーブル・いす」の出荷金額が、2018年度において133,981百万円という水準であることからも、一見して明らかである。 また、請求人は、比較的安価な価格での販売を特色とする企業で、例えば、本願商標である3人用ソファーは、布張りのもので税込み38,390円からという価格設定であり、販売数量は、日本国内において群を抜いている。 さらに、本願商標であるソファー「コウテイ」は、請求人のソファー分野においてトップクラスの売り上げ規模を誇るものであり、加えて、本願の指定商品であるソファーを含む家具の分野において、請求人は国内首位のシェアを誇るものと自負している。 以上のように、本願商標は、本願の指定商品の分野において、需要者が目にする機会が極めて多く、見覚えのある見慣れたものとして幅広く浸透している。 エ 広告宣伝の期間・地域及び規模 請求人は、本件商品の販売開始以降、日本全国に所在する請求人による直営店のチラシ、パンフレット、インターネット等において全数を把握することが困難なほど極めて大々的に宣伝を行っている。 請求人は、2017年に通常時のチラシを13回、新規オープンに伴うチラシを7回、2018年に通常時のチラシを19回、新規オープンに伴うチラシを7回、2019年に通常時のチラシを14回、新規オープンに伴うチラシを1回、2020年に通常時のチラシを5回の回数で多数の需要者にチラシを配布しており、チラシ等においては、本願商標の立体的形状が写真として現れているのがほとんどであると思われる。 また、インターネットにおいては、請求人が提供する専用アプリにおいて、少なくとも2020年6月8日から同年10月8日までの間で、本件商品を掲載した広告が掲載されており、その表示回数は70,533回に及ぶ。 オ 雑誌、インターネットにおける言及について 本件商品については、その注目度の高さゆえに、雑誌、インターネット等の各種媒体において紹介が行われており、一例として、雑誌においては、小学館「DIME(2019年3月号)」(甲1)で、本件商品が紹介されており、インターネットにおいては、小学館ダイム公式サイト「@DIMEアットダイム」(2019年10月13日)(甲3)、「SAKIDORI」での案内(甲4)、「ヒラヤスタイル」(甲5)、「れいわぷれすじゃぱん」(甲6)、「my−best.com」(甲7)で、本件商品が紹介されている。 なお、一般社団法人日本雑誌協会による公開データによれば、「DIME(2019年3月号)」の発行部数は60,000部に及ぶ(甲2)。 カ 類似する同種商品の存否 本願商標と同様のデザインからなる背面の背もたれ部、左右のひじ掛け、座面、本体を支える脚から構成されるソファーは、他に存在せず、むしろ、本件商標のデザインが、特殊性を有するため、第三者が本願商標と似たデザインを模倣したと思われる後発品を販売している。 (3)事実認定 ア 請求人について 請求人は、本願の指定商品「ソファー」を取り扱う事業者であり、請求人の店舗は、我が国の全都道府県に所在し、その店舗数は、2021年6月28日現在、671店である。 イ 使用開始時期・使用期間及び使用地域 本件商品は「コウテイ」と称されており、2010年10月に販売が開始されて以降、10年以上、継続的に、全都道府県に所在している店舗及びインターネットにより、日本全国で販売されている。 ウ 販売数量及び売上高 請求人は、本件商品は、2010年10月に全国的に発売されてから2020年11月までに、累計販売数が228,935台であり、その売上高は968,660万円である旨主張するが、係る売上げ規模が、指定商品「ソファー」を取り扱う業界においてどの程度のものであるのか多寡を確認することができない。 エ 広告宣伝のされた期間・地域及び規模 請求人は、本件商品の販売開始以降、宣伝広告を行っている旨主張するが、上記2エのチラシ、パンフレット、インターネット等において、本件商品がどのように掲載されていたのかを確認できる証拠は提出されていない。 また、チラシやパンフレットの印刷数やその頒布先、インターネットにおける広告掲載日数や頻度等は、確認することができない。 雑誌においては、小学館「DIME」(2019年3月号)(甲1)で、本件商品が紹介されているところ、「ニトリvs無印良品」の見出し(同3葉目)、「ニトリ&無印良品 みんなが気になっている商品」の見出し(同4葉目)及び「コウテイ3 DBR」の見出し(同5葉目)の下、本件商品が紹介されていることは確認できる。 また、インターネットのウェブサイトにおいては、小学館ダイム公式サイト「@DIMEアットダイム」(2019年10月13日)(甲3)では、「一人暮らし向けからファミリータイプまで「お値段以上」を厳選!ニトリのおすすめソファ12選」(同1葉目)の見出し及び「ニトリ 3人用本革ソファ(コウテイ3 LT GR)」(同5葉目)の見出しの下、本件商品が紹介されており、「SAKIDORI」(2021年6月24日更新)(甲4)のウェブサイトでは、「ハイバックソファとは?」(同1葉目)の見出し及び「ハイバックソファのおすすめブランド ニトリ」(同4葉目)の見出しの下、本件商品が紹介されており、「ヒラヤスタイル」(2019年5月3日掲載、2021年6月2日更新)(甲5)のウェブサイトでは、「【ニトリ コウテイ レビュー】ルンバが通るソファの5つのメリット」(同1葉目)の見出しの下、本件商品が紹介されており、「れいわぷれすじゃぱん.com」(2019年10月19日掲載、2020年5月24日更新)(甲6)のウェブサイトでは、「ニトリの布張りソファ コウテイ3はお値段以上それ以上で間違いなし」(同1葉目)の見出し及び「コウテイ3を購入」(同2葉目)の見出しの下、本件商品が紹介されており、「mybest」(最終更新日:2020年10月1日)(甲7)のウェブサイトでは、「ニトリのソファのおすすめ人気ランキング14選【おしゃれで長く使える優秀ソファを厳選!】」(同1葉目)の見出し及び「ニトリ ソファ Nシールド コウテイ3」(同7葉目)の見出しの下、本件商品が紹介されていることは確認できる。 オ 需要者の認識 本件商品に関する需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠は提出されておらず、本件商品に関する需要者の認識度を客観的に評価することができない一方で、別掲2のとおり、ソファーの形状として、本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実があり、また、上記エのとおり、雑誌やインターネットのウェブサイトでの本件商品の紹介において、本件商標の画像は、「ニトリ」の文字や「コウテイ」の文字と共に掲載されていることからすると、本願商標の立体的形状のみが独立した識別標識として認識され、その機能を果たしているものとは認められない。 カ 本願商標に類似する同種商品の存否 本件商品は、背もたれ、肘掛け、座面及びこれらを支える脚から構成されるところ、別掲2のとおり、本件商品以外にも、「ソファー」の形状として、本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実がある。 (4)判断 以上のとおり、請求人は、本件商品を、2010年10月に販売が開始されて以降、継続的に、全都道府県に所在する請求人の店舗及びインターネットを通じて、日本全国に販売していることが認められるとしても、本件商品の販売数量、売上高、市場占有率、広告宣伝等について客観的な評価をすることができず、また、別掲2のとおり、ソファーの形状として、本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実があり、さらに、雑誌やインターネットのウェブサイトでの本件商品の紹介は、「ニトリ」の文字や「コウテイ」の文字の記載とともになされていることからすると、本願商標の立体的形状が、需要者に対して独立した出所識別標識として理解されているとはいい難い。 そうすると、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、意見書2において、証拠調べ通知書に記載された使用例は、いずれも本願商標に意図的に似せて製造された後発品と思われるものか、あるいは本願商標とは外観的特徴において著しく異なるものであって、本願商標に関する自他商品識別力の判断に影響を与えるようなものではなく、本来保護されるべき立体商標について登録が認められず、このような模倣品が出回るような事態を看過せざるを得ないことになれば、ひいては立体商標制度の秩序を乱すことになり、制度上からも到底許されるべきものではない旨主張する。 しかしながら、上記第5の2のとおり、本願商標は、3人掛け用背もたれ、3人掛け用座面、両サイドに肘掛け及びこれらを支える脚が4本という特徴を有する立体的形状よりなるものであり、本願商標は、その指定商品「ソファー」が取引される際の形状を表したものと認められ、また、別掲2のとおり、本願商標の立体的形状あるいはこれに類似する立体的形状が、請求人以外の者が取扱うソファーの立体的形状として、普通に使用されている事例があることが認められ、さらに、ソファーを取り扱う業界においては、ソファーの機能性及び美感の向上の観点から、背もたれ、座面、肘掛け及びこれらを支える脚等に多少のデザインを施すことは一般的に行われている。 そして、請求人は、「証拠調べ通知書に記載された使用例は、いずれも本願商標に意図的に似せて製造された後発品と思われる」旨主張するが、別掲2で示す請求人以外の使用例が、本願商標に意図的に似せて製造された後発品であると判断し得る客観的な証拠は存在しない。 そうすると、本願商標の立体的形状と同一形状のソファーが存在しないとしても、本願商標は、その指定商品「ソファー」の立体的形状の一類型にすぎないことを容易に認識させるものである。 (2)請求人は、意見書2において、本願商標が、仮に商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標の使用開始時期や使用地域等を考慮すれば、同条第2項に規定する要件を満たし、登録されるべきものである旨主張する。 しかしながら、上記第5の3のとおり、本願商標は、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。 (3)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張は、採用するべき事情はない。 5 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本願商標) 別掲2(本願商標の指定商品である「ソファー」を取り扱う業界において、本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実) (1)「amazon」のウェブサイトにおいて、「背もたれハイバックソファ 【3人掛け/ダークブラウン】 SPレザー生地」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.amazon.co.jp/%E3%82%84%E3%81%95%E3%81%97%E3%81%84%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E8%83%8C%E3%82%82%E3%81%9F%E3%82%8C%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A1-%E3%80%903%E4%BA%BA%E6%8E%9B%E3%81%91-%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%80%91-SP%E3%83%AC%E3%82%B6%E3%83%BC%E7%94%9F%E5%9C%B0/dp/B07DJZBDLR (2)「Belle Maison」のウェブサイトにおいて、「合皮ハイバックソファー <2人掛け/2人掛けワイド>」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.bellemaison.jp/shop/commodity/0000/1032975 (3)「Rakuten」の「e−casa」のウェブサイトにおいて、「PRODUCT VIEW」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/e-casa/sf3-re-20sp007/ (4)「アイリスプラザ」のウェブサイトにおいて、「リラックスできるハイバックスタイル」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=7160687F (5)「TOKYOinterior」のウェブサイトにおいて、「3人掛けソファ フィット(#7384) FB/BE 【大型商品配送便でのお届け】」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.tokyointerior-onlineshop.com/shopdetail/000000004539/01/page1/recommend/ (6)「Coverth」のウェブサイトにおいて、「安心感と心地良さを与えてくれる ホスピタリティハイバックソファ 3人掛け」の見出しの下、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.covearth.co.jp/detail/211214.html (7)「Rakuten」の「C・S interior」のウェブサイトにおいて、「ソファ 3P 3人用 ハイバック ソファー 3人掛け ハイバックソファ ファブリックソファ クッション付き おしゃれ 北欧 アームレスト ファブリック 三人用 三人掛け 3人掛けソファ ブラウン グレー sofa 脚付き 木脚 クッション1個 肘掛け付き」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/cs-interior/se-587/#HNTOP (8)「ヤマダウェブコム」のウェブサイトにおいて、「[幅173]3人掛けソファ 布張り 「YS130002LTGY」 ライトグレー ヤマダオリジナル 3人掛けソファ ライトグレー」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.yamada-denkiweb.com/4485635016 (9)「Rakuten」の「bloom新館」のウェブサイトにおいて、「3P SOFA」の記載の右に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/bloom-shinkan/lc-065/ (10)「YAHOO!ショッピング」の「スイデコYahoo!店」のウェブサイトにおいて、「ゴージャスな本革張りはキングの貫禄。エレガントで上品なハイバックソファです。」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/sweetdecoration/076-08123.html# (11)「Rakuten」の「大川格安家具ショップ」のウェブサイトにおいて、「カテゴリトップ > ソファー > 3人掛け」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/ms-1/mssi-0107/ (12)「Rakuten」の「家具のケンちゃん」のウェブサイトにおいて、「開梱設置・送料等の費用無料」の記載の上に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/businesssuccess/835/ (13)「YAHOO!ショッピング」の「Kagu 123」のウェブサイトにおいて、「電動リクライニングソファ 電動ソファ 3人掛けソファ 三人掛け 3人用 電動ソファベッド ソファ ソファー テーブル付 PVC」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/kagu123/sak02165.html# (14)「東京インテリア 浜松店」のウェブサイトにおいて、「ゆったりくつろげるリクライニングソファ」の見出しの下、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://tokyointerior.hamazo.tv/e7039567.html (15)「SAKODA」のウェブサイトにおいて、「ルッカ HS−60085A BR 電動モーション 3Pソファ」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.sakoda.co.jp/shop/g/g2100001025342/ (16)「シマホネット」のウェブサイトにおいて、「3人掛け電動ソファー エルサ Dランク(C200アイボリー)」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://netshop.shimachu.co.jp/shop/g/g062233-2100000648825-00/ (17)「Rakuten」の「Y BOX」のウェブサイトにおいて、「全米14年連続売上第1位 Ashley 3人掛け リクライニングソファ」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/yellowbox4/9860488/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_109_1_10000237 (18)「関家具」のウェブサイトにおいて、「Banks バンクス 3人掛け電動ソファ レザーテックス /【 RELAX FORM 】リラックスフォーム」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.sekikagu-honten.jp/i/banks_3p (19)「YAHOO!ショッピング」の「おしゃれ家具通販パレット」のウェブサイトにおいて、「ELECTRIC 3P SOFA 2 Color」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/stepone11/ic-000404.html?sc_e=afvc_shp_2327384# (20)「ポンパレモール」の「STYLE INTERIOR」のウェブサイトにおいて、「電動 ソファ リクライニングソファ 幅182 3人掛け USBポート 左右両電動 サイドテーブル オットマン 革 レザーファブリック(代引不可)【送料無料】」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.ponparemall.com/rcmdin/goods/br-026bm-3p/ (21)「IDC OTSUKA」のウェブサイトにおいて、「電動リクライニングソファ「バッジオ」テーブル付 全2色」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.idc-otsuka.jp/item/products/detail/17515 (22)「IDC OTSUKA」のウェブサイトにおいて、「電動リクライニング ソファ「サラ SD−312」3人掛け ソフトレザー アイボリー色 #C200」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.idc-otsuka.jp/item/products/detail/11104 (23)「Rakuten」の「e−casa」のウェブサイトにおいて、「PRODUCT VIEW」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/e-casa/sf6-sk-20sm005/ (24)「Rakuten」の「大川家具」のウェブサイトにおいて、「Electric reclining sofa. 電動リクライニングソファ」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/kagu-1/ma-3k-001851/ (25)「YAHOO!ショッピング」の「ふるなび」のウェブサイトにおいて、「佐ふるさと納税 EL065_本革 電動リクライニング3Pソファ 206cm ロマーノ 【開梱設置・組み立て付き】ブラウン[GT065] 佐賀県みやき町」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/furunavi/268352.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_title (26)「YAHOO!ショッピング」の「ソファ・ダイニング通販の家具屋台」のウェブサイトにおいて、「電動リクライニングソファ3人掛け 高級感あるイタリア製本革レザー。」の記載の下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/kaguyatai/ms-swat-1.html?sc_e=slga_fpla# (27)「Lelax」のウェブサイトにおいて、「757MRをお選びいただける理由」の記載の右に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 http://www.lelax.co.jp/shopdetail/000000000029/ (28)「Rakuten」の「ファニチャービレッジ」のウェブサイトにおいて、「―リガー― Leger」の記載の左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://item.rakuten.co.jp/furniture-village/sj_4710/ (29)「amazon」のウェブサイトにおいて、「リクライニングソファー 3P ソファー 3人掛け 3分割 電動モーション 【バッソ キャメル】 アウトレット/現品限り」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC-%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC-%E9%9B%BB%E5%8B%95%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%80%91-%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88/dp/B084LBR1RW (30)「Halu」のウェブサイトにおいて、「【送料無料】エルドラド リクライニングソファ レザーテックス(キャメル)3P」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://halu-make.jp/sekg10150/ (31)「LOWYA」のウェブサイトにおいて、「LOWYA>ソファ>布張り・ファブリックソファ>[幅189]電動リクライニングソファ」の見出しの下に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.low-ya.com/goods/F103_G1005 (32)「TOKYOinterior」のウェブサイトにおいて、「電動3Pソファ ALLES 3S C100 IV 【大型商品配送便でのお届け】」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://www.tokyointerior-onlineshop.com/shopdetail/000000004814/?utm_source=google&utm_medium=ppc&utm_campaign=ecbooster (33)「PayPayモール」のウェブサイトにおいて、「電動リクライニングソファ 電動ソファ 3人掛けソファ 三人掛け 3人用 ドイツ製電動ソファ 電動ソファベッド ソファ テーブル付 ソフトレザー Sバネ USBジャック」の見出しの左に、本願商標と近似する形状が商品「ソファー」に使用されている事実がある。 https://paypaymall.yahoo.co.jp/store/akaya/item/SNK-GRANBA/?subcode_img=neoelgran-brown.jpg&sc_e=slga_fpla (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2023-04-13 |
結審通知日 | 2023-04-18 |
審決日 | 2023-05-08 |
出願番号 | 2020055195 |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W20)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
豊田 純一 杉本 克治 |
代理人 | 遠山 良樹 |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 青木 篤 |